第74 回(公社)全日本鍼灸学会学術大会名古屋大会 抄録集 主催公益社団法人全日本鍼灸学会 後援文部科学省厚生労働省愛知県名古屋市公益社団法人日本医師会 公益社団法人愛知県医師会一般社団法人名古屋市医師会 公益財団法人東洋療法研修試験財団公益社団法人日本鍼灸師会 公益社団法人全日本鍼灸マッサージ師会公益社団法人東洋療法学校協会 公益社団法人全国病院理学療法協会一般社団法人日本東洋医学会 一般社団法人日本東洋医学系物理療法学会一般社団法人日本生理学会 日本自律神経学会全国盲学校長会日本理療科教員連盟日本伝統鍼灸学会 日本良導絡自律神経学会一般社団法人日本在宅医療連合学会 一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会 一般社団法人愛知県鍼灸マッサージ師会、一般社団法人愛知県鍼灸師会 中日新聞社 もくじ 挨拶 (公社)全日本鍼灸学会会長若山育郎1 第74回(公社)全日本鍼灸学会学術大会大会会頭清水洋二2 第74回(公社)全日本鍼灸学会学術大会実行委員長杉本佳史3 第74回(公社)全日本鍼灸学会学術大会名古屋大会の概要4 第74回(公社)全日本鍼灸学会学術大会名古屋大会の参加・アーカイブ配信について5 会場アクセス図10 会場案内図11 認定受付について12 大会日程表13 大会プログラム15 特別演題抄録39 会頭講演「鍼灸× フェムテック:エビデンスに基づく新たな医療モデル」40 基調講演1 「女性の健康支援とフェムテック」41 基調講演2 「フェムテックとAI」42 特別講演1 「医療機器である鍼灸鍼:法規制と安全管理の徹底」43 特別講演2 「これからのフェムテックと鍼灸マッサージへの期待」44 特別講演3 「フェムテックのミカタ~実践からの学び!」45 教育講演1 「「痛みと神経、深掘り解説」:痛みと神経の関連性と先端知見」46 教育講演2 「その症状、鍼灸治療で良いの? 知っておきたい『レッドフラッグ』」47 教育セミナー1「鍼灸の知らない世界~鍼灸最前線からのフェムテックへの挑戦!~」 「フェムテックと新デルマトーム、そして交感神経デルマトーム」48 「テクノロジーへの新たな挑戦マイナス直流鍼通電の安全性と有効性」49 教育セミナー2「みんな気になる?気になる!鍼灸!」 「気になるだけで終わらせない!灸との出会いの機会を増やすために」50 「医療的ケアの必要な子供たちに宿る意思をつないで」51 「すべての女性が継続ケアを選択できる世の中に」52 「地域医療における鍼灸師の役割と多職種連携の可能性」53 シンポジウム1「日韓台シンポジウム」 「The Role of Acupuncture and Moxibustion in Addressing Women's Health Issues in Japan」54 「Acupuncture and Moxibustion for Women's Health in Korea: Clinical Applications and Evidence-Based」55 「Acupuncture on Assisted Reproduction Treatment of Infertility Patient: A case report」56 シンポジウム2「スポーツに関わる女性のみかた-選手・AT・鍼灸師のwell-being」 「女性アスレティックトレーナー、あはき師として考えるこれから」57 「牧歌的鍼灸院のWell-being」58 「スポーツ現場における女性鍼灸師・ATの活躍」59 「トレーナーから医師への転換」60 シンポジウム3「日本と韓国の電子カルテ」 「日本の鍼灸業界における電子カルテの現状と課題」61 「Overview of the current status of electronic medical records in Korea」63 …………………………… …………………………… …………………………… ………………………………………………………… ………………………… …………………………………………………………………………………………………………… ………………………………………………………………………………………………………………… ………………………………………………………………………………………………………… ………………………………………………………………………………………………………………… …………………………………………………………………………………………………………… ……………………………………………………………………………………………………………… ……………………… …………………………………………………………… …………………………………………………………………………… ……………………………………… …………………………………… ……………………………………………… ……………………… ……………… …………………… ……………… ………………… …………………………………… ………………………………………… ………………………………… ………………………………… ……………………………………… ………………… ………………………………………………………………… …………………………………………… ……………………………………………………………… ……………………………………… ……………… シンポジウム4 「鍼灸と多職種連携が切り拓く泌尿器疾患治療の新展開」 「女性の泌尿器科疾患に対する鍼灸アプローチの可能性を考える」64 「排尿ケアにおける看護師の役割」65 「女性泌尿器科分野における多職種連携を見据えた鍼灸の役割」66 シンポジウム5 「支持・緩和医療における鍼灸治療の果たす役割 -医療連携と専門性の高い鍼灸師の育成に向けて-」 「医療連携と専門性の高い鍼灸師の育成にむけて」67 「支持・緩和医療における鍼灸治療の果たす役割」68 「支持・緩和医療における鍼灸治療の果たす役割」69 「緩和ケアチームとしてのがん患者に対する鍼施術の経験から」70 「国立がん研究センター中央病院の鍼灸治療と普及への取り組み」71 シンポジウム6 「フェムテックによる女性のWell-beingに貢献する鍼灸」 「フェムテックによる女性のWell-beingに貢献する鍼灸」72 「鍼灸師がフェムテック分野で活躍するための可能性と戦略」73 「「女性×鍼灸」を軸とした鍼灸・お灸の広報活動」74 シンポジウム7 「実技教育(診察・鍼・灸)の客観化」 「Virtual Realityを用いたOff the Job Trainingの展開」75 「鍼灸実技教育における四診法の科学化」76 「刺鍼方法の客観化について」77 ディスカッション1「救急・集中医療における鍼灸の可能性を探る」 「救急・集中医療における鍼灸治療の果たす役割」78 「救急・集中医療で回復を促す鍼灸」79 「救急・集中医療領域において鍼治療の果たす役割とは?」80 ディスカッション2「女性の潜在鍼灸師の復帰について問題提起から復帰システムに繋ぐ」 「潜在看護師の復職支援と継続して働き続けられる取り組み」81 「歯科衛生士会の復職支援の取り組み」82 「女性の潜在鍼灸師の復帰について~はじめの一歩~」83 実技セッション「フェムテック!Well-being!社会が求める鍼灸師に必要なイロハ ~原点回帰と新たなる挑戦~」 「原点回帰!フェムテック鍼灸を実践する為に必要な医療面接・接遇 フェムテック専門鍼灸への挑戦1:耳鍼編」84 「フェムテック専門鍼灸への挑戦2:円皮鍼編 ~新たな鍼陰極断続パルス(陰極単相短形波)通電療法の実際」85 「フェムテック専門鍼灸への挑戦3:通電療法編」86 ワークショップ1 「日々の臨床を形にする:やさしい抄録作りのステップ」 「日々の臨床を形にする」87 ワークショップ2 「鍼灸安全対策ガイドライン2025年版おもな改訂のポイント」 「鍼灸安全対策ガイドライン2025年版の主な改訂のポイント」88 ワークショップ3 「学生協働交流シンポジウム・経絡経穴学教育の再構築 -学生参加型で考える、教え方・学び方-」 「経絡経穴学教育の再構築」89 ……………… ……………………………………………………… …………………… …………………………………… …………………………………… …………………………………… …………………… ………………… …………………………… ……………………… ………………………………… ………………………………… ……………………………………………… …………………………………………………………… …………………………………… …………………………………………………… ………………………… ……………………… ………………………………………………… ……………………………… ………………………………………… ………………… …………………………………… ………………………………………………………………… …………………… ……………………………………………………………… 報告「JLOM部、辞書用語部、JLOM戦略検討委員会合同報告会 ~日本鍼灸の国際対策:若手の方、初めての方に向けて①」 「令和6年度の鍼灸を含む日本の伝統医療を取り巻く国際情勢の概説」90 「WHO-FIC年次総会TMRG(伝統医学リファレンスグループ)報告」91 「国際標準化機構(ISO)におけるJLOM部ISO班の活動」92 「(全日本鍼灸学会)辞書用語部における活動について」93 市民公開講座「フェムテック推進のための政策方針(仮)」94 一般演題抄録95 大会役員・実行委員207 ……………… ……………… ……………………………… ……………………………… ………………………………………… …………………………………………………………………………………………………………… …………………………………………………………………………………………………… 挨拶 第74回学術大会の開催にあたって 公益社団法人全日本鍼灸学会 会長若山育郎 近年における2度目の愛知県名古屋市での全日本鍼灸学会学術大会開催を心からお祝いを申し上げま す。 前回の名古屋での大会は2019年の開催で、テーマは「女性のみかた」でした。今回は「女性のみかた Ⅱ」というタイトルで、前回にも増して「女性と鍼灸」を追求した学術大会になることを期待しており ます。 サブテーマは、「フェムテックによる女性のWell-beingに貢献する鍼灸」です。「フェムテック」は最 近ようやく広まってきた言葉ですが、女性(female)とテクノロジー(technology)を合わせた造語で す。すなわち、女性の月経の始まりから妊娠、妊よう性、その後の出産、産後、さらには更年期とその 後まで、女性の生涯にわたるいろいろな問題にテクノロジーで対処できないかということから始まった 概念です。伝統医学では古くから「未病」という言葉がありますが、女性の「病気」だけではなく女性 特有の「未病」に対するテクノロジーを用いた介入という言い方もできると思います。鍼灸は古くから 「女性のみかた(味方)」であり、その分野で非常に活用されていますが、今大会であらためて鍼灸の効 用と貢献度を検証する機会になれば誠にありがたく存じます。 プログラムを拝見するとまさにその通りでいずれも「フェムテック」や「女性のWell-being」といっ たテーマが貫かれた演者、タイトルが選定されています。通常は大会テーマというとかなり抽象的な概 念のことが多いですが、名古屋らしくストレートなテーマを掲げられたことは大いに評価したいと思い ます。 末筆になりましたが、現地開催+アーカイブ配信方式で、学術大会を準備いただいた清水洋二会頭、 杉本佳史実行委員長、二村浩之事務局長はじめ実行委員会の皆様、メーカーの皆様、ご講演・ご発表予 定の皆様、ご参加いただいたすべての皆様に心から感謝するとともに大会のご成功を祈念いたします。 - 1 - 挨拶 再び名古屋の地へようこそ 第74回(公社)全日本鍼灸学会学術大会名古屋大会 大会会頭清水洋二 皆様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。 さて、本年度2025年5月30日~6月1日に、公益社団法人全日本鍼灸学会学術大会第74回大会を、名古 屋の地にて開催する運びとなりました。前回第68回大会が中部支部のもとで盛大に行われたことに続き、 今回も我々実行委員会、中部支部一同、学術的探究と臨床の発展を目指して邁進する所存です。 本大会のテーマは、現在国策として掲げられている「健康経営」や「フェムテック」を軸に、女性の 働きやすさ、活きやすさ、そして女性のWell-beingに対して、鍼灸が如何に貢献できるかという視点を 追求するものです。女性特有のライフステージにおける健康課題に対し、基礎から臨床に至る幅広い学 術的議論を展開するとともに、実践的な知見の共有を通じ、全ての女性の健康と社会参加を支える新た な地平を切り拓いて参ります。 また、2025年大会の会場は、名古屋駅から徒歩5分という好立地に位置するWINC AICHI(ウインク あいち愛知県産業労働センター)を採用しております。周囲は宿泊施設や飲食店が立ち並ぶ愛知県一 の繁華街となっており、名古屋駅は中部地方のみならず、近隣エリアの観光地への玄関口としても機能 しております。ぜひこの機会に、名古屋めしをはじめとする中部地方の魅力にも触れていただければと 存じます。 なお、今回の大会は対面開催に加え、アーカイブ配信も実施する予定です。より多くの皆様にご参加 いただき、鍼灸学の発展に寄与する知見を広く共有できるよう、最大限の配慮をして参ります。 皆様のご参加と活発な議論が、本学会の更なる発展のみならず、鍼灸医学の未来を切り拓く原動力と なることを心より祈念し、ここに謹んでご挨拶申し上げます。 - 2 - 挨拶 第74回全日本鍼灸学会学術大会名古屋大会開催を迎えて 第74回(公社)全日本鍼灸学会学術大会名古屋大会 実行委員長杉本佳史 第74回全日本鍼灸学会学術大会名古屋大会の開催にあたり、ご挨拶申し上げます。 愛知県での開催は、2019年の第68回大会以来となります。この間、世界は新型コロナウイルス感染症 の影響を受け、私たちの生活や行動様式に大きな変化が生じました。特に健康への意識が高まり、「免 疫力の向上」や「感染しにくい体づくり」に対する関心が強まったことは、私たち鍼灸師にとっても重 要な転機となりました。また、パンデミックを経て社会のデジタル化が加速し、生成AIの活用が進む など、時代は急速に変化しています。こうした環境の変化の中で、鍼灸が果たすべき新たな役割を見出 し、未来への展望を示すことが、本大会の重要な目的の一つです。 本大会のテーマは、「女性のミカタⅡ~フェムテックによる女性のWell-beingに貢献する鍼灸~」です。 近年、女性の健康に対する関心が高まり、フェムテックをはじめとする技術やサービスが急速に発展し ています。その背景には、女性特有の健康課題が十分に社会に認識されてこなかった現状があり、より 多くの分野で女性の健康を支援する取り組みが求められています。 私たち鍼灸師は、「未病を治す」という考えのもと、エビデンスの構築を含め、病気の予防や健康維 持に貢献してきました。フェムテックと鍼灸を組み合わせることで、女性の健康とQOL(生活の質) 向上により大きく寄与できる可能性が広がっています。本大会では、鍼灸とフェムテックの融合が女性 のWell-being向上にどのように貢献できるのか、多角的な視点から議論を深めてまいります。 プログラムとして、会頭講演、特別講演、基調講演、教育講演をはじめ、シンポジウム、ディスカッ ション、実技セッションなど、多岐にわたる内容を用意しています。フェムテックの最前線に関する講 演では、女性の健康支援の新たな可能性を探る貴重な機会となるでしょう。また、医療機器としての鍼 灸鍼の法規制や安全管理、医療経済学における鍼灸の位置づけ、スポーツ分野における女性アスリート 支援など、多職種との連携を通じて鍼灸の新たな価値を探るセッションも予定されています。 さらに、「女性の健康支援を担う鍼灸師の役割」を深く掘り下げていきます。女性のライフステージ に応じた健康課題に対し、鍼灸がどのように貢献できるのか、そして社会全体の健康意識の向上にどの ように寄与できるのかを議論します。また、鍼灸師の働き方にも焦点を当て、女性鍼灸師のキャリア継 続や潜在鍼灸師の復帰支援についても考察を深めます。 本大会が、参加される皆様にとって「学び」だけでなく、新たな「つながり」や「視点」を得る場と なることを願っております。鍼灸が社会のニーズに応え、より多くの人々の健康と幸福に貢献できる未 来を共に考えてまいりましょう。最後まで充実した時間をお過ごしください。実行委員一同、皆様のご 参加を心よりお待ちしております。 - 3 - 大会概要 大会名第74回(公社)全日本鍼灸学会学術大会名古屋大会 テーマ女性のみかたⅡ -フェムテックによる女性のWell-beingに貢献する鍼灸- 学会会長若山育郎(公社)全日本鍼灸学会会長 大会会頭清水洋二中和医療専門学校校長 実行委員長杉本佳史名古屋医健スポーツ専門学校副校長 大会会期令和7年5月30日(金)~ 6月1日(日)現地開催 令和7年6月23日(月)~ 7月22日(火)アーカイブ配信 大会会場WINC AICHI(ウインクあいち愛知県産業労働センター) (〒450-0002 愛知県名古屋市中村区名駅4丁目4?38) 主催(公社)全日本鍼灸学会 担当第74回(公社)全日本鍼灸学会学術大会実行委員会 ホームページhttps://www.taikai.jsam.jp/ お問い合わせ大会事務局中和医療専門学校内 〒492-8251 愛知県稲沢市東緑町1-1-81 e-mail: 74nagoya@jsam.jp 運営事務局株式会社JTB名古屋事業部内 〒453-6106 愛知県名古屋市中村区平池町4-60-12 e-mail: 74jsam@jtb.com - 4 - 第74回(公社)全日本鍼灸学会学術大会名古屋大会の 参加・アーカイブ配信について 名古屋大会会期中の会議・式典 ・開会式5月31日(土)09:30~10:00 (第1会場大ホール) ・通常総会5月31日(土)13:00~13:50 (第1会場大ホール) ・高木賞表彰式5月31日(土)14:00~15:00 (第1会場大ホール) ・学生発表表彰式6月1日(日)12:00~12:30 (第1会場大ホール) ・理事会5月30日(金)12:30~14:30 (9階小会議室B906) ・顧問参与会議5月30日(金)14:50~15:50 (9階小会議室B906) ・鍼灸学術団体協議会5月30日(金)16:00~17:00 (9階小会議室B906) ・諮問委員会5月30日(金)17:30~18:30 (9階小会議室B907) ・JSACU理事会6月1日(日)16:00~17:00 (9階中会議室903) 1.総合受付 2階大ホールホワイエに総合受付を設置します。 ※受付時間5月31日(土) 08:30 ~ 17:00 6月1日(日) 08:30 ~ 16:00 2.学術大会の受付 1)事前参加登録 2月28日~4月18日に事前参加登録の方参加証は事前に送付しています。参加証が届いていない場合に は、総合受付までお越しください。 ※事前参加登録の方の当日受付は行いません。直接、各会場にお越しください。 ※決済終了後は、事情の如何に関わらず参加費の返還には応じられませんのでご了承ください。 2)当日参加登録 当日、総合受付(2階大ホールホワイエ)で参加登録をお済ませください。 【対面のみ(ミニ抄録集付)】 正会員13,000円学生会員5,000円一般17,000円一般学生8,000円 【対面+アーカイブ配信(ミニ抄録集付)】 正会員15,000円学生会員5,000円一般19,000円一般学生8,000円 ※学生の方は、学生証をご提示ください。 3.参加証 大会会場内では、参加証をネームホルダー(会場内に準備してあります)に入れて、必ずご着用くだ さい。会場入ロにおいて参加証を確認させていただきます。予めご了承ください。 4.抄録集 本学術大会では抄録集の配布および販売は行いません。その代わりに各プログラム一覧を掲載したミ ニ抄録集を配布いたします。各演題の抄録を掲載した抄録集は、電子版(PDF)として大会ホームペー ジよりダウンロードいただけます。 5.企業展示 6階展示場にて行います。31日(土) 10時00分~17時00分、1日(日) 9時00分~15時00分です。 6.クローク 6階にクロークを設置します。会場の都合上、クロークでお預かりできる数には限りがありますので - 5 - ご了承ください。また、貴重品や壊れ物は各自で保管をお願いします。ご利用時間は、31日(土)8 時30分~18時00分、1日(日)8時30分~17時00分です。毎日ご利用時間内に必ず荷物のお引き取りを お願いします。 7.視覚に障がいのある方へのサポート 視覚障がいのある方で、同行者(無料)と一緒に参加される場合は、事前登録時にお申し込みくださ い。当日は総合受付に「視覚障がいサポートブース」を設置します。また、各フロアの会場・エレベー ター付近にスタッフを配置し、移動のお手伝いや会場内をご案内いたします。お困りの際はご遠慮な くお問い合わせください。 当日、点字によるプログラム(簡易版)を配布いたします。ご来場いただきましたら、視覚障がいサ ポートブースにお来し下さい。点字プログラム(簡易版) をご希望の方は、事前に大会事務局 (74nagoya@jsam.jp)までお問い合わせください。数に限りがございますので、予めご了承ください。 8.託児サービス(事前登録制) 託児サービスを希望される方は、5月8日(木)までに「ピジョンハーツ株式会社」へ事前申し込みを 行ってください。お申し込みは、名古屋大会公式ホームページ(https://www.taikai.jsam.jp/)をご確認 ください。なお、利用料は無料です。 9.ランチョンセミナーについて ランチョンセミナーは、31日(土)・1日(日)の両日とも、2会場で開催いたします。整理券は、当 日の8:30~10:30に3階大ホールホワイエで配布します。なお、座席に余裕がある場合は、整理券なし でも聴講が可能です。詳しくは、各会場の担当者にお尋ねください。 10.当日の昼食について 会場内への飲食物の持ち込みは原則禁止となっております。会場内でお召し上がりいただけるのは、 ランチョンセミナーで提供されるお弁当のみで、指定の会場内に限ります。その他の飲食については、 会場周辺の飲食店をご利用ください。 11.懇親会(事前登録制) 日時:5月31日(土)19:00~21:00 会場:ストリングスホテル名古屋グランコート (〒453-0872 愛知県名古屋市中村区平池町4-60-7) 参加費:事前登録10,000円当日12,000円 ※予定人数に達した場合はその時点で締切といたします。 ※一度お支払いいただきました参加費は、事情の如何にかかわらず返金には応じられませんのでご了 承ください。 12.写真撮影・ビデオ撮影・録音について 大会事務局の承諾なく、会場内での写真撮影・ビデオ撮影・録音はお断りします。大会事務局の許可 を受けた方は、必ず腕章を分かりやすいように着けてください。 13.PCデータ受付について(特別演題、一般演題) 1)スライドデータの受付および動作確認について PCデータ受付を2階大ホールホワイエに設置いたします。 スライドデータの受付は、大会開催時に行います。受付時間は各日ともに8時30分から16時00分と なります。発表の30分前にはスライドの受付と動作確認を終了してください。またスライドデータ の受付では、動作確認のみで、サイズの不適合などがあっても修正などは出来ません。 発表で使用したデータは、発表終了後、消去します。 - 6 - 2)メディア、データについて 発表はUSBメモリーまたはPC本体から行うことができます。ただし、CD-R等のメディアは一切 受付できません。Macで作成したPowerPointデータはWindows環境で使用可能ですが、Macをご利 用場合はPCの持ち込みを推奨いたします。Keynote形式のデータには対応しておりませんので、 発表の際はご自身のPCをご持参ください。また、動画データをご使用の場合も、ご自身のPCをご 持参ください。 持ち込みPCのプロジェクターへの接続はHDMI(Type A)のみとなります。変換アダプターが必 要な場合は、各自でご準備ください。なお、iPadなどのタブレットPCはご利用いただけません。 14.会場で使用するPCおよびスライド(PowerPoint)の仕様について 会場で使用するPCはWindows 11(PowerPoint 2024)です。 スライド作成(PowerPoint)は、ワイド画面(16:9)で作成してください(標準(4:3)でも対応可能)。 動画(PowerPointのアニメーション機能除く)の利用はできません。また時間の都合により、発表者 ツールは利用できません。 フォントは以下のOS標準フォントをご使用ください。 【日本語】MSゴシック、MSPゴシック、MS明朝、MSP明朝、メイリオ、游ゴシック、游明朝 【英語】Times New Roman, Arial, Arial Black, Arial Narrow, Century, Century Gothic, Courier, Courier New, Georgia 15.一般口演発表について 1)スライドの受付について スライド(PowerPoint)は、発表の30分前までにPC受付(2階大ホールホワイエ)を済ませてくださ い。 持ち込まれるメディアには、発表用のデータ(完成版)以外を入れないようにしてください。また ファイル名は、「演題番号筆頭演者名(氏名).pptx」としてください。データは、学会終了後に責任 を持って消去します。 2)集合時間について セッション開始10分前までには会場内で待機してください。 3)発表時間について 一般口演発表の発表時間は7分間、質疑応答5分間です。 4)スライド作成について スライド枚数の制限はありませんが、発表時間を厳守してください。また、タイトルスライドの次 のスライドに利益相反(COI) を様式4-Aもしくは4-BにしたがってCOI状態を開示して下さい (https: //www.taikai.jsam.jp/coi/))。最後のスライドは【結語】とし、発表内容を箇条書きにまとめ てください。 また「14.会場で使用するPCおよびスライド(PowerPoint)の仕様について」も参照ください。 16.ポスター発表について(一般ポスター発表、英語発表、学生ポスター発表) 1)ポスター受付について(ポスターの掲示・撤去) ポスター発表は6階展示会場にて行います。 ポスターの掲示は、発表されるセクション開始30分前までに行ってください。画鋲はポスター会場 に用意いたします。ポスターの撤去は、1日(日)の16時を過ぎたら行ってください。撤去されて いないポスターは大会事務局側で撤去・廃棄いたします。なお、撤去したポスターの返却はいたし ません。 2)集合時間について セッション開始10分前までにはポスター発表会場内で待機してください。 - 7 - 3)発表時間について 一般ポスター発表、英語発表:発表7分質疑応答5分 学生ポスター発表:発表7分質疑応答3分 4)作成について(学会ホームページにポスター作成のポイントが掲載 されています) ①ポスターサイズおよび標記について ポスターパネルの大きさは縦210cm横90cmです。右図を参照にポ スターを作成してください。左上角に演題番号(20cm×20cmの大 きさ)を貼付しますので、このスペースにはなにも貼らないでくだ さい。演題名、所属、氏名(縦30cm横70cmの大きさ)は各自でご 用意ください。 ポスターはボードから離れても判読できるよう見やすくしてくださ い。文字や図表も十分読み取れる大きさにしてください。支部学術 集会の一般演題で発表した研究の二次発表の場合、次の例を参考に 表示してください(例:本研究は令和5年度(公社)全日本鍼灸学 会関東支部で発表した研究の二次発表である。) ②利益相反(COI)状態の開示について 筆頭演者は発表内容に関する企業・組織や団体との過去1年間の申 告すべきCOIの有無をホームページ内、「利益相反(COI)状態の 開示について(https://jsam.jp/convention/congress/coi/)に従ってポス ターの最初(左上)に必ず表示してください。 5)「学生ポスター優秀賞」について 学生ポスター発表のうち、発表内容、発表方法(プレゼンテーション・質疑応答)、ポスターのデ ザインなどを統合して審査し、優秀であった発表を「学生ポスター優秀賞」として表彰いたします。 審査は5月31日(土)の10時から開始(発表時のみではなく、掲示した時点から審査されています) しますので、それまでに必ずポスターを掲示してください。表彰式は、6月1日(日)の12時00分か ら第1会場大ホールにておこないます。なお、学生ポスター発表の演者1名は必ず表彰式に出席して ください。 17.座長・司会の先生方へ 1)特別講演・教育講演・基調講演・教育セミナー・シンポジウム・パネルディスカッション等 開演30分前までに総合受付(2階大ホールホワイエ)にお越しください。担当スタッフがご案内し ます。事前打ち合わせの予定のある先生は、その旨お申し出ください。 2)一般口演発表 ご担当のセッション30分前までに総合受付(2階大ホールホワイエ)にお越しください。 セッション開始10分前までには次座長席で待機し、会場アナウンスに従って壇上にお進みいただき、 セッションを開始してください。 発表時間は7分間、質疑応答5分間です。進行は座長にお任せしますが、時間厳守でお願いします。 3)ポスター発表 ご担当のセッション30分前までにポスター会場(6階展示室)のポスター受付にお越しください。 セッション開始の10分前には会場内で待機し、定刻になりましたらセッションを開始してください。 発表時間は7分間、質疑応答5分間です。学生発表の発表時間は7分間、質疑応答3分間です。進行は 座長にお任せしますが、時間厳守でお願いします。 18.学術大会の取材をされる皆様へ 名古屋大会の取材を予定されている方は、5月8日(木)までに大会事務局までメールでご連絡くださ い(74nagoya@jsam.jp)。大会当日は、身分を明らかにできるものをご持参の上、総合受付にお越し ください。取材腕章をお渡しします。 - 8 - 【ご申請いただきたい事項】 1.貴社名 2.取材予定日 3.掲載予定媒体名 4.取材方法(写真撮影VTR録画・インタビュー等) 5.取材対象(各セッションを取材される場合は、事務局を通じて講演者の許可を得てください) 6.取材者人数 7.ご担当者氏名 8.ご連絡先 19.アーカイブ配信視聴について 1)参加方法 アーカイブ配信視聴には、参加登録された際のログインIDとパスワードが必要となります。名古 屋大会ホームページ(https://www.taikai.jsam.jp/participation/)から参加登録された際のログインID とパスワードでログインしてください。 2)大会開催期日終了後のアーカイブ視聴の申込について アーカイブ配信の視聴は、事前参加登録及び当日参加登録だけではなく、大会終了後も名古屋大会 ホームページ(https://www.taikai.jsam.jp/participation/)より視聴申込登録が可能です。費用は当日 参加登録と同額となります。 正会員15,000円学生会員5,000円一般19,000円一般学生8,000円 3)配信の期間について アーカイブ配信受付期間: 2025年6月2日(月) 0:00~7月22日(火) 12:00 アーカイブ配信視聴期間: 2025年6月23日(月) 0:00~7月22日(火) 12:00 配信の期間中は、録画を自由に選んで視聴できます。配信内容は、第1会場大ホール、第2会場小 ホール1、第3会場小ホール2となります(※開会式、総会、高木賞表彰式、学生発表表彰式、市民 公開講座、ランチョンセミナーは除く)。 ※講師等の承諾が得られず、録画の再配信ができない場合があります。 4)ログインについて 1つのIDとパスワードでログインできるデバイスは1台のみです。同時に複数のデパイスでログイ ンすることは出来ません。IDとパスワードを他人に漏らしたり、SNSに投稿したりすることなどは おやめください。不正なログインが疑われる場合は、ログインをブロックする場合もあります。 5)録音・録画などの禁止について 名古屋大会でのすべてのコンテンツにおいて、録音、録画、画面のスクリーンショットや印刷など はおやめください。著作権は、各演者に帰属します。 20.問い合わせ先 1)名古屋大会実行委員会(名古屋大会全般について) e-mail: 74nagoya@jsam.jp 2)登録事務局(名古屋大会事前参加登録について) 株式会社JTB名古屋事業部内〒453-6106 愛知県名古屋市中村区平池町4-60-12 e-mail:74jsam@jtb.com ※マイページのIDとパスワードは一切教えることができません。紛失にはご注意ください。 3)一般口演発表・学生発表に関する問い合わせ (公社)全日本鍼灸学会学術部 e-mail:gakujutu@jsam.jp - 9 - - 10 - - 11 - ※会場移動についての注意事項 2階の第1会場(大ホール)、5階の第2・3会場(小ホール)、6階の展示場(ポスター会場・企業展示) へは、低層階エレベーター(B3~1F、1~8F)をご利用ください。 9階の第4~6会場(大会議室901・902、中会議室903)へは、高層階エレベーター(B3~1F、1F、 8~18F)をご利用いただくか、8階から階段をご利用ください。 認定受付について (公社)全日本鍼灸学会認定委員会 名古屋大会の認定単位登録については、下記の方法で実施します。 Ⅰ.対象と認定単位 対象者は、(公社)全日本鍼灸学会正会員が対象です。 ※入会には審査も含めて1ヵ月程度必要です。 本大会での認定単位は、学術大会参加による14単位です。 Ⅱ.名古屋大会での認定得点登録の方法 1.会場参加の場合 認定デスク(2階大ホールホワイエ)および会場内に認定に関するポスターのQRコードにてログイ ンいただいたフォームから登録ください。 2.アーカイブ配信視聴による参加の場合 配信期間中に視聴画面よりログインいただいたフォームから登録ください。 3.登録の期間と時間 会期中:5月31日(土)9:30 ~ 6月1日(日)16:00 アーカイブ配信の期間中:6月23日(月)~ 7月22日(火) 注意事項:名古屋大会に参加しても、登録忘れの場合は認定単位が付与されません。 参加されましたら早めの登録をお願いします。 フォームに登録された情報と参加費入金情報により認定単位を認めます。 Ⅲ.登録内容 ・会員番号※事前に会員番号をご確認ください。 ・氏名 ・ふりがな Ⅳ.その他 ・ご不明な点は、認定デスクもしくは、メール(nintei@jsam.jp)にてご質問ください。なお、メール の場合はすぐに返信できない場合もありますことをご了承ください。 - 12 - 大会プログラム The Program of The 74th Annual Congress of The Japan Society of Acupuncture and Moxibustion, May 30~June 1, 2025, Nagoya 特別演題の部 講演 大会会頭講演5月31日(土) 10:00~10:50 《第1会場大ホール》 PL 「鍼灸× フェムテック:エビデンスに基づく新たな医療モデル」 演者: 中和医療専門学校清水洋二 座長: 東京呉竹医療専門学校村上哲二 基調講演1 5月31日(土) 15:00~15:50 《第1会場大ホール》 KL1 「女性の健康支援とフェムテック」 演者: 国立成育医療研究センター小宮ひろみ 座長: 中和医療専門学校清水洋二 基調講演2 6月1日(日) 10:00~10:50 《第1会場大ホール》 KL2 「フェムテックとAI」 演者: 関西医療大学菅万希子 座長: 履正社国際スポーツ医療専門学校古田高征 特別講演1 5月31日(土) 14:00~14:50 《第2会場小ホール1》 SL1「医療機器である鍼灸鍼:法規制と安全管理の徹底」 演者: 独立行政法人医薬品医療機器総合機構医療機器ユニット医療機器審査第一部 井田尚子 座長: 東京有明医療大学保健医療学部菅原正秋 特別講演2 6月1日(日) 9:00~9:50 《第1会場大ホール》 SL2「これからのフェムテックと鍼灸マッサージへの期待」 演者: 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野中山健夫 座長: 順天堂大学医学部衛生学・公衆衛生学講座友岡清秀 特別講演3 6月1日(日) 11:00~11:50 《第1会場大ホール》 SL3「フェムテックのミカタ~実践からの学び!」 演者: 近畿大学東洋医学研究所武田卓 座長: 明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科田口玲奈 教育講演1 5月31日(土) 11:00~11:50 《第1会場大ホール》 EL1「「痛みと神経、深掘り解説」:痛みと神経の関連性と先端知見」 演者: 自然科学研究機構生理学研究所鍋倉淳一 座長: 関西医療大学保健医療学部木村研一 教育講演2 6月1日(日) 9:00~9:50 《第3会場小ホール2》 EL2「その症状、鍼灸治療で良いの? 知っておきたい『レッドフラッグ』」 演者: 口之津病院内科・総合診療科寺澤佳洋 座長: 東京呉竹医療専門学校中村真通 - 16 - 教育セミナー1 5月31日(土) 10:30~11:50 《第2会場小ホール1》 「鍼灸の知らない世界~鍼灸最前線からのフェムテックへの挑戦!~」 座長: 東京医科大学病院ペインセンター伊藤樹史 名古屋医専中島紳景 ES1-1「フェムテックと新デルマトーム、そして交感神経デルマトーム」 演者: 東京医科大学病院ペインセンター伊藤樹史 ES1-2「テクノロジーへの新たな挑戦マイナス直流鍼通電の安全性と有効性」 演者: 全日本鍼灸学会近畿支部吉野亮子 教育セミナー2 5月31日(土) 16:00~17:20 《第1会場大ホール》 「みんな気になる?気になる!鍼灸!」 座長: 高橋鍼灸院高橋順子 ES2-1「気になるだけで終わらせない!灸との出会いの機会を増やすために」 演者: 帝京大学助産学専攻科東原亜希子 ES2-2「医療的ケアの必要な子供たちに宿る意思をつないで」 演者: 岐阜県訪問看護ステーション連絡協議会野崎加世子 ES2-3「すべての女性が継続ケアを選択できる世の中に」 演者: にこ助産院大野祐希 ES2-4「地域医療における鍼灸師の役割と多職種連携の可能性」 演者: 一般社団法人長野県針灸師会副会長上條弘明 シンポジウム シンポジウム1 5月31日(土) 10:00~11:50 《第3会場小ホール2》 「日韓台シンポジウム」(国際部主催) 座長: 森ノ宮医療大学増山祥子 College of Krean Medicine, Kyung Hee University Dongwoo Nam SI1-1「The Role of Acupuncture and Moxibustion in Addressing Women's Health Issues in Japan」 Department of Acupuncture and Moxibustion, Graduate school of Health Sciences, Tokyo Ariake University of Medical and Health Sciences Sazu Taniguchi (Yoshimoto) SI1-2「Acupuncture and Moxibustion for Women's Health in Korea: Clinical Applications and Evidence-Based」 Department of Acupuncture and Moxibustion, Kyung Hee University Medical Center, Seoul, Korea Suji Lee SI1-3「Acupuncture on Assisted Reproduction Treatment of Infertility Patient: A case report」 Honor Chairman of Chinese Medical Association of Acupuncture Yu-Chen Lee シンポジウム2 5月31日(土) 15:00~16:20 《第2会場小ホール1》 「スポーツに関わる女性のみかた-選手・AT・鍼灸師のwell-being」 (日本アスレチックトレーニング学会とスポーツ鍼灸委員会合同シンポジウム) 座長: 帝京平成大学池宗佐知子 関西医療大学山口由美子 - 17 - SI2-1「女性アスレティックトレーナー、あはき師として考えるこれから」 らいおんハート鍼灸院福嶋涼子 SI2-2「牧歌的鍼灸院のWell-being」ゆに鍼灸院安東由仁 SI2-3「スポーツ現場における女性鍼灸師・ATの活躍」 早稲田大学ア式蹴球部女子鍼灸師・アスレティックトレーナー森本麻衣子 SI2-4「トレーナーから医師への転換」静岡赤十字病院救急科大岩孝子 シンポジウム3 5月31日(土) 15:30~16:20 《第3会場小ホール2》 「日本と韓国の電子カルテ」(国際部主催) 座長: 関西医療大学若山育郎 SI3-1「日本の鍼灸業界における電子カルテの現状と課題」 埼玉医科大学病院東洋医学診療科村橋昌樹 SI3-2「Overview of the current status of electronic medical records in Korea」 Department of Acupuncture & Moxibustion, College of Korean Medicine, Kyung Hee University Byung-Kwan Seo, K.M.D., Ph.D. シンポジウム4 6月1日(日) 10:30~11:50 《第2会場小ホール1》 「鍼灸と多職種連携が切り拓く泌尿器疾患治療の新展開」 座長: 名古屋医健スポーツ専門学校杉本佳史 SI4-1「女性の泌尿器科疾患に対する鍼灸アプローチの可能性を考える」 小牧市民病院泌尿器科排尿ケアセンター吉川羊子 SI4-2「排尿ケアにおける看護師の役割」 岐阜保健大学看護学部看護学科大学院看護学研究科永坂和子 SI4-3「女性泌尿器科分野における多職種連携を見据えた鍼灸の役割」 烏丸いとう鍼灸院明治東洋医学院専門学校鍼灸学科伊藤千展 シンポジウム5 6月1日(日) 13:00~14:50 《第1会場大ホール》 「支持・緩和医療における鍼灸治療の果たす役割 ー医療連携と専門性の高い鍼灸師の育成に向けてー」(専門医連携推進委員会主催) 座長: 埼玉医科大学医学部山口智 国立がん研究センター中央病院緩和医療科石木寛人 SI5-1「医療連携と専門性の高い鍼灸師の育成にむけて」 島根大学医学部附属病院臨床研究センター大野智 SI5-2「支持・緩和医療における鍼灸治療の果たす役割」 神奈川県立がんセンター東洋医学科板倉英俊 SI5-3「支持・緩和医療における鍼灸治療の果たす役割」 埼玉医科大学病院東洋医学科小内愛 SI5-4「緩和ケアチームとしてのがん患者に対する鍼施術の経験から」 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科増山祥子 SI5-5「国立がん研究センター中央病院の鍼灸治療と普及への取り組み」 国立がん研究センター中央病院緩和医療科堀口葉子 - 18 - シンポジウム6 6月1日(日) 13:30~14:50 《第2会場小ホール1》 「フェムテックによる女性のWell-beingに貢献する鍼灸」 座長: 明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科田口玲奈 関西医療大学保健医療学部はり灸・スポーツトレーナー学科坂口俊二 SI6-1「フェムテックによる女性のWell-beingに貢献する鍼灸」 女性医療クリニックLUNA ネクストステージ関口由紀 SI6-2「鍼灸師がフェムテック分野で活躍するための可能性と戦略」 一般社団法人日本鍼灸協会月岡秀彰 SI6-3「「女性×鍼灸」を軸とした鍼灸・お灸の広報活動」株式会社山正樋口亜紀子 シンポジウム7 6月1日(日) 13:30~14:50 《第3会場小ホール2》 「実技教育(診察・鍼・灸)の客観化」(教育研修部主催) 座長: 北海道鍼灸専門学校二本松明 明治国際医療大学福田文彦 SI7-1「Virtual Realityを用いたOff the Job Trainingの展開」 日本医科大学大学院医学研究科救急医学分野横堀將司 SI7-2「鍼灸実技教育における四診法の科学化」 明治国際医療大学大学院鍼灸学研究科伝統鍼灸学分野和辻直 SI7-3「刺鍼方法の客観化について」東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科谷口博志 ディスカッション ディスカッション1 5月31日(土) 14:00~15:20 《第3会場小ホール2》 「救急・集中医療における鍼灸の可能性を探る」(専門医連携推進委員会主催) 座長: 埼玉医科大学東洋医学科山口智 公益社団法人日本鍼灸師会小林潤一郎 PD1-1「救急・集中医療における鍼灸治療の果たす役割」 秋田大学救急・集中治療医学講座中永士師明 PD1-2「救急・集中医療で回復を促す鍼灸」 熊本赤十字病院総合内科加島雅之 PD1-3「救急・集中医療領域において鍼治療の果たす役割とは?」 岐阜大学第二内科松本淳 ディスカッション2 6月1日(日) 9:00~10:20 《第2会場小ホール1》 「女性の潜在鍼灸師の復帰について問題提起から復帰システムに繋ぐ」 座長: 一般社団法人愛知県鍼灸師会長谷川栄一 高橋鍼灸院高橋順子 PD2-1「潜在看護師の復職支援と継続して働き続けられる取り組み」 公益社団法人愛知県看護協会三浦昌子 PD2-2「歯科衛生士会の復職支援の取り組み」日本歯科衛生士会久保山裕子 PD2-3「女性の潜在鍼灸師の復帰について~はじめの一歩~」 中和医療専門学校半藤花奈 鍼灸イズン松浦朱里 - 19 - 実技セッション 実技セッション5月31日(土) 14:00~16:30 《第6会場中会議室903》 「フェムテック!Well-being!社会が求める鍼灸師に必要なイロハ ~原点回帰と新たなる挑戦~」 座長: 新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科粕谷大智 名古屋医専中島紳景 PS1-1「原点回帰!フェムテック鍼灸を実践する為に必要な医療面接・接遇 フェムテック専門鍼灸への挑戦1:耳鍼編」 新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科高野道代 PS1-2「フェムテック専門鍼灸への挑戦2:円皮鍼編」たにだ鍼灸院谷田保啓 PS1-3「フェムテック専門鍼灸への挑戦3: 通電療法編~新たな鍼陰極断続パルス(陰極単相矩形波)通電療法の実際」 ライフ治療院松森裕司 ワークショップ ワークショップ1 6月1日(日) 9:00~10:20 《第6会場中会議室903》 「日々の臨床を形にする:やさしい抄録作りのステップ」(教育研修部若手分科会主催) 座長: 茨城県立医療大学保健医療学部医科学センター石山すみれ 宝塚医療大学保健医療学部鍼灸学科岡田岬 WS-1「日々の臨床を形にする」 茨城県立医療大学保健医療学部医科学センター石山すみれ ワークショップ2 6月1日(日) 10:30~11:50 《第3会場小ホール2》 「鍼灸安全対策ガイドライン2025年版おもな改訂のポイント」 (臨床情報部安全性委員会主催) 座長: (公社)全日本鍼灸学会臨床情報部安全性委員会菅原正秋 WS2-1「鍼灸安全対策ガイドライン2025年版の主な改訂のポイント」 (公社)全日本鍼灸学会臨床情報部安全性委員会菅原正秋 (公社)全日本鍼灸学会臨床情報部安全性委員会山崎寿也 ワークショップ3 6月1日(日) 10:30~11:50 《第6会場中会議室903》 「学生協働交流シンポジウム・経絡経穴学教育の再構築 -学生参加型で考える、教え方・学び方-」(経絡経穴委員会主催) 座長: 関西医療大学保健医療学部はり灸・スポーツトレーナー学科坂口俊二 WS3「経絡経穴学教育の再構築」 関西医療大学保健医療学部はり灸・スポーツトレーナー学科谷万喜子 東京衛生学園専門学校東洋医療総合学科高橋大希 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科仲村正子 - 20 - 報告 報告6月1日(日) 13:30~14:50 《第6会場中会議室903》 「JLOM部、辞書用語部、JLOM戦略検討委員会合同報告会 ~日本鍼灸の国際対策:若手の方、初めての方に向けて①」 座長: 帝京平成大学久島達也 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科新原寿志 統括: (公社)全日本鍼灸学会会長若山育郎 R1-1「令和6年度の鍼灸を含む日本の伝統医療を取り巻く国際情勢の概説」 明治国際医療大学小野直哉 R1-2「WHO-FIC年次総会TMRG(伝統医学リファレンスグループ)報告」 九州看護福祉大学看護福祉学部鍼灸スポーツ学科田口太郎 R1-3「国際標準化機構(ISO)におけるJLOM部ISO班の活動」 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科新原寿志 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科木村友昭 千葉大学墨田漢方研究所森田智 R1-4「(全日本鍼灸学会) 辞書用語部における活動について」 全日本鍼灸学会辞書用語部伝統医学班光澤弘 全日本鍼灸学会辞書用語部現代医学班脇英彰 市民公開講座 6月1日(日) 15:30~16:20 《第1会場大ホール》 座長: 呉竹学園臨床教育研究センター船水隆広 LP「フェムテックの可能性とは?」フェムテック議連代表衆議院議員野田聖子 ランチョンセミナー ランチョンセミナー1 5月31日(土) 12:00~12:50 《第2会場小ホール1》 「フランス製ASPニードル®が切り拓く新しい鍼治療~BFA (戦場鍼) を皮切りに~」 座長: 函館五稜郭病院緩和ケア科西本武史 演者: かなざわ鍼灸院一般社団法人日本ASPセラピー普及協会竹田太郎 共催: セダテレック日本総代理店(株式会社Transparence) ランチョンセミナー2 5月31日(土)12:00~12:50 《第3会場小ホール2》 「すぐに使える!ソマニクスの臨床活用テクニック」 座長: 常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科沢崎健太 演者: 小又接骨院鍼灸院村坂克之 共催: 東洋レヂン株式会社 - 21 - ランチョンセミナー3 6月1日(日)12:30~13:20 《第2会場小ホール1》 「ドイツ製ダーマローラー®による肌再生鍼の紹介 ~根拠(エビデンス)に基づいた鍼治療~」 座長: みはる矯正・歯科医院関根陽平 演者: 龍華鍼灸院公益社団法人群馬県鍼灸師会田中一行 共催: ダーマローラージャパン(株式会社Transparence) ランチョンセミナー4 6月1日(日)12:30~13:20 《第3会場小ホール2》 「お灸でつながる私たち~お茶を飲むように毎日お灸をしよう~」 「セルフケアから養生(YOJO)へ~治すから治すからだを作るにシフトする~」 座長: せんねん灸お灸ルーム小泉洋一 演者: 愛知お灸女子会おきゅう草枕大図光 明治国際医療大学鍼灸学部伊藤和憲 共催: セネファ株式会社 式典・総会 開会式5月31日(土) 9:30~10:00 《第1会場大ホール》 総会5月31日(土)13:00~13:50 《第1会場大ホール》 高木賞表彰式5月31日(土)14:00~15:00 《第1会場大ホール》 学生発表表彰式6月1日(日)12:00~12:30 《第1会場大ホール》 - 22 - 一般演題の部 演題番号の見方 演題番号は、「通し番号-発表曜日-発表区分-発表時間」の順に並んでいます。 発表曜日:Sat→5月31日(土)、Sun→6月1日(日) 発表区分:P1、P2→ポスター発表、O1、O2→口演発表、GP→学生発表 -第1日目- ポスター発表「鍼灸技術とその教育」5月31日(土) 10:00-11:00 座長:新原寿志 伊藤和真 001-Sat-P1-10:00 鍼灸師養成施設教員の教育及び臨床における押手に関する意識調査 東京医療福祉専門学校教員養成科教員養成課程西村果純 002-Sat-P1-10:12 鍼手技を構成する鍼操作技術の調査 名古屋医専鍼灸学科伊藤和真 003-Sat-P1-10:24 衛生的で安全性の高いクリーンニードルテクニックの特許開発 全国出張はりきゅう院平岡光一 004-Sat-P1-10:36 灸実技教育における指導方法の検討 東京医療福祉専門学校教員養成科教員養成課程青木沙耶 005-Sat-P1-10:48 鍼灸学生の身体接触抵抗感と東洋医学に対する信用(第二報) 明治国際医療大学大学院鍼灸学研究科山田崚太 ポスター発表「診察技法とその教育」5月31日(土) 11:00-12:00 座長:西村健作 林健太朗 006-Sat-P1-11:00 超音波診断装置による脈診部位の橈骨動脈の形態計測に関する検討 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科宮脇太朗 007-Sat-P1-11:12 脈診訓練法の開発(第26報) 学校法人花田学園日本鍼灸理療専門学校東垣貴宏 008-Sat-P1-11:24 運動器エコーおよびエコーガイド下刺鍼の授業への導入【その1】 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科浦田繁 009-Sat-P1-11:36 運動器エコーおよびエコーガイド下刺鍼の授業への導入【その2】 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科光野諒亮 010-Sat-P1-11:48 大宮呉竹医療専門学校における新たなVOD授業導入の試み 大宮呉竹医療専門学校鍼灸科・鍼灸マッサージ科坂本辰徳 - 23 - ポスター発表「安全刺鍼」5月31日(土) 15:00-16:00 座長:仲村正子 小川一 011-Sat-P1-15:00 頚部経穴の内部の可視化及び3Dモデルの製作(第3報) 日本鍼灸理療専門学校小川一 012-Sat-P1-15:12 エコー装置による後頭下筋の安全刺鍼深度について 日本鍼灸理療専門学校吉田麻衣子 013-Sat-P1-15:24 超音波画像診断装置を用いた後頭下筋群への安全刺入深度の検討 名古屋トリガーポイント鍼灸院高橋健太 014-Sat-P1-15:36 超音波画像装置を用いた鍼通電療法における深層筋収縮動態の観察 名古屋トリガーポイント鍼灸院前田寛樹 015-Sat-P1-15:48 衝陽穴付近の血管エコー画像と消化器症状の関連性の探索的研究 東京医療福祉専門学校教員養成科教員養成課程森川賢一 ポスター発表「安全対策」5月31日(土) 16:00-17:00 座長:菅原正秋 恒松美香子 016-Sat-P1-16:00 刺鍼深度に対する目標値と実際の深さの差 常葉大学浜松キャンパス健康プロデュース学部健康鍼灸学科福世泰史 017-Sat-P1-16:12 脳梗塞リハビリセンターでの鍼灸治療の安全性対策について 脳梗塞リハビリセンター石上邦男 018-Sat-P1-16:24 鍼灸師養成学校における気胸事故予防教育についての現状調査 帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科恒松美香子 019-Sat-P1-16:36 リスクマネジメント研修会受講者アンケート調査報告第2報 公益社団法人日本鍼灸師会研修委員会今村頌平 020-Sat-P1-16:48 ステロイド服用患者における鍼灸関連有害事象の発生率 埼玉医科大学病院東洋医学科村橋昌樹 ポスター発表「社会鍼灸」5月31日(土) 10:00-11:00 座長:今井賢治 今村頌平 021-Sat-P2-10:00 あはき法12条の解釈について 順天堂大学大学院医学研究科医史学研究室柴田泰治 022-Sat-P2-10:12 文献調査からみたFemtechとしての企業内鍼治療の取り組み状況 関西医療大学保健医療研究科博士後期課程三浦大貴 023-Sat-P2-10:24 なぜ鍼灸治療を受け続けるのか 愛媛県立中央病院鍼灸治療室植嶋萌恵 024-Sat-P2-10:36 某鉄鋼メーカー従業員に対する経穴講座の受動・主体参加に関して 大同特殊鋼株式会社星崎診療所平瀬詠子 025-Sat-P2-10:48 鍼灸施術に対する満足度・受療頻度(回数) の統計学的調査 中央大学理工学部渡邉真弓 - 24 - ポスター発表「健康」5月31日(土) 11:00-12:00 座長:戸村多郎 宮嵜潤二 026-Sat-P2-11:00 心身の状態を感じる能力「内受容感覚」が未病評価に及ぼす影響 関西医療大学大学院保健医療学研究科保健医療学専攻尾下功 027-Sat-P2-11:12 コーヒー摂取頻度と胃熱との関連:横断研究 大阪大学医学系研究科宮嵜潤二 028-Sat-P2-11:24 鍼灸臨床へのAI導入における意義と課題の質的検討 ここちめいど岩澤拓也 029-Sat-P2-11:36 未病治の養生目標が健康状態に与える影響 関西医療大学大学院戸村多郎 030-Sat-P2-11:48 体重の周期的変化に対する鍼灸治療効果 蛍東洋医学研究所大塚信之 ポスター発表「伝統調査」5月31日(土) 15:00-15:48 座長:金子聡一郎 奈良上眞 031-Sat-P2-15:00 葛飾北斎画にみる灸治 明治東洋医学院専門学校教員養成学科矢島道子 032-Sat-P2-15:12 3Dスキャンを活用した「銅人形」についての調査報告 北里大学薬学部附属東洋医学総合研究所加畑聡子 033-Sat-P2-15:24 日本における明治・大正期の鍼通電史について 岡山大学医学部疫学・衛生学分野松木宣嘉 034-Sat-P3-15:36 昭和前期の呉竹学園における学生募集 横浜呉竹医療専門学校奥津貴子 ポスター発表「文献調査」5月31日(土) 15:48-17:00 座長:山見宝 和辻直 035-Sat-P2-15:48 上海近代中医教育機関の教育課程の変遷に関する調査研究 大阪医療技術学園専門学校鍼灸美容学科奈良上眞 036-Sat-P2-16:00 日中の教科書記載の蔵象 木場鍼灸院木場由衣登 037-Sat-P2-16:12 エビデンスに基づく隠白(SP1)の主治症の検討 帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科渡邉大祐 038-Sat-P2-16:24 経絡治療で臨床化されなかった是動病、所生病 日本鍼灸研究会中川俊之 039-Sat-P2-16:36 鍼灸資生経における難聴の経絡使用率 錦はり佐藤想一朗 040-Sat-P2-16:48 初学者が復元明堂経主治条文を臨床に生かすための方法 愛媛県立中央病院漢方内科鍼灸治療室山見宝 - 25 - 一般演題「ペイン・緩和領域」5月31日(土) 11:00-12:00 座長:武田真輝 加納舞 041-Sat-O1-11:00 動作時痛に伴う皺眉筋活動を指標とした痛みの客観的評価 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科山田隆寛 042-Sat-O1-11:12 感染性脊椎炎の疼痛管理に鍼治療が有用であった一例 福島県立医科大学会津医療センター鍼灸研修工藤慎大 043-Sat-O1-11:24 帯状疱疹後神経痛に対する鍼治療の1 症例 東京有明医療大学附属鍼灸センター加持綾子 044-Sat-O1-11:36 帯状疱疹により痛みの破局化を来した患者に対する鍼治療の1症例 福島県立医科大学会津医療センター鍼灸研修宮田紫緒里 045-Sat-O1-11:48 終末期のがん患者に対する鍼灸師の介入 市立砺波総合病院緩和ケア科武田真輝 英語発表「英語」5月31日(土) 14:00-15:00 座長:山下仁 石崎直人 046-Sat-O1-14:00 Can acupuncture needle hygiene be maintained outdoors? Teikyo Heisei University, Faculty of Health Care, Department of Acupuncture and Moxibustion Tsunematsu Mikako 047-Sat-O1-14:12 Acupuncture for Chronic primary orofacial pain Graduate school of Meiji University of Integrated Medicine Hiraiwa Shinya 048-Sat-O1-14:24 Effect of acupuncture stimulation to the facial region Teikyo Heisei University, Faculty of Health Care, Department of Acupuncture and Moxibustion Nakamura Suguru 049-Sat-O1-14:36 Acupuncture survey for interprofessional collaboration Institute of Oriental Medicine, Tokyo Women's Medical University, School of Medicine Takahashi Kaito 050-Sat-O1-14:48 Acupuncture for Facial Discomfort in Facial Palsy Rehabilitation Center, The University of Tokyo Hospital Hayashi Kentaro 一般演題「心療内科領域」5月31日(土) 15:00-15:48 座長:米倉まな 玉井秀明 051-Sat-O1-15:00 双極II型障害患者の中等度の抑うつ状態に対する鍼治療の1症例 大慈松浦鍼灸院松浦知史 052-Sat-O1-15:12 ストレス関連神経生理学的バイオマーカーの探索 帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科玉井秀明 053-Sat-O1-15:24 鍼灸師のメンタルヘルスリテラシーに関する調査研究 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科松浦悠人 054-Sat-O1-15:36 鍼灸院におけるうつと不安症状を有する患者の実態調査(第4報) ここちめいど米倉まな - 26 - 一般演題「睡眠」5月31日(土) 15:48-17:00 座長:鍋田智之 脇英彰 055-Sat-O1-15:48 背部痛、不眠に鍼灸、漢方併用が有効だった一症例 北里大学北里研究所病院漢方鍼灸治療センター伊東秀憲 056-Sat-O1-16:00 鍼治療と睡眠衛生指導により不眠と抑うつが改善した一症例 セドナ整骨院・鍼灸院出口友弘 057-Sat-O1-16:12 自律神経失調症に鍼治療と不眠の低強度認知行動療法を試みた症例 帝京池袋鍼灸院・鍼灸臨床センター滝原那生 058-Sat-O1-16:24 鍼灸院における不眠症患者と不定愁訴の実態調査 東洋医学研究所®グループ秋田壽紀 059-Sat-O1-16:36 足底への非侵襲型接触刺激が睡眠に与える影響 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科堀川奈央 060-Sat-O1-16:48 頭皮鍼通電刺激が不眠症状自覚者の睡眠に及ぼす影響 東京有明医療大学大学院保健医療学研究科豊田知俊 一般演題「well-being」5月31日(土) 11:00-12:00 座長:坂口俊二 小井土善彦 061-Sat-O2-11:00 更年期女性の諸症状に対する鍼灸治療の1症例 せりえ鍼灸室小井土善彦 062-Sat-O2-11:12 服薬後も続く更年期症状に対して鍼灸・指圧が奏功した一症例 ここちめいど大杉美奈 063-Sat-O2-11:24 機能性月経困難症に対する鍼治療の一症例 東洋医学研究所® 橋本高史 064-Sat-O2-11:36 月経痛と心理・認知的要因の関連性について 明治国際医療大学鍼灸学研究科遠藤愛 065-Sat-O2-11:48 月経随伴症状に対する鍼灸及びマッサージの有効性 筑波技術大学大学院技術科学研究科保健科学専攻秋吉桃果 一般演題「産科領域」5月31日(土) 14:00-15:00 座長:辻内敬子 田口玲奈 066-Sat-O2-14:00 鍼灸を辞めた後も採卵成績の向上が認められた一症例 医療法人社団厚仁会厚仁病院松田尚香 067-Sat-O2-14:12 不妊治療における補完代替医療(CAM)の利用実態に関する調査 宇都宮鍼灸良導絡院宇都宮泰子 068-Sat-O2-14:24 反復着床不全患者に対する鍼灸治療の効果 はる鍼灸治療院田邊美晴 069-Sat-O2-14:36 透熱灸と温灸による不妊治療の効果の比較に関する報告 柿内鍼灸療院柿内孝弘 - 27 - 070-Sat-O2-14:48 つわりに対しての鍼灸実態調査 レディース鍼灸院HIROYULARI 高橋靜佳 一般演題「小児」5月31日(土)15:00-16:00 座長:尾﨑朋文 藤田洋輔 071-Sat-O2-15:00 薬物療法で奏功しなかった夜尿症に対する小児はり灸治療の1症例 漢方やさしい小児はりの森山口あやこ 072-Sat-O2-15:12 スミス・マギニス症候群に対する鍼灸介入の考察 からんこえ鍼灸院水口加奈子 073-Sat-O2-15:24 小児の筋ジストロフィーに対する小児はり灸治療の1症例 漢方やさしい小児はりの森森野弘高 074-Sat-O2-15:36 同業種との連携、傾聴により適切な医療機関へと繋がった一症例 ここちめいど井上悦子 075-Sat-O2-15:48 起立性調節障害に対する鍼灸治療の一症例 東京有明医療大学附属鍼灸センター曽田真由美 一般演題「消化器領域」5月31日(土)16:00-17:00 座長:松本淳 岡田岬 076-Sat-O2-16:00 機能性ディスペプシアが鍼灸治療により改善を認めた側弯症の1例 プライベート鍼灸サロン円窓-ENSO- 堀内玲子 077-Sat-O2-16:12 機能性消化器疾患が疑われる一症例への鍼灸治療 東京有明医療大学附属鍼灸センター和田理智 078-Sat-O2-16:24 過敏性腸症候群の慢性的な下痢症状に対する鍼灸治療の1症例 東京有明医療大学附属鍼灸センター高橋万紀夫 079-Sat-O2-16:36 潰瘍性大腸炎患者に対する鍼灸治療の1症例 ここちめいど杉山英照 080-Sat-O2-16:48 オピオイド誘発便秘(OIC)に対する灸療法:ケースシリーズ 香川大学医学部公衆衛生学神田かなえ -第2日目- ポスター発表「医療連携ーⅠ」6月1日(日) 10:12-11:12 座長:鈴木雅雄 高山美歩 081-Sun-P1-10:12 不整脈・胸苦・心肥大が灸と漢方で改善した一症例 愛媛県立中央病院漢方内科鍼灸治療室阿部里枝子 082-Sun-P1-10:24 訪問鍼灸における瞬時心拍数による評価 大阪公立大学都市健康・スポーツ研究センター山下和彦 - 28 - 083-Sun-P1-10:36 ALSの患者さんのケアを通して経験した多職種連携と鍼灸師の役割 ゆう鍼灸院中野侑子 084-Sun-P1-10:48 医師と鍼灸師の連携が生む在宅医療の新しい可能性 在宅支援クリニック彩秋山貴志 085-Sun-P1-11:00 医学的に説明困難な症状(MUS) 患者への鍼灸治療の1症例 千鍼灸整骨院江河亮太 ポスター発表「医療連携ーⅡ」6月1日(日) 11:12-12:00 座長:三瓶真一 長岡哲輝 086-Sun-P1-11:12 圧迫骨折を疑った11症例の検討 鍼灸長岡治療院長岡哲輝 087-Sun-P1-11:24 開業鍼灸師(院)における医療連携の実態についての調査 一般社団法人福島県鍼灸師会三瓶真一 088-Sun-P1-11:36 入院患者に対する鍼治療の実態調査とその分析 嶺井第一病院リハビリテーション科屋部加奈子 089-Sun-P1-11:48 病院スタッフへの鍼治療によるWell-beingへの貢献 熊本赤十字病院三谷直哉 ポスター発表「灸刺激」6月1日(日) 13:00-13:48 座長:松本毅 冨田賢一 090-Sun-P1-13:00 成熟期女性の冷えに対する経穴温熱刺激レッグウォーマーの効果 関西医療大学保健医療学部はり灸・スポーツトレーナー学科坂口俊二 091-Sun-P1-13:12 安全で効果的な台座灸施灸に向けて 関西医療大学大学院保健医療学研究科西野龍一 092-Sun-P1-13:24 モグサおよびモグサ燃焼時における煙の香気成分量の比較2 千葉大学医学部附属病院東洋医学センター柏の葉鍼灸院松本毅 093-Sun-P1-13:36 人工皮膚を使用した直接灸・間接灸施灸時温度測定の有用性の検討 千葉大学柏の葉鍼灸院後藤唯 ポスター発表「鍼の基礎と痛み」6月1日(日) 13:48-14:48 座長:角谷英治 皆川陽一 094-Sun-P1-13:48 マウス頭部鍼刺激による小脳タウリントランスポーター発現の検証 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科松岡慶弥 095-Sun-P1-14:00 健康成人の作業記憶に対する鍼通電刺激の影響 明治国際医療大学鍼灸学講座濱野温子 096-Sun-P1-14:12 鍼鎮痛効果を予測する因子について 明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科大場美穂 097-Sun-P1-14:24 痛みを伴う肩こりの特性 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科高梨知揚 - 29 - 098-Sun-P1-14:36 女性の破局的思考と不安の程度が鍼通電の鎮痛効果に与える影響 明治国際医療大学鍼灸学研究科大井康宏 ポスター発表「美容」6月1日(日) 14:48-15:36 座長:高野道代 中村優 099-Sun-P1-14:48 肌分析機を利用した「たるみ」に対する美容鍼の1例 BODYREMAKER 鍼灸治療院種市敢太 100-Sun-P1-15:00 顔面部への刺鍼による心理的ストレスへの効果 鍼灸院ラピススリー岸百華 101-Sun-P1-15:12 美容学校での東洋医学講義が学生に与えた学びに関する質的研究 帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科中村優 102-Sun-P1-15:24 耳介刺激による顔面部の自覚的・定量的な形状変化と心身への影響 新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科高野道代 ポスター発表「教育」6月1日(日) 10:12-11:12 座長:櫻庭陽 河井正隆 103-Sun-P2-10:12 鍼灸学系大学教育モデル・コア・カリキュラムの学修目標の検証 明治国際医療大学河井正隆 104-Sun-P2-10:24 ICT教育時代の「鍼灸教育」学校図書室その在り方の模索と考察 東京医療福祉専門学校谷直樹 105-Sun-P2-10:36 視覚障害を有する鍼灸マッサージ師と理学療法士のリカレント教育 筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター櫻庭陽 106-Sun-P2-10:48 国家試験の経絡経穴概論における穴・要穴の出題傾向について 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科高木健 107-Sun-P2-11:00 産学連携活動とその成果物を利用した学習効果測定 整骨鍼灸漢方薬膳福堀口恭弘 ポスター発表「運動器ー基礎」6月1日(日) 11:12-12:00 座長:高橋護 二本松明 108-Sun-P2-11:12 合谷穴部への通電刺激は運動神経を直接興奮させる 北海道鍼灸専門学校二本松明 109-Sun-P2-11:24 鍼通電刺激が慢性足関節不安定性の姿勢安定化時間に及ぼす影響 東京有明医療大学大学院保健医療学研究科寄本寛人 110-Sun-P2-11:36 『こむら返り』下腿三頭筋の筋緊張に対する太衝穴へのアプローチ 関西医療大学大学院保健医療学研究科前坂宣明 111-Sun-P2-11:48 鍼刺激による前十字靭帯強度への影響 関西医療大学保健医療学部山口由美子 - 30 - ポスター発表「活動報告」6月1日(日) 13:00-14:00 座長:仲嶋隆史 村橋昌樹 112-Sun-P2-13:00 令和6年能登半島地震および豪雨災害における鍼灸支援報告 はり灸レンジャー森川真二 113-Sun-P2-13:12 医療機関内における訪問鍼灸についての活動報告 特定医療法人谷田会谷田病院福田太貴 114-Sun-P2-13:24 新潟医療福祉大学附属鍼灸センターにおける新規患者の動向 新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科金子聡一郎 115-Sun-P2-13:36 東京有明医療大学附属鍼灸センターにおける臨床教育 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科水出靖 116-Sun-P2-13:48 大学病院勤務鍼灸師の活動報告 東海大学医学部付属病院東洋医学科山中一星 ポスター発表「実態調査1」6月1日(日) 14:00-15:00 座長:大川祐世 鈴木聡 117-Sun-P2-14:00 WHO国際統計分類に基づいた鍼灸臨床データ収集の基盤整備第四報 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科鈴木聡 118-Sun-P2-14:12 気象の変化と不定愁訴について 東洋医学研究所®グループ中村覚 119-Sun-P2-14:24 鍼灸院における新患の動態調査 かどむら鍼灸院角村幸治 120-Sun-P2-14:36 鍼灸師のセクシュアル・マイノリティに関する認識の実態 ここちめいど外松慶土 121-Sun-P2-14:48 五大医学誌に採択された鍼臨床研究の現状と意義 筑波大学理療科教員養成施設沖中美世乃 ポスター発表「実態調査2」6月1日(日) 15:00-16:00 座長:宮本成生 江川雅人 122-Sun-P2-15:00 全日本鍼灸学会宮城大会に参加した本学学生の意識調査 新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科江川雅人 123-Sun-P2-15:12 インターネットコンテンツに見る鍼灸の認識 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科平松燿 124-Sun-P2-15:24 COVID-19が鍼灸院の口コミ件数に与えた影響 仙台赤門短期大学鍼灸手技療法学科宮本成生 125-Sun-P2-15:36 あんまマッサージ指圧・はり・きゅう業の実態に関する調査 順天堂大学医学部衛生学・公衆衛生学講座友岡清秀 126-Sun-P2-15:48 中核病院の鍼灸外来を受診した痛み患者の実態調査 市立砺波総合病院卒後臨床研修生土方彩衣 - 31 - 一般演題「顔面部の疼痛」6月1日(日) 9:00-10:12 座長:山口智 有働幸紘 127-Sun-O1-9:00 プロバスケット選手に対する矯正歯科診療と鍼灸治療の統合 みはる矯正・歯科医院関根陽平 128-Sun-O1-9:12 下顎智歯抜歯後に生じた知覚神経障害に対する鍼灸治療の1症例 かなざわ鍼灸院竹田太郎 129-Sun-O1-9:24 歯科・口腔外科手術後の三叉神経ニューロパチーに対する鍼灸治療 医療法人社団明徳会福岡歯科鍼灸マッサージ治療院RIM 荻野杏理 130-Sun-O1-9:36 三叉神経知覚異常患者のために自覚症状アンケートを作成した経験 紗楽鍼灸院高橋沙世 131-Sun-O1-9:48 微小血管減圧術後の持続性疼痛に鍼治療が有効であった一症例 名古屋トリガーポイント鍼灸院倉橋千夏子 132-Sun-O1-10:00 持続性特発性顔面痛と診断された患者に対する鍼治療(第2報) 大阪大学歯学部附属病院歯科麻酔科酒井浩司 一般演題「耳鼻科領域」6月1日(日) 10:12-11:12 座長:高梨知揚 井畑真太朗 133-Sun-O1-10:12 鍼医学的体性感覚刺激や耳鳴反応点を用いた耳鳴治療の基礎研究 明治国際医療大学鍼灸学部鶴浩幸 134-Sun-O1-10:24 突発性難聴に鍼治療と鼓室内ステロイド療法が有効であった1症例 埼玉医科大学病院東洋医学科井畑真太朗 135-Sun-O1-10:36 薬剤不応の原因不明耳痛に弁証論治による鍼治療が奏功した1例 福島県立医科大学会津医療センター鍼灸研修山田雄介 136-Sun-O1-10:48 耳介への温熱刺激が症状を改善した耳鳴・側頭部不快感の一症例 筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター青木香織 137-Sun-O1-11:00 持続性知覚性姿勢誘発めまいに対する鍼灸治療の1症例 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科桐本暢子 一般演題「顔面部の愁訴」6月1日(日) 11:12-12:00 座長:関真亮 福田晋平 138-Sun-O1-11:12 透析患者の難治性舌痛症に対して鍼灸治療が奏功した1例 北里大学研究所病院漢方鍼灸治療センター塚本シュ 139-Sun-O1-11:24 放射線療法後の咽頭乾燥感に漢方医学的治療が奏功した1症例 埼玉医科大学病院東洋医学科堀部豪 140-Sun-O1-11:36 頭部外傷既往がある在宅高齢患者の嚥下障害に対する鍼治療症例 ティートリー成城鍼灸院瀧澤雄一郎 141-Sun-O1-11:48 COVID-19感染後の嗅覚及び味覚障害に対する症例 ながた接骨院別府浩士 - 32 - 一般演題「顔面神経麻痺」6月1日(日) 13:00-14:00 座長:堀部豪 高橋海人 142-Sun-O1-13:00 完全脱神経をきたしたRamsay Hunt症候群に鍼治療を行った1症例 鍼灸サロンZouzou 会沢いずみ 143-Sun-O1-13:12 電気温灸器による温熱刺激が効果的であったHunt症候群の一症例 筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター硯川裕子 144-Sun-O1-13:24 顎骨の外科的矯正治療によって生じた顔面神経麻痺に対する鍼治療 大阪大学歯学部附属病院歯科麻酔科山本伸一朗 145-Sun-O1-13:36 発症後3ヶ月以内の完全顔面神経麻痺に対する鍼灸治療の効果 まり鍼灸院薛斯菁 146-Sun-O1-13:48 末梢性完全顔面神経麻痺に対する鍼灸治療の効果 まり鍼灸院畠山楓華 一般演題「頭痛」6月1日(日) 14:00-14:48 座長:菊池友和 石山すみれ 147-Sun-O1-14:00 コロナ後遺症による頭痛治療中に薬物乱用頭痛を発症した1症例 東北大学大学院医学系研究科地域総合診療医育成寄附講座石井祐三 148-Sun-O1-14:12 脊髄損傷患者に好発する慢性頭痛に鍼灸が効果的だった1例 鍼灸院Lapis Three 松村佳樹 149-Sun-O1-14:24 身体症状にアプローチした結果症状が改善傾向を示した1症例 ここちめいど田中隆一 150-Sun-O1-14:36 片頭痛の間欠期のQOLに対する鍼治療効果 日本鍼灸理療専門学校菊池友知 一般演題「皮膚科・眼科領域」6月1日(日) 14:48-16:00 座長:中村真理 鶴浩幸 151-Sun-O1-14:48 アトピー性皮膚炎のかゆみに対する鍼灸治療 鍼灸サロンじゅん太田和志 152-Sun-O1-15:00 円形脱毛症患者に対し全身への鍼灸治療が奏功した一症例 ここちめいど屋由美 153-Sun-O1-15:12 薬物療法で難渋した多形慢性痒疹に対する鍼治療の一症例 東京大学医学部附属病院リハビリテーション部母袋信太郎 154-Sun-O1-15:24 経過観察中の緑内障視野狭窄が眼窩内刺鍼で改善した1症例 鍼灸アキュミット大谷倫恵 155-Sun-O1-15:36 正常眼圧緑内障(NTG)による視神経障害に対する鍼灸治療 東京大学医学部付属病院リハビリテーション部前原將人 156-Sun-O1-15:48 太陽穴の円皮鍼セルフケアが中高年の眼精疲労に及ぼす影響 関西医療学園専門学校中井一彦 - 33 - 一般演題「自律神経」6月1日(日) 16:00-17:00 座長:谷口博志 篠原大侑 157-Sun-O1-16:00 鍼刺激が呼吸数に及ぼす影響とHRV解析との関係 帝京平成大学大学院健康科学研究科廣井寿美 158-Sun-O1-16:12 慢性便秘症に対する鍼通電刺激の影響 東京有明医療大学附属鍼灸センター小田木悟 159-Sun-O1-16:24 鍼灸学研究を視野に入れた空腹時と摂食時の胃機能の評価 帝京平成大学健康科学研究科長嶺澄佳 160-Sun-O1-16:36 1型糖尿病の夜間睡眠時血糖コントロールに対する鍼治療の検討 東洋医学研究所®グループ二葉鍼灸院山田篤 161-Sun-O1-16:48 多芯円皮鍼による局所皮膚血流反応 帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科脇英彰 一般演題「運動器」6月1日(日) 9:00-10:00 座長:水出靖 小糸康治 162-Sun-O2-9:00 橈骨骨折後の手関節尺側の疼痛に鍼治療が有効であった1症例 筑波大学理療科教員養成施設當麻知砂子 163-Sun-O2-9:12 左肩関節周囲炎後の結帯動作獲得に鍼灸治療が有効であった一症例 レディース鍼灸院HIROYULARI 重安香梨 164-Sun-O2-9:24 変形性肩関節症による運動制限に対する治療効果 筑波技術大学大学院技術科学研究科保健科学専攻鍼灸学コース松村一輝 165-Sun-O2-9:36 特発性側弯症に伴う症状に対する鍼治療の試み 東京医療福祉専門学校教員養成科臨床専攻課程矢部敬史 166-Sun-O2-9:48 股関節痛に対する鍼治療の1症例 東洋医学研究所グループにしだ鍼灸院西田修 一般演題「スポーツ・症例」6月1日(日) 10:00-11:00 座長:近藤宏 藤本英樹 167-Sun-O2-10:00 筋腱移行部付近のトリガーポイントに軽微な鍼刺激で奏効した症例 スカプラ鍼灸整骨院グループ東大和市駅前はり灸整骨院松多利彦 168-Sun-O2-10:12 野球選手の肘頭疲労骨折に対する鍼治療の一症例 東京有明医療大学大学院保健医療学研究科石井輝 169-Sun-O2-10:24 肉ばなれの痛みは鍼治療直後に軽減するか 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科藤本英樹 170-Sun-O2-10:36 女子陸上選手に対する腰痛に鍼施術とマッサージを併用した1症例 京都府立盲学校高等部理療科大渕真理子 171-Sun-O2-10:48 マスターズ陸上選手に対する鍼施術の1症例 帝京平成大学健康科学研究科鍼灸学専攻梶葉しのぶ - 34 - 一般演題「スポーツ・活動報告」6月1日(日) 11:00-12:00 座長:金子泰久 泉重樹 172-Sun-O2-11:00 新潟医療福祉大学における鍼灸アスリートサポート(第1報) 新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科木村啓作 173-Sun-O2-11:12 新潟医療福祉大学における鍼灸アスリートサポート(第2報) 新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科村越祐介 174-Sun-O2-11:24 2024パリオリンピック大会アスレティックトレーナー帯同報告 法政大学スポーツ健康学部泉重樹 175-Sun-O2-11:36 大学生eスポーツ競技者の身体愁訴に関する調査 履正社国際医療スポーツ専門学校古田高征 176-Sun-O2-11:48 睡眠と心理的状態が認知反応時間に与える影響 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科鍋田智之 一般演題「腰痛」6月1日(日) 13:00-14:12 座長:粕谷大智 北川洋志 177-Sun-O2-13:00 慢性腰痛者に対するトリガーポイントへの刺激方法の検討 関西医療大学保健医療学部はり灸・スポーツトレーナー学科北川洋志 178-Sun-O2-13:12 ASPニードルによる戦場鍼が著効した難治性腰痛の一症例 松浦鍼灸院松浦哲也 179-Sun-O2-13:24 トリガーポイント鍼治療により急性腰痛が改善した一症例 名古屋トリガーポイント鍼灸院後藤繁宗 180-Sun-O2-13:36 腰痛患者の自宅施灸手段の違いによる主観的改善度の比較 愛媛県立中央病院漢方内科鍼灸治療室平林里織 181-Sun-O2-13:48 腰痛の鍼治療例における運動療法併用の効果についての検討 筑波技術大学保健科学部保健学科松田えりか 182-Sun-O2-14:00 妊娠に伴い腰痛が悪化した症例に対する鍼灸治療 せりえ鍼灸室辻内敬子 一般演題「腰下肢痛」6月1日(日) 14:12-15:12 座長:井上基浩 吉田成仁 183-Sun-O2-14:12 混合型腰部脊柱管狭窄症に鍼灸治療が有効であった一症例 北里研究所病院漢方鍼灸治療センター鍼灸科富澤麻美 184-Sun-O2-14:24 痛覚変調性疼痛の関与が疑われた腰部脊柱管狭窄症の鍼治療の1例 東京有明医療大学附属鍼灸センター藤澤由美子 185-Sun-O2-14:36 歩行困難に対して鍼治療とリハビリテーションを併用した一症例 筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター米丸蓮音 186-Sun-O2-14:48 S1神経根症において、超音波ガイド下鍼パルスとPRF併用の1症例 合同会社青山かがやき鍼灸整骨院西村健作 - 35 - 187-Sun-O2-15:00 斜膝窩靱帯へのエコー下鍼治療 一鍼灸院瀧本一 一般演題「泌尿器科領域」6月1日(日) 15:12-16:00 座長:北小路博司 伊藤千展 188-Sun-O2-15:12 夜間頻尿にセルフ温灸が有効であった一症例 九州医療科学大学社会福祉学部スポーツ健康福祉学科冨田賢一 189-Sun-O2-15:24 頻尿と浮腫改善が家族負担軽減に繋がった一症例 ここちめいど飯田通容 190-Sun-O2-15:36 頻尿と不眠を訴えた患者に対する鍼の一症例 常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科関真亮 191-Sun-O2-15:48 難治性の陰部神経領域の痛みに対する鍼治療の一症例 東京大学医学部附属病院リハビリテーション部小糸康治 一般演題「神経内科領域」6月1日(日) 16:00-17:00 座長:伊藤剛 谷万喜子 192-Sun-O2-16:00 下肢に続いて頸部に症状が出現したジストニア患者への鍼治療 スピカ鍼灸・マッサージ院高橋護 193-Sun-O2-16:12 頸椎症性筋萎縮症が疑われた病態に対する鍼治療の1症例 東京有明医療大学附属鍼灸センター西本有希 194-Sun-O2-16:24 筋性斜頸の術後から続く左半身の自律神経症状への鍼治療の一例 ここちめいど加藤久仁明 195-Sun-O2-16:36 パーキンソン病の嚥下障害に対する円皮鍼等のセルフケアの効果 新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科福田晋平 196-Sun-O2-16:48 パーキンソン病の筋固縮に対し経絡経筋治療が有効であった1症例 北里大学北里研究所病院漢方鍼灸治療センター伊藤剛 -学生発表- 学生発表「医療安全と医療リテラシー」5月31日(土) 10:00-10:50 座長:岡田岬 197-Sat-GP-10:00 鍼の実技中に被験者が失神した経験 常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科村澤樹 198-Sat-GP-10:10 大学鍼灸学科学生の鍼灸安全性に関する認識調査 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科須貝純也 199-Sat-GP-10:20 声掛けの有用性の検証 大阪行岡医療専門学校長柄校鍼灸科南部咲希 200-Sat-GP-10:30 卒前はり師の未来への道しるべ 帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科大澤佑斗 - 36 - 201-Sat-GP-10:40 鍼灸学系大学生のEBMの認識に関する質問調査 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科中村貴翔 学生発表「調査と活動」5月31日(土) 10:50-12:00 座長:恒松美香子 202-Sat-GP-10:50 視力回復に対する鍼灸の研究について 常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科佐藤里佳 203-Sat-GP-11:00 日本マンガにおける鍼灸関連描写についての調査研究 森ノ宮医療大学鍼灸学科木村寧乃 204-Sat-GP-11:10 性同一性障害当事者の悩みに鍼灸師はどこまで寄り添えるのか 専門学校沖縄統合医療学院鍼灸学科山本ひとみ 205-Sat-GP-11:20 耳鍼としてマイクロコーンを用いた美容鍼灸サークルの新しい挑戦 常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科夏目大輝 206-Sat-GP-11:30 学生ボランティアによるマイクロコーンを用いたケア活動報告 常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科鈴木凜也 207-Sat-GP-11:40 鍼灸の啓発活動の必要性とサークル活動継続の意義に関する考察 常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科酒井文菜 208-Sat-GP-11:50 美容鍼灸サークルにおける検定試験導入の試み 常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科増田百花 学生発表「睡眠」5月31日(土) 15:00-15:30 座長:加納舞 209-Sat-GP-15:00 肌の状態に与える睡眠および心理状態と五臓スコアの関係 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科赤星琳々 210-Sat-GP-15:10 東洋医学における日中短時間仮眠に対する考察 帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科櫻田啓悟 211-Sat-GP-15:20 睡眠の質に対する鍼治療の治効機序と評価方法の検討 帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科萩原明輝 学生発表「要因探索」5月31日(土) 15:30-16:10 座長:今村頌平 212-Sat-GP-15:30 気象病の発症に関与するリスク要因や東洋医学的因子の検討 関西医療大学保健医療学部はり灸・スポーツトレーナー学科櫻井永遠 213-Sat-GP-15:40 伸張性運動誘発性の筋痛と最大筋力低下に鍼通電刺激が与える効果 帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科小山田善 214-Sat-GP-15:50 鍼通電刺激による免疫応答増大効果を呼気ガスより可視化する 帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科吉澤太陽 215-Sat-GP-16:00 足三里への鍼通電刺激に対する血中免疫応答の部位特異性 帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科田鍋光優 - 37 - 学生発表「女性と医療」5月31日(土) 16:10-16:50 座長:藤田洋輔 216-Sat-GP-16:10 明時代に存在した経穴による女性不妊治療について 関西医療大学保健医療学部はり灸スポーツトレーナー学科馬場遥大 217-Sat-GP-16:20 女性開業鍼灸師の下で研修をし続ける女性鍼灸師たちの心情 森ノ宮医療大学鍼灸学科小松来瑠 218-Sat-GP-16:30 月経痛に対する鍼治療の効果を検証するパイロットスタディ 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科瀬戸井玲南 219-Sat-GP-16:40 月経痛・月経随伴症状に対する鍼灸の研究について 常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科佐藤南月 - 38 - The Program of The 74th Annual Congress of The Japan Society of Acupuncture and Moxibustion, May 30~June 1, 2025, Nagoya 特別演題抄録 - 39 - 大会会頭講演 基調講演1 ~ 2 特別講演1 ~ 3 教育講演1 ~ 2 シンポジウム1 ~ 7 ディスカッション1 ~ 2 教育セミナー1 ~ 2 ワークショップ1 ~ 3 実技セッション 報告 市民公開講座 大会会頭講演 座長:東京呉竹医療専門学校村上哲二 PL 鍼灸× フェムテック: エビデンスに基づく新たな医療モデル 清水洋二 中和医療専門学校 本大会は、2019年第68回愛知大会の「女性と鍼灸」をテーマとした学術的探求を引き継ぎ、新たに「フェ ムテック」を中心に据えた内容で開催する。愛知大会では、女性のライフステージ(月経・妊娠・出産・ 更年期など)に伴う身体的変化と鍼灸の関係、女性の受療傾向の特徴、さらには女性特有の疾患に対する 臨床応用について議論された。また、女性鍼灸師の活躍の場の拡大を受け、専門性を高めるための学術的 基盤の確立も求められていた。本大会では、その流れをさらに発展させ、女性の健康課題に対する新たな アプローチとして「フェムテック」に焦点を当てる。「フェムテック」とは、女性の健康問題(月経・不 妊・更年期・婦人科系疾患など)をテクノロジーを活用した製品・サービスで支援する概念であり、これ までの医療的・薬学的アプローチを補完するものとして期待されている。従来、医師・薬剤師による治療 が主流であったが、女性が自身の健康について正確な情報を得て適切なケアを受ける環境が整っていない 現状がある。ここで注目すべきは、鍼灸を含む東洋医学の視点が「フェムテック」と融合することで、女 性の健康維持・増進に貢献できる可能性がある点である。特に「専門あはき師」の養成を通じて、女性の ライフステージごとに適した治療を提供することが求められる。また、鍼灸のエビデンスを蓄積し、「フェ ムテック」との連携によるデータ解析を行うことで、より科学的根拠に基づいた新たな治療モデルの構築 が可能となる。さらに、本プログラムを通じて、医師・薬剤師・フェムテック企業・自治体と協力し、包 括的な支援体制を確立することが、女性の健康増進のみならず、社会全体のサステナビリティ向上にも貢 献すると考える。 キーワード:フェムテック、女性と鍼灸 ●略歴 1989年神奈川大学法学部法律学科卒業 2001年東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科卒業 2001年藤田保健衛生大学大学院医学研究科産婦人科学専攻研究生 2021年岐阜大学大学院医学系研究科医科学専攻博士課程満期中退 2005年産婦人科開業クリニック非常勤鍼灸師 2023年中和医療専門学校学校長現在に至る 【所属学会】 全日本鍼灸学会、日本東洋医学会、日本産科婦人科学会、日本公衆衛生学会、現代医療鍼灸臨床研究会 - 40 - 基調講演1 座長:中和医療専門学校校長清水洋二 KL1 女性の健康支援とフェムテック 小宮ひろみ 国立成育医療研究センター 近年の女性の健康課題には、ライフステージ毎の心身の状況及び社会的立場の変化があげられる。また、 働く女性の増加に伴いライフスタイルが変化し、妊娠・出産に関しても出産年齢の上昇やハイリスク妊産 婦が増加している状況である。さらに、これまでの日本の医学・医療において男女とも罹患する疾患・病 態における生物学的性(セックス)と社会・文化的性(ジェンダー)両者について性差が十分に考慮され てこなかった。これらの課題解決に向けて、2024年10月国立成育医療研究センター内に女性の健康総合セ ンター(ICWH)が開設された。本センターは、国の司令塔機能を有し、女性の健康促進のため、基礎・ 臨床研究、開発、臨床に取り組んでいく。本センターでは、女性の健康や疾患について、心身における 性差とライフステージに着目し、多面的・包括的分析を行い、病態の解明や治療および予防に向けた研究、 開発、臨床を推進する。そのため、1. 女性の健康に関するデータセンターの構築2. 女性のライフコー スを踏まえた基礎研究・臨床研究の積極的な推進(外部のアイデアやリソースを活用して技術革新を推進 するオープンイノベーションセンターを含む)3. 情報収集・発信、人材育成、政策提言4. 女性の体と こころのケアなどの支援等5. 女性に特化した診療機能の拡充という5本の柱をたて事業に取り組んで いる。近年、女性の健康を推進するために、フェムテック産業が拡大している。安全性・信頼性の担保、 プライバシー・個人情報の保持、社会受容性の向上など課題はあるが、女性の健康をテクノロジーやケア で進める可能性が示され、各分野から大きな期待が寄せられている。一方、鍼灸は、数千年の歴史を有す る東洋医学の治療法であり、科学的エビデンスも多く報告されている。女性の月経関連症状、更年期障害、 冷えなどの症状に有効であると認識している。フェムテック領域において、鍼灸あるいは鍼灸的発想の貢 献が期待される。最後に、ICWHにおいても、フェムテックに関して、オープンイノベーションセンター を中心に推進していきたいと考える。鍼灸の先生方とも連携できることを願い、その可能性について探求 したい。 キーワード:女性の健康、ライフステージ、性差、フェムテック、オープンイノベーションセンター ●略歴 1986年山形大学医学部卒業産婦人科入局 1998年米国ベイラー医科大学 2001年福島県立医科大学産婦人科勤務 2008年福島県立医科大学附属病院性差医療センター部長 2014年福島県立医科大学附属病院漢方内科部長 2017年福島県立医科大学附属病院性差医療センター教授 2024年4月国立成育医療研究センター女性の健康ナショナルセンター(仮称)準備室長 2024年10月国立成育医療研究センター女性の健康総合センター長 - 41 - 基調講演2 座長:履正社国際スポーツ医療専門学校古田高征 KL2 フェムテックとAI 菅万希子1,2)、鈴木聖一3) 1)関西医療大学 2)京都大学大学院医学研究科、3株式会社IDプラスアイ 【目的】月経関連の不調、妊娠・出産に関わる不調、更年期不調などの女性特有の健康問題について、社 会全体の理解を深め、これらの不調を解決することが目的である。主に、他覚的検査では異常が認めらな い不定愁訴に焦点をあて、行った施術の内容に対して、改善したという患者の主観的評価を測定し、施術 と効果の因果関係の推論を試みる。 【方法】2024年9月3日から2025年2月9日までの期間に、全日本鍼灸マッサージ師会会員に対し、オンライ ン上においた質問紙調査を配布し、各施術院において、女性特有の健康問題をもつ患者対して行った施術 内容に回答を求めた。同時に、施術を受けた患者に対しても施術結果の主観的評価の調査を行った。 【結果】鍼灸師が患者に対して不定愁訴と診断した場合、10の経穴への施術が行われている。一方、鍼灸 師の経穴への施術と患者の施術評価の関係性はあまり強くなかった。 【考察】施術した経穴と患者の主観的評価の関係性が強くないが、「本日当院を訪れ、全体として満足し た」と回答した患者は全体の98.9 %と高い。効果のあるとする経穴への施術以外の要素が満足度に影響 を与えているのか、または回答環境が回答に影響を与えている可能性があると考えている。また、施術者 と患者の紐づけができない事例があった。 【結語】この調査に先行して2024年2月に行った、全日本鍼灸マッサージ師会役員への調査では、施術経 穴と鍼灸師の主観による効果の因果推論で、一定の関係性がみられた。また、今回の調査結果の分析でも、 弱い関係性はみることができた。よって、因果推論を行うことにより、次回(4月ごろ開始予定)の調査 では、施術者と患者の明確な紐づけをできる方法をとり、回答に影響を与えない環境を指定することによ り、RCTにむけて、効果のある経穴の組み合わせをAIにより抽出することが可能であると考える。 キーワード:フェムテック、主観的評価、因果推論、不定愁訴、施術効果 ●略歴 2008年京都大学経営管理大学院経営管理教育部修了経営学修士 2011年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了博士(経済学) 2023年関西医療大学保健医療学部フェムテック寄付講座教授 京都大学大学院医学研究科社会健康医学専攻非常勤研究員 2025年奈良国立大学機構監事 - 42 - 特別講演1 座長:東京有明医療大学菅原正秋 SL1 医療機器である鍼灸鍼:法規制と安全管理の徹底 井田尚子 独立行政法人医薬品医療機器総合機構医療機器ユニット医療機器審査第一部 鍼灸治療において使用される鍼をはじめとする用具や装置は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及 び安全性の確保等に関する法律」のもとで医療機器であり、その有効性及び安全性が担保されたものが本 邦において販売されている。例えば、鍼は類別「器80 はり又はきゅう用器具」の医療機器であり、鍼の 特徴や性質により、リスク分類としてクラス1あるいはクラス2である9種類の一般的名称(例:滅菌済み 鍼、非能動型接触鍼)にさらに分類されている。まずは、鍼に限らず医療機器全般について、類別、クラ ス分類、一般的名称などのカテゴリーについて説明し、鍼灸に用いる医療機器が薬事規制の中でどのよう に分類されているか理解を深めていただければと思う。本邦での医療機器の販売については、クラス1 医療機器は製造販売届出、クラス2~4医療機器は認証審査又は承認申請において有効性及び安全性が確認 された後に許可される。クラス2の鍼や温灸器について認証基準への適合評価ができないものについては、 当職が所属する独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の医療機器審査部において、製造販売承 認に向けて審査が行われる。PMDAでは、本邦において販売され患者様に使用される医薬品や医療機器に ついて、市販前の承認審査業務、市販後の安全対策業務、及び医薬品の副作用等の健康被害救済業務の3 つの業務を遂行しているため、各ユニットが連携して市販前から市販後までをトータルサポートしている。 医療機器の審査の概要について説明し、医療機器が上市されるまでにどのような検証が必要であるか、ま た、評価された範囲に基づき使用目的や使用方法が定められていることを説明したい。承認審査や認証審 査を経た鍼灸器具は、皆様の日々の治療において適切に使用されることにより初めて有効性と安全性を発 揮するものである。そのためには添付文書や企業からの情報提供・注意喚起により、個々の医療機器の特 徴やリスクを十分に理解する必要がある。さらに、医療機器の不具合が発生した際には、企業に報告し回 収要否や製品改良の検討を促すことも重要である。安全性情報の確認方法や不具合報告などの安全対策に ついてもご紹介したい。 キーワード:医療機器、薬事行政、承認審査、安全対策 ●略歴 2001年東京薬科大学生命科学部卒業 2006年東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了(農学博士) 2006年東京大学医科学研究所癌・細胞増殖部門博士研究員 2008年医薬品医療機器総合機構医療機器審査部入職 2016年医薬品医療機器総合機構審査マネジメント部主任専門員 2018年医薬品医療機器総合機構医療機器審査第一部審査役補佐 2022年医薬品医療機器総合機構医療機器審査第一部審査役 - 43 - 特別講演2 座長:順天堂大学友岡清秀 SL2 これからのフェムテックと鍼灸マッサージへの期待 中山健夫 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野 フェムテック(FemTech)は、女性の健康課題に特化したテクノロジーやサービスを指し、生理管理や 妊娠・出産、メンタルヘルス、更年期のケアなど、多岐にわたる分野で進化を遂げています。フェムテッ クの起源は、女性の健康と福祉を向上させるための新しい技術が求められた20世紀末に遡ります。初期の フェムテックは、主に生理管理や妊娠計画に関する製品やサービスに焦点を当てていましたが、近年では メンタルヘルスや更年期のケアなど、より広範な分野にまで拡大しています。一方、ヘルスプロモーショ ンは、個人と地域社会の健康を向上させるためのアプローチとして、1986年の世界保健機関(WHO)に よるオタワ宣言が出発点となります。ヘルスプロモーションは、予防医療、健康教育、環境の改善など、 多岐にわたる戦略を通じて、個人・地域・環境の全体的な健康の向上を目指しています。 鍼灸マッサージは、伝統的な東洋医学に基づく治療法として長い歴史を持ち、痛みの緩和やリラクゼー ション、全身の調整に大きく寄与してきました。これらの融合は、個別の治療アプローチを超えて、女性 の全体的な健康とWell-beingに包括的にアプローチする新たな可能性を秘めていると言えます。また1990 年代から世界的な潮流となったエビデンスに基づくアプローチ、そしてその延長線にある健康情報学の視 点から、科学的根拠に裏付けられた治療法が、どのようにして女性の健康問題に対して効果的な解決策を 提供できるかも考えたいと思います。そして共有意思決定(Shared Decision Making:SDM)と共有価値 の創造(Creating Shared Value: CSV)の概念を導入し、治療を受ける主体と提供者が協力して最適な治 療計画を策定し、社会全体に利益をもたらすアプローチを模索します。 本講演が女性の健康とWell-beingの向上に向けた新たな視点と実践の方法について、様々な関係者が共 に考え、新たな道を拓く手掛かりの一つとなることを願っています。 参考:中山健夫. 健康・医療の情報を読み解く-健康情報学への招待第2版. 丸善出版; 2014. 中山健夫・藤本修平(編著). 実践シェアード・ディシジョンメイキング改題改訂第2版. 日本 医事新報社; 2024. キーワード:エビデンス、ヘルスプロモーション、フェムケア ●略歴 1987年東京医科歯科大学医学部卒、東京厚生年金病院内科、東京医科歯科大学難治疾患研究所疫学部門、米国カルフォ ルニア大学ロサンゼルス校フェロー、国立がんセンター研究所室長を経て、2000年京都大学大学院医学研究科助教授、 2006年から現職、2016-19年同専攻長・医学研究科副研究科長、2021年から静岡社会健康医学大学院大学副理事長(非 常勤)、2023年から京都大学医学部附属病院倫理支援部部長(併任) - 44 - 特別講演3 座長:明治国際医療大学田口玲奈 SL3 フェムテックのミカタ~実践からの学び! 武田卓 近畿大学東洋医学研究所 女性は初経・妊娠・分娩・更年期・閉経といった、長期的なホルモン変動に加え、月経周期内での短期 的なホルモン変動を認め、男性と比較して心身の不調をきたしやすいと考えられる。月経周期のなかでは、 月経前症候群・月経困難症、産褥であれば、マタニティ・ブルーズ、周閉経期であれば、更年期障害が代 表疾患としてあげられる。これらは、女性特有疾患として総称され、医療面では産婦人科学における女性 ヘルスケア領域において主に取り扱われている。修学、仕事、家庭におけるパフォーマンスへの影響は大 きく、最近の経済産業省からの試算では、月経関連疾患で0.6兆円、更年期障害で1.9兆円の社会的経済損 失が試算されており、婦人科がんと同等かそれ以上の影響を及ぼす。一方で、医療現場での対応は十分と はいえず、特に症状の軽減や予防に対する体系的な取り組みが課題として残されている。このような状況 下で、従来の医療を補完し新たな可能性を提供する手段として、フェムテックが注目を集めている。フェ ムテック(FemTech:Female + Technology)は、IoT技術やAIを活用したアプリ、トラッキングシステム、 非薬物療法、健康相談など、多岐にわたる技術を包含するものである。具体例として、月経周期を記録・ 分析するアプリや、AIを用いた症状予測システムが挙げられる。厳密な定義はないが、女性特有の健康 課題を解決するための幅広い取り組みを指しており、世界的にも新しい技術や製品が次々と開発されてい る。現在、AMED(日本医療研究開発機構)予防・健康づくりの社会実装に向けた研究開発基盤整備事業 では、月経前症候群、月経困難症、更年期障害に対するフェムテックを活用した予防・健康づくりの指針 策定を進めている。この中には非薬物療法として鍼灸治療も含まれ、具体的なヘルスケアクエスチョンと して位置づけられる予定である。このように、鍼灸領域においてもフェムテックを正しく理解し、女性特 有疾患に対する正しい医学的知識を持つことが重要になることが想定される。本講演では、女性特有疾患 の概要を説明するとともに、演者がこれまで取り組んできたフェムテック開発の事例を紹介する予定であ る。これらを通じて、鍼灸師の皆さんがフェムテックを正しく理解し、女性特有疾患に対する適切な対応 力を高めることの重要性を提言したい。 キーワード:女性特有疾患、フェムテック、ヘルスケア、産学連携 ●略歴 【学歴】 1987年大阪大学医学部卒業 1995年大阪大学医学部大学院博士課程修了 【職歴】 1997年大阪大学医学部産婦人科助手 1998年大阪府立母子保健総合医療センター産科診療主任・医長 2001年大阪大学医学部産婦人科助手 2004年大阪府立成人病センター婦人科副部長 2007年大阪大学医学部産婦人科学内講師 2008年東北大学医学部先進漢方治療医学講座准教授 2012年近畿大学東洋医学研究所所長教授、東北大学産婦人科客員教綬 - 45 - 教育講演1 座長:関西医療大学木村研一 EL1 「痛みと神経、深掘り解説」: 痛みと神経の関連性と先端知見 鍋倉淳一 自然科学研究機構生理学研究所 痛みは急性疼痛と慢性疼痛に大別される。急性疼痛は生体への警告であり、危険回避などいろいろな生 体防御反応が起こる。一方で、慢性疼痛は最初の原因でとなった外傷や炎症などの障害部位が治癒した後 も長期間持続する痛みである。一般的な鎮痛薬の効果が少なく、難治性の病態である。慢性疼痛は主観的 な訴えに基づくことが多く、患者の苦痛を理解されない場合も見受けられる。しばしば、慢性痛は正常よ りも痛み感覚が増強され(痛覚過敏)、また接触のような普通では痛みを感じない刺激によっても痛みを 感じるようになる(アロディニア)。また、痛みは情動などを司る脳部位など多くの脳部位(ペインマト リックス)を活性化するため、慢性疼痛は恐怖など情動不安を伴い、生活の質(QOL)を低下させる病 的な状態である。慢性疼痛の発症の原因は皮膚などの末梢組織にある痛み受容器の変化に加えて、脊髄な どの痛覚伝達経路や大脳皮質などの痛覚に関連する高次脳の回路が長期的に変化することが報告されてい る。脳は記憶の形成や生体がいろいろな環境などに適用するために神経回路を変化させる(可塑性)柔軟 な臓器であるが、慢性疼痛では痛覚を発生させる病的な回路が作られてしまう「脳の回路病」とも位置づ けられる。近年、傷害など外的原因がないにもかかわらず痛みを感じる「感覚変調性疼痛」が慢性疼痛の なかに分類され、鬱状態での痛みなどが認知されるようになった。近年、機能的磁気共鳴画像装置や特殊 な顕微鏡の発展によって、ヒトやモデル動物の脳活動や神経回路の変化を観察することができるようになっ た。これらの最先端の脳科学技術を用いて観察した慢性疼痛における脳の変化について紹介するとともに、 将来の治療の開発に向けた研究を紹介する。 キーワード:慢性疼痛、神経回路、脳イメージング、グリア ●略歴 1981年九州大学医学部卒業 1981年九州大学病院医員 1987年九州大学医学研究科卒業 1987年米国ワシントン大学研究員 1991年東北大学5月東北大学助手 1993年秋田大学医学部助教授 1995年九州大学医学部助教授 2003年岡崎国立共同研究機構生理学研究所教授 2004年(組織改編により)自然科学研究機構生理学研究所教授 2019年同所長 2025年同名誉教授、自然科学研究機構理事 - 46 - 教育講演2 座長:東京呉竹医療専門学校中村真通 EL2 その症状、鍼灸治療で良いの? 知っておきたい『レッドフラッグ』 寺澤佳洋 口之津病院内科・総合診療科 私は、はり師きゅう師としての経験を積んだ後、医師となり臨床の現場に立つ中で、多くの学びを得て きました。その中でも『レッドフラッグ』に関する知識は、患者さんの安全を守り、見逃しを防ぐために 極めて重要であると痛感しています。この知識は医師だけでなく、鍼灸師の皆さんにとっても大いに役立 つものであり、各地での講演活動を通じて共有しています。 『レッドフラッグ』とは、重大な疾患を示唆する兆候や症状を指します。鍼灸師として治療を行う際に も、目の前の患者さんにレッドフラッグがないことを確認することは、より安全で質の高い施術のために 欠かせません。本講演では以下の内容について解説します: ・“見逃してはいけない疾患”とはどのような疾患なのか? ・レッドフラッグが具体的にどのような症状を示すのか? ・レッドフラッグを認めた際にはどのように対応すればよいのか? “『レッドフラッグ』という言葉を初めて聞いた”という方でも心配はいりません。 本講演は、基礎からわかりやすく学び、明日からの診療にすぐに役立つ内容を目指しています。 鍼灸師として患者さんに寄り添い、安全で信頼される治療を提供するための第一歩として、ぜひご参加 ください。 キーワード:レッドフラッグ、見逃してはいけない ●略歴 2004年明治鍼灸大学(現明治国際医療大学)鍼灸学部卒業 2010年東海大学医学部医学科卒業 2020年グロービズ経営大学院経営学修士卒業 2012年藤田保健衛生大学医学部総合診療内科講座など 2015年豊田地域医療センター、藤田医科大学総合診療プラグラムなど 2020年医療法人弘池会口之津病院内科・総合診療科 2022年南島原市市議会議員 - 47 - 教育セミナー1 鍼灸の知らない世界~鍼灸最前線からのフェムテックの挑戦! 座長:東京医科大学病院ペインセンター伊藤樹史 名古屋医専中島紳景 ES1-1 フェムテックと新デルマトーム、そして交感神経デルマトーム 伊藤樹史 東京医科大学病院ペインセンター 「鍼灸の知らない世界、フェムテックを念頭」が本学会テーマである。私の話が参考になれば幸いであ る。私が会長をしている日本良導絡自律神経学会の基本理念について触れながら、演者が作成した新しい デルマトームと交感神経デルマトームを簡単に解説する。経穴と自律神経症状の関係はフェムテックと関 連性も大きい。女性の特有の疾患を考えると、頭痛、肩こり、筋膜痛、冷え症、生理痛、甲状腺機能障害、 不妊症、妊娠、逆子、流産、分娩、更年期障害、肥満、子宮筋腫、乳がん、子宮がん、卵巣がん、そして 不定愁訴などを考えると針治療も十分対応できが果たす役割が大きいと言える。良導絡自律神経学会の基 本的理念は、体表には交感神経しか分布せず、身体が発する不定愁訴の全てが自律神経の未病症状である と捉えている。経穴の効果を調査するとほぼ全てが自律神経の症状に有効である。薬の副作用も全て自律 神経症状である。体性-自律神経反射(体性-内分泌反射、体性-副腎反射も含む)を中心に治療方針を展開 することになる。体性-自律神経反射と関連して、足三里と三陰交の考え方を説明する予定である。 自律神経の評価は自律神経評価表(200項目)から求める。体表からの自律神経の評価は代表測定点 (24箇所)の計測から求める。その測定値のパターン化はPCプログラミンとして作成されている。これに よって自律神経評価と治療方針が決まる。当日の松森先生が実技で解説する予定である。 キーワード:新デルマトーム、交感神経デルマトーム、経穴と交感神経 ●略歴 【所属】東京医科大学病院ペインセンター、日本良導絡自律神経学会 【略歴】 1978年東京医科大学麻酔科助教授 1996年東京医科大学麻酔科教授 2007年東京医科大学名誉教授 - 48 - 教育セミナー1 鍼灸の知らない世界~鍼灸最前線からのフェムテックの挑戦! 座長:東京医科大学、春山記念病院伊藤樹史 名古屋医専中島紳景 ES1-2 テクノロジーへの新たな挑戦 マイナス直流鍼通電の安全性と有効性 吉野亮子 全日本鍼灸学会近畿支部、関西医療大学研究員 鍼に通電する施術法は、1823年フランスの医学者Sarlandiereが、Volta電池やLeiden jarを電源とした直 流電気鍼galvanopunctureが最初の記録として残されている。Sarlandiereは痛風やリウマチ、神経疾患の治 療に電気鍼を導入していた。日本では、1952年医師の中谷義雄が良導絡自律神経調整療法の1つの手法と して微弱なマイナス直流電流を流す方法を提唱した。直流鍼通電に関する基礎的研究は1970~80年台初頭 には盛んに行われていたが、それ以降の鍼通電の安全性に関する科学的根拠を示すことのできる文献は少 ないため、鍼の電解腐食のリスクに関する記載においては、その根拠には古い文献が引用されているのが 実情である。極性による電解腐食についての議論が十分にされていないことで、誤解が生じていることも 考えられる。直流とは、極性が変化しない単極性の電流である。直流鍼通電の安全性において重要なこと は、マイナス極が鍼、プラス極を不関電極(導子やパッド)にすることである。その理由は、プラス側は、 めっきの原理により電気量に応じて鍼の原材料である金属が溶け、腐食するからである。また鍼通電用の 機器を使用し、微弱な電流(マイクロカレント)を使用することが重要と考える。マイナス直流鍼通電に は連続通電と断続通電がある。マイナス直流断続鍼通電は、マイナス方向への電気のみが流れる矩形波で あり、直流パルス通電とも表現されている。マイナス直流鍼通電の特性を活かした新たな手法は、神経興 奮の原則から、極性が0からマイナス方向に流れる時が1番強い刺激になり、短い通電時間、少ない鍼数で 強い刺激になる。水があると、プラスからは酸素、マイナスからは水素が発生する(水の電気分解)。つま りマイナス極側は液性がアルカリ性になる。炎症があると酸性に傾いていると言われており、中和する効 果が期待できる。近年は交流(双極性)鍼通電が主流であるが、安全性に配慮した新たな直流(単極性) 鍼通電について紹介する。 キーワード:鍼通電、マイナス直流通電、安全性 ●略歴 2008年東洋医療専門学校卒業 2020年関西大学大学院人間健康研究科後期課程修了博士(健康学)研究分野:医療社会学 2010~2019年鍼灸院開業 2022年~ 関西医療大学研究員 - 49 - 教育セミナー2 みんな気になる?気になる!鍼灸! 座長:高橋鍼灸院高橋順子 ES2-1 気になるだけで終わらせない! 灸との出会いの機会を増やすために 東原亜希子 帝京大学助産学専攻科 女性が自分のこころとからだに真摯に向き合う時はいつだろうか。思春期、結婚時期、妊娠をきっかけ に、子育て中、更年期…。心身の不調を自覚するときや、心身の変化が生じるとき、もしくはwell-being のときもなぜそのような状態なのかと向き合うことをするかもしれない。人によって様々であろう。その 中でも特にホルモンにより大きく心身の変化と向き合うことになる妊娠期は、女性にとって特別な時期と いえる。妊娠に伴う不定愁訴をどうにかしたいと思い、自分にあった方法で何かを始めたいと思う妊婦も いる。また妊娠期は、子どものため、出産のためという付加価値が付き、今まで行ったことがないことに も挑戦しようとしたり、よいことを続けようとする意識が高まる時期でもある。灸もその一つであると言 える。筆者は2011年より妊婦と灸の研究に携わってきたが、ほとんどの妊婦が人生で初めて灸を実施する という方々であった。そして口々に「興味はあったけれど、自分からはなかなか一歩が踏み出せなかった」、 「どこに行ったらいいのか、何からどう始めたらよいのか、分からなった」と訴える。気になっている女 性は多いが、実行まで移していない現状があることを目の当たりにした。詳しく聞いてみると、「怖いイ メージがあった」と答える妊婦がいた。そのような妊婦が、実際灸を体験してどうだったのか、自分でセ ルフケアとして灸を継続することで妊婦に何をもたらしたのか、妊娠して初めて灸を実施した妊婦のさま ざまな声を紹介していく。そのような妊婦の声から、我々は専門職として何ができるのか、一つの職種で は難しいことであっても、他の職種と協働、連携し、より身近に「鍼灸」を感じ取れる機会を作れないか。 「気になる!」だけで終わらせず、鍼灸というものに出会い、触れ合う機会を作るのは我々の知恵と腕と 連携にかかっている。 キーワード:妊婦、灸、女性の声 ●略歴 1996年埼玉県立衛生短期大学助産学専攻科修了 1996年戸田中央産院 2004年愛和病院 2008年国際協力機構青年海外協力隊モルディブ共和国へ赴任 2013年聖路加看護大学大学院看護学研究科博士前期課程修了 2017年聖路加国際大学大学院看護学研究科博士後期課程修了 2017年埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科助教 2020年埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科准教授 2024年帝京大学助産学専攻科准教授 - 50 - 教育セミナー2 みんな気になる?気になる!鍼灸! 座長:高橋鍼灸院高橋順子 ES2-2 医療的ケアの必要な子供たちに宿る意思をつないで 野崎加世子 岐阜県訪問看護ステーション連絡協議会 筆者と鍼灸の先生との出会いは物心つく前であった。実家にはかかりつけ医の鍼灸医院があった。筆者 は、胃腸風邪によくかかり嘔吐や、頭痛で寝込む子供であった。しかし、鍼灸の施術受けた後は、すぐお 腹がすいて元気になったことを昨日のことのように覚えている。母親は自律神経の治療、父親は関節痛等 というように、鍼灸治療院は、我が家の健康管理としての大切な存在であった。今回、助けて頂いた鍼灸 の先生のご縁もあり、発表の機会を頂いたことに感謝する。筆者は、在宅で療養する小児から高齢者まで の方々に看護サービスを提供する訪問看護師として長く仕事をしてきた。その中で多くの患者さんやご家 族は住み慣れた自宅で安心して普通に暮らすことを願っていることを知った。特に、超重症児や準超重症 児、医療的ケアを必要とする子供自身やご家族も、住み慣れた地域で安心して療育生活を継続していきた いと願っていた。しかし、現実には、子供やその家族に危機が出現した時や、生活スタイルの変換期等、 その時々の不安や負担に対して、個々の職種や機関が単独で機能しては十分な支援や環境が整わず、希望 どおりの療養生活が難しくなりゃすい。それを実現するためには、医療・介護はもちろん、行政福祉課や 保健師・教育委員会、特別支援学校などの教育機関・障がい児支援センター・近隣住民やボランティア等、 高齢者とは異なる方々達とチームで支えていく必要がある。今回、筆者は、「お兄ちゃんと一緒に普通学 校に行きたい」「私も普通の人と同じように働きたい」との思いを持った子供達について紹介する。2人の 意思決定支援の実践を通して、医療的ケアの必要な子供に寄り添い支え、多職種とのきめ細やかな連携を 行ったことにより、本人の望む希望が実現へと結びついた取り組みである。 キーワード:訪問看護、医療的ケア児、教育、在宅看護 ●略歴 1978年岐阜市民病院入職(小児科・未熟児センター・内科・精神科) 1994年岐阜県看護協会高山訪問看護ステーション入職・(管理者) 2023年岐阜県看護協会立訪問看護ステーション高山定年退職 2023年これからの在宅医療・看護・介護を考える会代表 2023年飛騨市健康福祉部地域生活安全支援センター顧問看護師(兼務) - 51 - 教育セミナー2 みんな気になる?気になる!鍼灸! 座長:高橋鍼灸院高橋順子 ES2-3 すべての女性が継続ケアを選択できる世の中に 大野祐希 にこ助産院 2018年にWHOが分娩期ケアガイドライン『WHO推奨ポジティヴな出産体験のための分娩期ケア』を 発表した。その中に、助産師主導の継続ケアモデルはポジティブな出産体験を促すと示されている。出産 ケア政策会議によるアンケート調査結果からも、独立助産師の継続ケアを受けた女性は、医師依存型助産 師の分業ケアを受けた女性よりも「また産みたい」と思う人ははるかに多く、産後うつ病リスクや育児不 安に関してははるかに少なかった。助産師の継続ケアは、妊娠中から関わりを持ち信頼関係を築くため、 母親の性格特性やニーズの把握がしやすく、母親も不安の表出がしやすくなり妊娠出産産後に関する不安 への対応や心理面のサポートがスムーズに行えるといえる。さらに、継続ケアを行う助産師は、1人です べてのことに対応するよりも、専門性の高い複数人の専門職が連携しながらケアをする方が、母親へのメ リットは大きいと言える。妊娠期、産後のほとんどを地域で生活する母親にとって、地域でケアする専門 職の存在は、その後の子育てのあり方や人生の選択肢を広げることにも繋がっていくと言える。妊娠出産 産後の環境が、産後うつ病や産後の自殺率を増加させており、少子化にもつながっていることは多くの研 究結果からも明確になっており、そういった社会問題を解決するためにも現代の周産期医療の中に助産師 の継続ケアをどのように組み込んでいくかが今後の課題であり挑戦でもある。 キーワード:継続ケア、産後うつ、多職種連携、選択肢 ●略歴 2007年岐阜県立衛生専門学校助産学科卒業 2009年岐阜県総合医療センター入社 2023年にこ助産院開業2022年から地域の母親の居場所作りとして〈にこの森マルシェ〉を毎年開催。 ママとママが繋がる、ママと地域が繋がる、ママと助産師が繋がるを目的として活動している。 - 52 - 教育セミナー2 みんな気になる?気になる!鍼灸! 座長:高橋鍼灸院高橋順子 ES2-4 地域医療における鍼灸師の役割と多職種連携の可能性 上條弘明 一般社団法人長野県針灸師会副会長 公益社団法人日本鍼灸師会地域ケア推進委員 中信鍼灸師会会長 マッサージ鍼灸院匠の手院長 松本市医療救護訓練実行委員 はじめに日本の社会および医療環境は大きく変化している。特に少子高齢化の進行により、社会構造は 従来の労働力人口を中心とした体制から、高齢者主体の時代へと移行しつつある。この変化により在宅医 療が重視され、疾患の治療だけでなく生活支援の視点も必要となってきている。鍼灸師の役割を考えるに、 そもそも鍼灸施術は疼痛管理をはじめとする広範な適応を持ち、生活の質(QOL)の向上に貢献する。 また施術だけでなく、我々鍼灸師は以下の領域での役割が担える。1予防(介護予防運動指導)2医療(鍼 灸施術による疼痛管理)3介護支援(バイタルチェック、機能訓練指導)4生活支援(安否確認、健康相談) 5住環境支援(在宅生活のアドバイス)また多職種連携の取り組みとして、地域医学部や看護協会と交流 を深め関係性の構築をどう獲得してきたか、長野県針灸師会での取り組みの実例を紹介する。これらの活 動を通じ、災害時のための医療救護訓練や地域医療に貢献しており、地域の医療機関との密接な関係を築 き、円滑な患者紹介体制を整えている。また鍼灸界の業団として「(公社)日本鍼灸師会」があり、その 中の地域ケア推進委員会では、「全国地域ケア担当者会議」を開催し、各県の担当者と情報共有を進めた り、「ZOOM行脚」を実施し、全国の鍼灸師が多職種連携の実践事例や課題を議論する場を提供している。 実践事例を紹介し、鍼灸師の役割について考察する。鍼灸師が持つ専門性を活用し、多職種連携を深化さ せることで、地域医療の発展に寄与できる可能性を探る。今後の地域医療において、鍼灸師の役割はさら に拡大すると考えられ、継続的な連携の推進が必要である。 キーワード:多職種連携、地域ケア、地域医療、(公社)日本鍼灸師会 ●略歴 2004年赤門鍼灸柔整専門学校卒業 医療法人社団敬仁会桔梗ヶ原病院、介護老人保健施設まほろばの郷常勤 2006年社会福祉法人平成会介護老人福祉施設さわらび常勤 2008年~現在マッサージ鍼灸院匠の手院長 2015年~19年NPO法人ラポール機能訓練指導員として非常勤 2018年~19年NPO法人ラポール介護支援専門員兼務 - 53 - シンポジウム1 「日韓台シンポジウム」(国際部主催) 座長: 森ノ宮医療大学増山祥子 College of Krean Medicine, Kyung Hee University Dongwoo Nam SI1-1 The Role of Acupuncture and Moxibustion in Addressing Women's Health Issues in Japan Sazu Taniguchi(Yoshimoto) Department of Acupuncture and Moxibustion, Graduate school of Health Sciences, Tokyo Ariake University of Medical and Health Sciences Women face health issues at various stages of their lives. This issue has long been overlooked worldwide. Japan is no exception, as women's participation in society has increased and their opportunities to be active as members of society have expanded, health issues specific to women, which previously underdiscussed, have become more apparent. Tokyo Ariake University of Medical and Health Sciences has an affiliated clinic, an acupuncture and moxibustion center, and bone-setting center. It is a university that educates students pursuing medical qualifications. The affiliated acupuncture and moxibustion center serve as a training site for students, enhancing their educational through exposure to actual patients. Patients come not only from the local community but also from across Japan. Since the establishment of the center, the number of patients has continued to increase, with nearly 9,000 patients visiting in 2024. This presentation will illustrate how acupuncture and moxibustion treatment for women's diseases is utilized by patients at our acupuncture center, as well as the challenges that have emerged in this process. キーワード:Women's health issues, Acupuncture, Moxibustion, Japan ●略歴 I completed my doctoral program at Meiji University of Integrative Medicine and subsequently conducted postdoctoral research in the United States. I am currently an Assistant professor at Tokyo Ariake University of Medical and Health Sciences. My research focuses on Women's health issues across various life stages. - 54 - シンポジウム1 「日韓台シンポジウム」(国際部主催) 座長: 森ノ宮医療大学増山祥子 College of Krean Medicine, Kyung Hee University Dongwoo Nam SI1-2 Acupuncture and Moxibustion for Women's Health in Korea: Clinical Applications and Evidence-Based Guidelines Suji Lee Department of Acupuncture and Moxibustion, Kyung Hee University Medical Center, Seoul, Korea Traditional Korean Medicine has long utilized acupuncture and moxibustion to manage women's health conditions, including dysmenorrhea, menopausal symptoms, infertility, and postpartum recovery. Recent clinical research and evidence-based guidelines provide scientific validation for these treatments, demonstrating their effectiveness in pain relief, hormonal regulation, and reproductive health. Acupuncture is widely used to alleviate menstrual pain, improve ovarian function, and support pregnancy outcomes, while moxibustion enhances circulation, warms the uterus, and aids postpartum care. This presentation explores the role of acupuncture and moxibustion in women's health from the Korean perspective, focusing on clinical applications, recent research findings, and standardized practice guidelines. Studies suggest that acupuncture can regulate the hypothalamic-pituitary-ovarian (HPO) axis, modulate inflammatory responses, and improve uterine blood flow. Moxibustion has been traditionally used for dysmenorrhea and postpartum fatigue by promoting blood circulation. Korean clinical guidelines recommend acupuncture and moxibustion for gynecological disorders, reflecting their established role in women's healthcare. By examining the scientific evidence and clinical framework of acupuncture and moxibustion in Korea, this presentation provides a comprehensive perspective on their application in gynecology and their integration into evidence-based medicine. キーワード:Acupuncture, Moxibustion, Women's Health, Traditional Korean Medicine, Clinical Guidelines ●略歴 Suji Lee, M.D. (Korean Medicine), PhD, is a clinical assistant professor at the Department of Acupuncture and Moxibustion, Kyung Hee University Medical Center. She specializes in acupuncture and moxibustion, focusing on the treatment of neurological disorders such as facial nerve palsy, cranial nerve conditions, and trigeminal neuralgia, as well as acupuncture for women's health and aesthetic treatments. - 55 - シンポジウム1 「日韓台シンポジウム」(国際部主催) 座長: 森ノ宮医療大学増山祥子 College of Krean Medicine, Kyung Hee University Dongwoo Nam SI1-3 Acupuncture on Assisted Reproduction Treatment of Infertility Patient: A case report Yu-Chen Lee Honor Chairman of Chinese Medical Association of Acupuncture The 33-year-old woman, has been trying to conceive for three years. She is diagnosed as an idiopathy female infertility case. She has been undergoing Western medicine examination and treatment for one and half year. She got pregnant successfully after seven months of assisted acupuncture therapy. On the basis of differential diagnosis and treatment, combined with the menstrual cycle method, the effect of acupuncture treatment is satisfactory. Here we provide the menstrual cycle acupuncture method strategies for reference. キーワード:acupuncture, infertility, menstrual cycle, gynecology ●略歴 Yu Chen Lee M.D. PHD. E-mail:005167@tool.caaumed.org.tw/d51675167@gmail.com ORCID:https://orcid.org/0000-0002-9510-3146 1. Chief of Department of Acupuncture, China Medical University Hospital, Taichung, Taiwan. 2. Dean of Graduate Institute of Acupuncture Science China Medical University, Taichung, Taiwan. - 56 - シンポジウム2 「スポーツに関わる女性のみかた-選手・AT・鍼灸師のwell-being」 (日本アスレチックトレーニング学会とスポーツ鍼灸委員会合同シンポジウム) 座長:帝京平成大学池宗佐知子 関西医療大学山口由美子 SI2-1 女性アスレティックトレーナー、 あはき師として考えるこれから 福嶋涼子 らいおんハート鍼灸院 近年、国内だけではなく世界でも日本の女性アスリートの活躍が目覚ましく、女性スポーツの競技レベ ルの向上や育成強化、トップアスリートのプロ化も進んできている。それに伴いコーチ、トレーナー等の スタッフとして働く女性の需要もさらに増している。そのような傾向の中でも女性がスポーツ現場で働き やすいと言うことは、活動する人数の少なさや働く環境など様々な点においてまだ難しいように感じられ る。私自身、トップアスリートが所属するチームでアスレティックトレーナーとして従事した経験がある が、女性スポーツ現場での問題において同性としての対応を悩み、誰に相談すればいいのだろうか苦難し たことがある。まだ女性アスレティックトレーナーとしてスポーツ現場で働く人数は少なく、コミュニティ が限られていたが、適切なアスリートサポートのために自らのネットワークを広げていたらスムーズに解 決できたのではないかと実感した出来事であった。同じような問題やその対応を共有し、議論できる場を 増やし広げていくことも今後の課題となっているのでないかと考える。また、女性の社会進出も広がって いく中でスポーツ業界だけではなく、女性に向けたフィットネス事業の拡大や健康への興味関心も高まっ てきている。地域に密着した鍼灸院での勤務でも治療を行うだけではなく、どのように過ごしていけばよ り健康に生きていけるのか予防について関心を持たれることが多くある。女性に向けた治療をすることも でき、運動を生活に取り入れてより健康に生きたいという需要に対して、アスレティックトレーナーとし ての経験を活かし多角的に治療と予防進めていくことでQOL向上の一助となることもできていると感じ ている。アスレティックトレーナー、あはき師として学生スポーツやトップアスリートのスポーツ現場で 今まで経験したこと、鍼灸院での勤務の中で感じていることを伝えることで、本邦における今後のスポー ツに関わる女性スポーツ系治療家、アスレティックトレーナーについて議論を深める機会にし、スポーツ 現場や教育に活かせるようにしたいと考える。 キーワード:アスレティックトレーナー ●略歴 2013年法政大学スポーツ健康学部卒業 2016年日本鍼灸理療専門学校卒業 2016年~2018年女子ソフトボールチーム所属アスレティックトレーナー 2019年~2020年女子バスケットボールチーム所属アスレティックトレーナー 2020年~ 現職 - 57 - シンポジウム2 「スポーツに関わる女性のみかた-選手・AT・鍼灸師のwell-being」 (日本アスレチックトレーニング学会とスポーツ鍼灸委員会合同シンポジウム) 座長:帝京平成大学池宗佐知子 関西医療大学山口由美子 SI2-2 牧歌的鍼灸院のWell-being 安東由仁 ゆに鍼灸院 1人で、ベッド1台の小さな鍼灸院を開業して10年が経った。その前の20シーズンはアメリカンフットボー ルとサッカーの競技現場でアスレティックトレーナー(以下AT)としてチームに帯同していた。競技者 でもいわゆる「一般の人」でも、日々の生活の積み重ねがそのパフォーマンスの基盤を作るということで は変わりがない。結果として現れてくるパフォーマンスだけでなく、それを生み出している生活を見渡し たうえでサポートするということは、開業鍼灸師でもATでも変わりがない。ATの視点で言えばそれは 「コンディショニング」という領域になるが、さらに東洋医学的なアプローチで人をみる時に「環境」や 「季節」の影響を考えるという考え方を加えることで、より広く深い視点でその人を見、不調の根本的な 原因を探ることができる。ケガの起こりやすいスポーツに関わってきたために、鍼灸という技術を「起こっ た問題を解決する」、つまり「マイナスからゼロに戻す」ために使う発想になっていたこともあったが、 現場を離れてみて、まさに「未病治」として、ケガや故障を起こしにくくするための、さらには「プラス をさらに増やす」ための鍼灸の可能性を強く感じている。またATの役割には「教育的指導」がある。鍼 灸院でも、クライアントが施術を受けるだけでなく、自らで身体の声を聴き、セルフケアを行えるように 手助けしていくことが、真の意味でのWell-beingの実現につながっていく。このような関わりは、競技ス ポーツの現場のスピード感では難しいこともあったが、今の鍼灸院ではひとりひとりにじっくりと向き合 いある意味牧歌的に臨床に取り組めている。またその生活の中で、自分自身のWell-beingを大切にできて いるとも感じるし、そうして元気な鍼灸師が治療院にいること自体で、健康的な生き方を伝えられるので はないかと考えて日々を過ごしている。スポーツ現場を離れてから実感している、東洋医学とAT視点の 親和性を共有しながら、Well-beingを実現するための鍼灸師、鍼灸院のこれからの新しい関わりの可能性 を探りたい。 キーワード:Well-Being ●略歴 2000年筑波大学体育専門学群卒業 2003年明治東洋医学院専門学校第1鍼灸学科卒業 2005年履正社国際医療スポーツ専門学校勤務 2006年明治東洋医学院専門学校教員養成課程卒業 2015年ゆに鍼灸院開業 - 58 - シンポジウム2 「スポーツに関わる女性のみかた-選手・AT・鍼灸師のwell-being」 (日本アスレチックトレーニング学会とスポーツ鍼灸委員会合同シンポジウム) 座長:帝京平成大学池宗佐知子 関西医療大学山口由美子 SI2-3 スポーツ現場における女性鍼灸師・ATの活躍 森本麻衣子 早稲田大学ア式蹴球部女子鍼灸師・アスレティックトレーナー 私は、2011年に日本女子代表がワールドカップで優勝した年にサッカー選手を引退しました。必ずしも 雇用条件や環境が十分ではない鍼灸師・ATがチームのため、そして選手の為に働く姿に憧れ、鍼灸師・ ATを目指して学校に通い始めました。選手の時は、食事・睡眠・セルフケアと身体を回復させて結果を 出すことに毎日必死で、取り組んだこと全てが、自分に返ってくるという生活だったことを覚えています。 そして、自分の目標に対しての問いに鍼灸師・ATの方が真摯に答えてくれたことを覚えています。現在 は、育成年代のサポートをすることが多くなっておりますが、一番大切にしていることは、「選手自身が 目標設定をして、自ら考え自ら判断する」ということです。選手時代に身体と向き合ってきたからこそ、 今の選手にもその大切さを伝えたいと思っています。2011年当時と比べて、女性鍼灸師・ATとしてスポー ツ現場をサポートしている方は増えてきていると感じています。一方で、なでしこリーグ・WEリーグの 鍼灸師・ATの質の向上という課題にも向き合っていく必要があると感じております。自身の課題として は、選手が目標設定に向けて、納得して取り組めるように、鍼灸師・ATとして常に正しい情報をインプッ トし続ける必要があると感じております。本講演では、選手を引退後、女性鍼灸師・ATとして、なでし こリーグ・WEリーグ・U20日本女子代表選手の成長をサポートする立場として活動させていただいた経 験と、スポーツに関わる女性のWell-beingについて、元選手そして鍼灸師・ATの立場からご紹介させてい ただきたいと思います。 キーワード:女性鍼灸師、女性AT、スポーツ現場 ●略歴 2006年東京女子体育大学体育学科卒業 2014年花田学園日本鍼灸理療専門学校本科卒業 2015年花田学園アスレティックトレーナー専攻科卒業 - 59 - シンポジウム2 「スポーツに関わる女性のみかた-選手・AT・鍼灸師のwell-being」 (日本アスレチックトレーニング学会とスポーツ鍼灸委員会合同シンポジウム) 座長:帝京平成大学池宗佐知子 関西医療大学山口由美子 SI2-4 トレーナーから医師への転換 大岩孝子 静岡赤十字病院救急科 スポーツ医学は、アスリートの健康管理やパフォーマンス向上を支える重要な分野であり、女性の専門 家が果たす役割はますます重要になっています。 私は、体育系大学院修了後に実業団女子バスケットボールチームの専属トレーナーとして働き始めまし たが、まだトレーナーという職業がそれほど周知されておらず、理想とするロールモデルがいないままの 手探りの活動でした。選手と同じ寮に居住し、連日の練習・試合に帯同しました。スタッフと選手の距離 感は非常にセンシティブなものですが、この時期は、選手が同年代のため、どうしても友人に近いスタン スになっていた気がします。それ故のメリットもデメリットも自覚し、非常によい経験になりました。 その後、医療資格を持たずにトレーナー活動を行っていくことの能力的や経済的な限界を感じました。 女性であっても、経済的な自立は必須であり、スポーツに関わる仕事を生業とするには、いまだに狭き門 であることには現代も違いがありません。 私は、プロのトレーナーに挫折した後のセカンドキャリアとして、スポーツ医学にとらわれず、将来的 に安定し、さらに仕事の可能性を広げる選択肢をもちたいと考え、医師を目指しました。救急医学を専門 としていますが、仕事内容についてはジェンダーによる不利益さはさほど感じません。しかし、まだまだ 結婚、出産、介護などに職場環境が追い付いてはいないと感じています。 医師となってから、幸いにもスポーツ医学に関わることができ、アンダー世代の女子サッカー日本代表 の合宿帯同に参加しました。監督、コーチ、トレーナー、協会関係者などほぼすべての職種に女性が携わ り、男性スタッフと協力をしながら、女性アスリートをサポートしていく体制に時代の進化を感じました。 今後も女性がスポーツ医学の分野でより一層活躍できるようにするために、どのような提案ができるかを 考える機会になればと思います。 キーワード:医師トレーナー、スポーツ医学 ●略歴 1994年筑波大学体育専門学群卒業(体育学学士) 1997年筑波大学大学院体育研究科健康教育学専攻修士課程修了 1997年三井生命女子バスケットボール部専属トレーナー 2001年国立スポーツ科学センタースポーツ医学研究部アスレティックトレーナー 2002年山口大学医学部学士編入学 2006年山口大学医学部卒業(医学学士) 2006年静岡赤十字病院初期研修医 2008年静岡赤十字病院救急科勤務 - 60 - シンポジウム3 「日本と韓国の電子カルテ」(国際部主催) 座長:関西医療大学若山育郎 SI3-1 日本の鍼灸業界における電子カルテの現状と課題 村橋昌樹 埼玉医科大学病院東洋医学診療科 鍼灸電子カルテ参照仕様の策定に関する会議作業部会 近年、世界的に医療の電子化がすすんでいるが、日本では電子カルテ(EMR)の普及率が約55%にとど まり、電子健康記録(EHR)の導入も発展途上である。本邦には複数の医療データベースが存在するもの の、それぞれが独立しており、統合が困難である。EHRの導入は、医療データの統合と共有を促進し、診 療の効率化、医療コストの削減、医療の質と安全性の向上に貢献するため、日本における病院間の情報共 有を推進する上で不可欠である。こうした状況の中、鍼灸分野においても、ICD-11に伝統医学(TM)章 が収載されたことを受け、TMに関するデータを体系的に集積し、国内外へ発信する必要性が高まってい る。しかし、日本では鍼灸分野におけるEMRや全国規模の鍼灸データベースの整備が不十分であり、体 系的なデータ収集が困難な状況にある。この課題を解決するためには、鍼灸EMRの標準参照仕様を策定 し、全国規模のデータベースを構築することが不可欠である。以上のような現状を踏まえて、医科におい ては2030年までにEMRの普及率100%およびEHRの実装を目標としている。それに伴い、鍼灸分野におい てもEMRのさらなる普及と全国的な鍼灸データベース構築を実施する予定である。その道筋として、ま ず鍼灸EMRの標準参照仕様を策定するため、全国92施設からEMR項目を調査した。現在、その結果をも とに標準仕様の鍼灸電子カルテの策定および国際的なコーディングツールを用いた鍼灸電子カルテ項目に おけるコーディングの実現可能性を評価しており、今年度中には標準化された鍼灸電子カルテの実装、小 規模なパイロット研究を開始する予定である。さらにその後、全国規模での本格的な研究を実施する計画 である。しかし、鍼灸データベース構築にはいくつかの課題がある。例えば、大規模データ化に伴う表記 揺れへの対応が困難である点や、ICPC2やICD-10/11などのコーディングは有効であるものの実装の負担 が大きい点、また、EHRとの統合方法についても具体的な道筋が確立されていない。これらの課題を解決 するためには、EMRおよびEHRがすでに導入・活用されている韓国の事例を参考にすることが重要であ る。今回、本邦より先んじてEMR、EHRを実装し、利活用されている韓国の現状を拝聴し、日本におけ る鍼灸データベースの構築とEHRとの統合に向けた方策を検討する。 キーワード:Acupuncture, Electronic medical record, Electronic health record, Database, ICD-11 ●略歴 2021年自治医科大学大学院医学研究科緩和医療学専攻修士課程修了 2014年素問堂鍼灸室入社 2016年福島県立医科大学会津医療センター漢方医学講座入職 2019年福島県立医科大学会津医療センター漢方医学講座退職 2021年埼玉医科大学東洋医学科非常勤職員入職 2023年埼玉医科大学東洋医学科常勤職員現在に至る - 61 - シンポジウム3 「日本と韓国の電子カルテ」(国際部主催) 座長:関西医療大学若山育郎 SI3-1 Current Status and Challenges of Electronic Medical Records in Japanese Acupuncture -From EMR to Acupuncture Database - MURAHASHI Masaki1,3), NAKAGAWA Toshihiro1,3,4), YAMASHITA Koji2,3), SHIMIZU Yoji1-5), MINAMI Harushige2,3,5), HISAJIMA Tatsuya2,3,7), WATSUJI Tadashi2,3,6), WAKAYAMA ikuro2,3), MATSUSHITA Miho2,3,8), KOYAMA Toshihiro2,5) 1)Working Group on the Development of Reference Specifications for Acupuncture and Moxibustion Electronic Medical Records 2)Conference on the Development of Standard Reference Specifications for Acupuncture and Moxibustion Electronic Medical Records 3)The Japan society of Acupuncture and Moxibustion 4)All Nippon Acupuncture & Moxibustion Massage Association 5)The Japan Acupuncture and Moxibustion Association 6)The Japan Traditional Acupuncture and Moxibustion Society 7)Japan Society of Acupuncture Course in Universities 8)Japan College Association of Oriental Medicine In recent years, the digitalization of healthcare has advanced globally. However, in Japan, the adoption rate of electronic medical records has stagnated at approximately 55%, and the implementation of electronic health records has not advanced. Although several medical databases exist, they operate independently, making integration challenging. The implementation of electronic health records is essential for facilitating medical data integration and sharing, thereby enhancing clinical efficiency, reducing healthcare costs, and improving the quality and safety of medical care. Furthermore, electronic health records are indispensable for promoting inter-hospital information exchange in Japan. In the acupuncture field, the inclusion of the Traditional Medicine chapter in ICD-11 has underscored the necessity of systematically accumulating and disseminating Traditional Medicine data at national levels. However, standardized electronic medical records systems for acupuncture and a nationwide acupuncture database have yet to be fully developed in Japan, posing significant challenges to systematic data collection. Addressing this issue requires the establishment of standardized reference specifications for acupuncture electronic medical records as well as the development of an acupuncture database. In the western medical field, Japan has set a policy objective of achieving 100% electronic medical record adoption and electronic health records implementation by 2030. Accordingly, efforts are underway in the acupuncture field to expand electronic medical records adoption and construct an acupuncture database. As an initial step, a nationwide survey of medical records items was conducted across 92 institutions to formulate standardized reference specifications. Based on these findings, the development of standardized acupuncture electronic medical records is currently in progress, along with an evaluation of the feasibility of coding medical records items using international coding tools. By the end of the current fiscal year, the implementation of standardized acupuncture electronic medical records system and the initiation of a pilot study are planned. Subsequently, a full-scale study is scheduled to follow. Despite these efforts, there are several barriers to developing an acupuncture database. These include managing variations in terminology across large datasets, the complexity of implementing coding systems such as ICPC-2 and ICD-11, and the absence of a well-defined pathway for electronic health records integration. Therefore, it is crucial to examine the case of South Korea, where electronic medical records and electronic health records systems have been successfully implemented and utilized. This presentation aims to explore insights from South Korea's experience to inform the development of an acupuncture database and its integration with electronic health records in Japan. Key words:Acupuncture, Electric medical record, Electric health record, Acupuncture database, ICD-11 Brief Personal record Current Position: Department of Oriental Medicine, Saitama Medical University Hospital Academic Activities : Member, Electronic Medical Record Working Group, The Japan Society of Acupuncture and Moxibustion(2022) - 62 - シンポジウム3 「日本と韓国の電子カルテ」(国際部主催) 座長:関西医療大学若山育郎 SI3-2 Overview of the current status of electronic medical records in Korea Byung-Kwan Seo, K.M.D., Ph.D. Department of Acupuncture & Moxibustion, College of Korean Medicine, Kyung Hee University In this session, current status and future strategy of electronic medical records in Korea will be briefly reported. In order to promote data-driven platform of traditional Korean medicine, the Ministry of Health and Welfare of the Republic of Korea is supporting the Korean Medicine Clinical Information Big Data Promotion Team to promote Real World Data-based Korean Medicine informatization. This is a big data pilot project to improve public health through Korean Medicine. With this project, our objective is to improve interoperability between other big data platforms (KDCA, NHIS, HIRA, and NCI) by opening to researchers to promote public health research through data link by personal identifiable information. Traditional Korean Medicine is one of the integrative medicine system used by many people around the world for its outstanding treatment outcome and the principle of harmonizing the human body structure. But the lack of standardized terminology for symptoms and signs in the system of Korean Medicine which diagnoses and treats patients organically, poses limitation in using the terminology in medical records. We assumed that the medical terminology used in clinical practice is fundamentally identical with the terms used in traditional medicine, and applied the same broad structure of clinical concepts such as diagnosis, clinical findings, examination, body parts, vital sign, etc. in the SNOMED CT. Nonetheless, unique terms and concepts used in Korean Medicine (e.g. patten identifications, acupuncture points, etc.) were classified in a new category for development and application. The development procedure of SNOMED CT-KM was carried forward in the order of CPG terminology extraction -> settlement of basic terminology -> examination and agreement -> development of terminology library. The Clinical Practice Guideline is a practice guideline developed through agreement by researchers practicing in the area, with systematic reviews and clinical studies, and therefore the SNOMED CT-KM which is a library of clinical terminology developed from The Clinical Practice Guideline holds great meaning. EMR with a standardized data base structure through evidence-based CPG can be the basis for producing standardized clinical information. Standardization of information and terminology, clinical information big data based on real word data can be accomplished with the international cooperation. キーワード:Electronic medical records, standardization, terminology, big data, clinical practice guideline ●略歴 1. Professor, Department of Acupuncture & Moxibustion, College of Korean Medicine, Kyung Hee University, Seoul, Republic of Korea 2. Director of Insurance Affairs, Society of Korean Medicine 3. Vice President, Korean Acupuncture & Moxibustion Medicine Society 4. Director of General Affairs, The Association of College of Korean Medicine 5. Director of Big Data Center for Korean Medicine, National Institute of Korean Medicine, Ministry of Health and Welfare - 63 - シンポジウム4 「鍼灸と多職種連携が切り拓く泌尿器疾患治療の新展開」 座長:名古屋医健スポーツ専門学校杉本佳史 SI4-1 女性の泌尿器科疾患に対する鍼灸アプローチの 可能性を考える 吉川羊子 小牧市民病院泌尿器科排尿ケアセンター 2024年に日本排尿機能学会から公開された「下部尿路症状に関する疫学調査」は本邦において20年ぶり に大規模に行われた排尿の不具合に関する調査である。今回は20代以上の年代を対象とし、頻尿、尿失禁、 尿勢低下など多彩な症状が約8割の方から回答されていることが判明した。女性では、排尿機能をつかさ どる膀胱・尿道という「下部尿路」は骨盤内にあり、隣接した子宮・膣・卵巣などの女性生殖器や、これ らを底支えする「骨盤底筋群」の影響を受けた様々な「下部尿路症状」を訴えることがある。突然の尿意 で頻尿や切迫性尿失禁の症状を呈する「過活動膀胱」、腹圧上昇を来す動作に伴う「腹圧性尿失禁」、膣壁 や子宮など骨盤臓器が下垂・脱出する「骨盤臓器脱」、そして、膀胱・尿道や会陰部に慢性的な不快感や 疼痛を生じる「間質性膀胱炎・膀胱痛症候群」などに悩む女性は少なくないが、「シモの悩み」と羞恥心 から受診をためらう方や、自身の健康はご家族よりも後回しにして我慢をしてしまう、という方はいまだ に多いのではないだろうか。現在は、これらの下部尿路症状や骨盤底周囲の症状に対する診療ガイドライ ンが関連学会によって整備されており、薬物療法、手術療法、理学療法などによって症状の改善が期待で きるようになった。一方で、前述のような排尿症状や骨盤底の症状は、行動療法と呼ばれる生活習慣への 指導・介入により改善することが報告されている。大規模RCTが実施されている研究がいまだ少ないとは いえ、体重管理、便秘の解消、適正な食生活や水分摂取、そして下半身の冷えを防ぐなどの生活指導には 一定の有用性が報告されている。「女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版]」の行動療法の項にはその 他の保存療法として鍼治療や蒸気温熱シートが明記されている。また「間質性膀胱炎・膀胱痛症候群診療 ガイドライン」においても保存療法の項に、鍼(Acupuncture)の記載があり、これらはいずれも推奨グ レードC1ではあるものの、比較的非侵襲的な伝統的治療の一つとしていくつかの報告にも触れられてい る。泌尿器科診療の現場において、ともすると不定愁訴として軽視されがちな患者の悩みについて、鍼灸 的なアプローチの可能性について、皆さんと探ってみたいと考える。 キーワード:女性泌尿器科疾患、行動療法、生活指導 ●略歴 1987年名古屋大学医学部卒業 1988年名古屋大学医学部泌尿器科入局 1999年12月名古屋大学医学部泌尿器科助手 2007年11月名古屋大学医学部付属病院講師 2008年1月より現職 - 64 - シンポジウム4 「鍼灸と多職種連携が切り拓く泌尿器疾患治療の新展開」 座長:名古屋医健スポーツ専門学校杉本佳史 SI4-2 排尿ケアにおける看護師の役割 永坂和子 岐阜保健大学看護学部看護学科大学院看護学研究科 女性のミカタにおいて、気づかれにくい2大疾患として骨粗鬆症と過活動膀胱を挙げています。2003年 日本排尿機能学会による疫学調査では、40歳以上のごく普通に生活している女性の約12%が過活動膀胱と 推定されています。また、女性の尿失禁種類別頻度の報告では、国際失禁会議のメタ解析で「腹圧性尿失 禁」約49%、「切迫性尿失禁」約21%、双方を併せ持つ「混合性尿失禁」約29%」と示されています。女性 の健康を考える上での鍵は女性ホルモン「エストロゲン」です。エストロゲンが急激に減少し、その後の 長い人生において、排尿の悩みを有しながらの日常生活はQOLにも影響します。超高齢化が進む中で、 高齢者医療・未病医学・健康医学等に目を向けた時、若いうちから排尿問題を予防することや早期治療に 向けた取り組みが求められます。「看護師」は、保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号) 第5条に おいて厚生労働大臣の免許を受けて、「傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話」「診療の補助」を 行うことを業とする者と明文化されています。看護師が臨床で遭遇する排尿障害は、主に病院・診療所・ 高齢者施設・在宅医療等で、主に医師の指示のもと「診療の補助」として治療にかかわります。また、日 常生活の中で排尿に関するアセスメントと共に排尿日誌を記録し、失禁分類をした上で多職種と連携して 骨盤底筋訓練、排尿誘導、おむつ交換等の排泄援助を「療養の世話」として行っています。一方、国際疾 病分類第11版(ICD11)に鍼灸が含まれ、2020年のエビデンスレポートには鍼灸がどのような症状に効果 があるかが示されました。こうした時代の流れの中で鍼灸師は、健康寿命を延ばし医療連携の担い手とな り得ることが提言されています。特に子宮頸がん術後の排尿障害、過活動膀胱、夜間頻尿、頻尿・尿意切 迫感等においては、鍼灸の治療効果が報告されています。看護師と鍼灸師の医療連携では、緩和ケアでの 疼痛・悪心・嘔吐の軽減、慢性腰痛を改善するためのセルフケア方法の指導、助産院での鍼灸外来等の実 践報告がありますが、泌尿器科疾患に関しては明らかにされていません。本学会シンポジウムでは、排尿 ケアにおける看護師の役割とともに泌尿器科疾患、言いづらい排尿の悩みを鍼灸師と看護師がどんな場面 でどのように連携して切り開くと「女性のミカタ」の新展開となるのかをディスカッションしていきたい と思います。 キーワード:看護師、多職種連携、排尿障害、排尿の悩み、女性の健康 ●略歴 愛知県立桃陵高等学校衛生看護科専攻科卒業 2016年南山大学大学院ビジネス研究科ビジネス専攻(MBA)名古屋大学医学部附属病院 2000年ブラザー健康保険組合老人保健施設瑞穂看護介護士長 2003年社会医療法人財団新和会八千代病院副院長兼看護部長 2016年人間環境大学大学院看護研究科講師 2024年岐阜保健大学大学院看護学研究科教授 - 65 - シンポジウム4 「鍼灸と多職種連携が切り拓く泌尿器疾患治療の新展開」 座長:名古屋医健スポーツ専門学校杉本佳史 SI4-3 女性泌尿器科分野における多職種連携を 見据えた鍼灸の役割 伊藤千展 烏丸いとう鍼灸院明治東洋医学院専門学校鍼灸学科 2021年、内閣府の骨太方針に「フェムテックの推進」という文言が初めて盛り込まれた。これは女性特 有の健康課題によって生じる経済損失や社会的インパクトが明確化されたことを背景としており、早急な 対策の必要性から産学官連携が活発化し始めている。この問題は泌尿器科分野においても例外ではない。 妊娠、出産、更年期といったライフイベントを経て生じる骨盤底支持機構やホルモン動態の変化には、女 性下部尿路症状(Female Lower Urinary Tract Symptoms:Female LUTS)を引き起こす問題が存在する。20 23年の横断研究によると、日本人女性の25%は尿失禁を有し、腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁が高頻度であ る特徴が報告されている。また未だ病態不明の間質性膀胱炎/膀胱痛症候群は、男性の約5倍の罹患率で、 女性に特異的な難治性疾患が存在することも泌尿器科分野における課題である。Female LUTSでは広範囲 に及ぶQOL低下が問題となるが、女性のライフステージにおける社会進出やキャリア形成のリスクへ直 結することから、フェムテックの活用が期待される領域といえる。本シンポジウムのテーマは、女性泌尿 器科医療における鍼灸活用および多職種連携についての討論である。Female LUTSに関連する診療指針と して、既刊の『女性下部尿路症状診療ガイドライン』『間質性膀胱炎/膀胱痛症候群診療ガイドライン』が あり、鍼治療はいずれにも収載されたことで多職種から認識される契機を得た。しかしながら、エビデン スは限定的で推奨度C1と低い現状にあり、前者では「女性過活動膀胱」に対する鍼治療のRCT2編、総説 1編、後者ではRCT2編、対照群のない介入研究1編に基づく評価となっている。診療ガイドラインでは言 及のない「女性腹圧性尿失禁」に関しては、鍼治療研究は、現在PubMed検索でRCTや二次分析が26編と 増加傾向にあり、今後のメタ解析によるエビデンス統合が期待される。本口演では、LUTSに特化する鍼 灸施術所の立場から、多職種連携を見据えた鍼灸の役割について見解を述べる。現状、Female LUTSに対 するエビデンスは限定的ではあるが、治療の根幹を成す薬物療法や骨盤底筋訓練などと鍼治療の併用が、 それら単独よりも蓄尿症状を有意に改善するという補完的な有用性を示唆するエビデンスは、多職種連携 における重要な観点であろう。Female LUTS診療を牽引される両先生と共に、フェムテックとしての鍼灸 の展開を議論できればと考えている。 キーワード:女性下部尿路症状、鍼灸、フェムテック ●略歴 2010年明治国際医療大学鍼灸学部卒業 2012年明治国際医療大学大学院鍼灸学研究科博士前期課程修了 [現職] 2015年烏丸いとう鍼灸院開院 2021年明治東洋医学院専門学校鍼灸学科非常勤講師 - 66 - シンポジウム5 「支持・緩和医療における鍼灸治療の果たす役割 ー医療連携と専門性の高い鍼灸師の育成にむけてー」 (専門医連携推進委員会主催) 座長: 埼玉医科大学医学部山口智 国立がん研究センター中央病院緩和医療科石木寛人 SI5-1 医療連携と専門性の高い鍼灸師の育成にむけて 大野智 島根大学医学部附属病院臨床研究センター 現在、日本の医学教育の現場では、欧米をはじめとする国際基準に沿った教育改革が進められてきてお り、医師の総合的な能力を高めるためにプロフェッショナリズム教育が重要視されている。医師が社会か らの信頼を得るためには高い倫理基準と行動規範が期待され、プロフェッショナリズム教育がその基盤を 形成することで、医学生は医師としての社会的責任や倫理的判断を体系的に学ぶことが求められている。 プロフェッショナリズム教育は医師だけに求められるものではない。社会インフラとしての医療に携わ る者はすべからくプロフェッショナリズムを身につける必要がある。現代の医療は高度に専門化しており、 多職種の医療者が連携して治療にあたるチーム医療が主流となっている。そのため、単なる医学的知識や 技術だけでなく、多職種とのコミュニケーション能力や協力し合う姿勢が求められる。また、近年、患者 中心の医療が推進されており、患者との信頼関係の構築やインフォームド・コンセントの重要性が益々高 まってきている。その一方、患者の権利意識の変化や医療事故が社会問題化するなかで、医療者は法的・ 倫理的責任が一層問われるようになった。医療安全の観点からも責任感や倫理的判断力の醸成は不可欠と なっている。しかし「プロフェッショナリズムとは何か?」と問われても、漠然と雲を掴むようなテーマ で理路整然と説明できる人は少ないのではないだろうか。本講演では、一つの例としてオックスフォード 大学が提唱したプロフェッショナリズムの定義について紹介するとともに、日本の医療現場における現状 と課題について概説する。 キーワード:プロフェッショナリズム、病鍼連携 ●略歴 1998年島根医科大学医学部(現島根大学医学部) 卒業 2018年島根大学医学部附属病院臨床研究センターセンター長・教授 2022年島根大学医学部附属病院副病院長(安全管理担当)[兼任] 2024年島根大学医学部附属病院緩和ケアセンターセンター長[兼任] - 67 - シンポジウム5 「支持・緩和医療における鍼灸治療の果たす役割 ー医療連携と専門性の高い鍼灸師の育成にむけてー」 (専門医連携推進委員会主催) 座長: 埼玉医科大学医学部山口智 国立がん研究センター中央病院緩和医療科石木寛人 SI5-2 支持・緩和医療における鍼灸治療の果たす役割 板倉英俊、星野直志 神奈川県立がんセンター東洋医学科 近年、海外では支持・緩和医療において鍼灸の臨床的エビデンスが確立されつつあり、がん診療のガイ ドラインにも鍼灸が含まれるようになってきた。実際に、1)疼痛管理、2)化学療法誘発性副作用、3) 放射線治療誘発性副作用、4)精神的ストレスおよび心理的症状、5)がん関連倦怠感(Cancer-Related Fatigue: CRF)、6)ホルモン療法関連症状、7)リンパ浮腫など、幅広い領域で鍼灸が実施されており、 エビデンスに基づいた治療として医療システムに組み込まれている。 一方、日本では長い伝統を有するにもかかわらず、がん領域における鍼灸治療の導入は極めて限定的で あり、医療の表舞台には立っていないのが現状である。その要因の一つとして、病院で臨床経験を積んだ 鍼灸師の数が圧倒的に少なく、病院医療の場で求められる知識や品質を満たした鍼灸治療が行われていな いことが挙げられる。また、日本におけるがん患者に対する鍼灸治療のエビデンスが乏しく、医療従事者 からの信頼を得られていないことも、普及を妨げる大きな要因となっている。 しかしながら、鍼灸治療には大きな可能性がある。精神症状と身体症状を分けずに統合的な治療を行え る点が特徴であり、食事、排泄、睡眠といった基本的な生活活動の改善に寄与するとともに、患者に対す る「手当て」としての役割を果たすことができる。こうした特性は、支持・緩和医療において極めて重要 であり、がん患者のQOL向上に資するものである。 したがって、日本においても、がん領域における鍼灸の標準化を推進し、臨床研究の蓄積とともに、医 療機関での実施体制を整備する必要がある。そのためには、全日本鍼灸学会において、がん患者に対する 鍼灸施術の標準的なガイドラインを策定し、統一された施術基準を確立することが急務である。また、が ん治療の最前線に立つ「がん緩和専門鍼灸師」の認定制度を設け、病院での鍼灸の役割を明確化し、医療 従事者との連携を強化することが求められる。これにより、鍼灸が科学的根拠に基づいた支持・緩和医療 の一環として正式に位置づけられ、より多くのがん患者に適切な治療が提供できるようになるだろう。 キーワード:がん、緩和、支持療法 ●略歴 1999年3月東邦大学医学部卒業 1999年5月東邦大学医学部付属大橋病院第三内科(現:循環器内科) 2006年4月東邦大学医療センター大森病院東洋医学科 2018年4月神奈川県立がんセンター東洋医学科・大阪大学先進融合医学共同研究講座客員教員 - 68 - シンポジウム5 「支持・緩和医療における鍼灸治療の果たす役割 ー医療連携と専門性の高い鍼灸師の育成にむけてー」 (専門医連携推進委員会主催) 座長: 埼玉医科大学医学部山口智 国立がん研究センター中央病院緩和医療科石木寛人 SI5-3 支持・緩和医療における鍼灸治療の果たす役割 小内愛 埼玉医科大学病院東洋医学科 がんと診断された時から、がん治療と支持・緩和医療が車の両輪のように施行され、患者を中心とした 多診療科・多職種チームによる包括的な医療が求められている。支持・緩和医療の一環として、鍼灸治療 の役割は年々注目を集めており、特に海外では臨床研究の成果が増加している。近年、国内のがん診療ガ イドラインにも鍼灸治療が記載されている。がん支持・緩和医療において鍼灸師が適切な役割を果たすた めには、単に鍼灸技術を磨くだけでなく、医療現場で求められる専門性を備えることが不可欠である。第 一に、がん治療に関する知識を深め、化学療法や放射線療法の副作用等を理解し、患者の症状に応じた安 全かつ効果的な鍼灸治療を実践できるようにすることが求められる。第二に、多職種との円滑な情報共有 のために、医療用語や診療記録の理解、疼痛スケール(VAS、NRSなど)やQOL評価指標(SF-36など) の活用が必要である。客観的データを記録し、医療従事者と共有することで、鍼灸治療の位置づけを明確 にし、支持・緩和医療の中でより統合的なアプローチが可能となる。また、がん支持・緩和医療における 鍼灸の役割を拡大するためには、鍼灸師の専門教育の充実が重要である。しかし、現状では鍼灸教育にお いてがん医療に関する専門的なカリキュラムが十分に整備されておらず、臨床現場で即戦力となる人材が 不足している。そのため、教育機関や学会などが連携し、標準化された教育プログラムの整備が必要と考 える。さらに、医療従事者向けの鍼灸教育も不可欠であり、医師・看護師・コメディカルに対して、鍼灸 の作用機序や適応症に関する講習を行うことで、相互理解が深まり、医療連携のさらなる発展が期待され る。本講演では、医療連携における鍼灸師の役割と、緩和ケアチームとの実際を示し、専門性を高めるた めの育成の方向性について述べる。 キーワード:支持医療、緩和医療、医療連携 ●略歴 【所属】 埼玉医科大学病院東洋医学科鍼灸師(主任) 【学歴】 2004年明治鍼灸大学(現明治国際医療大学)鍼灸学部鍼灸学科卒業 【職歴】 2006年埼玉医科大学病院東洋医学科非常勤職員 2010年~ 埼玉医科大学病院東洋医学科専任職員 同大学総合医療センター緩和ケアチーム(兼担) 同大学国際医療センター支持医療科(兼担) - 69 - シンポジウム5 「支持・緩和医療における鍼灸治療の果たす役割 ー医療連携と専門性の高い鍼灸師の育成にむけてー」 (専門医連携推進委員会主催) 座長: 埼玉医科大学医学部山口智 国立がん研究センター中央病院緩和医療科石木寛人 SI5-4 緩和ケアチームとしてのがん患者に対する 鍼施術の経験から 増山祥子 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科 米国統合腫瘍学会(SIO)と米国臨床腫瘍学会(ASCO)の合同診療ガイドライン(2022)では、鍼は 乳がん患者のアロマターゼ阻害薬に関連する関節痛やがんによる一般的な疼痛または筋骨格系の疼痛、化 学療法による末梢神経障害などに肯定的な推奨がなされている。日本緩和医療学会のがんの補完代替療法 クリニカル・エビデンス(2016)には、がん疼痛、化学療法による悪心・嘔吐の軽減やQOLを改善させ るという記載がある。有用ではないと結論付けられているいくつかの症状もあるが、その中には実際の臨 床経験上有用だと思われる、あるいは今後肯定に転じるかもしれないと思われるものもある。われわれは 大阪急性期・総合医療センター緩和ケアチームとして、入院中のがん患者に対する鍼施術を試行してきた。 Visual Analogue Scale(VAS)の臨床的に意味のある最小値(MCID)を20%とした場合それ以上の軽減 がみられた患者数の割合は、疼痛59-67%、浮腫50-75%、しびれ18-60%、嘔気33-70%、こり80-88%、倦怠 感38-75%、呼吸のしにくさ83%だった。施術前後のVAS平均値の比較では、いずれも鍼の介入直後に自覚 症状の有意な軽減がみられた。病院病棟での鍼施術の実施には、本学と病院の倫理委員会で承認を得たの ち、主治医と緩和ケアチームの承諾および患者の同意書のサインが必要となる。さらに重要となるのは、 患者の血液検査情報から、英米のがん専門の臨床研究施設や学術団体が提示するがん患者への鍼の禁忌の 条件と基準について確認し、鍼施術(皮膚を刺入する鍼)の安全性の担保およびリスクを回避する対応が 必要である。これがクリアできて初めて鍼施術は実施可能となる。通常治療を行う入院患者の多くは、身 体に医療機器を挿入・装着した状態でいることも多いため、鍼施術が可能な体位などにも配慮が必要であ る。その他の情報入手も含めて、鍼灸師が緩和ケアに携わる際の医療連携には、緩和ケアチームのカンファ レンスへの参加と病棟看護師、主治医との情報交換ができる連携や体制が理想であるが、われわれ鍼灸師 にとってこれらが十分に整えられているフィールドは多いとは言えないので、これらの情報や知識を整理 して、在宅や外来などに適合するようアレンジし院外施術としての医療連携のあり方を探る必要があると 考えている。 キーワード:がん緩和、緩和ケアチーム、鍼灸 ●略歴 2006年筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター臨床研修修了 2009年人間総合科学大学人間総合科学研究科修士(心身健康科学) 2006年筑波技術大学保健科学部短期雇用職員研究補助 2006年竜ケ崎医院臨床鍼灸非常勤 2006年東京都情報サービス産業健康保険組合東中野保健センター臨床鍼灸非常勤 2007年森ノ宮医療大学助手、同助教、同講師、同准教授(現在に至る) - 70 - シンポジウム5 「支持・緩和医療における鍼灸治療の果たす役割 ー医療連携と専門性の高い鍼灸師の育成にむけてー」 (専門医連携推進委員会主催) 座長: 埼玉医科大学医学部山口智 国立がん研究センター中央病院緩和医療科石木寛人 SI5-5 国立がん研究センター中央病院の鍼灸治療と 普及への取り組み 堀口葉子 国立がん研究センター中央病院緩和医療科 国立がん研究センター中央病院(NCCH)は34の診療科のあるがん治療に特化した急性期病院である。 当院の鍼灸治療は1985年に麻酔科の横川陽子医師によってはじまった。東方会式接触鍼法から始まり、各 種刺鍼法、低周波通電療法など様々な手法も取り入れて現在は4名の鍼灸師が携わり、緩和ケアの一環と して行っている。 鍼灸治療の適応は緩和医療科の医師が判断する。標準的な緩和ケア・支持療法で苦痛が取り切れない患 者を対象とし、研究目的で実施している。 鍼灸が介入するがん患者の痛みはがんによる痛み、がん治療による痛み、消耗や衰弱による痛み、がん と関係のない痛みに分類される。現在はがん治療に伴う痛みの治療に力を入れており、手術後や化学療法 の副作用に起因する神経障害性疼痛、長期臥床による筋筋膜性疼痛が多い。その他に便秘・下痢、倦怠感、 呼吸困難感、リンパ管浮腫、幻肢痛、終末期の身の置き所のなさ等に介入事例がある。 患者の病期は、がん治療中、がんは無再発で経過観察中、治療を尽くし緩和的に過ごす終末期と様々で ある。病期ごとに注意点はあるが、特に気を付ける事は鍼灸の有害事象でがん治療が中止になることで、 がん治療の中止は患者予後の悪化につながるため避けなくてはならない。介入では病態/体表の腫瘍/易感 染性/易出血性の確認、症状軽減を諦めず、でも症状を追い過ぎてドーゼオーバーにしない、患者と担当 医を不安にさせない、が大切である。 今NCCHの鍼灸治療は新たなフェーズを迎えている。当院緩和医療科の石木寛人医師によって2022年か らがん患者に対する2つの鍼灸臨床試験が始まった。2024年には非公式だが外部医療機関の医師・鍼灸師、 鍼灸養成大学・養成校の鍼灸師を交え多施設連携(病鍼連携)をスタートした。がん患者ひとりひとりの 辛い症状の軽減と、医療機関で鍼灸治療をもっと身近なものにしていくことを目的に行ってきた臨床研究、 他職種および患者への普及啓発、病鍼連携の取り組みについて紹介し今後の課題を共に考えたい。 キーワード:がん支持療法、鍼灸治療 ●略歴 1996年学習院大学文学部卒業 2011年横浜呉竹医療専門学校卒業 2013年東京呉竹医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科卒業 2013年~2017年東海医療学園専門学校講師 2014年仁居(にこ)治療院開業 2017年国立がん研究センター中央病院緩和医療科勤務 2021年~ 東京呉竹医療専門学校講師 2023年~ 医療鍼灸協会講師 - 71 - シンポジウム6 「フェムテックによる女性のWell-beingに貢献する鍼灸」 座長: 明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科田口玲奈 関西医療大学保健医療学部はり灸・スポーツトレーナー学科坂口俊二 SI6-1 フェムテックによる女性のWell-beingに貢献する鍼灸 関口由紀 女性医療クリニックLUNA ネクストステージ 【はじめに】フェムテック(Femtech)とは、狭義には、Female(女性)とTechnology(技術)を組み合 わせた造語で、女性特有の健康課題をテクノロジーで解決する製品やサービスを指す。具体的には、月経・ 妊娠・更年期・不妊・婦人科疾患・セックス・ポスト更年期などに関してサポートする製品やサービスを 指す。一方広義には、女性が、情報を適切に取得し・考え・自らの意志で行動するために、女性自身や会 社・自治体・社会全体を啓発するアクションを指すこともあり、フェムケアと言われることもある。日本 フェムテック協会では、認定資格1級にフェムケアコースを設定しており、適切な女性の健康情報普及に 努めている。 【日本では、優良なプライマリーケアは、鍼灸院で提供される】日本においては、鍼灸・湯液で病気を治 してきた歴史がある。明治から昭和初期の西洋医学偏重の時代に、鍼灸師が、東洋医学の学問体系と技術 を継承した。現在でも日本人が体調不良を感じた時に最初に訪れる施設が、クリニックではなく鍼灸院で あり、それが患者にとって幸運であることも多い。 【フェムテックにおける鍼灸師の役割】現代は、自らSNS等を駆使して、豊富な健康情報を得ることがで きる時代である。しかしその豊富さ故に、自分に適した情報を選択することが難しくなっている現状があ る。この情報迷子状態の人々に、適切な選択肢を提示して選んでもらうのが、プライマリーケアを担うス ペシャリストの重要な役割である。未病の適切に推定できる鍼灸師は、この役割が担うニーズがあるだろ う。高齢社会である日本で、女性が、明るく楽しい人生を送ってもらうためのサポーターとしての鍼灸師 の責任は大きい。 キーワード:フェムテック、鍼灸師、プライマリケア ●略歴 2007年横浜市立大学大学院医学研究科修了 2009年日本大学グローバルビジネス研究科修士課程修了 2005年横浜元町女性医療クリニックLUNA開業 2018年女性医療クリニックLUNA 横浜元町(生殖年齢女性対象クリニック)と女性医療クリニックLUNA ネクスト ステージ(更年期以降の女性対象クリニック)を開設 2022年中高年女性向けヘルスケアサイトフェムゾーンラボ開設 2022年日本フェムテック協会代表理事に就任横浜市立大学客員教授 - 72 - シンポジウム6 「フェムテックによる女性のWell-beingに貢献する鍼灸」 座長: 明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科田口玲奈 関西医療大学保健医療学部はり灸・スポーツトレーナー学科坂口俊二 SI6-2 鍼灸師がフェムテック分野で活躍するための可能性と戦略 月岡秀彰 一般社団法人日本鍼灸協会 近年、女性の健康とウェルビーイングを支援するテクノロジーである「フェムテック」、そして「フェ ムケア」は、国内外で急速に発展し、多様な製品やサービスが市場に登場しています。 しかし、その成長市場において、鍼灸師の専門性が十分に活かされているとは言い難いのが現状です。 本講演では、フェムテック・フェムケア分野における鍼灸師の役割を再考し、鍼灸の持つ可能性を最大 限に活用するための具体的なアプローチについて考察します。 まず、国内外のフェムテック・フェムケア市場の動向を概観し、女性特有の健康課題に対する最新のソ リューションを紹介します。 次に、鍼灸師がフェムテック・フェムケア分野に参入する意義とその利点について言及し、実際に鍼灸 院でフェムテックを活用した取り組み事例を複数提示します。 これにより、参加者が自身の施術に応用できる具体的なヒントを提供するとともに、業界全体として鍼 灸師がどのようにこの新たな市場で活躍できるかを探ります。 本発表を通じて、フェムテック・フェムケアと鍼灸の融合がもたらす新たな可能性を提示し、鍼灸師が 女性のウェルビーイングにさらに貢献できる未来を展望します。 キーワード:フェムテック、フェムケア ●略歴 1999年工学院大学大学院工学研究科修士課程修了 1999年株式会社ブーマー営業部勤務 2005年株式会社つくばテレビ営業部部長 2008年株式会社メディアトライブ取締役 2010年株式会社ITi 代表取締役 2015年一般社団法人日本鍼灸協会理事 2018年一般社団法人日本温活協会理事 2021年一般社団法人日本フェムテック協会事務局次長 2022年一般社団法人国際抗老化再生医療学会監事 - 73 - シンポジウム6 「フェムテックによる女性のWell-beingに貢献する鍼灸」 座長: 明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科田口玲奈 関西医療大学保健医療学部はり灸・スポーツトレーナー学科坂口俊二 SI6-3 「女性×鍼灸」を軸とした鍼灸・お灸の広報活動 樋口亜紀子 株式会社山正 弊社は1895年に艾卸業の会社として滋賀県の伊吹山近くで創業しました。2003年からはディスポ鍼の製 造・販売を開始し、業務用鍼灸材料の総合メーカーとして、材料の安定供給や商品開発に取り組んでいま す。近年、鍼灸の年間受療率やお灸の使用率の低迷が課題となっています。弊社では、この状況につい て自社商品の販売促進だけを目的とせず、より広い視点から捉え、一般の方々への鍼灸・お灸の認知向上 に貢献する必要があると考えています。その一環として、2022年より広報誌「すえとこ」を発行し、臨床 家の先生方へのインタビュー記事を中心に、業界の動向や商品に関する知識を交えた情報発信を行ってい ます。広報誌「すえとこ」は、鍼灸業界の専門家だけでなく、一般の方々にも読んでいただけるよう、 身近な話題をテーマにし、分かりやすい言葉で情報を届けることを意識しています。その中でも「女性× 鍼灸を考える」という企画では、女性の健康課題解決に取り組む専門家に焦点を当て、臨床事例や活動内 容を紹介しています。婦人科疾患の治療においてお灸が広く用いられることから、「女性×鍼灸を考える」 の視点はお灸の普及促進にも有効と考えています。フェムテックは国の政策にも取り入れられ、働く女性 の健康支援が進むなど社会全体に変化をもたらしつつある分野です。これに注目し、女性の健康課題を解 決する手段の一つとしての鍼灸の普及促進を進めることが、今後の重要な戦略であると考えています。弊 社ではフェムケア分野の治療をより効果的に支援するための商品開発にも力を入れています。近年発売し た煙の少ない/出ないお灸は、煙やにおいが気になる環境でもお灸を取り入れやすくし、鍼灸治療の選択 肢を広げることを目指して開発したものです。本発表では、「すえとこ」に掲載した「女性×鍼灸を考え る」の3つの事例を紹介します。これらを通じて、フェムケア分野における鍼灸の強みを明らかにし、そ の可能性を提示します。また、弊社の広報活動が、先生方の臨床活動や鍼灸業界における普及活動の参考 となれば幸いです。 キーワード:灸、フェムテック、企業戦略 ●略歴 2010年株式会社山正勤務 - 74 - シンポジウム7 「実技教育(診察・鍼・灸)の客観化」(教育研修部主催) 座長:北海道鍼灸専門学校二本松明 明治国際医療大学福田文彦 SI7-1 Virtual Realityを用いたOff the Job Trainingの展開 横堀將司 日本医科大学大学院医学研究科救急医学分野 個々の患者に迅速かつ最善の治療を施すのが医師の使命であり、診療の場においても常に質を保つこと が不可欠である。しかし、若手医師・看護師は働き方改革による労働時間制限からOn the Job trainingの 場を失われつつある。また、患者に死が迫るような緊迫した臨床現場では、患者治療が優先され医学生・ 看護学生は患者に近寄ることもできない。臨床医学の教育現場では、より効率よく、リアルで、インプレッ シブな教育手法が求められている。本学では上記の課題を解決すべく、患者やご家族の許可をいただき、 熟練した医療スタッフによる淀みない初期診療をVR化し、学生授業や若手医師・看護師教育に生かす取 り組みを進めている。医学教育センター内に看護師資格を持つDX担当オペレーターを配置し、医療者目 線を生かしたVRコンテンツの撮影から制作、授業展開までを支援することで効率的な授業展開が可能と なっている。これにより学生や若手医療者がエキスパートスタッフによる診療を繰り返し疑似体験でき、 場所や時間を問わず的確な診療手順を体得できる。また複数の受講生目線を共有することでタイムリーな フィードバックも可能になっている。空間的な制約のないことから遠隔による授業展開も可能となり、教 育の地域間格差も無くすことが可能となる。医師の働き方改革や地域医療偏在を解決する方略として、 VR教育ツールがわが国の医療のクオリティを保ち、多くの患者の救命に貢献することに大きく期待する。 キーワード:Virtual Reality(VR)、クリニカル・クラークシップ、救急医学 ●略歴 1999年群馬大学医学部卒業 1999年日本医科大学付属病院高度救命救急センター入職 2010年米国マイアミ大学医学部脳神経外科客員研究員 2013年日本医科大学救急医学教室講師 2018年同准教授 2020年日本医科大学大学院医学研究科救急医学分野教授 - 75 - シンポジウム7 「実技教育(診察・鍼・灸)の客観化」(教育研修部主催) 座長:北海道鍼灸専門学校二本松明 明治国際医療大学福田文彦 SI7-2 鍼灸実技教育における四診法の科学化 和辻直 明治国際医療大学大学院鍼灸学研究科伝統鍼灸学分野 東洋医学の診察法(日本伝統鍼灸学の四診法)には、望診・聞診・問診・切診がある。四診法は東洋医 学概論の科目の中に含まれ、鍼灸師養成施設や大学などで講義や実習が行われている。教科書は主に(公 社)東洋療法学校協会編『新版東洋医学概論』が用いられ、その第4章四診(p201~267、全頁の割合 20.3%)に、望聞問切の基本的な診察内容と臨床意義が記載されている。東洋医学の診察法における科学 化の研究は以前からなされているが、基礎的な研究は十分でなく、研究への取り組み数が少ないために、 活発に行われていないのが現状である。四診(望聞問切)の科学化は部分的には進んでおり、全てにおい て停滞しているというわけではない。望診では舌診の研究が最も進んでおり、舌診の撮影法は国際標準化 機構の東アジア伝統医学分野の委員会(ISO/TC249)で、舌診機器の形態規格、光源、カラーチャートな どが規格・発行されている。この舌診機器を用いた研究成果では、舌色の挺舌時間や体位の影響などを検 討したものがある。聞診の研究では音声スペクトラムの研究がある。問診研究では調査票を用いた研究や 自動問診システムを用いた研究が行われ、問診項目を選択することで証の予測判断している。切診では脈 診の研究が古くから行われ、養成施設では脈診訓練法の開発などが行われている。腹診研究は主に医師に よる腹診の臨床研究が行われ、最近では腹診シミュレータを開発し医学教育に活用している施設もある。 また穴の反応では幾つかの文献や書籍で図示化されているが、共通認識を得た形状というわけでない。 背部兪穴の硬さについては部分的には検証されている。このように四診法の研究は部分的には行われてお り、それらを統合した研究は殆ど行われていないのが現状である。なお海外の現状は日本と大きく異なり、 中国、韓国などでは伝統医学の診察法に対して、現代医学の検査と同様に診察料として設定され、保険適 応となっており、診察機器の開発や活用が進んでいる。望診(舌診)、聞診、切診(脈診、腹診、切穴) など、日本伝統鍼灸学における科学化の現状を紹介し、今後、鍼灸教育や鍼灸臨床にどのように還元して いくのかなどの課題を提示する。 キーワード:東洋医学、四診、望聞問切、科学化、日本伝統鍼灸学 ●略歴 【現職】明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学講座教授、明治国際医療大学大学院教授 1987年明治鍼灸大学鍼灸学部卒業 1991年明治鍼灸教員養成施設卒業 2004年博士(鍼灸学)取得 2015年明治国際医療大学鍼灸学部教授 2024年明治東洋医学院専門学校鍼灸学科学科長 【学会活動】(公社)全日本鍼灸学会監事、日本伝統鍼灸学会会長、日本統合医療学会理事など - 76 - シンポジウム7 「実技教育(診察・鍼・灸)の客観化」(教育研修部主催) 座長:北海道鍼灸専門学校二本松明 明治国際医療大学福田文彦 SI7-3 刺鍼方法の客観化について 谷口博志 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 刺鍼方法の正解とは何か。はり師によってそれぞれ異なる見解があるが、教育機関において一定の水準 ではり師を輩出する必要があるため、客観的な基準を確立することが求められる。現在、本邦で最も広く 活用されている手技は管鍼法であり、成書には「この方法は刺入が簡単であり、かつ無痛に近い切皮がで きることから~」とある(はり灸実技〈基礎編〉, 医道の日本社)。このことから、無痛切皮は刺鍼方法 の正解の一つと考えられる。しかしながら、切皮痛の有無を指標とした場合、評価者が常に同じ痛みを感 じることを前提とするべきだが、これは不可能である。そのため、痛みそのものを客観的な刺鍼法の基準 とすることは難しい。それでは、管鍼法において切皮痛に関わる因子には何があるのか。その重要な因子 の一つとして押手が挙げられる。そこで我々は、ひずみゲージを用いて押手に関わる圧力を経時的に記録 し、押手圧の客観化を試みた。具体的には、鍼管にひずみゲージを貼付し左右圧を計測するとともに、シ リコン製の刺鍼練習台に埋め込んだひずみゲージで上下圧を記録した(180°間隔で3軸測定)。その結果、 刺鍼動作に伴う押手圧の変化を経時的に測定できるようになった。次に、実際の臨床に携わるはり師の押 手を「正解(理想的な押手)」と仮定し、低学年と高学年の学生の押手との比較検討を行った。その結果、 ひずみゲージで測定した押手の左右圧および上下圧において、はり師と低学年の間には明らかな違いが見 られた。はり師の押手は安定性が高く、さらに鍼管を保持する際にもその安定性を維持しながら操作して いることが明らかとなった(『現代鍼灸学』2023)。切皮痛の発生要因として、押手圧による皮膚の滑りや ズレが指摘されている。今回測定されたはり師の押手の安定性は、こうした滑りやズレを制御するため の方法を、臨床経験を通じて習得した結果であると示唆される。今後は押手圧の違いと切皮痛の発生率、 皮膚表層の形状変化を統合的に分析し、無痛切皮の刺鍼方法を客観的に明示できると考えている。「押手 の圧は強めが良い」「押手は手を添えるだけ」といった主観的な表現で教育を受けている学生にとって、 押手圧の波形を確認しながら教員の刺鍼技術を模倣することで、より効果的に技術を習得できる可能性が ある。本研究をさらに発展させ、はり師の技術向上に寄与することを期待している。 キーワード:管鍼法、ひずみゲージ、押手圧、前揉圧、鍼管保持圧 ●略歴 2002年明治鍼灸大学卒業 2007年明治鍼灸大学大学院博士後期課程修了(鍼灸学博士) 2007年明治鍼灸大学基礎鍼灸学教室助教 2007年デューク大学外科学教室特別研究員 2008年ウィスコンシン医科大学外科学教室ポストドクトラルフェロー 2008年明治国際医療大学基礎鍼灸学講座助教 2017年東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科講師(現在に至る) 【所属学会】自律神経学会、日本生理学会、日本医学教育学会など - 77 - ディスカッション1 「救急・集中医療における鍼灸の可能性を探る」 (専門医連携推進委員会主催) 座長: 埼玉医科大学東洋医学科山口智 公益社団法人日本鍼灸師会小林潤一郎 PD1-1 救急・集中医療における鍼灸治療の果たす役割 中永士師明 秋田大学救急・集中治療医学講座 救急医療は内科的疾患、外傷などの外科的疾患、マイナーエマージェンシーなど、多岐にわたる。その ため、ひとつの医療体系にこだわらずに西洋医学や鍼灸を含めた東洋医学など多種多様の医療の長所を柔 軟に活用して、患者の健康増進に役立てることが肝要である。湯液では漢方薬を消化管に注入することか ら始まる。そのために経口摂取だけではなく、注腸のような方法も活用せざるを得ない。一方、鍼灸は経 口摂取が困難な状況でも施術することができる。すなわち、先急後緩の最たるもので、救急・集中治療に おいては、特に優位なところであると思われる。われわれは尿路結石症、めまい、嘔気・嘔吐症、呼吸不 全、破傷風による筋痙攣、急性腰痛症などに豪鍼や円皮鍼を応用している。鍼治療単独例もあるが、ほと んどの症例では西洋医学や漢方治療も併用している。ここでは、それらの実臨床例を供覧させていただく。 医師が救急・集中治療を行いながら、鍼治療を行うには限度もあり、鍼灸師の院内対応が望まれる。残念 ながら、鍼灸部門が設立されている急性期病院は数少ない。鍼灸も急性期医療に有用と考えられ、病鍼連 携として鍼灸師も急性期から活動できる環境を整えることも今後の課題であろう。 キーワード:救急医療、集中治療、先急後緩、鍼治療 ●略歴 1989年奈良県立医科大学卒業 1997年秋田大学医学部救急医学助手 2008年秋田大学医学部附属病院漢方外来長(兼任) 2015年秋田大学救急・集中治療医学講座教授 2021年秋田大学医学部附属病院高度救命救急センターセンター長(兼任) - 78 - ディスカッション1 「救急・集中医療における鍼灸の可能性を探る」 (専門医連携推進委員会主催) 座長: 埼玉医科大学東洋医学科山口智 公益社団法人日本鍼灸師会小林潤一郎 PD1-2 救急・集中治療で回復を促す鍼灸 加島雅之 熊本赤十字病院総合内科 救急・集中治療において、西洋医学が主軸を担うことは、議論の余地はない。西洋医学は特に、手術療 法や抗生物質に代表される病巣の排除および、抗炎症療法に代表される体内の過剰な反応の遮断、輸液・ 循環作動薬・人工呼吸に代表される循環・呼吸の基本的な管理に優れている。こうしたものによって多く の致死的病態の予後が改善されてきた。一方、現在では漢方(漢方薬・鍼灸)は、現代では慢性疾患の部 分症状や、疾患診断前症状(いわゆる不定愁訴)に応用される場合が多いが、近代以前において、正式な 医学であったため、医学の主な命題が救命であることは、洋東西を問わず同じであり、現代の西洋医学が 救急・集中治療分野で対応するような病態に対して、漢方は多くの経験を集積し対処法を開発してきた歴 史がある。その中でも、西洋医学が対応しにくい、治癒過程の促進を目指す方法論に関して、漢方には様々 な方法が存在している。殊に、鍼灸は自律神経が介在する問題や神経・筋の問題に対して、速やかにかつ、 西洋医学が出来ないこと・西洋医学よりよりきめ細やかに、対応することが可能である。その中でも、消 化管の蠕動調整、呼吸における換気血流不均衡の是正、神経障害性疼痛、せん妄、可動域制限の解除といっ た分野で大きな効果を発揮する。当院は、年間4万人(2022年実績)を超える救急救命センターを備える、 日本屈指の救急病院であり、常勤鍼灸師1名と漢方医が組んで、急性期での包括的漢方の応用を試みてい る。ここでは、当院での経験を踏まえて、救急・集中治療領域での鍼灸の可能性を論じてみたい。 キーワード:救急、集中治療 ●略歴 2002年宮崎医科大学医学部卒業同年熊本大学医学部総合診療部入局 2004年沖縄県立中部病院総合内科 2005年熊本赤十字病院内科勤務 2006年亀田総合病院感染症科 2013年総合内科副部長 2014年総合診療科兼務 2017年~ 熊本大学医学部臨床教授漢方医学系統講義担当 熊本大学薬学部非常勤講師 東邦大学医療センター大森病院東洋医学科客員講師 2018年~ 宮崎大学医学部臨床教授総合内科担当 2019年より現職 - 79 - ディスカッション1 「救急・集中医療における鍼灸の可能性を探る」 (専門医連携推進委員会主催) 座長: 埼玉医科大学東洋医学科山口智 公益社団法人日本鍼灸師会小林潤一郎 PD1-3 救急・集中治療領域において鍼治療の果たす役割とは? 松本淳 岐阜大学第二内科 重症患者に対する高度な西洋医学的治療が集学的に行われる救急・集中治療領域において、鍼治療が役 に立つことはあるだろうか?演者らは、高度救命救急センターの機能を有する岐阜大学医学部附属病院高 次救命治療センターの集中治療患者に対する補完的治療として、救急・集中治療専門医らとの密接な連携 のもとに鍼治療を行ってきた。今回は、演者らのこれまでの取り組みの一端と、救急・集中治療領域の鍼 治療に関する国内外の主な論文報告を紹介することで、この領域における鍼治療の可能性を探る契機とし たい。
演者らは、入院中の人工呼吸離脱困難患者に対して呼吸状態の安定目的にて鍼治療を行い、 良好な経過をたどった症例を経験している(Matsumoto-Miyazaki J, et al. Med Acupunct. 2024)。これま でに行った後方視的検討では、人工呼吸患者に対する鍼治療の直後効果として頻呼吸の減少や換気量の増 加、動肺コンプライアンスの増加など呼吸状態の安定につながる反応が観察された(Matsumoto-Miyazaki J, et al. J Alt Complement Med. 2018)。また、同センターの緊急入院患者のせん妄予防を目的として標 準治療に追加して鍼治療と漢方の東洋医学的治療を行った。その結果、標準治療のみの期間に比べて、鍼 と漢方追加期間では、せん妄の発症率が減少した(Matsumoto-Miyazaki J, et al. Am J Chin Med. 2017)。 さらに、急性期から亜急性期にかけての意識障害患者の回復促進目的にて鍼治療を併用し、鍼治療中に応 答反応の向上が得られた症例を経験している。 集中治療領域における鍼治療または指圧や経穴経皮的電気刺激等を含めた鍼関連経穴刺激療法の英語文 献を探索すると、対象となった病態・愁訴として消化管障害に関するもの、敗血症関連、人工呼吸患者に 関連するものなどがみられ、その他、睡眠や痛み、せん妄予防、不安などがみられる。同様に救急領域に おける英語文献を検索すると疼痛を対象としたものが多い。これまでの報告をみるかぎりでは、これらの 領域の鍼治療に関して重大な有害事象は報告されていない。ただし、厳格な無作為化比較試験などの質の 高い報告は少ないのが現状であり、今後、より質の高い研究を積み重ねる必要がある。 集学的な治療を行っても十分な改善が得られない症例に対して鍼治療が有用となる場面があると考えら れるが、今後さらに詳細な検討を行い、質の高いエビデンスを構築する必要がある。 キーワード:集中治療、鍼治療 ●略歴 1997年立命館大学法学部卒業 2001年明治鍼灸大学(現明治国際医療大学)卒業 2003年同大学院博士前期課程修了(修士[鍼灸学]) 2018年岐阜大学大学院医学系研究科博士課程修了(博士[医学]) 2006年中部脳リハビリテーション病院(旧[-2021年]木沢記念病院)・中部療護センター(非常勤) 2007年岐阜大学大学院医学系研究科循環病態学技術補佐員、非常勤講師 2021年岐阜大学医学部附属病院第二内科 - 80 - ディスカッション2 「女性の潜在鍼灸師の復帰について 問題提起から復帰システムに繋ぐ」 座長:一般社団法人愛知県鍼灸師会長谷川栄一 高橋鍼灸院高橋順子 PD2-1 潜在看護師の復職支援と継続して働き続けられる取り組み 三浦昌子 公益社団法人愛知県看護協会 厚生労働省医政局は、2021年4月1日に看護職員の確保に向けた施策の主要な柱として、「新規養成」「復 職支援」「定着促進」の三本柱を掲げている。看護職員の需要と供給は、2025年には180.1万人の需要が見 込まれている。しかし、訪問看護においても病院においても慢性的な人材不足を抱えており、これに対応 するための人材確保が急務となっている。厚生労働省の調査によると、潜在看護師の19.6%が「看護職員 以外として働きたい」、17.5%が「就業希望なし」と回答している。つまり、潜在看護師の約40%が働き たくないと考えている。その理由は人間関係、子育て・介護と仕事との両立が不安、夜勤が心配などであ る。 そこで、各都道府県は看護協会の管轄にあるナースセンターにより、無料職業紹介や情報提供、相談対 応などの事業を通じて、潜在看護職の復職支援のための教育を行い、病院や一般診療所などに紹介を行っ ている。また、人材確保においては、コロナ禍の2021年度をピークに20代、30代の若年層の求職者が減少 している。就業中の看護職員は7.8人に1人は60歳以上という年齢構成が変化してきている。この看護職員 の年齢構成は全国的にも同様である。そこで、この少子化における労働生産年齢が減少していることを踏 まえ、当協会は令和3年6月に55歳以上の看護師をプラチナナースとし、プラチナナース登録制度を開始し た。現在、登録者は約1000人である。プラチナナースの活躍促進を図るために教育体制を整備しスキルや 経験値の高いプラチナナースをニーズのある施設につなぐしくみの構築に向け、プラチナナースサポート センターを創設した。中小規模病院の新人教育の支援を開始し、看護管理、医療安全へと支援を拡大した。 実際に小規模病院からの看護管理についての支援の申し込みに対し、プラチナナースの看護管理者を紹介 し、病院とプラチナナース間で雇用契約を結び支援を行った。このように地域包括ケアシステムが深化・ 推進される現在において、中小規模病院の役割は大きく、プラチナナースにより中小規模病院を支援する しくみは有用であると考える。 今回これらの取り組みを紹介する中で現状の課題を共有し定着促進の取り組みについて皆さんと考えて みたい。 キーワード:復職支援、定着促進、プラチナナース ●略歴 2009年愛知県立看護大学大学院看護学研究科修士課程修了 2006年名古屋大学医学部附属病院看護部長 2007年名古屋大学医学部附属病院副病院長(兼務) 2015年名古屋大学医学部附属病院卒後臨床研修・キャリア形成支援センター看護キャリア支援室教授 2020年~現在公益社団法人愛知県看護協会会長 - 81 - ディスカッション2 「女性の潜在鍼灸師の復帰について 問題提起から復帰システムに繋ぐ」 座長:一般社団法人愛知県鍼灸師会長谷川栄一 高橋鍼灸院高橋順子 PD2-2 歯科衛生士会の復職支援の取り組み 久保山裕子 日本歯科衛生士会 歯科衛生士の多くは女性であり、90%が歯科診療所に勤務している。就業者数は14万人を超えているが、 就業していない歯科衛生士もそれを超える数がいる。結婚や子育てで離職するものが多く、復職者の数は 他職種と比較して少ないと言わざる得ない。しかし歯科では慢性的に歯科衛生士不足が課題となっている ため、歯科医師とともに復職の取り組みをしてきた。今回は歯科衛生士復職支援のための研修やマッチン グについて報告し資格を持った者がやりがいを持って復職するにはどのようなことが必要かを考えたい。 キーワード:復職支援、歯科衛生士 ●略歴 1976年東京医科歯科大学歯学部附属歯科衛生士学校卒業 1976年福岡歯科大学附属病院 現在福岡ハートネット病院非常勤勤務 筑紫歯科医師会口腔管理推進室非常勤勤務 - 82 - ディスカッション2 「女性の潜在鍼灸師の復帰について 問題提起から復帰システムに繋ぐ」 座長:一般社団法人愛知県鍼灸師会長谷川栄一 高橋鍼灸院高橋順子 PD2-3 女性の潜在鍼灸師の復帰について~はじめの一歩~ 半藤花奈1)、松浦朱里2) 1)中和医療専門学校 2)鍼灸イズン 本ディスカッションでは、女性の潜在鍼灸師の復帰支援をテーマに、現状の課題を整理し、持続可能な 支援システムの構築について議論します。近年、結婚、育児、家庭の事情を理由に臨床を離れる女性鍼灸 師が増加していますが、復帰における障壁が十分に整理されていません。そこで、復職支援に関する情報 を収集し、必要な支援策について意見を交わします。また、(公社)愛知県看護協会と(公社)日本歯科 衛生士会における離職者支援の取り組みと課題を共有し、他業界での知見を参考にしながら、鍼灸業界に おける持続可能な復帰支援システムのあり方について、多角的な視点から議論を深めていきます。本ディ スカッションを通じて、女性鍼灸師がより働きやすく、キャリアを継続しやすい環境を整備するための方 向性を明確にすることを目指します。 キーワード:潜在鍼灸師、復帰支援制度、キャリア継続、持続可能な支援 ●略歴 ■半藤花奈 2015年中和医療専門学校卒業 2020年東京医療専門学校教員養成科修了 2021年出張専門鍼灸開業 中和医療専門学校勤務 ■松浦朱里 2005年中和医療専門学校卒業 2011年はりきゅうHARU開業 2023年鍼灸イズン開業 - 83 - 実技セッション「フェムテック!Well-being!社会が求める鍼灸師に必要なイロハ ~原点回帰と新たなる挑戦~」 座長:新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科粕谷大智 名古屋医専中島紳景 PS1-1 原点回帰!フェムテック鍼灸を実践する為に 必要な医療面接・接遇 フェムテック専門鍼灸への挑戦1:耳鍼編 高野道代 新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 【原点回帰!フェムテック鍼灸を実践するために必要な医療面接・接遇】 女性の健康やライフステージに対して、広範囲にわたるサポートが可能な鍼灸は、特に女性特有の健康 課題やライフステージへの対応において重要な役割を果たします。これらの課題に適切に対応するために は、女性のライフステージや特有の健康問題に対する理解と、患者が安心して相談できる環境づくり、そ してホスピタリティを備えた対応が欠かせないと考えます。ここでは、女性特有のライフステージとそれ に伴う健康課題についてお話するとともに、鍼灸診療における面接時の対応や接遇、さらにフェムテック 分野特有の配慮についてご紹介したいと思います。患者の身体的・心理的なニーズを理解し、ホスピタリ ティに基づいた信頼関係を築くことが、鍼灸治療の効果を高める鍵であると考えております。 【フェムテック専門鍼灸への挑戦(1):耳鍼編】 活用しやすい耳鍼をご紹介したいと思います。耳鍼の実践方法に加え、フェムテック領域に活用例や、 施術を行う際の注意事項について併せてご紹介いたします。 キーワード:フェムテック、ライフステージ、医療面接・接遇、ホスピタリティ、耳鍼 ●略歴 1999年明治鍼灸大学鍼灸学科卒業 2001年明治鍼灸大学大学院修士課程修了 2001年明治東洋医学院専門学校教員 2009年明治東洋医学院専門学校附属治療所鍼灸科主任 2022年新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科講師 - 84 - 実技セッション「フェムテック!Well-being!社会が求める鍼灸師に必要なイロハ ~原点回帰と新たなる挑戦~」 座長:新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科粕谷大智 名古屋医専中島紳景 PS1-2 フェムテック専門鍼灸への挑戦2:円皮鍼編 谷田保啓 たにだ鍼灸院 鍼灸を初めて受けられる女性も、続けて利用される女性も、施術前の四診から身体の状態を説明すると 「今の私」に納得し喜ばれることがあります。フィードバックされた「今の私」から施術後に変化した 「今の私」を確認できたら、その変化が安心につながるのではないでしょうか。その安心は施術後も、一 過性の体表刺激の持続から鍼灸の効果継続が期待できる円皮鍼で獲得できると考えます。施術前の四診か ら得た「今の私」を共有し、施術後の症状緩解・安心の維持、セルフケアを目的に円皮鍼を使います。 キーワード:円皮鍼 ●略歴 2013年明治国際医療大学大学院鍼灸学研究科修士課程卒業 - 85 - 実技セッション「フェムテック!Well-being!社会が求める鍼灸師に必要なイロハ ~原点回帰と新たなる挑戦~」 座長:新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科粕谷大智 名古屋医専中島紳景 PS1-3 フェムテック専門鍼灸への挑戦3:通電療法編 ~新たな鍼陰極断続パルス(陰極単相矩形波)通電療法の実際 松森裕司 ライフ治療院 鍼灸業界では電気鍼というと普及率が高い低周波置鍼療法(鍼麻酔方式)を想像することが多いのでは ないだろうか。一般的にこの方式は、陽極(+)と陰極(-)の二方向へ極性が変化する二相パルス波を 使用して筋肉の反復収縮を起こさせる強さで侵害刺激を与える効果は中枢からの下降性の痛覚抑制による と説明されることが多く全身作用である。筋肉を弛緩させる局所効果と全身の疼痛閾値の上昇を望むのな ら少し強めの電気出力で15分以上20分間程度の通電時間が必要になる。今回の実技セミナーでは、従来の 通電方式と異なる新たな鍼陰極断続パルス(陰極単相矩形波)通電療法を使用した女性に多い頭痛、肩こ り、生理痛、冷え性の臨床実技を供覧する。この手法の特徴は、一方向のみの極性であり、鍼には陰極(-) 単相矩形波を使用する。陰極(-)側の鍼通電は金属を溶解しないために安全である。そして、対する陽 極(+)側は安全性を考慮し不関電極としてデルマトーム上に経皮通電用パット(又は握り導子)を使用 する。広義には同じ電気鍼というカテゴリーだが、鍼陰極断続パルス(陰極単相矩形波)通電療法は低周 波置鍼療法(鍼麻酔方式)と比較した場合、どのような特徴があるのだろうか。佐藤らの犬を使った実験 では、鍼に陰極直流12V、176μAを10秒間通電すると組織変性(蝋様化変性、膨潤など)が顕著に現れ、 短時間の通電であっても置鍼20分間と同等な効果を求めることができると報告されている。そして、液性 変化としては陰極の鍼体にはプラスイオンが集まり、鍼周囲の組織は酸性に傾く。その結果、炎症部位を アルカリ性にして中和され治癒機転を求めることも可能である。さらに、陰極単相矩形波を感受性の高い 筋肉に弱い電気を流すことで、局所の筋収縮を促しリンパを含む細胞間質液の流れを改善させることも期 待できる。したがって、鍼陰極断続パルス(陰極単相矩形波)通電は、より強い組織変性・液性変化と筋 収縮を同時に起こさせることで短時間に局所の硬い筋肉に血液を多く含ませて治療目的を達成することが 可能となる。臨床時に鍼通電刺激を効率良く安全に実施するためには、電気の「極性」や周波数、出力を 理解し、適切な鍼通電時間や鍼の刺入深度を選択することが重要だと考えている。 キーワード:鍼陰極断続パルス通電療法、陰極単相矩形波、クリーンニードルテクニック、デルマトーム、 極性 ●略歴 1989年中和鍼灸専門学校卒業(現中和医療専門学校) 1990年ライフ治療院開院 2001年ちはら小児科内うばこやま治療室開設 2017年名古屋医専特別講義講師 - 86 - ワークショップ1 「日々の臨床を形にする:やさしい抄録作りのステップ」 (教育研修部若手分科会主催) 座長:筑波県立医療大学保健医療学部医科学センター石山すみれ 宝塚医療大学保健医療学部鍼灸学科岡田岬 WS1 日々の臨床を形にする 石山すみれ1)、岡田岬2)、福田文彦3)、鈴木雅雄4)、久保晏奈2)、 篠原大侑5)、津田恭輔4)、堀部豪6)、松浦悠人7)、松岡慶弥8)、 光野諒亮8)、村越祐介9)、脇英彰10) 1)茨城県立医療大学保健医療学部医科学センター 2)宝塚医療大学保健医療学部鍼灸学科 3)明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科 4)福島県立医科大学会津医療センター附属研究所漢方医学研究室 5)スポーツ健康医療専門学校鍼灸科 6)埼玉医科大学病院東洋医学科 7)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 8)鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科 9)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 10)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 「症例報告って大切」という気持ちを胸に、我々は教育研修部若手分科会の活動をスタートして3年目を 迎えました。活動の中で、症例報告を行うために何をしたら良いか分からないというご意見を沢山いただ きました。本ワークショップでは、「町の研究者」である臨床家の先生方の力になれればと企画しました。 私たちと一緒に第75回(公社)全日本鍼灸学会学術大会岡山大会(2026年)で症例報告をできるように ステップを踏んでみませんか?日々の臨床は、施術者と患者さんの中でのみ共有されます。しかし、それ を形にすることで多くの人の目に留まり、それを見た人の臨床の助けとなり、自分が対面していない患者 さんを救う手助けとなります。ではどのように形にし、共有したらいいでしょうか?その手段の一つが学 会での症例報告の発表であり、発表をするためには抄録を作成する必要があります。本ワークショップで は「やさしい抄録づくりのステップ」として以下の2点を実践的に行います。・症例報告の抄録作成で必 要なことをレクチャーします。・症例報告の抄録の一部を実際に作成します。ワークショップ終了後に、 抄録の【症例】が記載できることを目標とします。【症例】を記載する上で、日々の臨床で何を準備して おく必要があるのかが学べます。当日皆さんとお会いできることを楽しみにしております。【司会】石山 すみれ, 岡田岬【監修】福田文彦, 鈴木雅雄【ファシリテーター】久保晏奈, 篠原大侑, 津田恭輔, 堀部豪, 松浦悠人, 松岡慶弥, 光野諒亮, 村越祐介, 脇英彰 キーワード:症例報告、CAREガイドライン ●略歴 ■石山すみれ 2017年筑波大学大学院人間総合科学研究科フロンティア医科学専攻修了 2021年筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻修了 2022年茨城県立医療大学保健医療学部医科学センター助教 ■岡田岬 2019-24年明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科助教 2024年宝塚医療大学保健医療学部鍼灸学科講師 - 87 - ワークショップ2 「鍼灸安全対策ガイドライン2025年版おもな改訂のポイント」 (臨床情報部安全性委員会主催) 座長:(公社)全日本鍼灸学会臨床情報部安全性委員会菅原正秋 WS2 鍼灸安全対策ガイドライン2025年版の主な改訂のポイント 菅原正秋、山崎寿也 (公社)全日本鍼灸学会臨床情報部安全性委員会 「鍼灸安全対策ガイドライン2020年版(以下、2020年版)」が発刊されてから今年で5年が経過する。5年 毎の改訂はかねてからの計画であり、昨年(2024年)より改訂原案(以下、ドラフト案)の作成に着手し た。改訂作業は安全性委員会内にワーキンググループを編成して進められた。 ワーキンググループでは、5年間で新たに追加された国内外の有害事象報告の文献並びに一般からのコ メントをもとに、新たにガイドラインに追加すべき内容を検討すると共に参考文献の見直しを行った。ド ラフト案は、2025年3月から4月にかけて学会ホームページ上で公開し、パブリックコメントを募集した。 寄せられたコメントを参考として、最終的に「鍼灸安全対策ガイドライン2025年版」を完成させた。主な 改訂のポイントは以下の通りである。 有害事象防止対策においては、臓器および神経損傷から気胸を独立した項目として挙げ、注意すべき具 体的な行為や手技について明記した。また、副作用(有害反応)の抜鍼困難の項目では、折鍼防止の観点 から、刺鍼中に行ってはならない行為を注意事項として追加した。 関連療法の安全対策においては、低周波鍼通電療法の項目の全面見直しを行った。2020年版では、低周 波鍼通電療法の定義が明確でなかったため、これを明確にした。また、施術にあたっては、医療機器の添 付文書等を確認した上で、これに従い施術するよう提言した。 本ワークショップでは、ドラフト案に対して寄せられたパブリックコメントを紹介しつつ、主な改訂の ポイントについて解説する予定である。 キーワード:鍼灸安全対策ガイドライン、有害事象、気胸、抜鍼困難、低周波鍼通電療法 ●略歴 ■菅原正秋 2013年東京医療保健大学大学院医療保健学研究科博士課程修了博士(感染制御学) 2009年東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科助教 2014年東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科講師(現職) ■山崎寿也 1992年大阪府立大学工学部卒業 2001年関西鍼灸短期大学卒業 2007年和歌山医大大学院修士課程修了修士(医科学) 2013年和歌山医大大学院博士課程単位取得満期退学 2014年関西医療大学講師(現職) - 88 - ワークショップ3 「学生協働交流シンポジウム・経絡経穴学教育の再構築 ~学生参加型で考える、教え方・学び方~」(経絡経穴委員会主催) 座長:関西医療大学保健医療学部はり灸・スポーツトレーナー学科坂口俊二 WS3 経絡経穴学教育の再構築 坂口俊二1,4)、谷万喜子1,4)、高橋大希2,4)、仲村正子3,4) 1)関西医療大学保健医療学部はり灸・スポーツトレーナー学科 2)東京衛生学園専門学校東洋医療総合学科 3)森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科 4)公益社団法人全日本鍼灸学会経絡経穴委員会 (公社)全日本鍼灸学会経絡経穴委員会では、第73回宮城大会でシンポジウム「教育・臨床・研究の視 点からの経穴詳解三陰交・合谷・百会について」を主催した。会場には多くのはりきゅうを学ぶ学生の 姿が見られ、特に仲村委員が「鍼灸師教育における経穴の位置づけと課題」と題した教育の視点からの報 告に多くの反響を得た。これを受け、第74回名古屋大会では、「経絡経穴学教育の再構築学生参加型で考 える、教え方・学び方」をテーマに学生協働交流シンポジウムを企画した。本委員会の委員で経絡経穴学 教育を担当する3名(谷、高橋、仲村)が経絡経穴とその学問に対する学生の意見を引き出しながら、課 題の克服法や学修法を提示したり、臨床への橋渡しや楽しく学修したりするためのツールなどを紹介する 対話形式で進める。参加の学生諸氏には経絡経穴学の学修法を通じて臨床へのモチベーションに繋がるこ と、また、大学・専門学校等の教員には、経絡経穴学教育を再構築するヒントになることを目標とする。 キーワード:経絡経穴学、教育、再構築、学生協働交流シンポジウム ●略歴 ■谷万喜子 1991年関西鍼灸短期大学鍼灸学科卒業 2018年関西医療大学・同大学院保健医療学研究科教授 ■高橋大希 1999年東海医療学園専門学校卒業 2001年東京衛生学園専門学校臨床教育専攻科卒業 2001年東京衛生学園専門学校専任教員 ■仲村正子 2016年浜松大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科卒業 2018年明治国際医療大学大学院鍼灸学専攻修士課程修了(鍼灸学修士) 2025年森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科講師 - 89 - 報告JLOM部、辞書用語部、JLOM戦略検討委員会合同報告会 ~日本鍼灸の国際対策:若手の方、初めての方に向けて① 座長: 帝京平成大学久島達也 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科新原寿志 統括: (公社)全日本鍼灸学会会長若山育郎 R1-1 令和6年度の鍼灸を含む日本の伝統医療を取り巻く 国際情勢の概説 小野直哉 明治国際医療大学 (公財)未来工学研究所(IFENG) 日本災害鍼灸マッサージ連絡協議会(JLCDAM) 日本東洋医学サミット会議(JLOM)戦略検討委員会 鍼灸を含む日本の伝統医療界は、国際標準化機構(ISO)における鍼灸を含む東アジア地域の伝統医療 の国際標準化に対応してきた。世界保健機関(WHO)でも、標準鍼用語集や鍼の基本教育と安全ガイド ライン、経穴部位の国際標準、伝統医療に関する国際標準用語等、鍼灸の国際標準化が行われ、日本・中 国・韓国の伝統医療を盛り込んだ国際疾病分類第11版(ICD-11)が採択されている。但しISOやWHOは、 日本の伝統医療を取り巻く国際情勢の氷山の一角に過ぎない。 国連教育科学文化機関(UNESCO)での伝統医療の古典医学書(韓国の「東医宝鑑」、中国の「黄帝内 経」と「本草綱目」、「蔵医学四部医典」)の世界の記憶への登録や伝統医療(中国の「中医鍼灸」と「蔵 医学ルム薬湯」)の無形文化遺産への登録、生物多様性条約(CBD)での伝統医療に関する遺伝資源や伝 統的知識へのアクセスと利益配分の議論、世界知的所有権機関(WIPO)での伝統医療に関する伝統的知 識(遺伝資源関連も含む)の議論、さらに世界貿易機関(WTO/TRIPS)、環太平洋パートナーシップに関 する包括的及び先進的な協定(CPTPP)、国連食糧農業機関(FAO)などの国際機関や条約でも伝統医療 に関する議論が同時多発的に展開されている。また、今後のCPTPPの動向次第では、自由貿易協定 (FTA)や経済連携協定(EPA)においても同様の議論が行われる可能性は否めない。伝統医療に関わる 事柄は、産業・医療・文化・環境・知的財産・貿易・農業などの多岐に亘る国際条約や機関で、同時多発 的に、個別かつ専門的に議論され、各国の駆け引きや攻防が随所で展開されている。 一方、中国や韓国、インドなど、「自国の伝統医療は自国の資源(医療資源・文化資源・知的資源)」と 明確に捉えている国々では、自国の伝統医療を国民の保健医療福祉と経済産業活動に積極的に利活用し、 国民の福祉と国益に貢献している。 日本の伝統医療を取り巻く国際情勢は、多岐に亘る国際条約や機関での議論と複雑に絡み合い、単独の 国際条約や機関で解決できる事柄ではなく、今後、日本の伝統医療を取り巻く国際情勢に有機的かつ俯瞰 的な観点で、系統的かつ持続的に対応するには、日本の伝統医療の未来戦略の策定と実行が望まれる。本 講演では、鍼灸を含む日本の伝統医療を日本の資源と捉えるために、令和6年度の日本の伝統医療を取り 巻く国際情勢を概説し、日本の鍼灸関係者との情報共有を図る。 キーワード:伝統医療、伝統的知識、知的財産、国際機関、国際条約 ●略歴 明治鍼灸大学卒業後、明治鍼灸大学附属病院卒後研修生、東京医科歯科大学大学院修士課程を経て、京都大学大学院医 学研究科社会健康医学系専攻博士後期課程在籍中に、医療経済研究機構リサーチ・レジデント及び協力研究員、先端医療振興財 団科学技術コーディネーター、(公財)未来工学研究所主任研究員等に従事。現在、明治国際医療大学客員教授、(公財)未来 工学研究所特別研究員、JLCDAM世話人、JLOM戦略検討委員会委員長。 - 90 - 報告JLOM部、辞書用語部、JLOM戦略検討委員会合同報告会 ~日本鍼灸の国際対策:若手の方、初めての方に向けて① 座長: 帝京平成大学久島達也 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科新原寿志 統括: (公社)全日本鍼灸学会会長若山育郎 R1-2 WHO-FIC年次総会TMRG (伝統医学リファレンスグループ)報告 田口太郎 九州看護福祉大学看護福祉学部鍼灸スポーツ学科 一昨年からWHO-FICの伝統医学関連部門を担当することになり、以来、何度かJSAMで報告の機会をい ただいた。そこで痛感したのは、WHO-FIC自体が鍼灸師にほとんど知られていないということである。 WHO-FICに対する下地がない状態で、何を報告するにせよその内容をお伝えすることはできないと考え、 今後、報告の機会をいただいた際にはWHO-FICの概要説明を可能な限り加えることを決意した。また、 ISOやWHO-FIC等、鍼灸関連の国際対策に携わるメンバーは長く固定化されており、各世代における新し い人材の発掘・育成が急務であることも、概要説明に拘る理由である。今回の報告では、関係者には多少 退屈になろうとも、WHO-FICのことを初めて耳にする方や若手の方にもある程度理解できることを優先 させていただく。 報告会への参加に際しては以下の質問に回答できるように予めご準備いただくとありがたい。 Q1:WHO-FICは何の略か? Q2:ICD-11は何の略か? Q3:ICDの役割は何か? A1:World Health Organization Family of International Classifications の略 「WHO国際分類ファミリー」あるいは「WHO国際統計分類」と訳される。ICD(国際疾病分類),ICF (国際生活機能分類),ICHI(保健・医療関連行為に関する国際分類)の3本柱が中心である。 A2:International Classification of Diseases 11th Revision 「国際疾病分類第11回改訂版」 A3:WHOの説明は以下の通り。(https://www.who.int/standards/classifications/classification-of-diseases) 「ICD-11(国際疾病分類)は、分類法および用語法として、以下の役割を担っている: ・異なる国や地域、異なる時期に収集された死亡率や罹患率データの体系的な記録、分析、解釈、比較 を可能にする。 ・単なる健康統計にとどまらず、意思決定の支援、資源配分、償還、ガイドラインなど、さまざまな使 用事例において、記録されたデータのセマンティックな相互運用性と再利用性を保証する。」(演者意 訳) 報告会では、昨年10月にジュネーブで開催されたWHO-FIC年次総会におけるTMRG (Traditional Medicine Reference Group:伝統医学リファレンスグループ)での内容をお示しするが、今回はTMRG共 同代表(2名)の交代(日本・中国→韓国・英国)に会議時間の大部分を費やしており、他のトピックに 大きな進展がなかったことを予めお断りしておく。 キーワード:WHO-FIC、ICD-11 ●略歴 2004年明治鍼灸大学大学院博士前期課程修了(修士/鍼灸学) 2010年九州看護福祉大学看護福祉学部鍼灸スポーツ学科講師 2014年同准教授(現職) - 91 - 報告JLOM部、辞書用語部、JLOM戦略検討委員会合同報告会 ~日本鍼灸の国際対策:若手の方、初めての方に向けて① 座長: 帝京平成大学久島達也 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科新原寿志 統括: (公社)全日本鍼灸学会会長若山育郎 R1-3 国際標準化機構(ISO)におけるJLOM部ISO班の活動 新原寿志1)、木村友昭2)、森田智3) 1)鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 3)千葉大学墨田漢方研究所 本報告会では、国際標準化機構(ISO)とISO規格について概説すると共に、従来通り、ISO/TC249(伝 統中医学)で進行中の鍼灸に関するISO規格について報告する。本報告会を通じて、会員に広くISO対応 の必要性・重要性をご理解いただくと共に、JLOM部へのご協力を賜れば幸いである。1)ISOとISO規格 の目的とその意義および国内の鍼灸業界に与える影響について概説する。2)ISO/TC249 WG3(Scope: 鍼の品質と安全使用)(担当:新原寿志)。2024年10月に開催されたWG3会議(深セン)において、定期 見直し(SR)の「通電用単回使用毫鍼の検査法(ISO 20487:2019)」は、大きな変更はなく承認された。 同じくSRの「滅菌済み単回使用毫鍼(ISO 17218:2014)」は、軽微な修正後、投票にかけられる予定であ る。新規提案(NP)の「毫鍼の安全管理」は、内容についてプロジェクトリーダー間で調整中である。3) ISO/TC249 WG4(Scope:鍼以外のTCM領域医療機器の品質と安全性)(担当:木村友昭)。日本からの新 規技術仕様(TS)提案である「灸具燃焼生成物のリスク評価基準(ISO/AWI TS 22358)」は2024年6月に 開催された第25回WG4会議において審議され、その後正式に開発が開始された。また、日本が提案して 2020年に発行された「舌診機器の画像表示装置(ISO TS 20498-4:2020)」のTSに関するSRも審議され、 変更なく更新することが合意された。同年12月に開催された第26回WG4会議においては、「無煙灸に関す る一般要求事項(ISO 21366:2019)」のSRに向けた審議等も進められた。4)ISO/TC249 WG5/JWG1 (Sc ope:用語と情報科学)(担当:森田智)。2024年6月のWG5会議では「機器の語彙パート1:灸機器 (ISO/AWI TS 25144-1)」がNP投票を通過し、TSを目標に作成段階(WD)に進展した。「診断の語彙パー ト3:腹診(ISO/TS 23961-3:2024)」が投票の結果、SRでの改訂を前提にTSとして発行された。昨年6月 のJWG1会議では「診断情報の臨床知識構造パート1:舌(ISO/AWI TS 24659-1)」がTSを目標に2度目の NP投票に進み、「診断情報の臨床知識構造パート2:脈(ISO/CD TS 24659-2)」がTSを目標に委員会段階 (CD)に進むことが合意された。昨年11月のJWG1会議では、「推拿を表現する範疇構造(ISO/PWI TS 25083.2)」が「推拿と他の徒手療法を表現する範疇構造」にタイトルを変更し、TSを目標に2度目のNP投 票へ進むことが合意された。 キーワード:国際標準化機構(ISO)、ISO/TC249、ISO規格 ●略歴 ■新原寿志(博士/鍼灸学) 2017年常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科教授 2025年鈴鹿医療科学大学保健衛生学部教授 ■木村友昭(博士/医学) 2009年東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科准教授 2013年東京有明医療大学大学院保健医療学研究科准教授 ■森田智(博士/医学) 2018年千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了 2025年千葉大学客員研究員名古屋市立大学客員研究員 - 92 - 報告JLOM部、辞書用語部、JLOM戦略検討委員会合同報告会 ~日本鍼灸の国際対策:若手の方、初めての方に向けて① 座長: 帝京平成大学久島達也 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科新原寿志 統括: (公社)全日本鍼灸学会会長若山育郎 R1-4 (全日本鍼灸学会) 辞書用語部における活動について 光澤弘1)、脇英彰2)、小峰昇一2)、関真亮1)、手塚幸忠1)、 橋本隆1)、内藤玄吾2)、吉田成仁2)、和辻直1)、久島達也3) 1)全日本鍼灸学会辞書用語部伝統医学班 2)全日本鍼灸学会辞書用語部現代医学班 3)全日本鍼灸学会辞書用語部部長 1.辞書用語部の概要学術用語の整理は教育や研究、臨床の基盤となることから、その領域の学術の進歩 や正しい普及において極めて重要な手段であるとされている。日本の鍼灸に関する用語の整理は以前から 必要とされてきたが、学会レベルで十分に検討されていなかった。辞書用語部は2018年から委員会の活動 から始まり、鍼灸に関連する伝統医学と現代医学の用語に対応するため、伝統医学班と現代医学班を編成 し、日本鍼灸の用語を整理し鍼灸学用語集を作成することにした。また伝統医学の用語は、現代医学の用 語とは異なり、用語の意味に諸説があって整理が必要とされ、基本的用語を選定して定義を作成している。 最近、世界保健機関(WHO)や国際標準化機構(ISO)で伝統医学の標準化が盛んとなっており、2022年3月に WHO international standard terminologies on traditional Chinese medicineがWHO Webサイトに掲載され、 ISO/TC249やTC215では伝統医学用語の標準化などが求められている。このため、鍼灸用語の整理は日本 の鍼灸分野において重要な課題となっている。 2.用語集について辞書用語部では、日本の教育、研究、臨床、行政などの場で、はりきゅうに係る者が、 論文や教科書の執筆、診療記録の記載、行政文書の作成などで活用する必要な鍼灸学用語を選定すること にした。用語は鍼灸師養成施設で用いる教科書や『はり師きゅう師国家試験出題基準』の索引用語を中心 に、伝統医学的用語の約3,500語と現代医学的用語の約10,000語を抽出し、2024年度までに必要な用語を 精査して、伝統医学的用語1,752語、現代医学的用語6847語に整理した。また、2022年度から作成を進め ていたWeb版『鍼灸学用語集』が完成し、本学会Webサイトでの公開に向けて準備中である。加えて、伝 統医学班は用語定義の作成を継続し、2023年度からは両班とJLOM部鍼灸学用語英語化班で複数の用語辞 書を用いて鍼灸用語の英訳作業も行っている。 3.今後の活動について本学会Webサイトにおいて『全日本鍼灸学会鍼灸学用語集』を公開し、用語 集に対する意見公募を実施し、寄せられた意見を基に修正を行う予定である。今後も伝統医学班は用語定 義を継続し、両班で英訳作業を進め、Web版『鍼灸学用語集』に随時掲載していく予定である。 キーワード:辞書用語部、鍼灸用語、伝統医学、現代医学、鍼灸学用語集 ●略歴 ■光澤弘 【現職】学校法人花田学園日本鍼灸理療専門学校副教務部長、一般財団法人東洋医学研究所主任研究員 【略歴】 1989年日本鍼灸理療専門学校本科卒業 1991年東京医療専門学校鍼灸教員養成科卒業日本鍼灸理療専門学校教員 ■脇英彰 【現職】帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科講師 【委員歴】全日本鍼灸学会辞書用語部、教育研修部 【略歴】 2017年帝京平成大学大学院健康科学研究科(博士/健康科学) - 93 - 市民公開講座 座長:呉竹学園臨床教育研究センター船水隆広 LP フェムテックの可能性とは? 野田聖子 ○ キーワード: ●略歴 - 94 - 一般演題抄録 The Program of The 74th Annual Congress of The Japan Society of Acupuncture and Moxibustion, May 30~June 1, 2025, Nagoya -Sat-P1-10:00 鍼灸師養成施設教員の教育及び臨床における押手に関 する意識調査 1)東京医療福祉専門学校教員養成科教員養成課程 2)東京医療福祉専門学校教員養成科臨床専攻課程 3)慶応義塾大学SFC研究所 4)東京医療学院大学保健医療学部 リハビリテーション学科 ○西村果純1)、川浦渉太1)、仙田昌子1,2,3)、 間下智浩1,2)、大内晃一1,2,4) 【目的】鍼灸師養成施設教員を対象に、教育と臨床の 観点から押手教育の様相を明らかにする。 【方法】全国の鍼灸養成施設(専門学校)80校に無記 名式の調査票を郵送し、はりきゅう実技の基礎科目を 担当する教員2名に回答を依頼した。調査票に調査の 意義を記載し、回答返送をもって同意とした。調査内 容は、選択採用する押手型、選択理由、重視している ことなどを教育と臨床の場それぞれで回答を求めた。 解析はPSPP、HADを用いてχ2検定を行った。 【結果】調査票回収率は78.1%(125/160名)で、指 導する押手型は満月が最も多く(104名、83.2%)、大 部分は一年次に習得することを目標にしていた(110 名、88.0%)。教育で満月押手を選択した者は鍼操作 の安定を重視していた(p<.05)。臨床でも満月押手 が最も多く採用され(82名、65.63%)、押手を安定さ せる、鍼体を支えやすくすることを重視するが多かっ た(p<.05)。押手型選択に施設所在地による地域差 はみられず、教育歴・臨床歴のどの年齢層でも満月押 手による教育・臨床が多く行われ、教育・臨床ともに 満月押手を選ぶのが多く(80名、64%)、なお且つ鍼 の操作を安定させることを最重視している(p<.05)。 【考察・結語】東洋療法学校協会著『はりきゅう実技』 には、半月押手・満月押手の双方が記載されているが、 全国の養成施設においては満月押手指導が中心となっ ている。背景には、鍼操作の安定性確保が重視されて いて、1年次のうちに習得させることを通して、初学 者に『はりきゅう実技』における安全性優位を教育す る意義があるとの考えがあるからであろう。本研究で は、教育と臨床で用いられる押手型の教育的・臨床的 意義の違いは認められなかったが、今後、応用や臨床 的な実技科目担当教員や治療院等の施術者にも同様の 調査を行い検討する必要がある。 キーワード:押手、意識調査、鍼灸教育、鍼灸臨床、 はりきゅう実技 -Sat-P1-10:12 鍼手技を構成する鍼操作技術の調査 1)名古屋医専鍼灸学科 2)鍼灸研修会知足 3)鍼灸治療院鶴舞社中 ○伊藤和真1,2,3) 【目的】東洋医学的鍼治療では病態に合わせた補瀉法 が重要である。補瀉法は鍼刺激の種類と質、量からな る鍼手技が大きな要因となる。鍼手技の種類は教科書 や成書に記載がある。しかし種々の鍼手技の要因であ る操作技術の調査はほとんどない。今回日本と中国の 鍼手技と要因を調査、分類、比較して、それらの特徴 を明らかにする。 【方法】鍼手技のテキストは、現代日本『はりきゅう 理論』、現代中国『針灸手技学』、日本古典『杉山真伝 流』を選んだ。各テキストで鍼手技内容を調査し操作 分析を行い、基本的操作内容を抽出し名称した。再度 各鍼手技を基本的操作内容別に分類した。 【結論】鍼手技は現代日本15種類、現代中国18種類、 日本古典18種類であった。基本的操作内容は上下操作、 撚転操作、振動操作、搖弯操作の4種類であった。各 鍼手技の基本的操作内容分類は、現代日本は上下操作 8種類、振動操作5種類であった。現代中国は搖彎操作 8種類、上下操作7種類であった。日本古典は上下操作 11種類、撚転操作10種類であった。現代日本では上下 操作と振動操作、現代中国では搖弯操作と上下操作、 日本古典では上下操作と撚転操作が充実していた。 【考察】現代日本と日本古典では上下操作が多数で、 現代中国では搖彎操作が多数であった。これは日本と 中国の鍼の形状や長さ、そして各鍼手技を育成させた 病態の違いや各民族間の体質の違いから生じたものと 考察する。日本と中国の共通点は上下操作が多いこと であった。日本鍼と中国鍼とも上下操作の習得が重要 となる。上下操作には上下幅の繊細な大小がある。そ れらを自在に行うためには学校教育をはじめ学外技術 教育の中でも、手指を中心とした身体の巧緻性が必要 と考える。 【結語】日本と中国の鍼手技とその基本的操作内容の 調査分類比較から、上下操作が重要であることが明ら かとなった。鍼手技を上達するためには手指の巧緻性 が必要と考える。 キーワード:鍼手技、補瀉法、鍼操作技術、巧緻性、 鍼技術 - 96 - 001 002 -Sat-P1-10:24 衛生的で安全性の高いクリーンニードルテクニックの 特許開発 1)全国出張はりきゅう院 2)北海道鍼灸専門学校 3)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 ○平岡光一1)、川浪勝弘2)、二本松明2)、 今井賢治3) 【目的】昨年2024年の宮城大会で発表したクリーンニー ドルテクニック(開発品名:鍼管革命)の特許開発、 1年たった活動内容を纏めたので報告する。 【方法】クリーンニードルテクニックの必要性の周知、 また鍼管革命の商品化に向けて賛同の署名活動をした。 11/10全日本鍼灸学会北海道支部の令和6年度学術集会 一般口演、12/8北関東での一般口演は画像によるプレ ゼンテーションと実物によるデモンストレーションを 行った。また開業鍼灸師、鍼灸治療を受けた患者、視 力障がいのある鍼灸師、看護師、鍼灸を受けたことの ない人に実物によるデモンストレーションと鍼管革命 商品化の賛同に署名活動をし、鍼灸の鍼の扱いに対す る反応や意見を纏めた。 【結果】北海道支部での一般演題の学術口演は限定公 開のYouTubeオンデマンド配信では約150回以上の再 生回数があった。また北関東での一般口演発表では参 加者に視覚障がいのある鍼灸師の参加が多く今井賢治 氏考案のクリーンニードルと共に実物に触れてもらう ことができ、「このクリーンニードルを早く使いたい」 「1種類でもいいから製作してほしい」との声が上がっ た。鍼灸の鍼の実物を見たことのない看護師は現今の 医療現場で、まだ鍼体に「素手で触れて治療している 現実」の方に驚いていた。またクリーンニードルを商 品化してほしいと署名活動に賛同していただいた方は 約150名の署名に及んだ。 【考察・結語】北海道支部のYouTubeオンデマンド配 信では他の同時配信発表の演題と比較して1月時点で クリーンニードルテクニックは他の4倍近くの約150回 再生回数となった。これは鍼灸師の中でも関心が高まっ ている証拠ともいえるのではないだろうか。これから も鍼灸医療に対するスタンダードプリコーションの価 値を上げていくにあたり鍼灸業界のみならず、医療業 界全体にもクリーンニードルテクニックの必要性を知っ ていただく活動を引き続き行っていく。 キーワード:クリーンニードルテクニック、特許、視 力障がいのある鍼灸師、安全性、鍼体に 素手で触れて治療 -Sat-P1-10:36 灸実技教育における指導方法の検討 1)東京医療福祉専門学校教員養成科教員養成課程 2)東京医療福祉専門学校教員養成科臨床専攻課程 3)慶応義塾大学SFC研究所 4)東京医療学院大学保健医療学部 リハビリテーション学科 ○青木沙耶1)、森大輔1)、仙田昌子1,2,3)、 間下智浩1,2)、大内晃一1,2,4) 【目的】人体施灸の技術向上及び安全性に関して、 MOXATHと和紙とによる練習効果の相違について検 討した。 【方法】本研究に同意を得た当校医療科学生(以下、 術者)、教員養成科(以下、評価者)各19名を対象と し評価者を術者に一対固定した。術者は乱数表を用い MOXATH群(以下M群)9名、紙群10名に割付し、 MOXATH又は和紙を用いた練習(週1回10分×4週、 紙群のみ100壮自宅練習可)前後に施灸5回の到達温度 (平均・最高・最低)をMOXATHで測定した。さらに、 灸点紙を貼付した評価者の腎兪穴に術者が左右各3壮 ずつ交互施灸(透熱灸)を行い、評価者は4項目(11 段階)、術者は5項目(5件法)で熱さ・痛さ・心地良 さ、形・上達・苦手意識などを評定した。解析はHAD を用い、相関係数算出及び対応のある2要因分散分析 を行った。 【結果】最高温度は、M群で指導前より指導後に有意 な低下が認められた(p<.05)。紙群の最高および両 群の平均、最低温度では指導前後に有意差を認めなかっ た。評価者の熱さと心地よさについてM群では正の相 関(r=.73)、紙群では負の相関(r=-.59)があった。 また、紙群では術者の形意識と苦手意識との間に負の 相関(r=-.69)が認められた。 【考察・結語】MOXATHによる練習法では、温度を 視覚的にフィードバックしモニタリングできるため、 温度調整力が身につき安全な人体施灸教育に有用であ ると示唆された。一方、紙による練習では、形の形成 に注視できるため苦手意識が克服できる方法である。 また、熱さと心地よさの関係についてM群と紙群が相 反する結果であったことは、最高温度がM群は紙群よ り低く心地よい温度で施灸されていると考えられ、心 地よい施灸のためにはMOXATHによる練習が有用で あると考えられる。それぞれの利点を活かし、教育す る学年や学生の目的に合わせ提供することが望まれる。 キーワード:灸教育、灸実技、透熱灸、MOXATH、 和紙 - 97 - 003 004 -Sat-P1-10:48 鍼灸学生の身体接触抵抗感と東洋医学に対する信用 (第二報) 1)明治国際医療大学大学院鍼灸学研究科 2)宝塚医療大学保健医療学部鍼灸学科 ○山田崚太1)、菊池勇哉2) 【目的】本研究の目的は、鍼灸学生の身体接触に対す る抵抗感が、東洋医学に対する信用に与える影響を明 らかにすることである。第一報では、全国の鍼灸師養 成校の学生から得た「触れる・触れられるときの感じ 方や考え方(身体接触抵抗感)」と「東洋医学に対す る信用の程度(東洋医学信用度)」に関するアンケー トデータを探索的因子分析(EFA)した結果を報告し た。第二報では、EFAにより抽出された各因子間の関 連性について分析し、その結果を報告する。 【方法】EFAの結果、身体接触抵抗感では「F1:被接 触に対する抵抗感」「F2:接触に対する抵抗感」「F3: 被接触に対する不安感」「F4:触れる技術の未熟さ」 「F5:意図しない接触に対する嫌悪感」の5因子が、 東洋医学信用度では「F11:思想・診察への信用」「F 12:治療法への信用」の2因子が抽出された。F1~F5 が各々F11とF12を規定する仮説モデルを立て、構造 方程式モデリング(最尤法)により検証した。 【結果】分析の結果、モデルの適合度指標のうちCFI が0.89と許容範囲を下回り、BIC=55628.83であった。 修正指標を参考に、かつF11の観測変数の内容を踏ま え、誤差変数間に共分散を仮定し再分析を行った結果、 適合度がCFI=0.91、RMSEA=0.06、SRMR=0.05でいず れも許容範囲を示し、BICも52405.58と改善した。修 正モデルでは、F1 (β=-0.21、p=0.01) とF3 (β= -0.10、p=0.03)がF11に負の影響を与え、F5(β=0.32、 p<0.001)はF11に正の影響を与えることが示された。 【考察・結語】東洋医学の技術等に対する学生の肯定 的な態度を促すためには、教育者が学生個人の触れら れることに対する抵抗感や不安感に理解を示し、その 軽減に努めることが重要であることが示唆された。一 方で、意図しない接触に抵抗のある学生は、触診の意 義に意識を向けていることが東洋医学への関心の高さ に繋がっていると考えられた。 キーワード:鍼灸学生、身体接触、抵抗感、タッチン グ、触診技術教育 -Sat-P1-11:00 超音波診断装置による脈診部位の橈骨動脈の形態計測 に関する検討 1)鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸 サイエンス学科 ○宮脇太朗1)、鈴木聡1)、浦田繁1) 【目的】鍼灸師は、患者の体質を示す証を決定する際、 脈診を重要な情報の一つとしている。脈診の多くは橈 骨動脈の状態を観察しており、経験に基づく主観的な 判断に影響を受ける。そのため、脈診情報の共有は難 しく、脈診部位の橈骨動脈の視覚化を試みた報告はほ とんどみられない。そこで本研究では、脈診部位の視 覚化を目的として、超音波診断装置を用いて橈骨動脈 深度と橈骨動脈外径を測定した。 【方法】対象は、循環器疾患の既往を持たない健常成 人15名(男性8名、女性7名。平均年齢20.9±0.4歳) とした。測定部位は、左右の寸口、関上、尺中の計6 カ所とした。寸口は関上から遠位へ被験者の示指と中 指の指腹間距離の位置に、尺中は関上から近位へ中指 と環指の指腹間距離の位置に定めた。測定項目は、皮 膚から橈骨動脈までの距離(以下、深度)と橈骨動脈 外径(以下、外径)とした。測定には、超音波診断装 置を用いた。橈骨動脈はカラードプラ法で確認し、深 度と外径はBモードで測定した。左右の深度および外 径の比較には、Student's t-testを用いた。 【結果】深度は、左寸口4.28±1.50mm、左関上3.79± 0.93mm、左尺中3.73±0.64mm、右寸口3.33±1.18mm、 右関上3.37±0.85mm、右尺中3.16±0.77mmであった。 いずれの測定部位においても右側の深度が浅く、寸口 と尺中においては、左右の深度に有意差がみられた (p<0.05)。深度と指腹間距離の間には、相関はみら れなかった。外径は、左寸口2.19±0.66mm、左関上 2.25±0.32mm、左尺中2.12±0.40mm、右寸口2.01± 0.85mm、右関上2.24±0.55mm、右尺中2.32±0.41mm であった。左右の外径には、有意差はみられなかった。 【考察・結語】脈診部位の橈骨動脈の深度と外径を、 超音波診断装置により観察することが出来た。深度に 差異が認められ、外径に差異が認められなかったこと から、鍼灸師は、脈診時の深度の情報を指標の一つと している可能性がある。 キーワード:超音波診断装置、カラードプラ法、橈骨 動脈、六部定位脈診 - 98 - 005 006 -Sat-P1-11:12 脈診訓練法の開発(第26報) 1)学校法人花田学園日本鍼灸理療専門学校 2)一般財団法人東洋医学研究所 ○東垣貴宏1,2)、木戸正雄1,2)、光澤弘1,2)、 武藤厚子1,2) 【目的】私たちは、「脈診習得法(MAM)」を用い、 より再現性の高い脈診を目指し、脈状について、これ まで新たな見解を報告してきた。今回、「大」、「小」、 「太」、「細」の記載について検証を行い、興味深い結 果を得たので報告する。 【方法】『脈経』および『黄帝内経』(『素問』・『霊 枢』)』、『難経』、『傷寒論』、『脈訣』、『察病指南』、『診 家枢要』などの記載から「大脈」、「小脈」、「太脈」、 「細脈」についての意義を検証する。 【結果】「固有の脈状」として「細脈」は『脈経』の 二十四脈や『脈訣』の七表八裏九道に含まれているが、 「大脈」、「小脈」、「太脈」はなかった。ただし、「大脈」 は『素問』、『傷寒論』『察病指南』、『診宗三昧』に 「固有の脈状」としての記載が見られ、『日本鍼灸医学』 でも「固有の脈状」として扱っている。「小脈」と 「太脈」はその他の文献においても「固有の脈状」と しての記載は見られなかった。「祖脈」としての「大」、 「小」、「細」は多くの文献で確認され、「太」も『脈経』 の割注で確認された。また、「大」と「小」、「大」と 「細」は対比関係で記述されることがあった。 【考察】『脈経』では「微脈」が「微脉極細而軟… 【一曰小也…】」とあり極めて細い脈を「小」とし、 「洪脉」が「洪脉極太在指下【一曰浮而大】」とあっ て極めて太い脈を「大」としていることから、脈の大 きさは「大>太>細>小」としているようである。な お、「小脈」と「細脈」は「祖脈」としてはほぼ同数 の記載があった。「小」は形容詞としての使用と混乱 を避けるために、「固有の脈状」としては「細」が採 用されたと考えられる。 【結語】「細脈」と「大脈」について、「祖脈」とす るものと「固有の脈状」とする2種類の記載がみられ た。「小脈」と「太脈」においては、「固有の脈状」と しての記述はなく、専ら、「祖脈」として扱われてい た。 キーワード:脈診習得法(MAM)、大脈、小脈、太 脈、細脈 -Sat-P1-11:24 運動器エコーおよびエコーガイド下刺鍼の授業への導 入【その1】 1)鈴鹿医療科学大学保健衛生学部 鍼灸サイエンス学科 2)(一社)日本超音波鍼灸協会 ○浦田繁1)、鈴木聡1)、長岡伸征1)、 松岡慶弥1)、光野諒亮1)、吉村亮次2) 【目的】本学では、2019年度からエコー装置を実習教 育に導入している。当初は、数名単位の学生を対象と した教育活動から開始したが、2024年度からクラス授 業での実施に至った。本報告では、実施内容や今後の 展望について紹介する。 【方法】鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエン ス学科4年次前期に実施される実習科目「鍼灸臨床技 術学2」にて実施した。全15回の授業のうち、2回分を エコー授業にあてた。1回の授業時間は90分であり、 対象者は28名であった。授業構成として学生を約5名/ 班に振分け、6班を構成し、エコー装置は各班に1台配 置した。担当は、熟練教員2名が2班ずつ、その他教員 2名が1班ずつとした。また、授業終了時に自由意見を 聴取した。 【結果】授業1回目では、まず「エコー装置の原理」 「基本操作」「注意事項」などを解説した(30分間)。 次に実技1「エコー装置による大腿前面部の観察」と して大腿直筋と中間広筋・大腿骨を短軸像で確認させ (30分間)、実技2「エコー装置による結節間溝の観察」 として触診にて結節間溝を同定後、短軸像で結節間溝 を確認させた(30分間)。授業2回目では、「エコーガ イド下刺鍼の利点と方法」を15分間で説明し、その後 実技3「大腿直筋へのエコーガイド下刺鍼(交差法)」 として刺入される鍼体をエコー画像上で同定させ(35 分間)、実技4「大腿直筋へのエコーガイド下刺鍼(平 行法)」として刺入される鍼体を確認しながら、刺鍼 抵抗のある部位を同定させた(40分)。自由意見とし て「いつも見えないものが見えて理解しやすかった」 などの意見が聴取された。 【考察および結語】本紹介例は、緒に就いたばかりの 実施内容であるが、将来的にはエコー装置を用いた授 業を独立した1科目に育てたい。また自由意見から 「興味をわかせる」ツールにエコー装置がなりうる可 能性があり、他授業へのワンポイント導入も検討した い。 キーワード:運動器エコー、実習、鍼灸、エコーガイ ド - 99 - 007 008 -Sat-P1-11:36 運動器エコーおよびエコーガイド下刺鍼の授業への導 入【その2】 1)鈴鹿医療科学大学保健衛生学部 鍼灸サイエンス学科 2)(一社)日本超音波鍼灸協会 ○光野諒亮1)、鈴木聡1)、長岡伸征1)、 松岡慶弥1)、吉村亮次2)、浦田繁1) 【目的】本学では、鍼灸教育における解剖学的知識の 理解を深めるため、2024年度より超音波診断装置(以 下、エコー装置)を活用した授業を正式に導入した。 本報告では、エコー装置授業を履修した学生に対する アンケート調査を行った結果を報告する。 【方法】鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエン ス学科4年次前期の「鍼灸臨床技術2」にて実施した。 全15回の授業のうち、2回分をエコー装置授業にあて た。1回の授業時間は90分であり、対象者は28名であっ た。アンケートは5段階評価からなる選択式4問と自由 記述を合わせた計5問で構成され、授業2回目の終了時 に調査した。 【結果】計27名より回答を得た。「エコー装置の操作 に関する説明を理解できましたか」では「よく理解で きた」44%、「理解できた」52%、「どちらとも言えな い」4%で、「あまり理解できなかった」「全く理解で きなかった」は、いずれも0%であった。「骨格筋や骨 の位置関係がイメージできましたか」では「しっかり イメージできた」52%、「イメージできた」48%で、 「どちらとも言えない」「あまりイメージできなかった」 「全くイメージできなかった」は、いずれも0%であっ た。「エコーガイド下で鍼を描出しながら大腿直筋に 刺鍼できましたか」では「しっかりできた」48%、 「できた」33%、「どちらとも言えない」4%、「あまり できなかった」11%、無回答4%であり、「全くできな かった」は0%であった。「エコー装置により授業に興 味がわきましたか」では「非常に興味がわいた」22%、 「興味がわいた」63%、「どちらとも言えない」15%で、 「あまり興味がわかない」「全く興味がわかない」は、 いずれも0%であった。 【考察および結語】エコー装置を用いた授業は、学生 の解剖的知識の理解や興味を高める可能性があること が示唆された。本調査結果を基にさらなる改善に努め たい。 キーワード:運動器エコー、実習、鍼灸、エコーガイ ド、授業評価 -Sat-P1-11:48 大宮呉竹医療専門学校における新たなVOD授業導入の 試み 1)大宮呉竹医療専門学校鍼灸科・鍼灸マッサージ科 2)東京呉竹医療専門学校教員養成科 3)呉竹学園 ○坂本辰徳1)、武井良之1)、平井顯徳1)、 渋谷砂惠子2)、齊藤秀樹1)、坂本歩3) 【目的】コロナ禍におけるVOD授業の経験を元に新 たなVOD授業導入を行い、授業実施後にアンケート 調査と成績比較から対面授業と同等の授業の質担保が できたどうかについて検討した。 【方法】対象クラスは夜間部2年生と3年生とし、対象 科目は夜間部2年生の東洋医学臨床論の1科目、夜間部 3年生のはりきゅう理論、生理学、東洋医学概論、臨 床医学、衛生・法規・医療概論、リハビリテーション 医学の6科目とした。全ての授業動画の配信が終了後、 学生にVOD授業に関するアンケート調査を実施した。 対面授業を実施した昼間部学生との成績比較は各科目 の得点を対応のないt検定を用いて行った。 【結果】夜間部2年生のアンケート回答率は20/24 (83.3%)、VOD授業を「十分活用した」10/20(50.0%)、 「対面授業と比べて良かった」13/20(65.0%)、「土曜 日を有効に活用できた」15/20(75.0%)となった。 夜間部3年生のアンケート回答率は15/24(62.5%)、 VOD授業を「十分活用した」7/15(46.7%)、「対面授 業と比べて良かった」5/15(33.3%)、「土曜日を有効 に活用できた」10/15(66.7%)となった。成績比較 では夜間部2年生の方が平均点が高かったが有意差は 認められなかった(p=0.06)。夜間部3年生は有意差が 認められた科目(臨床医学、リハビリテーション医学) と認められなかった科目(はりきゅう理論、生理学、 東洋医学概論、衛生・法規・医療概論)があった。 【考察・結語】夜間部2年生は東洋医学の概念理解を 深めるイメージ図を多く用いたことが学生の満足度と 得点が高かった一因であると考えた。夜間部3年生は 対象科目が多く教授スタイルの多様性が満足度と得点 に影響した可能性がある。VOD授業は今後も継続し、 対面授業と同等の授業の質担保ができるように改善に 努めていきたい。 キーワード:VOD授業、対面授業、アンケート調査、 成績比較、授業の質担保 - 100 - 009 010 -Sat-P1-15:00 頚部経穴の内部の可視化及び3Dモデルの製作(第3報) 1)日本鍼灸理療専門学校 2)(一財)東洋医学研究所 3)東京クリニック脳神経内科 4)埼玉医科大学東洋医学科 5)岩手県立大学 ○小川一1,2)、橘綾子1,2)、菊池友和1,2)、 五十嵐久佳3)、山口智4)、土井章男5) 【目的】後頸部経穴の刺鍼において後頭下筋の施術は 増えているが、刺鍼時の不安とリスクは大きい。令和 6年は頸部MRI画像から経穴内部の椎骨動脈と後頭下 筋の3Dデータ化を行い、刺鍼による椎骨動脈に接触 する角度と深さを立体的に示した。今回は別の被検者 において確認し前回の結果と比較した。 【方法】同意を得た女性1名の頸部のMRI画像(GEシ グナ1.5T、撮像方法T2、撮像間隔1.2mm)を取得した。 DICOMデータは画像解析ソフト(OsirX)を使用し、 皮膚面・頸椎(C1, C2)・後頸部浅層と深層の筋群・ 動脈(椎骨動脈・内頸動脈)及び画像上でマッピング した後頚部の経穴(天柱・風池)を抽出した。抽出デー タはOBJデータで出力し、モデリングソフト(Zbrush) で統合した。 【結果】3D画像で皮膚面の経穴と透過した内部の筋・ 動脈の立体的な配置を示した。水平方向の刺鍼におい て、天柱穴からは下頭斜筋(32.5・36.2)を貫き椎骨 動脈(47.3・53.0)に達するが、刺鍼方向を上方に傾 けると(39.0・42.0)で椎骨動脈に接触した。また風 池穴からは上頭斜筋(21.4・23.2) と大後頭直筋 (21.5・23.7)の間を抜けて椎骨動脈(32.5・33.1)に 達した(右・左で接触までの深さ, 単位mm)。昨年の データと比べ椎骨動脈の接触深度は左右とも約10mm 短かった。3D画像により刺鍼と深部構造の関係が立 体的に認識された。 【考察】後頭下筋への刺鍼時において、風池穴および 天柱穴でも寸3の鍼で椎骨動脈に接触する危険深度と なった。角度と個体差によると考えるが、内部の構造 や深さに対する安全な刺鍼に向け、透過型3Dモデル などによる立体的な認識が必要である。 【結語】3D画像により後頸部経穴から内部の筋と椎 骨動脈までの刺鍼方向を多方向から可視化し、立体的 に認識可能となり、寸3の鍼で椎骨動脈に接触する可 能性が示された。 キーワード:後頸部経穴、椎骨動脈、危険深度、後頭 下筋群、3Dデータ化 -Sat-P1-15:12 エコー装置による後頭下筋の安全刺鍼深度について 1)日本鍼灸理療専門学校 2)(一財)東洋医学研究所 3)岩手県立大学 ○吉田麻衣子1,2)、小川一1,2)、橘綾子1,2)、 橋本隆1,2)、土井章男3) 【目的】これまでエコー装置により前腕における経脈 や経穴内部の解剖学的な構造を検証してきた。今回は 後頭下筋に対しエコー画像とMRI画像・3D画像を取 得し、画像による深さの比較と安全刺鍼深度の検討を 行った。 【方法】1. 同意を得た女性1名の頸部を仰臥位でMRI による撮像(GEシグナ1.5T, 方法T2, 間隔1.2mm)を 行い、DICOMデータを画像解析ソフト(OsirX)にて 解析し、皮膚面・頸椎(C1, C2)・後頭下筋と画像上 でマッピングした後頚部の経穴(風池(GB20))を抽 出・ポリゴン化した。2. 上記対象者の伏臥位にて第2 頸椎棘突起・第1頸椎横突起・乳様突起下部に対する マークと、MRIおよび3D画像に合わせてプローブを 水平方向に定め、風池(GB20)のエコーによる撮像 (キヤノン社製Xario100、Bモード)を行い、JPEGファ イルを取得した。3. エコー画像とMRI画像・3D画像 により風池(GB20)から後頭下筋までの距離を計測 し比較した。エコー画像では皮膚面から対象の後頭下 筋まで垂直に計測した。 【結果】1. エコー及びMRI画像で風池(GB20)から 皮膚面に対して垂直方向で接触するのは大後頭直筋で あった。2. MRI画像と3D画像における風池(GB20) から大後頭直筋までの距離(mm)は一致し、右風池 で21.5、左風池で23.7となった。3. エコー画像による 計測では右風池で17.4、左風池で19.0となった。 【考察】エコー画像上で計測した距離がMRI画像・ 3D画像上のものと比べて短くなったことは、プロー ブの圧迫により内部の構造が圧縮された影響を考える。 また、プローブの角度の違いで画像上に示される筋の 配置や深さは変わる。エコーにより撮像しながら刺鍼 深度を探索することは有用であるが、安全刺鍼深度の 数値化にはプローブの圧縮と角度についての提示が必 要と考える。なお、押手の上下圧による圧縮について は検討課題となる。 【結語】風池(GB20)から後頭下筋の深さについて、 エコー画像とMRI画像・3D画像の計測値に差がみら れた。 キーワード:エコー装置、MRI、風池、後頭下筋群、 安全刺鍼深度 - 101 - 011 012 -Sat-P1-15:24 超音波画像診断装置を用いた後頭下筋群への安全刺入 深度の検討 名古屋トリガーポイント鍼灸院 ○高橋健太、前田寛樹、倉橋千夏子、後藤繁宗 【目的】後頭下筋群への深刺は中枢神経の損傷を与え るリスクがあり、鍼灸安全対策ガイドラインでは「注 意すべき部位」に挙げられている。しかしながら、後 頭下筋群周囲の安全刺入深度(Safety penetration depth, 以下:SPD)を計測した研究は少なく、生体に おけるSPDを測定した研究はほとんどない。本研究で は、超音波画像診断装置(以下:エコー)を用いて、 生体におけるSPDを調べたため報告する。 【方法】対象は健常成人26名(男性10名、女性16名) とした。基本被検者情報(年齢、身長、体重)を聴取 し、BMIを算出した。腹臥位にて(1)と(2)の部位 にエコープローブを当て、取得した画像よりSPDを計 測した。(1)下頭斜筋の最大膨隆部、(2)大後頭直筋 の最大膨隆部。測定には、KONICA MINOLTA SNiBLE yb リニアプローブL11-3を使用した。尚、 SPDは皮膚から筋最深部までの距離とした。基本被検 者情報とSPDよりピアソンの積率相関係数を算出し、 無相関検定にて有意差を算出した。 【結果】各部位におけるSPDは(1)34.8±4.7mm、 (2)34.7±4.5mmであった。また、上記2部位におけ るSPDは体重と中程度の相関を示した。(1) r=0.57, p=0.09(2)r=0.44, p=0.20。しかし、年齢やBMIとは ほとんど相関を示さなかった。 【考察】エコー用いることで、生体における後頭下筋 群周囲のSPDを計測することが出来た。その結果、30 mm程度が安全刺入深度であると考えられる。後頭下 筋群周囲のSPDは体重と関係している可能性があり、 個体差を考慮した安全な刺鍼が必要であると考えられ る。 【結語】本研究では、エコーを用いて後頭下筋群周囲 のSPDを計測したことで、後頚部への安全な刺入距離 を算出した。 キーワード:エコー、超音波画像診断装置、安全刺入 深度、後頭下筋群、後頚部 -Sat-P1-15:36 超音波画像装置を用いた鍼通電療法における深層筋収 縮動態の観察 名古屋トリガーポイント鍼灸院 ○前田寛樹、高橋健太、倉橋千夏子、後藤繁宗 【目的】筋パルスでは目的筋がしっかりと収縮するこ とが重要であるとされる。しかし、深層筋を目的とし た筋パルスの場合、体表からの触知や目視で筋収縮を 確認することは困難である。また、筋パルス時の筋収 縮動態を捉えている研究は多くない。今回、深層筋に 対する筋パルス時に超音波画像装置(以下:エコー) を用い、深層筋の筋収縮動態を確認した症例を示す。 【症例】27歳、男性、会社員。主訴は腰痛で下肢症状 は認めなかった。体幹動作と触診にて疼痛部位を確認 したところ両側腸肋筋と右腰方形筋にNRS6の動作時 痛と圧痛を認めた。 【治療・経過】エコーガイド下にて腸肋筋、腰方形筋 に刺鍼した。鍼先が腰方形筋内に到達している事を確 認し、筋パルスを目的とした低周波鍼通電療法を行っ た。鍼通電は全医療器のオームパルサーを用い、頻度 は1Hz、目視で筋収縮が確認でき、患者の逃避行動が 出ない出力で行った。エコーで通電中の腸肋筋・腰方 形筋の筋収縮動態を確認したところ、表層の腸肋筋で は筋運動が確認できたが、深層の腰方形筋では鍼先が 筋内に刺入されているのにも関わらず筋運動が確認で きなかった。その後、鍼を追加し、エコーにて腰方形 筋パルスが正確にできていることを確認した。施術後、 動作時痛はNRS6から0に改善した。 【考察】筋パルスにおいて鍼先が目的とする筋に届い ていることが重要とされている。しかし、本症例では 鍼先が筋内にあるにも関わらず、通電時のエコー画像 上では筋運動が確認できなかった。このような鍼先が 深層筋内にあるにもかかわらず浅層筋のみが収縮する 現象は、他の層構造を成す部位における筋パルスでも 同様に多く経験する。深層筋を目的とした筋パルスを 行う場合、目的の深層筋に刺鍼し通電するだけでなく、 通電中のエコーによる動態確認が有用であると考える。 【結語】筋パルスにおいて、鍼先が深層筋に刺入され ていても筋運動が確認できないことがある。 キーワード:エコー、超音波画像装置、鍼通電、筋パ ルス、筋収縮動態 - 102 - 013 014 -Sat-P1-15:48 衝陽穴付近の血管エコー画像と消化器症状の関連性の 探索的研究 1)東京医療福祉専門学校教員養成科教員養成課程 2)東京医療福祉専門学校教員養成科臨床専攻課程 3)東京医療学院大学保健医療学部 リハビリテーション学科 ○森川賢一1)、江川敦1)、仙田昌子1,2)、 間下智浩1,2)、大内晃一1,2,3) 【目的】超音波画像診断装置(以下、エコー)を使用 し足の陽明胃経の衝陽穴(ST42:以下衝陽穴)付近 の足背動脈の状態と消化器症状との関連性について探 索的に検討することを目的とした。 【方法】対象は東京医療福祉専門学校に在籍する消化 機能に異常を感じている人も含めた健康成人104名 (男性53名、女性51名)とした。測定項目はエコー (FANBO、Depth40mm、周波数7.5MHz)による衝陽 穴付近の足背動脈における最大口径部での冠状面画像 データ(ソフトウェアWirelessKUSから得られた血管 断面積)、出雲スケール、五臓スコア、The General Health Questionnaire12(GHQ12)、Body Mass Index (BMI)、足底の計測(長さと周長)、血圧(上腕動脈)、 心拍数とした。被検者はエコー測定2時間前から断食 (飲水は可)とし、身体測定を実施後、10分間安静仰 臥位の後、血圧と心拍数を測定し両側の足背動脈のエ コー画像を保存した。各評価票の回答は事前にGoogle formsにて実施した。データ解析はPSPPを用いピアソ ンの順位相関係数の有意性の検定を実施した。 【結果】足背動脈の断面積とBMI等の身体測定項目に 有意な相関は認められなかった。一方で、血管断面積 と各評価スコアとの相関関係は、50代(n=23)及びG HQ高スコアの群(n=34)では、五臓スコアの肺と有 意な弱い相関(r=-0.42、r=-0.46 P<0.05)を認めた。 【考察】出雲スケールスコアより被検者は消化器系症 状の少ない人が多かった。血管断面積と各身体測定項 目との有意な相関が認められず、これらの関連性は低 いと考えられる。一方、血管断面積では五臓スコアの 肺においては年代やGHQ分類によって一部有意な相 関関係認められた。これより、胃経の走行上にある足 背動脈の断面積と未病程度の消化器症状との関連性が 示唆された。【結語】五臓スコアの一部に足背動脈の 断面積との相関関係が認められた。今後、消化器系症 状の多い人を対象に比較検討する必要がある。 キーワード:超音波画像診断装置、出雲スケール、五 臓スコア、足陽明胃経、足背動脈 -Sat-P1-16:00 刺鍼深度に対する目標値と実際の深さの差 1)常葉大学浜松キャンパス健康プロデュース学部 健康鍼灸学科 2)藤田医科大学病院麻酔科ペインクリニック外来 ○福世泰史1)、日野こころ1)、有働幸紘2) 【目的】鍼治療は比較的安全な治療方法であるが、身 体への鍼の刺入に伴う有害事象が発生する可能性は否 定できない。中でも「気胸」は、その危険性が高く、 発生頻度も比較的多い有害事象として報告されている。 このようなリスクを回避するためには、解剖学的知識 に基づく刺鍼深度および刺入方向に関する理解が不可 欠である。本研究では、刺鍼深度に関する感覚を養う 方法の検討を目的とし、常葉大学鍼灸学科に在籍する 学生を対象として、刺鍼深度感覚に関する現状を調査 した。 【方法】同意の得られた対象者71名(1年生17名、2年 生14名、3年生27名、4年生13名)に対し、1cm、1.5 cm、2cmを目標として刺鍼練習台に刺鍼してもらった。 その深さを計測し1. 実測値および2. 目標値と実測値 の誤差(以下:誤差)について学年ごとに比較した。 また刺鍼後に正確さに対する自信の有無について聴取 した。 【結果】1. 実測値の中央値は、目標1cmが1.0cm、目 標1.5cmは1.4cm、目標2cmは1.7cmであった。同様に2. 誤差については、各中央値が0.2cm、0.2cm、0.4cmで あった。1∽3年生は目標値が深くなるほど誤差は大き くなっていた。刺鍼後の自信の有無に関しては、目標 1cmと1.5cmにおいては全学年において有意差がなかっ た。目標2cmは有意差があり、1∽3年生は半数以上が 「自信なし」だったが、4年生は半数(50%)が「自信 あり」と回答していた。 【考察】4年生は他の学年に比べて刺鍼の誤差は少な く、刺入深度の正確さに自信がある割合が高かった。 これらの結果は、これまでの鍼治療における経験の蓄 積および実習教育の成果が影響していると考えられた。 刺鍼による気胸を予防するためには、安全な刺鍼深度 の理解と適切な刺鍼技術の習得が不可欠である。した がって、早い段階から刺鍼深度に関する意識づけおよ び解剖学的知識の徹底が求められる。 【結語】今後も、気胸など有害事象の発生を防止する ために教育内容の更なる充実を図る必要がある。 キーワード:刺鍼深度、刺鍼技術、教育方法 - 103 - 015 016 -Sat-P1-16:12 脳梗塞リハビリセンターでの鍼灸治療の安全性対策に ついて 1)脳梗塞リハビリセンター 2)東京有明医療大学 ○石上邦男1)、宮澤勇希1)、鶴埜益巳1,2) 【目的】脳卒中後遺症専門の自費リハビリ施設におい て、リハビリと組み合わせて鍼灸施術を提供する際に 鍼灸施術後のリハビリ中に鍼の抜き忘れが見つかる事 故が発生した。そこで当施設での鍼灸施術中の有害事 象の発生率を調査し、頻回に鍼灸施術を提供する際の の安全性とリスク管理について検討した。 【方法】施術中は抜鍼時と体位変換時に使用した鍼数 とパッケージ数を擦り合わせ、終了時に使用済み鍼の 合計とパッケージの合計を擦り合わせて確認すること を基本とし、施術終了後に使用済み鍼をスポンジに立 て、同梱の鍼管をダンボール製の専用器に立てて数を 擦り合わせ、施術者当人と別の施術者が目視してダブ ルチェックすることで抜き忘れなどがないか確認した。 更に事故や有害事象が発生した場合には、全施設にそ の日の営業内容を共有する日報内のインシデント・ア クシデント報告項目への記載と事故報告書の提出をもっ て共有し、再発に備えるフローとした。今回2023年4 月から2024年3月までの報告数をもとに、鍼の抜き忘 れなど有害事象の発生件数を調査した。 【結果】鍼灸施術の合計19,346件に対し、有害事象は 1件(台座灸による赤みの残る火傷)、発生率は0.005 %となった。 【考察・結語】抜き忘れや折鍼と間違えて慌てて医療 機関の受診を勧めたところ鍼の番手を間違えており大 事には至らなかったケースなどがあり、徐々に上記の ようなフローを整えてきたが、実施後は有害事象の発 生が抑制されたと考察された。発生率は低いが、今後 も施術現場における対策を続け、報告して再発に備え るフローが守られるよう事故が発生した際に当事者を 責めない姿勢や、全日本鍼灸学会安全性委員会の鍼灸 安全対策マニュアルにもあるように労働条件による疲 弊が危険因子になることも考えられるため、鍼灸師の 勤務状況についても見直しを図るといった周囲の対策 も重要となることが示唆された。 キーワード:脳卒中、有害事象、安全性、抜き忘れ、 調査 -Sat-P1-16:24 鍼灸師養成学校における気胸事故予防教育についての 現状調査 1)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 ○恒松美香子1)、池宗佐知子1)、菅原正秋2) 【目的】鍼施術に伴う気胸事故防止を今後検討してい くために、鍼灸師養成学校における気胸事故防止のた めの教育内容を明らかにする。 【方法】日本全国の鍼灸師養成学校152校(大学およ び専門学校92校、視覚支援学校・盲学校56校、国立障 害者リハビリテーションセンター4校)にアンケート の依頼を送付し、Google Formを使用して調査への回 答を求めた。 【結果】64校より回答が得られた。各校における気胸 事故予防教育を行っている座学としては、はりきゅう 理論が58校と最も多く、教育時間は8分から120分と回 答された。次いではりきゅう理論以外の授業が50校で あり、教育時間は5分から200分と回答された。実技で は、肺が深部に存在する部位への刺鍼の際に注意喚起 をしている学校が61校と最も多く、次いで毎回の授業 で、気胸事故を起こさないように注意喚起をしている 学校が24校であった。教育内容は、座学では鍼による 気胸事故のメカニズムが62校、次いで、肺が存在する 体表部の説明が59校、胸部背部の刺鍼は浅めにするこ とが58校、実技では、肺が存在する体表部についての 説明が60校と最も多く、次いで鍼による気胸事故のメ カニズムが59校、肺が深部に存在する部での刺鍼は浅 めにすること、および、肺が深部に存在する部での刺 鍼は斜刺や横刺にすることがそれぞれ58校であった。 【考察】気胸事故防止には、体表から肺や胸膜までの 距離、肺が存在する部位など解剖学的知識や気胸が生 じるメカニズムの理解が必要である。これらの内容を 含めた教育が座学および実技教育の中で、各校で行わ れていることが推測されたが、科目や時間数は各校、 様々であった。鍼灸師養成学校において安全教育をよ り充実させるためには、教育に費やされる時間や内容 を今後検討する必要も考えられる。 【結語】鍼灸師養成学校において、気胸防止に関する 授業が実施されているが、その実施科目、実施時間は 各校によって異なった。 キーワード:安全性、気胸、鍼施術、刺鍼、鍼灸教育 - 104 - 017 018 -Sat-P1-16:36 リスクマネジメント研修会受講者アンケート調査報告 第2報 1)公益社団法人日本鍼灸師会研修委員会 2)公益社団法人日本鍼灸師会危機管理委員会 3)長野県臨床鍼灸学会 4)東京呉竹医療専門学校鍼灸・鍼灸マッサージ科 5)セイリン株式会社国内営業部営業課 6)公益社団法人全日本鍼灸学会 臨床情報部安全性委員会 ○今村頌平1,3)、是元佑太2)、荒木善行1)、 大木島さや香3)、藤田洋輔4)、西村直也5)、 菅原正秋6) 【目的】本鍼灸師会では全日本鍼灸学会安全性委員会 と連携し、リスクマネジメント研修会(以下、研修会) を継続的に実施している。今回は、鍼灸施術における 安全対策の現状を把握し、課題を明らかにすることを 目的に、受講者を対象としたアンケート調査を行った ので報告する。 【方法】研修会の受講者を対象にGoogleフォームを用 いた22問のアンケートを実施した。受講者数は310名、 回答者は97名(回答率31.3%)で、実務経験、安全対 策、有害事象、リスク説明、臓器損傷防止策などを調 査した。 【結果】実務経験年数は「20年以上」が45.4%で最多、 「5年未満」が8.2%だった。安全対策マニュアルの策 定率は27.9%、66.3%が未策定であった。刺鍼時に重 要視される安全対策は「刺鍼深度の管理」(98.9%) が最多で、「患者の既往歴の確認」(86.4%)、「消毒・ 清潔保持」(84.1%) が続いた。有害事象の経験は 「なし」が78.8%で、「感染」(3.5%)や「気胸」(1.2%) の回答があり、医療機関への依頼率は6.3%であった。 施術前にリスク説明を実施している割合は67.1%、書 面記録は25.9%だった。臓器損傷防止策としては「刺 鍼深度の慎重な管理」(93.1%)や「患者の体格評価」 (65.5%)が挙げられた。 【考察】受講者はリスクマネジメントに意識の高い層 と考えられるが、安全対策マニュアルの未策定率やリ スク説明、書面記録の実施率に関しては低い現状が示 された。また、少数ではあるが有害事象の報告がある ことから未然防止策の標準化が必要であることがわかっ た。特に、「刺鍼深度の管理」や「患者の体格評価」 の実施が重要であり、これらの対策を業界全体で共有 し導入することが求められる。 【結語】本研究は、鍼灸施術における安全対策の現状 と課題を明らかにした。安全性向上のためには、安全 対策マニュアルの策定推進、リスク説明と記録の普及、 教育機会の拡充が必要であり、本研究の成果はリスク マネジメント強化に寄与するものと考えられる。 キーワード:リスクマネジメント、医療訴訟、意識調 査 -Sat-P1-16:48 ステロイド服用患者における鍼灸関連有害事象の発生 率 埼玉医科大学病院東洋医学科 ○村橋昌樹、山本彩子、井畑真太朗、堀部豪、 山口智、小内愛、鈴木朋子 【目的】鍼治療の有害事象に関する研究は多数行われ ているが、ステロイド服用患者に焦点を当てた研究は 少ない。本研究の目的は、ステロイド服用患者におけ る鍼治療の有害事象発生率の遡及的な調査とした。 【方法】対象は、2013年4月1日から2024年3月31日に 埼玉医科大学病院、2020年4月1日から2024年3月31日 に埼玉医科大学かわごえクリニック東洋医学外来を受 診し、ステロイド内服または静脈注射で加療された患 者とした。有害事象は鍼治療後2週間以内に発生した 感染症、術後出血、紫斑などと定義し、Common Terminology Criteria for Adverse Events version 5.0日 本語版(CTCAE v5J)を用いて評価した。主要評価 はグレード別有害事象発生率、副次評価は服用期間に 基づく群間でのオッズ比とした。服用期間は30日以内 を短期、31日以上を長期とした。 【結果】対象者370人のうち、Grade 4以上の有害事象 は認めなかった。Grade 3、Grade 2はそれぞれ2件 (2.0%)で、全て長期服用群における軟部組織感染症 であった。このうち3件は感染部位と刺鍼部位が一致 せず、1件は一致したが鍼治療後の歯科受診に起因し た感染と診断された。Grade 1は13件(3.5%)で、術 後出血や紫斑が含まれた。長期服用群では12件(12.2 %)、短期服用群では1件(0.6%)であった。長期服用 群は短期服用群と比較し、ステロイド投与量、抗凝固 薬の有無、鍼治療回数で調整済オッズ比が3.2 (95% CI: 1.6-10.4, p=0.02)であり、有害事象リスクの増加 が示された。 【考察】軟部組織感染症の感染経路は多くが皮膚損傷 に起因するため、感染部位と刺鍼部位が異なる3件に ついては鍼治療との直接的な関連は低いと考えられた。 紫斑や微小出血は長期服用群でリスクが高く、ステロ イドによる皮膚菲薄化や血管壁脆弱化が関連している と考えられる。 【結語】ステロイド服用患者における鍼治療は、医師 の治療を要する有害事象の発生が少なく、安全に施行 可能である。 キーワード:鍼治療、ステロイド、術後出血、紫斑、 皮膚軟部組織感染症 - 105 - 019 020 -Sat-P2-10:00 あはき法12条の解釈について 1)順天堂大学大学院医学研究科医史学研究室 2)東京有明医療大学大学院保健医療学研究科 3)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 ○柴田泰治1)、谷口博志2,3) 【目的】あはき法12条は、きわめて短い条文でありな がら、その解釈によって、あはきが医業類似行為であ るとする考え方と、医業類似行為ではないとする考え 方に結論が分かれる。法律の条文の内容は普遍的で明 確であるべきであるが、施行から80年も経った現代に おいて、条文を素直に読むと、どのような解釈が導き 出せるのだろうか。そこで、12条の内容を検討し、一 つの解釈論を提示したい。 【方法】あはき法12条の文言を日本語の要素という視 点も加味して細かく分析し、1条とのつながりを確認 して内容を明らかにする。最終的にはあはきは医業類 似行為であるか否かについて、条文から読み取れる筆 者の結論を提示する。検討の際には、論文や雑誌記事 等も整理したうえで、かつての議論の概要も紹介した い。 【結果】あはき法12条の基本構造は、「何人も…医業 類似行為を業としてはならない」という医業類似行為 の禁止規定であり、本条文の解釈では、「第一条に掲 げるものを除く他」をいかに解釈するか、具体的には 「もの」が何を示しているかが重要である。者(人) でも物でもなくひらがなの「もの」であることから行 為ととらえ、1条にある「あん摩、マツサージ若しく は指圧、はり又はきゆう」をその対象と考えると、12 条はあはき施術を除いた医業類似行為を禁止する規定 と解釈できる。このことからあはき施術は医業類似行 為と結論付けられる。 【考察および結語】あはきは禁止されていないので禁 止されている医業類似行為には含まれないとする考え 方が見受けられる。しかし「第一条に掲げるものを除 く他」の内容を明らかにすることで条文の意味すると ころが明らかになる。さらに現在、政府(厚生労働省) や裁判所の見解を整理する限り、あはきは医業類似行 為であるとする結論であり、本発表の結論と整合を持 つ。そして政策が行われるにあたってはこの考え方が 前提となることに留意すべきである。 キーワード:あはき法、12条、医業類似行為 -Sat-P2-10:12 文献調査からみたFemtechとしての企業内鍼治療の取 り組み状況 1)関西医療大学保健医療研究科博士後期課程 2)関西医療大学大学院保健医療学研究科 ○三浦大貴1)、坂口俊二2)、木村研一2) 【目的】FemtechとはFemaleとTechnologyからなる造 語で、生理や更年期などの女性特有の悩みについて、 先進的な技術を用いた製品、サービスにより対応する ものと定義されている。鍼灸ではこれまで生理や更年 期などの女性特有の悩みに対して治療を行ってきたが、 これらをFemtechとして捉え、不定愁訴への鍼治療な どの研究がなされているか、特に企業内での鍼治療の 取り組みについて文献調査によって明らかにする。 【方法】2025年12月に文献調査を行った。検索媒体は、 PubMed、医学中央雑誌(医中誌)Webとし、検索年 は2015年から2020年とした。キーワードはPubMedで はFemtech, menstruation, pregnancy, infertility, postpartum care, menopause, gynecological diseases OR Acupuncture、医中誌Webではフェムテック、月経、 妊娠、不妊、産後ケア、更年期、婦人科疾患OR鍼と した。選定基準として、(1) タイトルにFemtech、 Acupuncture、フェムテック、鍼が含まれていること、 (2)人を対象とした研究であること、(3)英語もしく は日本語論文であること、(4)企業内においての鍼治 療であること、とした。 【結果】PubMedでFemtech では18件、Femtech OR Acupunctureで0件、以下、menstruation との掛け合わ せで43件、pregnancyで231件、infertilityで124件、 postpartum care で3件、gynecological diseasesで121件 であった。医中誌Webでは検索項目でフェムテックで は0件、月経OR鍼で10件、以下、不妊との掛け合わせ で8件、産後ケアで3件、更年期で1件、婦人科疾患で5 件が抽出されたが、企業内での鍼治療は0件であった。 【考察】海外、日本共にFemtech、鍼に関しての論文 は見られたが、女性特有の健康課題(不定愁訴など) という視点はまだまだ拡がっておらず、その対象とな りうる企業内での鍼治療による介入研究の必要性が示 唆された。 キーワード:フェムテック、鍼、調査、健康問題 - 106 - 021 022 -Sat-P2-10:24 なぜ鍼灸治療を受け続けるのか 1)愛媛県立中央病院鍼灸治療室 2)松山記念病院 3)森ノ宮医療大学鍼灸情報センター ○植嶋萌恵1,2)、平林里織1)、阿部里枝子1)、 中川素子1)、山見宝1,3)、山岡傳一郎1,2) 【目的】愛媛県立中央病院鍼灸治療室(以下、鍼灸治 療室)は約45年の歴史を持つ。その中でも40年以上鍼 灸治療を継続している一患者を通して鍼灸治療を長年 に渡って継続している理由を明らかにする。 【方法】80代女性。初診日より一度も中断することな く40年以上鍼灸治療を継続しており、自宅施灸も積極 的に行っている。半構造化面接を行い、鍼灸治療室で 行っている時系列分析によって得た生活史などの情報 と比較しつつ、KJ法を用いて内容を分析した。なお 本患者に研究の目的、方法、研究結果の公表などにつ いて口頭で説明し同意を得た。 【結果】面接の内容をKJ法によって分析したところ 「本人の健康観」や「実感する灸の効果」などのサブ カテゴリーから[患者の独自性]の大カテゴリーを抽 出した。また「self-careの選択肢の広がり」や「癒し としての鍼灸」などのサブカテゴリーから[患者本人 が感受した鍼灸治療の独自性]の大カテゴリーを抽出 した。 【考察・結語】分析により、本患者の独自性と本患者 が感受した鍼灸治療の独自性が合致したことが長期受 療に繋がったと考えられた。本患者の独自性として、 自分の治癒力で体を維持したいという健康観や、灸療 の効果を実感できていること、生活や趣味と灸との調 和などが挙げられる。本人が感受した鍼灸治療の独自 性としては、体調管理の手段として有用であること、 鍼灸師による鍼灸治療で体の不調が軽減されるだけで なく、癒しや安心感が得られると感じていることなど が挙げられる。自身の健康観と養生の側面を持つ鍼灸 の親和性、本患者が自宅でできる体調管理として灸が 適していると実感していること、担当の鍼灸師や鍼灸 治療を信頼し自己開示できていることなどが鍼灸治療 に対する良い評価に繋がっていると考えられ、本患者 の長期受療に繋がったと分析した。なお、長期受療に 繋がる鍼灸師側の要素については今後分析が必要であ る。 キーワード:鍼灸、長期受療 -Sat-P2-10:36 某鉄鋼メーカー従業員に対する経穴講座の受動・主体 参加に関して 1)大同特殊鋼株式会社星崎診療所 2)明治国際医療大学鍼灸学部はり・きゅう学講座 ○平瀬詠子1)、廣正基2) 【目的】某鉄鋼メーカーの労働者に対して「ツボ押 し」のセルフケア講座を行い、受動及び主体参加時の 受講後の自覚症状、疲労状態、プレゼンティーズムへ の影響を検討した。 【方法】労働者に対して「ツボ押し」セルフケア講座 を行なった。対象は、79名中回答に欠損のない62名 (男44名、女18名)、平均年齢43.5±12.1歳とした。対 象者は、部門代表者のsafety leader教育時に受講した 35名(以下、受動群)、講座に自主的に受講した27名 (以下、主体群)に分けた。評価内容は、産業疲労研 究会作成の自覚症しらべ(1群:ねむけ感、2群:不安 定感、3群:不快感、4群:だるさ感、5群:ぼやけ感)、 疲労部位しらべ(疲労)を用いた。プレゼンティーズ ムの評価は、世界保健機関「健康と労働パフォーマン スに関する質問紙」の項目を用い、絶対的と相対的を 評価した。評価時期は、受講直後と受講1ヵ月後に行っ た。解析は、受動群、主体群の受講直後と1ヵ月後の 比較をt検定した。 【結果】自覚症状は、受動群で、ねむけ感5.0点から 3.3点、不快感2.7点から1.9点、だるさ感4.8点から3.8 点で改善した。主体群は、だるさ感5.9点から5.0点で 改善した。疲労では、受動群、主体群で変化がなかっ た。プレゼンティーズムは、受動群で変化がなく、主 体群で相対的90.7%から102.9%で能率向上を示した。 自覚症状、疲労、プレゼンティーズムは、受動群と主 体群の間に交互作用がなかった。ツボ押しを行ってい る者は、受動群22名、主体群23名で差がなく、受動群 で自覚症状(ねむけ感、不安定感、だるさ感)の改善、 主体群で自覚症状(だるさ感)の改善、プレゼンティ リズム(相対的)の向上を示した。 【考察・結語】受動群及び主体群の2群間において、 特徴的な差はみられなかった。しかし、「ツボ押し」 講座は、自覚症状の改善、作業能率の向上に寄与する ことが期待できた。 キーワード:ヘルスキーパー、自覚症状、自覚症しら べ、疲労部位しらべ、プレゼンティーズ ム - 107 - 023 024 -Sat-P2-10:48 鍼灸施術に対する満足度・受療頻度(回数)の統計学的 調査 1)中央大学理工学部 2)鍼灸新潟 3)ICM国際メディカル専門学校 4)海沼鍼灸院 ○渡邉真弓1,2,3)、角田洋平2)、浦邉茂郎2)、 小川哲央2)、海沼英祐4)、中村吉伸2)、 岩村英明3)、大槻健吾3)、谷口美保子3)、 角田朋之3) 【緒言】国民生活基礎調査では慢性腰痛を訴える者が 多い。女性の場合「冷え」を訴える者も多数いる。慢 性腰痛の85%は非特異的腰痛であり、画像診断と症状 が一致しないため原因特定が難しく早期発見や予防が 困難である。本研究では、慢性腰痛の患者に「冷え」 を訴える者が多いことに着目して、慢性腰痛の早期発 見のため「冷え」と慢性腰痛を同時に問うweb調査を 実施した。さらに鍼灸施術に対する満足度と来院頻度 を調査した。 【方法】全国の女性1000名(20-59歳)を対象にweb調 査を行った結果、鍼灸治療を受けたことのある者は 295名であった。その内訳を「冷え」の有無で2分する と:「冷え」(無)128名/「冷え」(有)167名。慢性 腰痛の有無で二分すると:慢性腰痛(無)153名/慢性 腰痛(有)142名であった。『a)「冷え」(無)(有)の 両群において鍼灸施術に対する満足度(満足、やや満 足、やや不満、不満)に分け比較した。b)同様に慢 性腰痛(無)(有)の両群においても解析した。さら にc)「冷え」(無)(有)の両群において受療回数(頻 度)[週2回、週1回、月1、時々]のグループに分け比 較した。d)同様に慢性腰痛(無)(有)の両群におい ても解析した。』 【結果】Chi-testの結果、『a)P<0.01、b)P<0.01、c) P<0.01、d)P=0.01』であった。「冷え」(有)群も慢 性腰痛(有)群も「冷え」(無)群や慢性腰痛(無) 群によりも施術に対する満足度・受療回数が有意に多 い。 【考察】統計学的解析結果において受療者の満足度は 有意に高いことを数値として再確認できた。加えて、 「冷え」(有)群と慢性腰痛(有)群とでは、満足度、 および、来院頻度のパターンが異なることが示された。 このことは、鍼灸院経営のヒントとなる可能性がある。 今後、研究を深め、鍼灸施術の満足度・来院頻度の向 上につなげたい。 キーワード:「冷え」、慢性腰痛、満足度、来院頻度 -Sat-P2-11:00 心身の状態を感じる能力「内受容感覚」が未病評価に 及ぼす影響 1)関西医療大学大学院保健医療学研究科 保健医療学専攻 2)株式会社神樂 3)関西医療大学大学院 4)和歌山県立医科大学医学部衛生学講座 ○尾下功1,2)、戸村多郎3,4)、大津舞2)、 薮内麻衣2) 【目的】「五臓スコア」や「虚実スコア」は、患者の 回答を基に未病を評価する指標で、不定愁訴を中心に 構成されている。これらの評価尺度は、「内受容感覚」 に影響を受ける可能性がある。本研究では、内受容感 覚が五臓スコアおよび虚実スコアの結果に与える影響 を、心拍検出課題(Schandry法:1981)を用いて検討 する。 【方法】研究対象は、某大学の教職員・学生、某企業 の従業員・利用者とした。収集したデータは、心拍検 出課題、血圧測定、一般健康質問であった。研究は関 西医療大学研究倫理審査委員会の承認を受けて実施し た(承認番号:24-06)。 【結果】対象者は男性16名(平均50.4±S.D.19.9歳)、 女性15名(51.5±21.6歳)であった。心拍検出課題に おける申告心拍数とECG測定の一致率(Spearman, 相 関係数r)は、男性0.55、女性0.83であった。各スコア および心拍検出課題の性差は認められず、心拍検出課 題とスコア間にも有意な相関は見られなかった。一方、 探索的解析として、質問による内受容感覚評価指標 (MAIA)の内、主要な5項目とスコア間の相関(r)を 検討した結果、「体に何か異常があるのではないかと 心配する」との項目が、心(0.51)、肺(0.39)、腎 (0.40)、五臓全体(0.56)と有意な正の関係を示した。 さらに、五臓スコア全体を従属変数、MAIAの5項目 を独立変数としてステップワイズ法による重回帰分析 を行い、性別、年齢、BMIで調整したところ、前述の 項目がスコア上昇に有意な影響を及ぼしていた。 【考察】心拍検出課題で測定される内受容感覚は心臓・ 血管由来のもので、五臓スコアや虚実スコアによる体 調評価とは異なる性質を持つ可能性がある。一方、 MAIAの特定項目が五臓スコアと有意な関連を示した ことは、スコアが内受容感覚を活用した未病の評価や 介入研究に応用可能であることを示すものである。患 者自身の身体への気づきを促す教育や介入が、より精 度の高い未病評価につながる可能性がある。 キーワード:内受容感覚、心拍検出課題、五臓スコア (未病スコア)、虚実スコア、健康観 - 108 - 025 026 -Sat-P2-11:12 コーヒー摂取頻度と胃熱との関連:横断研究 1)大阪大学医学系研究科 2)大阪国際大学 3)平成医療学園専門学校 4)平成クリニック ○宮嵜潤二1,2)、坂井孝2)、久木久美子2)、 久保益秀3,4) 【目的】コーヒーは胃粘膜保護作用や代謝機能の改善 効果が報告されているが、胃熱に対する影響は東洋医 学的な観点から議論がある。コーヒーの摂取頻度と胃 熱との関連について明らかとするため横断的に検討し た。 【方法】2014-2023年の調査に同意した18-70歳の男女 641名中、年齢・性・胃熱・コーヒー摂取頻度の回答 欠損を除外した568名を解析対象とした。コーヒー摂 取は自己記入式の回答で、摂取頻度を「飲まない」 「ときどき飲む」「1日に1~2杯」「1日に3~4杯以上」 でカテゴリー化した。胃熱は、関連する48項目の質問 についてそれぞれ得点化し中央値をカットオフとして 定義した。解析は「飲まない」を基準とした各摂取頻 度による胃熱のリスクを、年齢、BMI、飲酒、喫煙、 睡眠時間、運動、婚姻、ストレス、食事摂取頻度(間 食、果物、牛肉、フライ、鮮魚、緑色野菜)、遺伝子 多型(FTO2、ADRB3、ADRB2、UCP1)で調整した 修正ポワソン回帰モデルにより発生率比(Incident rate ratio; IRRs)と95%信頼区間(Confidence Intervals; CIs)で推定した。解析はR version 4.3.2を使用した。 【結果】本研究で胃熱だった者は193名(34.0%)で あった、「飲まない」を基準にしたコーヒー摂取頻度 の胃熱の多変量調整IRR(95%CI)は、全体で「とき どき飲む」0.68 (0.46, 0.99)、「1日に1~2杯」0.72 (0.49-1.07)、「1日に3~4杯以上」0.87(0.57-1.34)で あった。女性では「ときどき飲む」0.56(0.33-0.95) と負の関連を示したが、男性では関連を示さなかった。 【考察・結語】胃熱はコーヒー摂取頻度との間で負の 関連を示し、特に女性において顕著であった。適切な 頻度でのコーヒー摂取が胃熱の予防に寄与する可能性 が示唆された。 キーワード:胃熱、コーヒー摂取、生活習慣、肥満関 連遺伝子、横断研究 -Sat-P2-11:24 鍼灸臨床へのAI導入における意義と課題の質的検討 1)ここちめいど 2)らしんどう 3)はりきゅう処ここちめいど 4)玉川大学工学部ソフトウェアサイエンス学科 5)理化学研究所革新知能統合研究センター 分散型ビッグデータチーム ○岩澤拓也1,2)、米倉まな1,3)、柴田健一4,5) 【目的】東洋医学の弁証は教育課程で学ばれるが、先 行研究から弁証スキルを高めるためには学習者のニー ズを満たす訓練が必要と示されている。本研究はAI の鍼灸臨床応用検討のため、症状の入力により弁証を 導き出せる自身でカスタマイズ可能なAIを作成し、 その活用意義や使用感、及び臨床応用の可能性を検証 した。 【方法】ChatGPTを用いて症状から弁証を導き出すAI システムを実装した。AIには検索拡張生成技術を用 いて、新版『東洋医学概論』に収録された弁証名と症 状のデータセットを追加学習させた。臨床で弁証を行っ ている鍼灸師4名がアプリを試用した後、半構造化面 接で意見を収集した。ZoomのAI機能を用いて文字起 こしした後、グラウンデッド・セオリー・アプローチ に基づく質的分析を実施した。弁証を導き出すAIは 鍼灸師がカスタマイズできる仕様とした。 【結果】AIの正答率は鍼灸師が導き出した弁証に基 づく減点方式により評価し、平均正答率は62%であっ た。インタビュー結果から、AIの有用性として新人 教育や院内治療基準の統一、患者説明支援、漢方薬検 索、集客分析ツールとしての可能性が指摘された。懸 念点として患者個別性への対応、流派間の違い、AI の過剰使用による思考力低下、データの質保証が挙げ られた。 【考察および結語】AI弁証の正答率は、データに存 在しない症状や情報量が少ない場合に低下することが 確認された。インタビュー結果から、地域鍼灸院院長 2名は本AIに対して新人教育や集客、リピートの為の ツールに使用できると捉えていた。雇用されている鍼 灸師2名は、問診の聞き忘れ防止等のサポートに有効 と捉えていた。AIに否定的な意見としてデータベー スの信頼性や過剰使用による思考力の低下への懸念が あった。これらを踏まえ、AI導入には患者ごとの特 性への対応、データの質保証、適切なAI活用方針の 提供が重要である可能性が示唆された。 キーワード:AI、弁証、東洋医学、ChatGPT - 109 - 027 028 -Sat-P2-11:36 未病治の養生目標が健康状態に与える影響 1)関西医療大学大学院 2)和歌山県立医科大学医学部衛生学講座 3)関西医療大学準研究員 4)株式会社ムラタ漢方 5)株式会社Waistline Group 6)とむラボ 7)関西医療大学大学院保健医療学研究科 保健医療学専攻 8)株式会社神樂 9)関西医療大学保健医療学部はり灸・ スポーツトレーナー学科 ○戸村多郎1,2,9)、村田信八3,4,5)、申裕成6)、 尾下功7,8)、櫻井永遠9) 【目的】本研究では、未病治(予防的健康管理)の概 念を広めるために設計された「未病治な毎日の18養生 目標(MDGS)」に基づき、各行動目標の実践状況が 健康状態や東洋医学における未病スコア(五臓スコア) ・虚実スコアに与える影響を検討することを目的とし た。特に、不定愁訴が放置されると病気に進展するの か、それを養生で予防可能かを探る。 【方法】2022年7月から10月に某大学の教職員と学生 を対象に横断的調査を実施した。Googleフォームを用 いた無記名アンケートでは、同意を得た参加者が108 項目に回答した。倫理的配慮として、関西医療大学研 究倫理審査委員会(22-03)の承認を得た。 【結果】91名の回答(男性48名:26.5±16.9歳、女性 43名:19.0±1.5歳)が得られたが、欠損値を除いた 男性46名、女性40名を分析対象とした。特に養生行動 4「本を読む」、7「社会とつながる」、9「体重管理」、 13「睡眠の質」、15「運動」の実践率に男女差がみら れた。虚実スコアでは1「健康を感じる」、5「楽しむ」、 6「悩まない」など、未病スコアでは1、2「生きがい を持つ」、5、6、12「休息を取る」などに有意な関連 がみられた。また、健康状態を「健康」「未病」「已病」 の3群に分けた傾向分析では、年齢(p=0.002)、虚実 スコア(p=0.010)、五臓スコア(肝p=0.003、心p=0.02 4、脾p=0.042)およびMDGSの2、5、6、9、12、13、 15、17「皮膚刺激」が有意(傾向含む)な関連を示し た。 【考察】本研究により、未病治に基づく特定の養生行 動(例:「生きがいを見つける」「休息を取る」「睡眠 の質を高める」)が、未病予防と健康改善において重 要な役割を果たす可能性が示唆された。不定愁訴が放 置されると病気に進展し、それを養生で予防できる可 能性があった。これらの結果は、未病治の実践(養生) が健康状態の向上に寄与することを支持している。 キーワード:未病治、養生、MDGS(未病治な毎日の 18養生目標)、未病スコア、虚実スコア -Sat-P2-11:48 体重の周期的変化に対する鍼灸治療効果 1)蛍東洋医学研究所 2)大塚鍼灸院 3)明治東洋医学院専門学校 ○大塚信之1,2)、瀬尾寿々3)、半田由美子3) 【目的】情報通信技術ICTの進展により、大容量の生 体情報の連続取得が可能となった。生体情報の中でも 生活習慣病予防の重要な要素となる体重を、日々計測 して時系列に分析することで、体重減少時だけでなく 増加時も含めた鍼灸治療効果を検証する。 【方法】37歳の女性に、鍼灸治療と毎日の起床時体重 の測定を基本として5年間実施した。体重減少を目的 とした治療は、中、気海、大巨への透熱灸、耳の神 門点、胃点(憂鬱点)、飢点(バリウム類似物点)、内 分泌点(TSH点)への置鍼と何れか一点への円皮鍼貼 付とし、愁訴に対する治療に組み込んだ。当初2年間 は食餌制限と運動療法も実施した。治療は248回、体 重測定は1772回実施し、月経開始日も記録した。治療 日に対する体重変化を平均値で示す。有意水準を5% としてt検定を実施した。 【結果】体重は99kgから66kgに減少(減少期)後、増 加(増加期)して、82±3kgの定常状態(定常期)と なった。体重変化は治療翌日に向けて低下した後に上 昇する周期性を示した。治療翌日は、減少期-0.23kg、 増加期-0.01kg、定常期-0.15kgとなった。治療前日に 対する治療翌日の体重変化は、減少期と定常期で有意 に低下した(p<0.01)。 【考察】減少期と定常期に治療翌日の体重変化が有意 に低下し、周期的な体重減少に及ぼす鍼灸治療効果が 示唆された。生体情報等の時系列分析はデータ数が多 く、p値が小さくなり有意性を判別し易いため、エビ デンスとしての活用が期待される。減少期と定常期は、 治療翌日の体重減少日数が増加日数の2倍以上となり、 体重減少を高頻度で認識できる。治療翌日に向けた体 重変化の低下は、鍼灸治療に対する条件反応が示唆さ れる。その結果、月経周期による体重変化を考慮する 事で、鍼灸治療は体重減少や維持に向けた意欲の増進 に繋がると考えられる。 【結語】体重の時系列分析により、定常期においても 治療翌日の体重減少に及ぼす鍼灸治療効果が示唆され た。 キーワード:体重減少、時系列分析、鍼灸治療効果、 条件反応、月経周期 - 110 - 029 030 -Sat-P2-15:00 葛飾北斎画にみる灸治 1)明治東洋医学院専門学校教員養成学科 2)明治東洋医学院専門学校鍼灸学科 3)明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科鍼灸学講座 4)明治国際医療大学基礎医学講座免疫・微生物学 5)一般社団法人鍼灸医療普及機構 ○矢島道子1,2,4)、安藤文紀5)、矢野忠3) 【緒言】我が国の古代・中世における鍼灸医学は灸治 療が主であり、江戸期には広く庶民に浸透し、医療文 化としての灸が確立した。浮世絵や書物にも多様な灸 の場面が描かれている。葛飾北斎は江戸後期に活躍し た浮世絵師で、美人画、武者絵、名所絵、絵手本など 幅広いジャンルの作品がある中で、セルフケアによる 灸の画がみられる。浮世絵の灸は美人画が多いが、北 斎のそれは他のジャンルで独自性があることからこれ を取り上げ、美術史の中の灸を医療の庶民化として文 化的観点から検討し、今日の灸の啓発に繋げることを 目的とした。 【方法】現在確認されている作品から灸に関するもの を取り上げ、その内容、含まれる文字等を解釈・検討 した。使用した画は『釈迦灸治』(北斎館蔵)、『羅漢 図』(石洞美術館蔵)、『蠻国の灸治』(北斎漫画十二編 浦上蒼穹堂蔵)、『百人一首乳母か縁説藤原実方朝 臣』(Victoria and Albert Museum蔵)、『皮きり』(風 流おどけ百句島根県立美術館蔵)、その他医療に関わ る数点である。 【結果・考察】『釈迦灸治』の灰入れの文字は所蔵館 でも不明とされていたが、今回の検討により、「蓮上 之也可」(之也可は変体仮名で「しゃか」)であり、題 材が釈迦であることが明確となった。釈迦および羅漢 の画は、足三里にセルフ灸をしている場面で、妖怪絵 である『蠻国の灸治』は、妖怪が皆で協力して灸をし ており、これは北斎自身の川柳を元に描かれたと考え られる。これらは日常の医療文化としての灸を非日常 の異世界に持ち込んだことで、逆に聖人や妖を浮世に あらしめる効果をもち、他の浮世絵の灸よりも強い印 象を与えている。『乳母か縁説』には伊吹艾の看板が 描かれ、当時の伊吹ブランドの確立が覗える。 【結論】美術史における医療のジャンルとして、北斎 の絵を通してセルフ灸への理解を深めることは、医療 文化としての健康支援活動への関心を高めるものであ り、灸のより広範な普及につながると考える。 キーワード:葛飾北斎、灸、足三里 -Sat-P2-15:12 3Dスキャンを活用した「銅人形」についての調査報 告 北里大学薬学部附属東洋医学総合研究所 ○加畑聡子 【目的】東京国立博物館所蔵「銅人形」(列品番号C- 543:以下、東博銅人形)が、江戸医学館教諭を務め た幕府医官・山崎宗運によって『霊枢』に基づき制作 されたことは、2020年度第69回大会で報告した通りで ある。また遠藤次郎氏らが、2003年から2004年の間に 実地調査を行い、同館所蔵の「人体解剖模型」(列品 番号C-540:以下、解剖模型)が元は一体であったこ とを指摘したものの、これまで公表されてこなかった。 そこで本発表では、より詳細な検討を加えるべく東博 銅人形について3Dスキャンを活用して計測した結果 及びその考察を報告する。 【方法】東京国立博物館においてワイヤレスハンドヘ ルド3DスキャナーArtec Leoを用いて東博銅人形およ び解剖模型を測定し、その結果について古医書を踏ま えながら検証した。 【結果】リバースエンジニアリングソフトウェア Geomagic Design Xを用いて、東博銅人形の厚みを大 腿部の開放部に基づき4mmとして計測して解剖模型 との組み合わせ作業を行ったところ、高さ、横幅とも に収納可能な測定値が得られた。幅については頸椎棘 突起部と肺前面が逸脱するが、椎骨及び麻布で制作さ れる左右の肺の接続部分の可動性を踏まえれば収蔵可 能と見なした。また、解剖模型の心には、肺に接続す る管と腎、肝、脾に繋がる孔が見られるなど、『類経 図翼』等に見える内景図と一致することなどから東洋 医学的な蔵象説に基づいて制作されたといえよう。 【考察・結語】3Dスキャンによる計測値から、もと は東博銅人形に解剖模型が収蔵されていたと推察した。 東博銅人形は写実的な形態を成す一方で、解剖模型は 東洋医学的な身体観が反映されることから、両資料に は、医学古典をはじめ諸説が折衷された当時における 実証性が体現されていると見なした。 ※本研究はJSPS科研費JP20K12905の助成を受けたも のである。 キーワード:銅人形、解剖模型、3Dスキャン、山崎 宗運、江戸医学館 - 111 - 031 032 -Sat-P2-15:24 日本における明治・大正期の鍼通電史について 1)岡山大学医学部疫学・衛生学分野 2)岡山大学大学院医歯薬学総合研究科総合内科学 ○松木宣嘉1,2) 【緒言】鍼通電は今日、一般臨床はもとより多くの鍼 灸研究でも用いられている。しかし国内の鍼通電史に 関する研究は乏しく、多くの場合1970年代の鍼麻酔ブー ムから記述が始まる。そのため今回国内における明治・ 大正期の鍼通電の状況について調査し、報告すること とした。 【方法】国立国会図書館デジタルコレクションを用い た文献調査により、明治・大正期の鍼通電について調 査した。 【結果】明治35(1902)年に著された奥村三策の『普 通按鍼学』に「鍼は又電気を深く通ずる媒介として用 ゐれば、頗る便利なるが如し」との記述が見られる。 しかし、奥村は鍼の通電を提案はしているが、実践し たかどうかは定かではない。次に明治37(1904)年に 著された岡本愛雄の『実習鍼灸科全書増補3版』の凡 例に「医士諸賢ハ、鍼ニ電気ヲ応用シテ試用アランコ トヲ望ム。実験上其功実ニ著シキヲ認ム。」と記され る。さらに岡本が明治33(1900)年に著した『実習鍼 灸科全書』に序文を書いた井上善次郎は、大正5 (1916)年の「日本内科学会雑誌」に「鍼術ニ電氣ノ 應用」と題する論文を書いている。井上の研究は昭和 3(1928)年に辰井文隆によって著された『実験鍼灸 病理学各論前編改訂第3版』に紹介されている。 【考察・結語】これら鍼治療に通電を加える方法に影 響を与えた可能性があるものとして、明治期の西洋医 学の記録には「電気鍼」と称される技法が散見される。 明治9(1876)年のリンケルによる『薬性論』には腰 痛に対して「電気鍼刺若クハ琶布」という記載がみら れ、明治10(1877)年の『羅甸七科字典』には「Elec tro-punctura電氣鍼治法」の記載が見られる。これらの ことから、明治初期には電気鍼が西洋から輸入されて いたことが分かる。この治療法が東洋医学の鍼に通電 を加える技法に影響を与えた可能性が考えられる。 キーワード:鍼通電、医学史 -Sat-P2-15:36 昭和前期の呉竹学園における学生募集 横浜呉竹医療専門学校 ○奥津貴子 【目的】1926年(大正15)、現在の呉竹学園の前身で ある東洋温灸医学院(1929年(昭和4)、東京高等鍼灸 医学校設立)が創立されてから来年(2026年(令和8)) で100周年を迎える。その長い歴史から「老舗」とさ れているが、近年は呉竹学園を含め、多くの鍼灸学校 が学校の急増に加え、少子化や景気後退の影響を受け、 学生募集に変動が生じている。折しも呉竹学園が創立 した昭和前期も昭和恐慌や第二次世界大戦が起きてい るが、学校は存続した。この事実から当時の学生募集 に激動の時代の中でも学校が存続することができるヒ ントがあるのではないかと考え、本研究を行った。 【方法】「東京高等鍼灸医学校入学案内」(1939年(昭 和14) 発行) と年史である「学園70年のあゆみ」 (1995年(平成7)発行)を調査し、現在の「入学案内」 と比較した。 【結果】昭和前期は昭和恐慌の影響により失業者が増 加した時代であったが、大正デモクラシーの余韻が残 り、女性の社会進出が活発であった。「入学案内」に は学校に様々な職種の者や女性が在籍していることが 紹介され、鍼術・灸術は「独立開業できる」、「女性に 向いている」というキャッチコピーが並び、社会情勢 を捉えた学生募集を行っている。また、晴眼者の鍼灸 学校として東京府(当時)に認可され、無試験で免許 を取得することができる指定校であることを強調し、 他校との差別化を図っている。昭和前期も現在の学生 募集と同様に職種のメリットと他校との違いをアピー ルしていることが窺える。 【考察・結語】学校が存続するためには、社会情勢を 正確に捉える力と逆境を好機とする前向きな姿勢、そ して他校にはない特徴を持つことが必要であるが、現 在は昭和前期と比較すると学校数が圧倒的に多く、特 に差別化を図ることは容易ではない。この状況の打開 策として、学生募集は業界を担う人材発掘の機会であ るという観点から、学校と業界の連携が不可欠である と考える。 キーワード:昭和前期、呉竹学園、創立100周年、東 京高等鍼灸医学校入学案内、学生募集 - 112 - 033 034 -Sat-P2-15:48 上海近代中医教育機関の教育課程の変遷に関する調査 研究 大阪医療技術学園専門学校鍼灸美容学科 ○奈良上眞 【はじめに】上海中医薬大学は1956年に創立、中華人 民共和国が成立後、最も早期に創立した4箇所の中医 高等教育機関のひとつである。そこで現存する創立当 時の中医学教育の状況を記録する資料を基に中医学教 育機関などの変遷を調査した。 【研究方法】研究方法は現存する中医学教育関係資料 を対象に解放後当初〔創立〕の上海近代教育機関の変 遷および当初の教育課程を調査した。対象文献は『中 医年鑑』、『上海中藥大學誌』。また創立当時からの上 海中医学院の教育者である趙偉康老師〔終身教授〕へ 聞き取り調査を行った。 【結果】上海中医学院の創立当初、1956年の中医学専 攻6年制の教育時間総数は5842時間であった.創立当 初の1956年の1年次は東洋医学系科目の教育から始まっ た。その理由は当時に所属する教員の専門性が中医学 系に偏っていた理由である。しかし1958年以降の1年 次は基礎医学系科目の教育から始まった。1960年の鍼 灸学専攻4年制の教育時間総数は2484時間であった。 2022年の鍼灸推拿学専攻5年制の教育時間数は3927時 間であった。各々1年間換算すると、1956年中医学専 攻は974時間、1960年鍼灸学専攻は621時間、2022年鍼 灸推拿学専攻は785時間であった。各々教育分野別の 割合は1956年の基礎分野は16.4%、専門基礎は19.2%、 専門分野は47.0%であった。2022年の基礎分野は10.4 %、専門基礎は25.4%、専門分野は57.8%であった。 また専門分野の教育の中で、内経や傷寒論などの中医 経典科目の教育時間数は1956年では665時間(割合 11.4%)、2022年では378時間(割合9.6%)であった。 【考察・まとめ】中国と日本の教育年数と教育時間は 異なるものの、日本のあはきに係る学校養成施設認定 規定の教育割合とほぼ同等であった。しかし今回の調 査から中国の専門分野の教育に中医経典科目の導入が 日本での教育と異なっていたことが明らかになった。 今後、日本のあはき教育にも原典(古典)閲読の教育 が必要と考える。 キーワード:文献、教育課程、教育機関、中医学、上 海 -Sat-P2-16:00 日中の教科書記載の蔵象 1)木場鍼灸院 2)日本鍼灸研究会 ○木場由衣登1,2) 【緒言・目的】「蔵象(五蔵論)」は、鍼灸の資格試験 への必要性、臨床運用への実用性などの意義がある。 多くの場合、導入として出会うのは、鍼灸学校の教科 書や中医学の概論書である。これらがどの様な経緯を 経て、今の内容となったかを究明したい。 【方法】昭和期から現代に刊行された概論書・教科書、 中医学の概論書、統編教材(1930年代から統編教材第 5版まで)に記載される「蔵象」について比較した。 【結果・考察】中国の民国期には現在の臓腑理論は見 られず、秦伯未『中医入門』1958、南京中医学院『中 医学概論』1958-1959が起源である。これらは統編教 材第1版1960・第2版1964『内経講義』を経て、1974 『中医学基礎』で原形が完成する。最も影響が大きい のは第5版『中医基礎理論』であり、この内容が『針 灸学[基礎篇]』に直結し、日本の教材へ影響する。日 本においても1930年代の教材(山崎良斎・山本新梧) に東洋医学的理論は無い。滝野憲照『東洋医学概論』 1955-1982には腹診の項に各五蔵の証は記載される。 長濱善夫『東洋医学概論』1961になると、腹診、臓腑 観、臓腑の実体が記載される。『漢方概論AB全』1966 には、『難経』42難による臓腑の形状と重さについて の記載はある。城戸勝康『東洋医学概論』1992は、 『素問』霊蘭秘典論(官職)と『鍼灸重宝記』(同42難) を記し、『東洋医学概論』1993は『素問』霊蘭秘典論 が中心にしながら、中医学の蔵象(疏泄や運化等)が 追加される。日本の五蔵論は、『針灸学[基礎篇]』と 国家試験への対応で中医学化が加速し、完全に染まっ ていく。 【結語】日本の教科書にある臓腑は、形体(実体)と しての臓腑が主流で、1993年以降、中医学の蔵象へ転 換する。分類としての五蔵論である五行色体表への尊 重は薄らぎ、徐々に中医学を介して『黄帝内経』風の 蔵象へ移行する。しかし実際は、脈々と『内経』を受 け継いでいるのではなく、必要に応じて都合よく抜き だしただけである。 キーワード:蔵象、五臓六腑、中医学、東洋医学概論、 教科書検討 - 113 - 035 036 -Sat-P2-16:12 エビデンスに基づく隠白(SP1)の主治症の検討 1)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 2)熊本針灸小雀斎 3)つくば国際鍼灸研究所 4)天津中医薬大学針灸標準化研究所 ○渡邉大祐1,2,3,4) 【緒言】一部の鍼灸・経穴専門書には経穴の主治症の 記載が散見されるが、国内外には経穴の主治症に関す る標準は存在しない。本研究では、システマティック レビューの手法を応用したEBMの考えに基づいた方 法を切り口に、現有エビデンスを根拠とした隠白 (SP1)の主治症を検討する。 【方法】隠白(SP1)単穴使用の現代文献(臨床研究 報告)や古代文献中の隠白(SP1)の単穴主治記載を 収集する。現代文献は、"隠白" or "SP1" and "臨床" or "治療" などの検索式をデータベース(日・中・英 語)にて検索を行う。古代文献は『中国鍼灸穴位通鑑』 より、隠白(SP1)の主治病症に関する内容を検索し た。評価対象の確定のため、現代文献には、隠白 (SP1)単穴使用での臨床研究報告で、鍼灸あマ指の 関連療法を使用していることを選択基準とし、各デー タベースで重複した文献を除外基準と定めた。古代文 献には、単穴使用の主治症であることを選択基準とし、 明らかに先人の記載を写した内容を除外基準と定めた。 評価対象を『中医循証臨床実践指南-針灸-(中医臨床 ガイドライン-鍼灸-)』の評価基準に基づきエビデン スレベル評価を行い、推奨グレード評価基準を用いて 方案(主治症)をABCの三段階に評価し、主治症を 形成する。 【結果】現代文献では、検出した論文から、タイトル と全文を閲読し、選択・除外基準に従いスクリーニン グを進め、最終的に16篇の現代文献(RCT5篇、症例 シリーズ9篇、症例報告2篇)を採用した。古代文献で は、全文を閲読し、選択・除外基準に従いスクリーニ ングを進め、最終的に18条の文献を採用した。評価基 準に従い2種の推奨(グレードB)主治症「不正性器 出血」「過長月経」を形成した。 【考察・結語】現有エビデンスから、隠白(SP1)は 不正性器出血・過長月経への治療効果を有する可能性 が高いことが明らかとなった。今後、単穴使用での臨 床報告が増えることで、主治症の範囲が広がることが 示唆される。 キーワード:隠白、SP1、主治、システマティックレ ビュー -Sat-P2-16:24 経絡治療で臨床化されなかった是動病、所生病 日本鍼灸研究会 ○中川俊之 【目的】経絡治療において、『霊枢』経脈篇を淵源と する是動病、所生病が臨床化されなかった理由を考え る。 【方法】雑誌『東邦医学』、『医道の日本』、及び経絡 治療関連書籍を調査した。 【結果】経絡治療は経絡虚実証を診察の軸とする。創 成当初から証の病証研究が行われ、『霊枢』の経脈病 証である是動病、所生病もさかんに検討された。岡部 素道「経絡的治療法の概念に就て」(『東邦医学』第八 巻第六号・一九四一)では、「是動病、所生病をよく 弁えることによって、何経絡の疾病であるかを診る」 とある。井上恵理、本間祥白等による「十四経病診断 論」(『東邦医学』第九巻第八号~第十巻第十号・一九 四二~四三)の「緒言」には、「是動病、所生病の病 証を、望聞問切の四診の法則を主として解説」とある。 中村新三郎「是動病、所生病に就て」(『東邦医学』第 十巻第一号・一九四三)では、『霊枢』経脈篇、と 『難経』二十二難に基づいた論考が見られる。しかし、 これら内容から是動病、所生病の具体的活用を窺うこ とはできない。「十四経病診断論」では、「緒言」の文 言に反し、是動病、所生病への言及はわずかである。 「是動病、所生病に就て」には、両者の具体的な診察 法は見られない。また、本間祥白『鍼灸病証学』(医 道の日本社・一九四四)でも、是動病、所生病を問題 としなかった。戦後の本間『経絡治療講話』(医道の 日本社・一九四九)病証編の「是動病、所生病」は、 経脈篇の意訳に留まり、臨床化の指針は示されていな い。井上雅文「取穴論に関する一考察」(『鍼灸医学』 第二号・一九七一)も是動病、所生病からの選経選穴 法を目指した論考だが、これも実用化しなかった。 【考察・結語】経絡治療は、証研究の一環として『霊 枢』の経脈病証を研究した。しかし、是動病、所生病 には虚実が無く、且つ経脈相互の関係も不明であるた め、その診察に組み入れることはできなかった。 キーワード:経絡治療、是動病、所生病 - 114 - 037 038 -Sat-P2-16:36 鍼灸資生経における難聴の経絡使用率 1)錦はり 2)ながた接骨院 3)軒岐会 ○佐藤想一朗1,3)、別府浩士2,3) 【目的】鍼灸治療に於いて選穴は重要な要素となる。 どのように選穴するかによって治療効果にも差が生じ る或いは同様の効果が出現するのではないかという疑 問から、鍼灸資生経から難聴に関する経穴の記載を調 べ、使用率を算出した。 【方法】鍼灸資生経の第6巻耳聾に記載ある経穴を所 属する経脈ごとに分類し、そこから使用率を算出した。 【結果】難聴に用いる経脈は足太陽膀胱経脈11.1%、 足少陽胆経脈25.9%、足陽明胃経脈0%、手太陽小腸 経脈18.5%、手少陽三焦経脈37%、手陽明大腸経脈3.7 %、足太陰脾経脈0%、足少陰腎経脈0%、足厥陰肝経 脈0%、任脈0%、督脈3.7%という結果になった。 【考察・結語】腎は耳に開竅するという生理学が有る ため難聴には腎を用いる事が多いが、資生経での記載 では足少陰腎経脈は0%であった。手少陽三焦経脈37 %、足少陽胆経脈25.9%、手太陽小腸経脈18.5%、足 太陽膀胱経脈11.1%の順で使用率が高く、手足少陽経 脈の合計は62.9%となり、次いで手足太陽経脈の合計 は29.6%であった。明確に手足少陽経脈の使用率が高 い事は、古く馬王堆帛書や陰陽十一脈灸経において耳 脈が登場し、その経脈の流れが手少陽三焦経脈に相当 する為使用率が高いと考えられた。また手少陽三焦経 脈と足少陽胆経脈は少陽でまとめられている為、手少 陽三焦経脈と同様に足少陽胆経脈の使用率が高い事が 考えられた。これら2つの経脈は霊枢経脈第十に登場 し、ともに耳中に入る為、耳との関連性が強い。三焦 の経脈病症にはのど腫、喉痺、発汗、外眼角痛、頬痛、 耳後肩肘外側痛、小指薬指が使えないとあり、胆の経 脈病症は口苦、ため息、心脇痛による回旋運動制限、 顔は塵が付いた様、身体には膏の潤沢がなくなる、頭 痛、頬の外側及び外眼角の痛み、缺盆中が腫れて痛む、 腋下は腫れ、頸部が腫れる、諸々の関節が痛む、足の 小趾薬趾が使えなくなる、とある為これらの症状も難 聴に加えて問診する必要があると考えられた。 キーワード:鍼灸資生経、難聴、少陽経、黄帝内経、 使用率 -Sat-P2-16:48 初学者が復元明堂経主治条文を臨床に生かすための方 法 1)愛媛県立中央病院漢方内科鍼灸治療室 2)森ノ宮医療大学鍼灸情報センター 3)松山記念病院 ○山見宝1,2)、植嶋萌恵1)、平林里織1)、 阿部里枝子1)、中川素子1)、山岡傳一郎3) 【目的】明堂経とは、後漢時代に成立した経穴書であ るが、本来の明堂経は亡佚している。時代を経て、鍼 灸甲乙経、外台秘要方に引用され日本においては医心 方に引用されている。現代においては、黄龍祥、日本 内経医学会、桑原陽二らにより明堂経主治条文の復元 がされている。しかし、初学者には、条文は漢字の羅 列に見えることや時代の変遷に伴い、症候名・病態な どの条文の理解が困難である。今回、鍼灸治療の根本 である主治症を現代の臨床に生かすための方法を検討 したので報告する。 【方法】まず、当施設で行っている明堂経主治条文復 元の方法により、神道穴・心兪穴・天宗穴の復元を行っ た。次に、条文の理解が困難なものは、(1)キーワー ドを選ぶ、(2)上位の医学概念に置き換える、(3)漢 方における病態を取り入れる、(4)実際の症例での検 討を行った。 【結果】神道穴は、「身熱頭痛進退往来疾カイ悲愁恍 惚肩痛腹満背急強。」であるが、上位の医学概念に置 き換えることにより、感染症および気分障害に伴う身 体化した症状と理解できる。心兪穴は、「寒熱心痛循 循然与背相引而痛胸痛中邑邑不得息ガイ唾血多涎煩中 善噎飲食不下ガイ嘔逆汗不出如瘧状目痛ボウボウ涙出 悲傷カイ瘧心脹者。」であるが、医心方の文字をキー ワードとすることで、心臓疾患、呼吸器疾患、眼疾患 などが考えられる。天宗穴は、「肩重肘臂痛不可挙。」 であるが、薬剤性肺炎を併発した症例から検討をする と、その病態には結胸熱実が存在していると考えられ る。 【考察・結語】今回、復元明堂主治条文を臨床に生か すための方法を検討した。医心方における主治条文は 黄帝内経明堂類成からの抜粋であり、医心方をキーワー ドとすることで推論の起点が作れる。また、上位の医 学概念に置き換えることで、現代での病態理解や検索 ができると考えられる。最も大切なことは、実際の症 例を通しての検討が重要であると考えている。 キーワード:復元穴位主治条文、神道穴、心兪穴、天 宗穴、医心方 - 115 - 039 040 -Sat-O1-11:00 動作時痛に伴う皺眉筋活動を指標とした痛みの客観的 評価 1)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 2)東京有明医療大学大学院保健医療学研究科 鍼灸学分野 3)東京有明医療大学附属鍼灸センター 4)University of Illinois Chicago ○山田隆寛1)、矢嶌裕義1,2,3)、高山美歩1,2,3)、 今西好海1)、山崎海立2)、森智哉2)、 Judith M. Schlaeger1,4)、高倉伸有1,2) 【目的】我々は、頚肩部痛患者において局所の圧痛を 誘発した際に主観的な痛みや不快感の増加に伴って皺 眉筋活動が高まることから、皺眉筋活動が痛みの客観 的指標として有用であることを報告した。今回、急性 腰殿部痛患者に対して鍼治療を行い、圧迫時の痛みと 同様に、動作時の痛みの客観的指標として皺眉筋活動 を用いることが可能かどうかを調べた。 【症例】23歳男性。主訴は左腰殿部痛。 【現病歴】来院2日前に重い荷物を運んだ後から左腰 ~殿部に痛みを自覚した。 【所見】体幹前屈により症状が増悪。左殿部~足外側 部に数秒間の痺れを感じることもあった。股関節屈曲 内転内旋テストは左が陽性。その他神経学的異常所見 なし。左腰殿部痛と痛みによる不快感の主観的評価に はnumerical rating scale(NRS:痛み/不快なし~最も 痛い/不快)を用いた。皺眉筋活動は、左右皺眉筋上 の電極から表面筋電計(Neuropack X1: MEB-2306、 日本光電)を用いて測定し、痛みが誘発される立位か ら最大前屈位までの動作を3秒間かけて行ったときの 表面筋電図(サンプリング周波数1000Hz)を記録し た。そして、得られた筋電図を全波整流して積分値を 算出し、左右の平均値を皺眉筋活動量とした。鍼治療 直前の体幹前屈時の痛みNRSは8、不快感NRSは9、皺 眉筋活動量は20.8μV・secであった。 【治療・評価】所見等から、本症状は脊柱起立筋と梨 状筋の過緊張によるものと推定し、40mm14号ステン レス鍼(セイリン)を用い、左右腎兪穴と大腸兪穴に 刺入深度5mmで15分間置鍼し、置鍼中に左梨状筋部 に単刺術を行った。治療直後の体幹前屈時の、痛みN RSは3、不快感NRSは3、皺眉筋活動は12.2μV・secで あった。 【考察・結語】鍼治療直後の体幹前屈動作で、主観的 な痛み・不快感とともに皺眉筋活動量が減少した。こ のことは、筋由来疼痛疾患の急性期において、皺眉筋 活動が、動作時に誘発される痛みや不快感を客観的に 評価する指標として有用であることを示す。 キーワード:皺眉筋、疼痛評価、客観的指標、表面筋 電図、鍼治療 -Sat-O1-11:12 感染性脊椎炎の疼痛管理に鍼治療が有用であった一例 1)福島県立医科大学会津医療センター鍼灸研修 2)福島県立医科大学会津医療センター附属研究所 漢方医学研究室 ○工藤慎大1)、山田雄介1)、加用拓己2)、 宮田紫緒里1)、津田恭輔2)、鈴木雅雄2) 【目的】感染性脊椎炎は疼痛管理に難渋する場合があ る。今回、感染性脊椎炎の病原体特定に時間を要し、 その間の疼痛管理に難渋していた患者に対して、鍼治 療が奏功した症例を経験したので報告する。 【症例】40歳代、男性。[主訴]腰痛、両側大腿前部 痛。[現病歴]X年9月に腰痛を自覚して近医整形外科 を受診し、感染性脊椎炎と診断され抗菌薬治療が開始 された。しかし、腰痛は改善せず10月28日に当院へ紹 介となり、精密検査を実施したが病原体の特定には至 らなかった。疼痛に対しては、非オピオイド鎮痛薬を 最大量使用していたが疼痛の改善は認められず、加え て肝機能障害が出現した。そのため鎮痛薬の加薬がで きないため、11月25日に当科へ紹介となった。[現症] 第4腰椎を中心とした腰痛と両側大腿前部に強い疼痛 を認め、睡眠障害を自覚していた。[治療]発症起点 が外邪性であり、病変が督脈上にあることから邪犯督 脈証とし八脈交会穴である後渓穴、申脈穴を選穴し、 さらに抗炎症目的に足三里穴、手三里穴を使用した。 鍼治療は各経穴に補瀉手技を行った後に2Hz/20分間の 鍼通電療法(LFEA)を1日1回、週6回で実施した。 評価は患者コメントと11段階のNRSにて痛みを測定し た。 【経過】初診時では強い疼痛のためNRSは10を示して いたが、3診目では「夜に追加の痛み止めを使わず眠 れた」とコメントがあり、夜間痛と睡眠障害の改善を 認めた。12診目には「痛みは股関節周りだけ」と疼痛 範囲縮小を認め、13診目ではNRSは3にまで減少した。 椎体生検により、病原体が特定され抗菌薬の開始に伴 い疼痛はさらに改善を認めた。 【結語・考察】本症例は病原体の特定までに時間を要 し、疼痛管理に難渋していた。しかし、弁証論治に基 づく選穴にLFEAを加えた鍼治療を開始してから、疼 痛の大幅な改善を認めており、本症例の疼痛管理に鍼 治療の併用が有用であった。 キーワード:感染性脊椎炎、疼痛、弁証論治、鍼通電 療法 - 116 - 041 042 -Sat-O1-11:24 帯状疱疹後神経痛に対する鍼治療の1症例 1)東京有明医療大学附属鍼灸センター 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 ○加持綾子1)、松浦悠人1,2)、坂井友実1,2) 【目的】帯状疱疹発症から3か月の帯状疱疹後神経痛 (PHN)患者に対して薬物療法と並行して鍼治療を行 い、アロディニアによる疼痛の著明な軽減が認められ たので報告する。 【症例】71歳男性主訴:左前胸部、左背部痛 【現病歴】X-3か月、左前胸部と左背部に痛みと皮疹 が出現したため近医を受診し、帯状疱疹と診断された。 疱疹は約4週で治癒したが同部位の疼痛は持続した。 X-2か月より神経障害性疼痛薬の服用を開始し神経ブ ロック療法も何度か試みたが、効果がなく鍼治療開始 となった。 【所見】左前胸部第5~7肋間、左背部第7~8肋間のビ リビリとした痛み、服の接触、シャワー刺激で増悪、 入浴で寛解、夜間痛(+)、触覚過敏(+)、痛覚鈍麻 (+)、アロディニア(+)、初診時Visual Analogue Scale (VAS)前胸部56mm、背部52mm 【治療】疼痛の軽減を目的に、アロディニア領域周辺 に横刺、左T5~7棘突起直側、膈兪、肝兪、脾兪、腎 兪、委中、承山、崑崙、百会、合谷、足三里、三陰交、 太渓、太衝などに置鍼15分とした。使用鍼は40mm・ 16号鍼のステンレス製ディスポーザブル鍼(セイリン 製)。治療頻度は1~3診は1回/月、4診以降は1回/1~2 週とした。 【経過】1~3診は、鍼治療の直後効果はみられたがア ロディニアや夜間痛に大きな変化はみられなかった。 4診以降、治療頻度を増やしたことにより徐々に疼痛 が軽減し始め、5診、7診、9診のVASの変化は、前胸 部痛66→29→6mm、背部痛48→24→0mmとなった。8 診には夜間痛、アロディニアが消失し、10診には疼痛 は完全に消失した。 【考察及び結語】鍼治療はPHNに対し、神経線維や神 経細胞の損傷程度が軽度で新鮮例ほど効果が良いとさ れている。本症例による症状の軽快は自然経過と薬物 療法による改善も否定できないが、PHNによる痛みが 中程度で比較的罹病期間が短い例であったため、鍼治 療の効果があった可能性が考えられる。 キーワード:帯状疱疹後神経痛(PHN)、アロディニ ア、鍼治療、胸部痛 -Sat-O1-11:36 帯状疱疹により痛みの破局化を来した患者に対する鍼 治療の1症例 1)福島県立医科大学会津医療センター鍼灸研修 2)福島県立医科大学会津医療センター 付属研究所漢方医学研究室 ○宮田紫緒里1)、工藤慎大1)、山田雄介1)、 津田恭輔2)、加用拓己2)、鈴木雅雄2) 【目的】帯状疱疹により痛みの破局化を来した患者に 対して鍼治療を行ったところ、疼痛と破局化の改善が 得られた症例を報告する。 【症例】74歳男性管理職主訴:左顔面部痛 【現病歴】X年Y月に左顔面皮疹および口腔内発疹に て当院総合内科を受診し、左三叉神経三分枝の帯状疱 疹の診断にて入院加療となった。アシクロビルの点滴 加療にて症状の軽減を認め、第16病日に退院となった。 退院後も左顔面部痛は残存し、夜間痛の増悪による睡 眠障害を訴えていたため、帯状疱疹による疼痛の軽減 を目的に主治医より当科を紹介され同月に受診となっ た。 【初診時現症】帯状疱疹はV2領域に水疱の瘢痕と皮 膚発赤が見られ、灼熱感を伴う疼痛とアロディニアを 認めた。最大時の疼痛はVASにて72mmを示しており、 特に夜間に増悪するため入眠困難を訴えていた。疼痛 の破局的思考(PCS)は43点と高値であり、仕事復帰 に対する不安を強く訴えていた。 【評価】疼痛は患者コメントに加えてVASを測定した。 痛みの破局的思考はPCSにより測定した。 【治療】鍼治療は四肢末梢穴および疼痛領域を囲むよ うに刺鍼し、V1・V2領域の経穴に5Hzから100Hzの変 調刺激で30分間の低周波鍼通電療法(LFEA)を実施 した。治療頻度は週1から2回で行い計13回実施した。 【経過】初回の鍼治療直後では疼痛の大幅な軽減を認 めVASでは25mmを示した。7診目では疼痛の軽減に より、念願であった仕事復帰を果たした。10診目には 夜間痛の軽減に伴い睡眠障害が消失し、13診目には疼 痛の消失に伴いVASは0mmを示した。加えて、PCSは 13診目で0点と著明に低下し、破局的思考の減少が認 められた。 【考察・結語】本症例の帯状疱疹の疼痛に対して実施 した変調刺激によるLFEAが疼痛に有効であり、睡眠 障害の改善や痛みの破局化の減少が認められ、復職が 可能となった。本症例の帯状疱疹による疼痛に対して 鍼治療が有用であったと考えられた。 キーワード:帯状疱疹、痛みの破局化、鍼治療 - 117 - 043 044 -Sat-O1-11:48 終末期のがん患者に対する鍼灸師の介入 市立砺波総合病院緩和ケア科 ○武田真輝 【目的】標準的な緩和ケアと鍼灸介入を行い、終末期 がん患者の苦痛緩和および家族ケアができた1例を経 験したので報告する。 【症例】70代女性[診断]胃がん、肝転移、肺転移、 両側胸水、リンパ節転移。[現病歴]X-3年、胃がん と診断され幽門側胃切除術施行。同年再発、X年Y-2 月まで化学療法。腹痛出現しオピオイド開始。X年Y 月Z日、疼痛緩和を目的に緩和ケア科紹介。薬物治療 と並行して鍼灸開始。[定期薬]ヒドロモルホン徐放2 mg、オキシコドン速放2.5mg/回など。[現症]脈拍79 回/分、SpO2:98%(室内気)、労作時呼吸困難感、 腹部から背部に鈍痛あり仰臥位で休めない、食事量減 少、下腿浮腫なし。[東洋]顔色不華、舌質淡、胖大、 白厚苔、倦怠感、腰膝酸軟、下痢、冷え、食思不振、 脈細虚渋。 【経過】背部痛と倦怠感の緩和を目的に鍼灸実施。脾 腎陽虚証と捉え、太渓、太白、三陰交、合谷、足三里、 腎兪、脾兪に電気温灸器で温補、足太陽経を円鍼で軽 擦。鍼灸後「背中が楽になった」と帰宅。Z+8日、Z+ 20日に鍼灸実施し、直後は辛さ軽減。薬剤は医師が適 宜調整。Z+34日、食事量減少、ADL低下、CTと採血 で急激な病状進行と高度炎症、脱水を認め、緊急入院。 入院2日、倦怠感の緩和を目的に鍼灸実施し、「体が楽 になった」と喜ばれ、家族への思いを語る。入院3日、 せん妄のため薬剤調整。癲証と考え配穴変更。鍼灸後 は穏やかに休まれた。その後も緩和ケアを継続。入院 9日、努力呼吸、喘鳴、チアノーゼ出現。家族は涙を 流し「何かしてあげたい」と希望あり、鍼灸時に経穴 のタッチングを指導。家族の表情は徐々に穏やかにな り思い出を語られる。午後、家族に見守られ永眠。家 族は「一緒にさせてもらえて良かった」と穏やかな表 情で涙を流していた。 【考察・結語】終末期がん患者の緩和ケアに鍼灸師が 介入することで、苦痛緩和だけでなく家族ケアにつな がる事例を経験した。今後さらに症例を集積して検討 していきたい。 キーワード:がん、緩和ケア、鍼灸、苦痛緩和、家族 ケア -Sat-O1-14:00 Can acupuncture needle hygiene be maintained outdoors? 1)Teikyo Heisei University, Faculty of Health Care, Department of Acupuncture and Moxibustion 2)Acupuncture and Physical Therapy Teacher Training School of University of Tsukuba ○Tsunematsu Mikako1,2)、Imai Kenji1)、 Wada Tsunehiko2) [Introduction] Acupuncture is sometimes performed outdoors, such as in disaster or sports sites. Even if acupuncture is performed outdoors, the acupuncture needles need to be kept clean. However, hand washing facilities may not be available at disaster and sports sites. This experiment was conducted to confirm whether acupuncture needles can be maintained in the same sanitary condition outdoors as indoors by using rubbing disinfectant and wearing gloves. [Method] The subjects were 15 acupuncturists. The subjects were asked to touch acupuncture needles(1) indoors and (2) outdoors, respectively, after using rubbing disinfection and wearing gloves, and after further rubbing disinfection, and the needles were cultured on agar plates. In addition, the subjects touched their hands on the agar plates and the plates were also cultured. [Results]Out of 15 samples, bacterial colony growth was observed on the plates where acupuncture needles were touched outdoors. When the plate where acupuncture needles were touched indoors were cultured, no colony growth was observed in any of the 15 samples.For the hands of acupuncture practitioners, growth of bacterial colonies was observed in 8 of 15 cases outdoors and from 5 of 15 cases indoors. [Conclusion]We found that acupuncturists' hands were more difficult to keep clean when performing treatments outdoors than indoors. However, no significant differences in the hygiene of acupuncture needles were observed. Acupuncture needles may be as clean and hygienic outdoors as they are indoors with proper rubbing disinfection and wearing clean gloves. キーワード:disaster area、sports site、prevent infecti on、hygiene management、acupuncture - 118 - 045 046 -Sat-O1-14:12 Acupuncture for Chronic primary orofacial pain 1)Graduate school of Meiji University of Integrated Medicine 2)Department of Acupuncture and Moxibustion, Meiji University of Integrative Medicine ○Hiraiwa Shinya1)、Saito Shingo2)、 Fukuda Fumihiko2) [Introduction]Chronic primary orofacial pain(CFP) is defined as orofacial pains that occur at least 50% of the day during at least 3 months and last at least 2 hours per day. We report a case of successful acupuncture in a patient with suspected CFP. [Case Report and History of Present Illness] A 87 years-old woman. In X-4 years, her pain began to occur in the left cheek to the upper lip and left oral cavity. She received medication and acupuncture, but there was no significant change in her symptoms. She then visited the University Acupuncture and Moxibustion Center in X. [Case Note] The sensation test showed decreased sensation in the left cheek(8/10) and allodynia in the left upper lip. The VAS for facial pain was 64mm, the PCS for catastrophic thinking was 36points, and the HADS for emotion was 21points. [Treatment]In addition to acupuncture at the site of pain and TENS (ST2-ST4, 100Hz) , and electroacupuncture(EA) at the upper and lower limbs (LI4-LI10, ST36-GB34, 4Hz) to activate the descending pain inhibitory system. However, people with high levels of catastrophic thinking may not obtain the analgesic effect of EA (Higa et al. 2024) . Therefore, we added the EA(ST8, 100Hz) at the V1 area to activate the dorsolateral prefrontal cortex related to catastrophic thinking. [Course of Treatment] The course of treatment comprised acupuncture sessions, with the following outcomes: VAS: 57 → 36mm, PCS: 22 → 16points, HADS: 18→12points. (6th→11th ) [Discussion and Conclusion] These findings suggest acupuncture is effective for the pain, emotional, and cognitive aspects of CFP. キーワード:Chronic Primary Orofacial Pain、 Acupucnture -Sat-O1-14:24 Effect of acupuncture stimulation to the facial region 1) Teikyo Heisei University, Faculty of Health Care, Department of Acupuncture and Moxibustion 2)Nippon Beauty Academy 3)Kokushikan University High Tech Research Center ○Nakamura Suguru1,2,3) [Objective]The face is a special object for humans and has important social significance. In addition, facial expressions are considered important in Traditional oriental medicine, and in particular, the five emotions are believed to have a significant impact on the state of health. The purpose of this study is to evaluate and verify the effects of acupuncture stimulation on facial expressions, and to refer to health aspects and QOL. [Methods]Facial expression detection at pre and post intervention was performed using the Microsoft Azure Face API. 18 healthy adults (m:11, f:7, age:20.6± 0.11) were randomly selected as subjects, and acupuncture needles were applied to the facial area. A total of 14 acupoints were selected to stimulate all major facial muscles, for total of 25 points. Acupuncture needles length is 15mm and diameter is 0.10mm. manufactured by Seirin were used, with an invasion of about 5mm. [Results] The overall rate of facial expressions was significantly different before and after acupuncture stimulation (p<0.01, Wilcoxon signed rank sum test) . In addition, there was a significant difference between the two expressions of "anger" and "surprise" (p<0.05, Wilcoxon signed rank sum test). [Discussion & Concludion]The results obtained in this study suggest that acupuncture stimulation of the facial area enabled rich facial expressions. The results of this study suggest that, from the viewpoint of the facial expression feedback hypothesis and Oriental medicine, the ability to express rich facial expressions may have a positive effect on emotions and social skills. キーワード:Facial Expressions、Emotions、Facial Acupuncture、Cosmetic Acupuncture - 119 - 047 048 -Sat-O1-14:36 Acupuncture survey for interprofessional collaboration 1) Institute of Oriental Medicine, Tokyo Women's Medical University, School of Medicine 2)Meguri Acupuncture & Moxibustion Clinic 3)Mizuno Acupuncture & Moxibustion Office 4)Fuchu Anjudou Acupuncture Office 5) Central Rehabilitation Service, The University of Tokyo Hospital 6)Kouki Acupuncture & Moxibustion Clinic ○Takahashi Kaito1)、Ebiko Keizo1)、Kimura Yoko1)、 Takata Kumiko1,2)、Mizuno Kimie1,3)、Tsuji Kyoko4)、 Motai Shintaro1,5)、Mizoguchi Kae1,6) [Objective] Understanding the conditions of patients receiving acupuncture and moxibustion is crucial for enhancing interprofessional collaboration and patient care. This study analyzed the chief complaints of firsttime patients using ICD-10 to identify treatment trends and promote healthcare collaboration. [Method] We analyzed data from 1,366 first-time patients who visited our facility between April 1, 2019, and March 31, 2024.The author assigned the most appropriate ICD-10 classification code for each complaint, calculated the distribution by code, and analyzed the results. [Results]The most frequent complaints were classified as "disorders of the musculoskeletal system and connective tissue" (34.3%), followed by "diseases of the nervous system" 29.0%)and "symptoms, signs, and abnormal clinical and laboratory findings not elsewhere classified" (20.9%). Among "diseases of the nervous system," facial nerve disorders were the most common (22.8%). [Discussion]The high prevalence of "diseases of the nervous system," especially facial nerve disorders, may stem from the provision of evidence-based information on acupuncture guidelines for facial paralysis on our facility's website. Additionally, our acupuncturists' pursuit of certification from the Japanese Facial Nerve Society and engagement in academic activities likely enhanced patient trust and attracted cases. Such initiatives may also contribute to establishing stronger interprofessional collaboration. キーワード:acupuncture、ICD、facial nerve disorders、 interprofessional collaboration -Sat-O1-14:48 Acupuncture for Facial Discomfort in Facial Palsy Rehabilitation Center, The University of Tokyo Hospital ○Hayashi Kentaro、Motai Shintaro、Nagano Kyoko、 Koito Yasuharu [Introduction]We have previously reported that facial discomfort (FD), which reduces the QOL in patients with facial palsy, is alleviated immediately after acupuncture treatment(AT). The aim of this study was to compare the immediate effects of AT on FD between Bell's palsy(BP)and Ramsay Hunt syndrome(RHS). [Method] The study included 25 patients diagnosed with either BP or RHS among 218 cases of facial palsy treated at our division between April 2017 and February 2024. These patients presented with at least one form of FD, such as facial stiffness (FS), tightness (FT), or fatigue (FF), at their first AT session. Of these, 14 patients were diagnosed with BP (5 males and 9 females; median age (MA): 61.9 years [38.6-65.1]; ENoG: 5.2% [1.1-32.4]), while 11 patients were diagnosed with RHS(1 male and 9 females; MA: 50.1 years[40.9-59.7]; ENoG: 1.1%[0-6.0]). The treatment was administered to the affected side in the sequence of thermotherapy, AT, massage, and stretching. We assessed FS, FT, and FF before and after AT using the VAS. Statistical analysis was performed by a twosample t-test or Welch's test for the amount of change before and after AT. The significance level was p<0.05, and R Commander 4.4.2 was used as the statistical software. [Results]There were no significant differences between BP and RHS in VAS scores for FS(p = 0.77), FT(p = 0.24), and FF (p = 0.62) before AT, and in the amount of change before and after AT (p = 0.34, 0.49, 0.62) [Discussion]The findings suggest no difference in the immediate effect of AT on FD between BP and RHS. キーワード:acupuncture、facial palsy、Bell's palsy、 Ramsay Hunt syndrome、facial discomfort - 120 - 049 050 -Sat-O1-15:00 双極II型障害患者の中等度の抑うつ状態に対する鍼治 療の1症例 1)大慈松浦鍼灸院 2)神保町十河医院附属鍼灸院 ○松浦知史1,2)、松浦良民1,2) 【目的】自殺企図歴が認められる双極II型障害(以下、 BD-II)に対して7週間の鍼治療を行い、うつ症状と身 体症状の軽減が得られた1症例を報告する。 【症例】43歳男性、管理職〔主訴〕気分の落ち込み、 倦怠感、頭痛〔現病歴〕X-10年、管理職に昇進し、 職場異動当日に自殺未遂をし、救急搬送される。X-9 年に精神科クリニックを受診し、BD-IIと診断され、 経頭蓋磁気刺激療法を半年間行うも症状の改善はみら れなかった。X-8年に現在の精神科クリニックに転院 し、薬物療法を開始した。X-2年に義母の死去を契機 に不眠、うつ状態、希死念慮に悩むようになり休職。 その後、復職したが過剰服用し、救急搬送されX-10 カ月より再休職。〔初診時現症〕抑うつ気分、頭痛、 不眠、倦怠感〔家族歴〕特記事項なし〔初診時使用薬 物〕ブロチゾラム0.25mg、オランザピン5mg、トフラ ニール10mg、ワイパックス0.5mg〔治療方法〕ステン レス鍼(40mm、14号、ファロス社製)仰臥位置鍼15 分:足三里、太衝、三陰交、気海、中、天枢、合谷、 内関、百会、右頷厭、伏臥位置鍼10分:承山、小野寺 氏殿圧点、腎兪、脾兪、肝兪、心兪、肩外兪、肩井、 天柱、風池として治療頻度は1回/週で行った。〔評価〕 Quick Inventory of Depressive Symptomatology(以下、 QIDS-J)、Somatic Symptom Scale-8(以下、SSS-8) を用いた。 【結果】QIDS-Jは初診時13点(中等度)、3週間後1点 (正常)と点数の減少がみられた。7週間後も1点と維 持された。SSS-8も初診時12点、3週間後1点、7週間 後1点となり、頭痛や倦怠感の改善を示唆するコメン トも得られた。また、鍼治療期間中、使用薬物に変更 はなかった。 【考察・結語】中等度の抑うつ状態と頭痛や倦怠感な どの身体症状を認めたBD-IIに対し鍼治療を行い、そ れらの改善およびその維持がみられた。7週間と短期 間ではあるが、本症例に対する鍼治療はうつ症状と身 体症状の軽減に有効であったと考える。 キーワード:鍼治療、双極II型障害、うつ症状、 QIDS-J、日本語版SSS-8 -Sat-O1-15:12 ストレス関連神経生理学的バイオマーカーの探索 1)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 2)帝京平成大学東洋医学研究所 3)筑波大学医学医療系 ○玉井秀明1,2)、小峰昇一1,2,3) 【目的】ストレスは鍼灸研究において重要な課題であ る。本研究では、鍼灸研究に向けたストレス関連バイ オマーカーの検討に資するため、16チャンネルfNIRS を用いてヒト前頭前野をターゲットとした神経生理学 的バイオマーカーの探索を目的とした。 【方法】対象は右利き健常成人男性10名とした。測定 は、安静座位でfNIRSを前額部に装着し、精神的スト レス負荷として連続暗算課題を実施した。課題開始前、 15分間の課題終了後、15分間の回復期後にデータを取 得した。測定項目は、精神的ストレス、精神的疲労、 だるさ、眠気のVisual Analog Scale(VAS)値、Oxy- Hb濃度に基づく前頭前野活動の右偏指数、唾液コル チゾール濃度および唾液オキシトシン濃度とした。 【結果】課題終了後、ベースラインと比較して、精神 的ストレス(p<0.01)、精神的疲労(p<0.05)、だる さ(p<0.05)のVAS値は有意に上昇した。一方、眠 気のVAS値に有意な変化は認められなかった。課題終 了後の精神的ストレスと前頭極の右偏指数の変化量に は有意な正の相関(p<0.05, r=0.66)が認められた。 また、課題終了後の腹外側の右偏指数の変化量と回復 期後の精神的ストレス(p=0.065, r=-0.60)および唾 液オキシトシン濃度(p=0.06, r=0.61)の変化量には 相関傾向が認められた。 【考察】精神的ストレスに対する前頭前野の神経応答 は前頭極では即時的であるが、腹外側では応答が遅延 し、精神的ストレスおよび唾液オキシトシン濃度の変 動と時間差を伴う傾向を示したため、前頭極の右偏指 数が精神的ストレスの神経生理学的バイオマーカーと して感度が高い候補となる可能性が示唆された。 【結語】連続暗算課題で誘発される精神的ストレスに 対し、前頭極の右偏指数は即時的かつ感度の高い神経 生理学的バイオマーカーとなる可能性がある。 キーワード:ストレス、前頭前野、fNIRS、バイオマー カー、右偏指数 - 121 - 051 052 -Sat-O1-15:24 鍼灸師のメンタルヘルスリテラシーに関する調査研究 1)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 2)東京呉竹医療専門学校鍼灸・鍼灸マッサージ科 3)明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科 4)神奈川県立精神医療センター 5)昭和大学発達障害医療研究所 ○松浦悠人1)、藤田洋輔2)、福田文彦3)、 伊津野拓司4)、中村元昭5) 【目的】メンタルヘルスリテラシー(Mental health literacy: MHL)とは、「精神障害に対する気付き、対 処、あるいは予防に関する知識や考え方」と定義され る。鍼灸領域において、MHLを調査した研究はない。 そこで本研究では、鍼灸師のMHLの現状を調査する ことを目的とした。 【方法】[研究デザイン]横断研究[対象]便宜的標 本集団として、鍼灸関連の2つの職能団体や1つの学会、 コミュニティに所属する鍼灸師[調査方法]2024年11 月1日~2025年1月20日の間にGoogle formを用い、各 コミュニティの持つメーリングリストから調査対象の 鍼灸師にメールを送付して回答を依頼した。なお、回 答は無記名とし、目的と倫理的配慮を記載した上で、 同意を得た際に回答する形とした。[MHLの測定方法] 臨床場面を想定したMHLの評価にケースビネット法 を用いた。3名の精神科医の監修のもと作成されたう つ病の軽症例(ケースA)と中等度~重症例(ケース B)の架空症例を提示し、それぞれ重症度を「軽度・ 中等度・重度・わからない」から選択し、正答率を求 めた。全般的なMHLの評価には日本語版メンタルヘ ルスリテラシー尺度(Mental Health Literacy Scale: MHLS)を用いた。[解析方法]ケースビネットの正 誤から正答群と誤答群に分類し、各群のMHLSを比較 した。有意水準は5%とした。 【結果】アンケートに回答した406例中400例が解析対 象となった。ケースAの正答率は67.8%、ケースBの正 答率は94.8%であった。ケースAの正答群、誤答群の MHLSの合計点および下位尺度に有意差はみられなかっ たが、ケースBの正答群、誤答群のMHLS合計点(109 [100-120]点、100[89-109]点)、下位尺度の「精神疾 患の認識」(24[22-26]点、18[16-24]点)で誤答群が 有意に低かった。 【考察】94.8%の鍼灸師が中等度~重度のうつ病を識 別できていたが、誤答群のMHLは有意に低かったこ とからMHLの低さは中等度~重度のうつ病の見逃し につながる可能性があることが示唆された。 キーワード:メンタルヘルスリテラシー、ケースビネッ ト法、精神障害、鍼灸師、調査研究 -Sat-O1-15:36 鍼灸院におけるうつと不安症状を有する患者の実態調 査(第4報) 1)ここちめいど 2)はりきゅう処ここちめいど 3)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 4)玉川大学工学部ソフトウェアサイエンス学科 5)理化学研究所革新知能統合研究センター 分散型ビッグデータチーム ○米倉まな1,2)、松浦悠人3)、柴田健一4,5)、 赤石頌伍1)、岩澤拓也1)、内田ちひろ1)、 大杉美奈1)、加藤久仁明1)、近藤美貴1)、 杉山英照1)、木村友昭3)、坂井友実3) 【目的】精神科受診の有無とうつスコアで患者を層別 化し、鍼灸院に来院する患者のメンタルヘルスの実態 を明らかにする。 【方法】[研究デザイン]横断研究[対象]2021年11 月1日~2023年3月31日の期間、鍼灸院10施設に来院し た初診および再診患者[測定方法]患者情報の調査に は電子カルテシステム(リピクル)の問診票を用い、 予診機能にて事前送付または来院時に収集した。うつ と不安症状の評価はひもろぎ自己記入式うつ尺度 (HSDS)とひもろぎ自己記入式不安尺度(HSAS)を 指標とし、電子評価システム(アンサポ)を用いて来 院時に測定した。[解析方法] 精神科受診の有無と HSDSスコア(カットオフ14点)から未受診低うつ群、 未受診高うつ群、受診低うつ群、受診高うつ群に分類 した。 【結果】解析対象470例は未受診低うつ群240例(51.1 %)、未受診高うつ群170例(36.2%)、受診低うつ群16 例(3.4%)、受診高うつ群44例(9.3%)に分類された。 受診高うつ群は未受診低うつ群より年齢が低く、未受 診群より無職・休職者の割合、経済状況の悪さの自覚、 受診目的の“薬を使いたくない”が有意に高かった (p<0.05)。受診低うつ群は受診高うつ群よりも病歴 が10年以上の割合が有意に高かった(p<0.05)。自覚 症状部位では、受診高うつ群は頭部、心窩部の割合が 高く、背部の割合が有意に低かった(p<0.05)。非運 動器系症状の一人当たりの症状数は、中央値(四分位 範囲)で未受診低うつ群1.0(2.0-4.0)症状、未受診 高うつ群3.0(2.0-4.0)症状、受診低うつ群1.5(1.0- 3.25)症状、受診高うつ群4.5(3.0-7.0)症状で未受診 低うつ群、受診低うつ群より有意に多かった(p< 0.05)。 【考察】精神科を受診し鍼灸院に来院する患者は、休 職または無職で経済状況が悪いものの、薬物療法での 改善が不十分なため非薬物療法である鍼灸治療での症 状軽減を期待していること、精神科受診の有無に関わ らず抑うつ状態が強い患者は身体症状を有する数が多 い、という特徴が示された。 キーワード:多施設、開業鍼灸院、うつ症状、不安症 状、電子システム - 122 - 053 054 -Sat-O1-15:48 背部痛、不眠に鍼灸、漢方併用が有効だった一症例 北里大学北里研究所病院漢方鍼灸治療センター ○伊東秀憲、伊藤剛、星野卓之 【目的】背部痛、不眠に鍼灸、漢方併用が有効だった 症例を報告する。 【症例】37歳男性。[主訴]背部(肩甲間部)痛、不 眠。[現病歴]X-5年から仕事が多忙になると背部痛 と不眠(入眠困難、中途覚醒、浅眠)を自覚し睡眠薬 で対応していた。近医で鎮痛剤内服や肩甲上腕部ブロッ ク注射を行ったが背部痛は不変だった。X-1年4月に 忙しい部署に移動後から背部痛と不眠が増悪し、痛み のため仰向けで眠れない時があった。X年7月に休職 し、自律神経失調症の診断でデュロキセチン塩酸塩に よる治療開始後に入眠困難と中途覚醒は軽減したもの の浅い眠りが不変のため同年8月に当センターを受診 した。[所見]身長167.2cm、体重79.1kg、BMI 28.3、 血圧117/76mmHg、VAS(visual analogue scale(mm)) 背部痛80、不眠症100、(四診)舌診:乾湿中間、淡 紅薄白苔舌、脈状診:やや沈実数、脈差診:左関上弱、 腹診:右胸脇苦満、心下悸・臍上悸 【治療・経過】鍼灸は北里式経絡治療を週1回のペー スで行った。1週後から漢方を併用し気鬱、背部痛に 対し葛根黄連黄ゴン湯を処方した。4週後、背部痛50、 不眠症50。膏肓・神堂・飛陽に置鍼と温筒灸、イキ・ 四神聡に置鍼。21週後:VAS 背部痛20、不眠7。右背 部痛軽減したものの残存し、大柴胡湯を合方した。30 週後、眠剤が不要になった。32週後に仕事復職、40週 後、仕事をこなせており、背部痛9、不眠3となり終診 となった。 【考察】腰背部の筋肉の凝りや緊張による痛みや不快 感は、胸郭の動きを妨げ、心肺や脳機能に影響するた め不眠の原因となることが報告されている。本症例で も背部痛に対し漢方治療と鍼灸治療を併用することで 主訴の改善に関与したと思われた。 【結論】背部痛、不眠に対し、鍼灸および漢方治療の 併用は主訴の改善に有効である可能性が示唆された。 キーワード:鍼灸、漢方、背部痛、不眠 -Sat-O1-16:00 鍼治療と睡眠衛生指導により不眠と抑うつが改善した 一症例 1)セドナ整骨院・鍼灸院 2)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 ○出口友弘1)、脇英彰2) 【目的】不眠症診療ガイドラインでは薬物療法、睡眠 衛生指導、認知行動療法が推奨されている。海外では 鍼治療単独だけでなく、薬物療法や認知行動療法の併 用効果も報告されるようになってきた。そこで、抑う つと不眠を有する患者に対し、鍼療法と認知行動療法 にも含まれる睡眠衛生指導の併用を試みた一症例を報 告する。 【症例】30代、男性、薬剤師。主訴:抑うつ、睡眠障 害(入眠困難、中途覚醒)、不安。既往歴:逆流性食 道炎。現病歴:X-2年、職場での人間関係によるスト レスから、仕事を休みがちになった。X-1年に父親が 入院し、X年から自宅で介護するようになり、家族関 係が悪化し、徐々に体調不良の日が多くなる。その後、 父親との死別により、主訴が悪化し、症状の改善を求 めて鍼治療と徒手療法を開始することとなった。 【方法】鍼治療は先行研究を参考に百会、風池、心兪、 肝兪、脾兪、内関、合谷、足三里、三陰交、太衝への 置鍼(15分)と各身体所見に応じた単刺を行い、7診 目から、睡眠習慣の改善を目的として睡眠衛生指導を 開始した。また、評価指標として、抑うつ尺度(PHQ- 9)とアテネ不眠尺度(AIS)を用いた。 【経過】2診目ではPHQ-9が19点(中等度~重度)、AI Sが19点(中等度)であったが、4診目(3週後)には、 通常勤務への意欲が回復した。7診目(7週後)では PHQ-9が12点(中等度)、AISが12点(軽度)となり、 さらなる不眠症状の改善を目的として睡眠衛生指導を 開始した。9診目(10週後)では通常勤務が可能とな り、10診目(12週後)でPHQ-9が4点(正常範囲)、 AISが2点(正常範囲)となった。 【考察・結語】本症例は鍼治療に加え、睡眠習慣の改 善を目的とした睡眠衛生指導を併用することで、不眠 症状の軽減が見られたことから、両者の相乗効果によ る不眠や抑うつ症状の改善の可能性が示唆された。 キーワード:不眠、抑うつ、不安、睡眠衛生指導 - 123 - 055 056 -Sat-O1-16:12 自律神経失調症に鍼治療と不眠の低強度認知行動療法 を試みた症例 1)帝京池袋鍼灸院・鍼灸臨床センター 2)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 ○滝原那生1)、山本拓真1)、脇英彰1,2) 【目的】認知行動療法(CBT)は高強度と低強度に分 類される。低強度CBTは書籍やインターネットを用い たセルフヘルプを支援するもので、日本でも医療従事 者が取り入れる例が増えている。そこで、不眠を伴う 自律神経失調症患者に対し、鍼治療と低強度CBTの併 用を試みた1症例を報告する。 【症例】20代、女性、事務職。主訴:抑うつ、不安、 入眠困難、熟眠感の欠如、眠気、めまい、ふらつき。 現病歴:X年4月、パートナーとの別れをきっかけに 不安と抑うつが出現。心療内科で薬物療法を開始する も副作用がつらく自己中断。X年9月、めまいやふら つきが悪化し、心療内科で自律神経失調症と診断され、 再び薬物療法を開始したが、起床困難による職場の遅 刻が続き、自己中断に至った。さらに仕事中に居眠り することが増えたため、症状改善を求めて鍼治療を開 始し、説明の上で低強度CBTを併用した。 【方法】鍼治療は不眠と抑うつの改善を目的として合 谷、三陰交、風池、心兪、膈兪、腎兪に置鍼(10分)、 神庭と百会、左右の四神聡に100Hzの鍼通電(10分間)、 頚部・腰部の痛みなどの身体症状に応じて単刺を行っ た。不眠の低強度CBTでは、アプリと睡眠日誌を用い たセルフヘルプを実施し、睡眠衛生指導や睡眠スケジュー ル法を導入した。評価は不眠重症度尺度(ISI)、抑う つ尺度(PHQ-9)、不安尺度(GAD-7)とした。 【経過】1診目ではISIが14点(軽度)、PHQ-9が16点 (中等~重度)、GAD-7が9点(軽度)で、いくつもの 身体症状がみられた。3診目(21日後)では、頚部・ 腰部の痛み、めまい、ふらつきは減少し、ISIが11点 (軽度)、PHQ-9が11点(中等度)、GAD-7が1点(正常 値) に改善した。5診目(41日後) では、ISIが5点 (正常値)、PHQ-9が4点(正常値)、GAD-7が1点(正 常値)となり、仕事中の居眠りも消失した。 【考察・結語】鍼灸師が自律神経失調症に対する鍼治 療に加えて低強度CBTを併用することが可能であるこ とが示唆された。 キーワード:低強度認知行動療法、自律神経失調症、 不眠、抑うつ、セルフヘルプ -Sat-O1-16:24 鍼灸院における不眠症患者と不定愁訴の実態調査 1)東洋医学研究所®グループ 2)東洋医学研究所® ○秋田壽紀1)、角村幸治1)、中村覚1)、 橋本高史2)、西田修1)、山田篤1) 【目的】不眠などの睡眠障害を訴える患者は、鍼灸院 でもよくみられるがその実態は分かっていない。今回 は、健康チェック表を用いて不眠症患者の実態調査と 不定愁訴の関連について検討を行った。 【方法】対象は、東洋医学研究所®および、東洋医学 研究所®グループに来院し、健康チェック表を行った 新患および、3ヶ月以上期間のあいた再診患者で、平 成29年1月1日~令和3年12月31日までに来院した3271 名。「32. 寝つきが悪く、眠ってもすぐ目をさましや すい」の項目に2点(常に症状がある)をつけた群を 不眠群、それ以外を対照群として各群の男女比、年齢 の平均値、不定愁訴指数、各層別の得点、各項目のチェッ ク率の差を調査した。 【結果】対照群は2781名、不眠群は490名(15%)で あった。男女比は、不眠群のほうが女性の割合が高かっ たが(対照群vs不眠群、女性の割合:57.4% vs 68.2 %、p<0.05)、両群に年齢の差はなかった(平均±標 準偏差:50.3±17.9 vs 51.8±15.8、p=0.058)。不定愁 訴指数は、不眠群のほうが高かく(16.8±9.2 vs 22.8 ±10.5点、p<0.01)、各層別の点数もすべて不眠群の ほうが高かった。最も差が大きかった層別はうつ状態 性項目であった(4.3±2.3 vs 7.7±3.7、p<0.05)。各 項目のチェック率で差が20%以上あったものは、「22. わずかなことが心配になる」、「35. 朝起きたときに 体がだるい、または午前中だるい」、「29. 動悸がして 気になる」であった。 【結論】鍼灸院に来院した不眠症患者は、身体的症状 と精神的症状ともにより多くの不定愁訴症状を持つこ とが示された。不眠が不定愁訴に大きく影響すること が示唆された。 キーワード:健康チェック表、不眠症、不定愁訴 - 124 - 057 058 -Sat-O1-16:36 足底への非侵襲型接触刺激が睡眠に与える影響 1)森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科 2)女性鍼灸師フォーラム ○堀川奈央1)、辻内敬子2)、松熊秀明1)、 鍋田智之1) 【目的】協力鍼灸院の患者及びその家族で、睡眠に不 安を感じている者を対象として、足底への非侵襲型接 触刺激によるセルフケアの有用性を検討した。 【方法】女性鍼灸師フォーラムに所属する関東地域で 開業する6つの治療院が被験者の公募・介入指導を行 い、森ノ宮医療大学がデータ管理・分析を担当する多 施設臨床研究を実施した。研究内容に同意し、ピッツ バーグ睡眠質問票(以下PSQI)が6点以上の者を公募 した。介入は4週間とし、週3日以上で湧泉穴、失眠穴 に非侵襲性微細突起(東洋レヂン株式会社製ソマセプ ト)を日中貼付するよう指示した。介入前1週間の起 床時にOSA睡眠質問票(以下OSA)を、介入前と介入 最終の1週間についてPSQIの記録を指示した。OSAは 介入前後をWilcoxonの符号付順位検定で、PSQIはエ ントリー、介入前後をFriedman検定にて分析した。本 研究は森ノ宮医療大学学術研究委員会の承認を得て実 施した(2019-049)。 【結果】エントリー時にPSQI5点以下の2名およびデー タ脱落の1名を除く22名を分析対象とした(50.0±13.1 歳)。PSQIはmedian 8(13-5)→6.5(10-2)となり有 意に改善した(p<0.01 19/22名改善)。治療回数は 20.8±4.6回でPSQIの変化量と弱い負の相関(r=-0.33 p=0.13)を示し、20回以上の治療が適切と考えられた。 OSAの各因子は因子3(夢み)を除いて有意に改善し た(因子1・4 p<0.05 因子2・5 p<0.01)。 【考察・結語】単一施設で少数例を用いて足底刺激を 1週間継続することで睡眠が改善する傾向は既に報告 している。本研究では長期的に反復して足底を刺激す る有用性が多施設で確認された。対照群を設定した比 較試験で検討する必要はあるが、本研究で用いた介入 方法が開業治療院におけるセルフケア指導として有用 であると考える。 キーワード:セルフケア、多施設研究、不眠、睡眠障 害 -Sat-O1-16:48 頭皮鍼通電刺激が不眠症状自覚者の睡眠に及ぼす影響 1)東京有明医療大学大学院保健医療学研究科 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 3)昭和大学発達障害医療研究所 ○豊田知俊1)、松浦悠人1,2)、谷口博志1,2)、 中村元昭3)、坂井友実1,2) 【目的】不眠症状自覚者への頭皮鍼通電による主観的 な睡眠の変化と脳波計測による睡眠指標を客観的に評 価すること。今回は中間報告として、評価を完了した 4例を報告する。 【方法】[研究デザイン]ランダム化クロスオーバー試 験とし、割振り順番はAB/BAデザインとした。参加 者は、鍼通電刺激(EA)条件(A)、無刺激(CON) 条件(B)に割り当てられ、各介入を1回ずつ受けた。 各期間の間には1週間以上のwash-out期間を設けた。 [参加者]参加者は1ヶ月以上不眠を自覚し、アテネ不 眠尺度6点以上16未満の者とした。[介入方法]介入は 3日連続とし、EA条件は百会と神庭に60mm・20号鍼 を刺鍼後、1.0mAから3.0mA、周波数100Hzの連続波 で30分間通電した。CON条件は30分間の安静臥床の みとした。[アウトカム評価項目]介入日の翌朝の睡 眠による休養感をRestorative Sleep Questionnaire (RSQ)日本語版、介入日3夜分の睡眠脳波をEEG電極 &睡眠脳波計(InSomnograf)により評価した。なおR SQは中央値とした。 【結果】[RSQ]参加者A:EA条件63.9点、CON条件 61.1点。参加者B:EA条件55.6点、CON条件41.7点。 参加者C:EA条件61.1点、CON条件44.4 点。参加者 D:EA条件50.0 点、CON条件52.8 点。[睡眠脳波] 参加者A: EA条件は入眠潜時が短縮し、N1・N2総時 間が高値を示した。CON条件はN3総時間が高値を示 した。総睡眠時間、睡眠効率はほぼ変化なしであった。 参加者B:EA条件は総睡眠時間が延長し、入眠後覚 醒は短縮し、N3総時間・出現率は高値を示した。 CON条件はN1総時間・出現率が高値を示した。参加 者C:CON条件で入眠潜時が短縮し、総睡眠時間・N2 総時間が高値を示した。その他項目はほぼ変化なしで あった。参加者D: EA条件は入眠潜時が短縮した。 CON条件はREM総時間が高値を示した。 【考察】4例中3例でEA条件でのRSQ高値を示し、1例 は睡眠脳波の変化と一致する傾向であった。今後症例 を増やし、睡眠の自覚的・客観的指標への影響を検討 する。 キーワード:睡眠、不眠症状、頭皮鍼通電、睡眠休養 感、睡眠脳波 - 125 - 059 060 -Sat-O2-11:00 更年期女性の諸症状に対する鍼灸治療の1症例 1)せりえ鍼灸室 2)洞峰パーク鍼灸院 3)つくば国際鍼灸研究所 ○小井土善彦1,3)、辻内敬子1,3)、形井秀一2,3) 【目的】日本人女性が更年期症状を有することによる 経済損失は、年間1.9兆円と試算され、対策が求めら れている。今回、背部のこり感を主訴に来院した女性 で、顔のほてりや足の冷えなど更年期にみられる症状 があったため、簡略更年期指数(SMI)で評価し鍼施 術を行ったところ、SMI得点が減少した症例を経験し たので報告する。 【方法】症例は54歳女性で専業主婦。身長163cm、体 重54kg。主訴は背部こり感。6か月ほど前から感じ始 めた主訴の改善を目的に当院を受診。出産歴は1回。 閉経は54歳。更年期症状に対し処方された漢方薬を5 年程前から服用中。頚部ROM検査時に右頚部から肩 にかけてコリ感が出現。体表所見は、頭頂部に熱感 (ホットフラッシュ)、肩背部に筋緊張、足部に冷えと 湿潤等がみられた。一般状態は良好。SMIは0~100の 点数で評価し、51点以上では医師の診察が推奨される。 症例のSMIは37点であった。施術は、直径0.1~0.12m m長さ15~30mmの毫鍼を用い、下腿の膀胱経、腎経、 脾経を中心に主訴の筋緊張部や頭頂部の10か所前後の 経穴に、3~5mm程度の深さで、単刺術や置鍼術を用 い、7~20日に1回の頻度で、約3ヶ月間に8回行った。 鍼刺痛の訴えや内出血はなかった。 【結果】主訴は施術直後から軽減し、愁訴は漸次改善 した。体表所見は、頭頂部の熱感、足部の冷え、肩背 部の筋緊張が軽減した。SMIは8点に減少した。 【考察と結語】本症例は、一般状態は良好で、SMI得 点からも緊急性はなく、鍼灸の適応と判断し鍼施術を 行ったところ、主訴の改善とSMIの減少がみられた。 コクラン・レビューは、更年期のホットフラッシュに 対する鍼療法の有効性は認められないとしている。国 内の状況を医中誌Webで調査すると、更年期症状に対 する鍼灸の報告は28件、比較研究は1件、SMIを指標 にした研究は、解説文中の症例報告が1件のみである。 今後は、SMIを活用し本症に対する鍼灸治療のエビデ ンスを強化する必要がある。 キーワード:女性、更年期、ホットフラッシュ、簡略 更年期指数(SMI)、鍼 -Sat-O2-11:12 服薬後も続く更年期症状に対して鍼灸・指圧が奏功し た一症例 1)ここちめいど 2)みんなのはりきゅう 3)はりきゅう処ここちめいど 4)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部 鍼灸健康学科 ○大杉美奈1,2)、米倉まな1,3)、金子聡一郎1,4) 【目的】服薬後も続く更年期症状への鍼灸・指圧治療 により、ホットフラッシュ症状の改善などの良好な経 過が認められたため報告する。 【症例】54歳、中肉中背の女性、事務職会社員。主訴 は更年期症状(ホットフラッシュ)。現病歴:X-10年 より、安静時に発汗が目立つようになる。X-6年、子 宮摘出手術を受け、その後、自律神経失調症、過敏性 腸症候群と診断され、複数の漢方薬、ロラゼパム、睡 眠薬などが処方された。X-4年頃から頭頚部周囲の発 汗が増悪し、周囲からも分かるほど汗が噴き出るよう になり、他院で鍼灸治療を試みたが効果はなかった。 その後、内科で更年期症状の漢方治療を継続したが、 頭部の熱感や滝のような発汗が頻発するため、当院に て鍼灸治療を開始した。 【方法】触診で硬結が認められる箇所に指圧を行い、 整動鍼の理論に基づき、心兪、志室下2寸、三陰交、 足三里など、硬結がある側のみに鍼治療(寸3-1番) を実施した。また、体幹部と四肢の熱感に偏りが認め られたため、左右湧泉、失眠、女膝に灸を施し、腹部 には箱灸を用いた。評価には簡易更年期指数(SMI) を使用した。 【経過】1診目では、SMIが67点、頸部後屈、側屈、 回旋の違和感、手部・足部の冷感も認められたが、治 療後にはこれらが軽減した。2診目(24日目)では、 ホットフラッシュの頻度が大幅に減少し、周囲からも 症状の改善に気づかれるようになった。3診目(29日 目)では、旅行を楽しむことができるまでに改善した。 頸部の違和感と手足の冷感は軽度残存していたが、滝 のような発汗は完全に消失した。4診目(44日後)で は、SMIは44点となり、5診目(52日後)では、頚部 の違和感は残るが、手足の冷感やホットフラッシュ症 状は消失した。 【考察・結語】灸による腹部および足の温熱刺激が体 内の熱感の偏りを緩和し、一側への指圧と鍼治療が筋 緊張の強い側の左右差を軽減したことがホットフラッ シュ症状の改善に寄与したと考えられる。 キーワード:更年期症状、ホットフラッシュ - 126 - 061 062 -Sat-O2-11:24 機能性月経困難症に対する鍼治療の一症例 東洋医学研究所® ○橋本高史 【目的】月経困難症とは月経期間中に月経に随伴して 起こる病的症状である。症状は、下腹痛、腰痛、腹部 膨満感などである。今回、月経困難症に加え、不眠や アトピー性皮膚炎を伴う患者に対し、鍼治療を施した ところ、興味ある結果が得られたので報告する。 【症例】40歳女性。主訴:月経時に体が重く寝込んで しまう。現病歴:元々月経前症状や月経時の下腹部の 痛みはあったが、X-5年前から症状が強くなった。現 在専門学校に通うも、月経時は頭痛や腹痛がひどく学 校を欠席してしまう。月経時以外での下腹部の痛みも ひどくなってきたため、東洋医学研究所に来院した。 治療方法は週2回とし、筋膜上圧刺激にて、黒野式全 身調整基本穴による生体の統合的制御機構の活性化を 目的とした生体制御療法(鍼治療)を行い、症状の推 移を客観的にみる目的で不定愁訴カルテと月経困難症 状質問表を用いた。 【結果】44回の治療により、月経困難症状点数は43点 から22点に減少した。中でも精神症状が改善し、下腹 部の腫れも少なくなった。また、不眠やアトピー性皮 膚炎の状態も良くなり、月経時でも学校を欠席するこ とがなくなった。不定愁訴指数は、初診時28点であっ たものが22回目来院時には14点と改善し、効果判定は 有効となった。 【考察・結語】月経困難症は月経前、月経中に精神的・ 身体的に影響を及ぼす疾患である。このような患者に 対し鍼治療を施したところ、月経時の症状が改善し、 寝込むこともなくなった。また、不定愁訴カルテ、月 経困難症質問票の結果においても改善が認められた。 このことは、週2回鍼治療を受診し、生体制御療法 (鍼治療)が生体の免疫機構に影響を与え、全身と局 所の血流が改善したものと考えられる。また、月経困 難症状質問表を使用することによって、鍼治療の有効 性を定量的に見いだすことができた。 キーワード:月経困難症、黒野式全身調整基本穴、生 体制御療法(鍼治療)、不定愁訴カルテ、 月経困難症状質問表 -Sat-O2-11:36 月経痛と心理・認知的要因の関連性について 1)明治国際医療大学鍼灸学研究科 2)明治国際医療大学鍼灸学講座 ○遠藤愛1)、大井康宏1)、山口栞1)、 大場美穂2)、齊藤真吾2)、伊藤和憲2) 【目的】一般的に月経では腰痛や腹痛などの痛みに加 え、不安やうつなど訴えることも多く、そのような患 者では鍼灸治療の効果が認められにくいことがある。 その要因として、月経痛が心理・認知的面が影響して いる可能性が示唆されている。しかし、現状では月経 痛の程度や期間と心理・認知的評価との関連性につい ては十分に検討されていない。そこで、本研究では鍼 灸治療の効果と月経痛の関係性を検討する前段階とし て、女性学生を対象に月経痛の程度や期間と心理・認 知的評価との関連性を検討した。 【方法】本研究にはインフォームドコンセントの得ら れた明治国際医療大学に在籍する3名の健康成人女性 学生(18~25歳)とした。すべての研究対象者は、任 意のある時点におけるPain catastrophizing scale(PCS= 痛みを否定的に捉える思考) とState-Trait Anxiety Inventory-Form(STAI=不安傾向)を質問表により評 価を行った。また、その時のVisual Analogue Scale (VAS=月経痛の程度)や月経痛の期間など月経につ いての質問に回答してもらった。 【結果】AはPCSが3点、VASが19mm、日常生活に影 響が出るほどの月経痛を感じている期間は無かった。 BはPCSが3点、VASが67mm、日常生活に影響が出る ほどの月経痛を感じている期間は無かった。CはPCS が35点、VASが68mm、日常生活に影響が出るほどの 月経痛を感じている期間は2年であった。 【考察・結語】本研究では、人数が少なかったものの、 VASが高く、月経痛を感じている期間が長い人の程、 破局的思考が強い傾向にあった。破局的思考は慢性疼 痛の1つの特徴であることから、長期間強い月経痛を 感じているほど、慢性疼痛に関連した心理・認知的影 響が加わること痛覚変調を起こす可能性があり、鍼灸 治療の効果にも大きく影響を与える可能性がある。今 後は、対象者を増やすとともに、脊髄の過敏化や内因 性鎮痛機構への影響や鍼灸治療の効果の検討もしてい きたい。 キーワード:月経痛、PCS、破局的思考、STAI、不 安 - 127 - 063 064 -Sat-O2-11:48 月経随伴症状に対する鍼灸及びマッサージの有効性 筑波技術大学大学院技術科学研究科 保健科学専攻 ○秋吉桃果、近藤宏 【目的】月経随伴症状は女性の労働に影響を及ぼし、 労働生産性の低下により、大きな経済的負担につなが ることが知られている。本研究では月経随伴症状に対 する鍼灸およびマッサージ治療の臨床研究の状況を明 らかにするとともに、女性の労働に及ぼす影響につい て探索することを目的として文献レビューを行った。 【方法】分析対象とする文献の選択基準は、成人女性 を対象に月経随伴症状に対して実施された鍼灸及びマッ サージの臨床研究であり、2014年1月1日から2024年12 月31日までに発表された原著論文とした。データベー スにはPubMed及び医学中央雑誌Web版を用いて検索 した。データベースより抽出した論文に対して、選択 基準に満たない文献をスクリーニングするため1つの 文献を2名のreviewerが独立に評価・吟味し採否を決定 した。 【結果】検索の結果、国内文献は6編、海外文献は74 編の論文が抽出された。そのうち、選定基準に該当し ない論文を除外し、国内文献は0編、海外文献は23編 の論文が収集された。研究デザインの内訳はランダム 化比較試験(以下、RCT)が16編、メタアナリシスが 5編、システマティックレビューが2編であった。対象 疾患は、月経困難症21編が最も多かった。介入方法は、 鍼施術16件、灸施術4件、マッサージ施術6件であった。 評価指標は疼痛強度(VASまたはNRS)15件で最も多 く、次いで、疼痛症状の日数7件、COX月経症状スケー ル4件と続いた。有効性や有用性を示した論文は鍼施 術11件、灸施術4件、マッサージ施術4件であった。 【考察・結語】女性労働者を対象とした月経随伴症状 による業務への影響を評価した臨床研究は抽出できな かった。また、収集された文献の多くが小規模な臨床 研究であり、RCTでは二重盲検による研究が少ない。 そのため鍼灸マッサージの効果を十分に検証できるま でには至らなかった。 キーワード:働く女性、月経困難症、鍼灸治療、マッ サージ、指圧 -Sat-O2-14:00 鍼灸を辞めた後も採卵成績の向上が認められた一症例 医療法人社団厚仁会厚仁病院 ○松田尚香 【目的】当院では鍼灸、直線偏光近赤外線治療、低出 力超音波を併用した治療を行っている。今回、保険診 療で不妊治療をするため鍼灸(自費診療に該当)を辞 めた翌月、AMH値や採卵成績の向上が認められた症 例があったので報告する。 【症例】30代前半女性。主訴:不妊症[既往歴]喘息、 子宮腺筋症、子宮内膜症[現病歴]X-9年結婚。X-7 年挙児希望の為、他院にて不妊治療開始。この際HSG 問題無し。タイミング指導9周期、AIH6周期行い妊娠 せず。X-5年腹腔鏡下子宮内膜症手術、癒着剥離術施 行。この際、両側卵管閉塞指摘。手術後翌々月から半 年間リュープリンを使用。X-4年から体外受精開始。 採卵5回行うが、採卵個数0~2個でいずれも胚盤胞に ならず、X年-3ヶ月に当院へ転院。同月AMH値0.698 ng/ml、4個採卵し、胚盤胞にならず。X年-2ヶ月6個採 卵、胚盤胞1個獲得。翌月、ホルモン補充周期で移植 するが妊娠せず、X年から当院で鍼灸開始となった。 【治療・経過】治療は鍼通電、直線偏光近赤外線治療 器(スーパーライザーPX:SL)、UST-770(伊藤超 短波)のLIPUSを使用。仰臥位で三陰交と陰陵泉、左 右帰来やや内側で鍼通電、足三里、血海、曲池、中、 百会に置鍼。腹臥位で志室と胞肓、左右中で鍼通電。 大腸兪、腎兪、肩外兪、天柱に置鍼。頭痛時、懸顱追 加。SLは星状神経節と腹部、臀部に照射。抜針後、 低出力超音波を腹部SL照射部位に照射。施術は2週間 に3回の頻度で、X年+3ヶ月まで計23回行った。その 後、保険診療で採卵する為、X年+3ヶ月に鍼灸を辞め、 翌月のAMH値2.22 ng/ml、同月の採卵では7個採卵し、 胚盤胞3個獲得。 【考察・結語】鍼灸開始前後でAMH上昇と胚盤胞数 の増加が認められたことから、当院での施術による採 卵成績の向上が示唆された。また、施術を辞めた翌月 の採卵でも、採卵成績の向上が認められたことから、 鍼灸を中断後も、ある程度は治療効果が持続すると考 えられる。 キーワード:生殖鍼灸、直線偏光近赤外線治療器、低 出力超音波、不妊症、AMH - 128 - 065 066 -Sat-O2-14:12 不妊治療における補完代替医療(CAM)の利用実態 に関する調査 1)宇都宮鍼灸良導絡院 2)明治国際医療大学鍼灸学部 3)明治国際医療大学研究生 ○宇都宮泰子1,3)、田口玲奈2) 【目的】不妊治療経験者を対象に、補完代替医療 (Complementary and Alternative Medicine: CAM) の 利用状況、利用目的などの利用実態を明らかにするこ ととした。 【方法】調査期間は2023年4~7月、対象者はWeb版メー ルマガジン「Jineko」の読者で、不妊治療経験者とし た。調査方法は無記名のgoogle formによるアンケー ト調査とした。なお、本研究は本学ヒト研究審査委員 会の承認を得て行った。データは単純集計とクロス集 計を行った。 【結果】有効回答は390名(平均年齢39.0歳)で、回 答者の277名(70.0%)が35~44歳の年齢層で、287名 (73.6%)が出産経験なしであった。CAMの認知率お よび利用率はそれぞれ235名(60.3%)、322名(82.6%) であった。年代毎のCAM利用率に大きな差はなかっ た。最も利用されたCAM はサプリメント298 名 (92.5%)で、次いで鍼灸226名(70.1%)であった。 利用目的には、「妊娠しやすい身体づくり」(87.6%) や「不妊治療の効果を高める」(87.0%)が挙げられ た。また、CAMの利用に関して、CAMの認知と利用 状況(p<0. 001)、世帯年収と利用頻度に関連が見ら れた(p=0.033)。 【考察】本研究では、不妊治療にCAMが広範な年齢 層で、早期の段階から妊娠につながる効果を期待して 利用されていると推測された。また、CAMの利用に は、CAMの認知と世帯年収が関係すると考えられ、 収入が高い層ほど利用が促進される傾向が示唆された。 このことから、CAMの認知と経済的要因がCAM利用 を促進するための重要な要素であると考えられた。 キーワード:不妊、補完代替医療、アンケート調査、 不妊治療 -Sat-O2-14:24 反復着床不全患者に対する鍼灸治療の効果 1)はる鍼灸治療院 2)一般社団法人JISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関) ○田邊美晴1,2) 【目的】不妊治療において何度も胚移植をするも着床 しない場合、肉体的、精神的、金銭的にも大きな負担 となる。40歳未満で3回以上の移植かつ良好胚を4個以 上移植しても臨床的妊娠に至らない場合を反復着床不 全(RIF)という。RIF患者が胚移植を行う際、鍼灸 治療を併用することで、結果の改善が見られるのか検 討した。 【方法】当院に2015年11月~2024年12月までに不妊を 主訴として来院された患者のうち、RIFと思われる患 者を抽出し、鍼灸治療後の移植について経過をみた。 治療頻度は、基本的に1週間に1回としたが、胚盤胞移 植時には移植日の前後2日以内で治療を行った。妊娠 後は、9週まで治療を継続した。治療は、下肢と腰臀 部に鍼通電を行い、星状神経節部、腹部、臀部に近赤 外線照射を行った。 【結果】RIFと思われる7例(29歳~39歳)のうち、 鍼灸開始後の移植で6例が妊娠(1例は7週目まで確認、 5例は出産も確認)、5例が鍼灸開始後1回目の移植で妊 娠、1例が鍼灸開始後3回目の移植で妊娠、1例が鍼灸 開始後4回移植するも一度も陽性反応がでなかった。 【考察】過去の研究においても、鍼灸治療を併用する ことでRIF患者の生児出生率、継続妊娠率を改善する 可能性があると言われている。今回症例数は少ないが、 鍼灸開始後1回目の移植で、5/7人が妊娠し、6/7人が 最終的に妊娠、そのうち1人不明だが5人は無事出産さ れた。鍼灸治療を胚移植時に行うことにより、妊娠出 産される確率があがる可能性がある。また、複数回移 植しても結果が出ないことでかなりのストレスを抱え、 次の移植に対して強い恐怖心、不安感を持つ方も多い。 鍼灸治療により心身の不調をできるだけ取り除くこと で、治療を継続する助けとなることがあり、それが妊 娠につながるきっかけとなることも考えられる。 【結語】RIF患者において、鍼灸治療が体外受精の成 功率を高める補助療法となる可能性がある。今後症例 数を増やして検証を続けていきたい。 キーワード:不妊、反復着床不全、鍼灸、近赤外線療 法 - 129 - 067 068 -Sat-O2-14:36 透熱灸と温灸による不妊治療の効果の比較に関する報 告 1)柿内鍼灸療院 2)一般社団法人JISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関) ○柿内孝弘1,2) 【目的】本報告では、透熱灸と温灸が不妊治療に及ぼ す影響を、妊娠率および胚盤胞到達率に注目し、それ ぞれの有効性を比較検討する。 【方法】対象は当院で不妊治療を受けた患者52名(透 熱灸35名、温灸17名)である。治療期間は透熱灸群が 2019年5月~2022年2月、温灸群が2022年2月~2024年4 月である。治療は鍼と灸を併用し、鍼は全身調整など を目的に体幹および四肢の経穴を選穴した。透熱灸群 には艾柱を直接燃焼させる透熱灸を施行し、灸点紙 (医道の日本社製)は火傷防止の緩衝材として使用し た。温灸群には電子温灸器(カナケン社製)を用い、 温熱刺激を与えた。妊娠率および胚盤胞到達率を治療 前後で比較し、年代別(20代、30~34歳、35~39歳、 40歳以上)の効果を分析した。 【結果】透熱灸群の妊娠率は68%(20代100%、30~34 歳50%、35~39歳50%、40歳以上55%)であった。胚 盤胞到達率は治療前29%から38%に改善し、特に40歳 以上では治療後46%となり、治療前(41%)を上回っ た。温灸群の妊娠率は47%(20代100%、30~34歳62%、 35~39歳60%、40歳以上0%)であり、胚盤胞到達率 は治療前22%から18%に低下した。 【考察】透熱灸群の妊娠率および胚盤胞到達率の向上 には、熱痛刺激が関与した可能性がある。透熱灸は局 所に一過性の炎症反応を惹起し、血流や免疫系を活性 化させることで生殖機能を改善したと考えられる。特 に40歳以上では、加齢による血流低下や卵巣機能の衰 えに対し、透熱灸が有効に作用したと推測される。一 方、温灸は温熱刺激であり、特に40歳以上では妊娠率 向上が認められなかった。これは、温灸の刺激面積や 熱持続時間の違いが影響した可能性がある。 【結語】透熱灸は不妊治療において生殖機能の改善に 寄与し、特に高齢層の妊娠率および胚盤胞到達率向上 に有効であることが示唆された。一方、温灸は若年層 の妊娠率向上において一定の効果が期待できる。今後、 さらなる大規模研究が求められる。 キーワード:透熱灸、温灸、不妊治療、妊娠率、胚盤 胞到達率 -Sat-O2-14:48 つわりに対しての鍼灸実態調査 1)レディース鍼灸院HIROYULARI 2)なりもとレディースホスピタル 3)健康スタジオキラリ/Kirari鍼灸マッサージ院 ○高橋靜佳1,2)、安田進太郎2)、高橋護3) 【目的】つわり症状による体調不良が原因で女性の日 常生活や就業が困難になると報告されている。しかし、 つわり症状の軽減や改善を期待して、妊娠中の女性が 鍼灸治療をうけることは少ない印象である。そこで妊 産婦がつわり症状に対して行ったことや鍼灸治療の認 知に着目した実態調査を行った。 【方法】当院と業務提携を行っているなりもとレディー スホスピタルで2024年8月~10月に分娩した患者252名 に対して産後健診にてアンケート調査を行った。アン ケート項目は「つわり症状の有無」「つわり症状を軽 減するためのネット検索の有無」「つわり症状の軽減 目的になにか対策をしたのかの有無」「つわりに対し ての鍼灸治療の有効性があると知っているかの有無」 「有効性があると知っていれば鍼灸治療を試したいか の有無」「つわり症状を経験したことで今後の家族計 画に影響があるかの有無」の6項目の質問を行った。 【結果】アンケートの有効回答数は220名であった。 167名がつわり症状があったと回答した。133名がつわ り症状を軽減するためのネット検索を行っていた。つ わり症状の軽減目的になにか対策を実施した人は60名 であった。つわり症状に対しての鍼灸治療の有効性を 知っていた人は18名、つわりに対しての鍼灸治療の有 効性があると知っていたら試したいと答えた人は98名 であった。つわり症状を経験したことで今後の家族計 画に影響があると答えた人が31名であった。 【考察・結語】つわり症状は多くの妊産婦が経験して おり、つわり症状の軽減目的にネットで検索したり、 実施に何かしらの対策を実施したり自発的に行動を起 こしていた。鍼灸治療に関しても一定のニーズがある と考えられるが認知度は低いことがわかった。鍼灸治 療は、症状軽減とともに発症予防の手段となる可能性 があると報告されている。今後、臨床データを蓄積し ていき鍼灸治療がつわり症状に効果があることを広め ていくことが重要であると考えられた。 キーワード:産婦人科、つわり、実態調査、アンケー ト、鍼灸治療 - 130 - 069 070 -Sat-O2-15:00 薬物療法で奏功しなかった夜尿症に対する小児はり灸 治療の1症例 1)漢方やさしい小児はりの森 2)どんぐり鍼灸室 3)三河漢方鍼医会 4)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 ○山口あやこ1,2)、森野弘高1,3)、松浦悠人4) 【目的】薬物療法により改善がみられなかった小学生 の夜尿症に対して小児はり灸治療を行い、良好な経過 が得られた1例を報告する。本症例報告に際し、患児 と保護者から同意を得た。 【症例】7歳女児[主訴]夜尿[初診日]X年9月[生 育歴]出生時の異常なし、同胞1名の第1子長女、4人 暮らし[既往歴]特になし 【現病歴】夜尿は乳児期より続いている。X-1年前に 小児科を受診、生活指導とデスモプレシンを処方され るが改善されないため当鍼灸室に来室。 【所見】身長130cm体重28kg。夜尿は夜中と朝方に1 回ずつ毎日。昼間の尿失禁なし。夜型生活で入眠困難 があり、朝は目覚めが悪い。望診:色白でしまりがな い、体格は大きめ。聞診:独り言多い、滑舌が悪い。 問診:排便は週3回。生活リズムが乱れがち。切診: 弛緩しツヤなし。脈診:浮・数・しょく。尺膚診:ざ らついている。腹診:全体的に緩んで力なし。季節: 五季の秋 【治療方法及び経過】四診法により肺病とした。銅の 森の式てい鍼を使用して右太淵に本治法、反応穴に 標治法を行った。流注に沿った流氣鍼にて上下肢の肺 経、肝経、大腸経の要穴付近を摩擦刺激、身柱、命門 へ線香灸を行った。大便が膀胱を圧迫し尿を溜めにく くすることで夜尿に影響すると考え、生活指導では睡 眠・排便リズムの改善を促した。3ヶ月間で14回の施 術を行い、夜尿は朝方の1回がなくなり、NRSは夜尿 10→5→3、便秘5→1→0、ブリストルスケールは2→4 へと改善。入眠時間は2時間早まり睡眠リズムが整っ た。 【考察と結語】肺の宣発粛降の働きがうまく機能せず 夜尿が続いていたが、肺気の巡りが改善し、宣発粛降 作用が回復したことで、夜尿も改善したと考えられる。 さらに、肺気の巡りの改善は睡眠や便秘の改善にも繋 がり、生活指導もより容易に行えた。施術の中で丁寧 な生活指導を直接行えるのは鍼灸師ならではの関わり 方であり、小児はり灸施術と生活指導の相乗効果は大 きかったと考えられる。 キーワード:小児はり、夜尿症、小学生、生活指導、 入眠困難 -Sat-O2-15:12 スミス・マギニス症候群に対する鍼灸介入の考察 1)からんこえ鍼灸院 2)森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科 3)森ノ宮医療大学鍼灸情報センター ○水口加奈子1)、増山祥子2,3) 【はじめに】スミス・マギニス症候群は17番染色体 p11.2領域の中間部欠失による先天異常症候群である。 鍼灸施術から一年経過した女児の変化とそれに伴う母 親の想いの変化から鍼灸介入の意味を考察する。 【症例】11歳女児主訴:9月~1月に調子が悪くなる、 癇癪、神経疲労、夜尿、不眠。ほか爪を噛む、落ち着 きがない、聴覚過敏、首から上の皮膚過敏、側弯、体 力がないなどの症状がある。父親は子育てに関心がな く、学校での問題行動、今後思春期以降想定される異 常行動への懸念、「安楽死のできる国に移住して一緒 に命を絶つ」など深刻な母親の発言があった。 【治療・経過】治療は15カ月間(週1回計46回)現在 も継続中。初診は棒灸のみ、その後は米山式小児はり、 ローラー鍼、てい鍼、毫鍼(5分03)も組み合わせて 施術。2回目から本人が鍼に興味を示し鍼灸院に行き たいという意思が表われた。薬物療法に効果がみられ ず、また副作用もあったため薬物中止、かかりつけ医 から鍼灸継続を促す意見が得られたことで、9回目に は母親から鍼灸に意欲的な様子がみられた。30回目か ら短時間だが施術中に熟睡、夜間に尿意でトイレに起 きることが可能となり夜尿回数が減少。39回目からは 挨拶を交わせるようになり、施術中に会話はないが声 を出して笑うようになった。母親より、鍼灸継続で極 端な体調の悪化が減少、悪化しても回復が早くなった との発言があった。 【考察】難病の我が子を抱える母親とその子どもは過 酷な環境の中で日々生活を送っている。本症例では、 効果に対する客観的な評価を明示できないが、女児自 身が鍼灸を好んで受けたいという意思が示されたこと、 短時間でも熟睡できたことや夜尿回数の減少ほか変化 がみられたことなどから鍼灸介入の意味が示せた。ま た、かかりつけ医から鍼灸施術を促す言葉があったこ とが母親の鍼灸への信頼感に繋がり、我が子をケアし 続けることの原動力となった。 キーワード:Smith-Magenis症候群、鍼灸、小児鍼、 夜尿、不眠 - 131 - 071 072 -Sat-O2-15:24 小児の筋ジストロフィーに対する小児はり灸治療の1 症例 1)漢方やさしい小児はりの森 2)三河漢方鍼医会 3)どんぐり鍼灸室 4)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 ○森野弘高1,2)、山口あや子1,3)、松浦悠人4) 【目的】デュシェンヌ型筋ジストロフィー(以下 DMD)は、筋肉の機能と質量が徐々に失われ、平均 寿命は29歳で生活が車椅子に限定される疾患である。 今回、DMDを発症した小児に対して他職種である作 業療法士(以下OT)と連携し小児はり灸治療をした1 症例を報告する。 【症例】11歳4か月、男児[主訴]筋力低下、歩行困 難[初診日]202X年4月[家族歴]なし[既往歴]大 腸菌感染(5歳) 【現病歴】10歳2ヶ月時に血清CK値高度上昇があり DMDとの診断。筋力の維持を目的にOTによる関節可 動域運動や伸張運動の徒手的理学療法作業を週に1回 受診。立位保持が困難になり来院。 【所見】初診時進行度は骨格筋の壊死・再生像等のデ ジストロフィー変化あり、重症度modified Rankin Scale(mRS)は中等度から重度の障害の4で、食事・ 呼吸器・循環器の症候は認めなかった。自力で起立も 歩行もできず登校しない。望診:顔は黄色・下腿三頭 筋の短縮、聞診:口数少ない、問診:便硬め、切診: 筋張り・冷え、脈診:沈緩、尺膚:張り、季節:五季 の春土用 【治療】運動機能及び生活の質の向上を目的に小児は り灸治療を234日間で36回実施、証は「脾虚肝実」と し、てい鍼と灸治療を週に1回実施。初診時、銅製て い鍼で大都穴に本治法、反応経穴に標治法と棒灸、脾 経と心経と胃経の経脈に摩擦刺激の流氣鍼。小児はり 灸治療後はOTに運動機能の変化を確認。 【経過】第5診目には、Numerical Rating Scaleは、起 立1→5、歩行1→4、学校へ行く意欲1→10へと改善さ れたが、15診目には突然不調になり、歩行出来なく学 校へ行く意欲もなくなった。36診時は歩行できないが 学校へ行く意欲は10に改善された。小児はり灸治療後 の患児は明るく朗らかになり、またOTによる報告で 上肢機能向上も確認した。 【考察・結語】OTと連携した小児はり灸治療により、 筋ジストロフィー小児の運動機能と生活の質の向上に 寄与したと考えられる。 キーワード:小児はり、デュシェンヌ型筋ジストロ フィー、医療連携、てい鍼、生活の質 -Sat-O2-15:36 同業種との連携、傾聴により適切な医療機関へと繋がっ た一症例 1)ここちめいど 2)いずみ鍼灸院 3)どんぐり鍼灸室 4)はりきゅう処ここちめいど 5)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部 鍼灸健康学科 ○井上悦子1,2)、山口あやこ3)、米倉まな1,4)、 金子聡一郎1,5) 【目的】鍼灸院には様々な症状を有する小児が来院す るが、症状の経過や判断が難しい場合、施術者がどの ような行動を取るかが患者の予後に大きく関わる。今 回、施術者の判断により適切な医療機関へと繋がった 症例を報告する。 【症例】2歳10ヶ月の女児。主訴:発達の遅れ、自立 歩行が出来ない。 【現病歴】39週にて帝王切開で出生。1歳過ぎてもは いはいやつかまり立ちが出来ず、1歳児健診で発達の 遅れを指摘、近医小児科、療育医療センター、大学病 院受診するも確定診断に至らず経過観察となる。1歳6 ヶ月頃約3ヶ月間リハビリを受けるも効果なく中止。1 歳10ヶ月頃から療育施設等を利用したが自立歩行には 至らず、両親の希望で当院の受診となった。 【症状・所見】座位やつかまり立ちは自立、おもちゃ を持って遊ぶことは可、はいはいはやや不安定。発語 は一語文、足関節が屈曲位傾向、下腿後面の緊張あり、 股関節の可動域制限はない。肩背部等の皮膚の緊張、 背中全体の産毛、腹部全体に鼓音を確認、モロー反射 の残存が指摘。 【治療】足関節の屈曲位傾向が歩行時の制限と考え、 下腿後面の緊張及び頭部~肩背部の緊張緩和を目的と する。鍼は大師流小児はり、胃経、膀胱経等へ弱刺激 にて3~5分。 【経過】3診目まで施術を行うも変化なかったため共 同演者に相談、通所中の施設に確認したところ、当患 者は施設対象でない可能性が考えられ、歩行獲得も出 来ていないことから、共同演者が連携している小児専 門の理学療法士が所属する施設へ紹介、アセスメント の結果、脳性麻痺の可能性を示唆され精神神経研究セ ンターへの受診、下肢装具の作成、歩行指導が開始と なった。両親に提案する際は共感的理解を示しながら 傾聴することを心がけた。 【考察】患者を抱え込まないためには普段から勉強会 等に参加し信頼できる相談先を持つことが大切である こと、保護者への対応は傾聴を心がけることで協同し て取り組むことができることが考えられた。 キーワード:小児はり、小児はり勉強会、同業種との 連携、傾聴、発達の遅れ - 132 - 073 074 -Sat-O2-15:48 起立性調節障害に対する鍼灸治療の一症例 1)東京有明医療大学附属鍼灸センター 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 3)東京有明医療大学大学院保健医療学研究科 ○曽田真由美1)、水出靖1,2,3)、木村友昭1,2,3)、 坂井友実1,2,3) 【目的】起立性調節障害(OD)の有病率は中学生の 約1割とされ不登校の原因となるが、症状残存率が20 ~40%とも言われており、成人後も続くと社会生活に 支障をきたす。今回、中学生時に発症し5年を経過し たODに対して鍼灸治療を行ったので報告する。 【症例】19歳男子学生主訴:体調不良と睡眠の乱れ 【現病歴】X-5年、中学3年に進級する頃より概日リ ズムに合わせた睡眠が乱れるようになり、同時に起床 時の立ちくらみや気分不良などを自覚するようになっ た。小児神経内科にてODと診断を受け薬物治療を開 始するも著効なく患者判断でやめてしまった。その後 症状は一進一退だったが再度増悪傾向となったためX 年、当鍼灸センターに来療した。 【所見】起立試験(以下、血圧・脈拍の順)安静臥床 120/78mmHg・84/分、起立2分後107/83mmHg・102/分、 起立4分後119/80mmHg・101/分。日本小児心身医学会 によるOD身体症状項目11項目中9項目(立ちくらみや めまい、起立時の気分不良、入浴時の気分不良、動機 や息切れ、午前中の体調不良、食欲不振、腹痛、倦怠 感、頭痛)が該当。STAIによる特性不安32点、状態 不安20点。 【治療】症状の改善を目指し、疾病教育・生活指導と ともに胃腸機能や抹消循環機能の調整を期待して1回/ 1~2週の頻度で体幹部及び四肢末端の経穴に鍼や温灸 を行った。就寝前に患者自身による施灸を行った。 【経過】約4ヶ月間計13回の治療後、身体症状は9項目 から5項目へ軽減し、睡眠時刻は一定に整う傾向を認 めた。 【考察・結語】めまいのため起立試験が必ずしも正確 にできず、血圧や脈拍の変化に明確な異常は認めなかっ たが、強い立ちくらみをはじめとする身体症状はOD を疑う基準(11項目中3項目以上)を満たしていた。 今回これらの症状の改善が得られたことから、鍼灸は ODの治療手段の一つになる可能性が示唆されたと考 える。 キーワード:起立性調節障害、OD、鍼灸 -Sat-O2-16:00 機能性ディスペプシアが鍼灸治療により改善を認めた 側弯症の1例 1)プライベート鍼灸サロン円窓-ENSO- 2)北里大学北里研究所病院漢方鍼灸治療センター ○堀内玲子1)、伊藤剛2) 【目的】機能性ディスペプシアと診断された40代女性 の側弯症患者に対して、腰背部の筋緊張に対する鍼灸 治療にて慢性的な消化器症状が改善したので報告する。 【症例】40代女性。主訴は食後の心窩部不快感、心窩 部痛、腰背部の緊張。 【現病歴】幼少期からの側弯症で、首から腰にかけて の脊柱起立筋の筋緊張があり、かつ日常生活や人間関 係に強い疲労やストレスを抱えていたが、食後の消化 器症状(腹部膨満感、胃酸過多、吐き気、胃痛)に対 し、数年前に内視鏡検査行なうも器質的疾患を認めず 機能性ディスペプシアと診断された。 【所見】六部定位脈診は主に肝虚証。 【治療・経過】治療は脈診により北里式経絡治療に基 づき主に肝虚証(曲泉・陰谷等)の本治法と共通基本 穴(百会・中・天枢等)の治療に加え、腰背部の筋 緊張に対する標治として足三里、陽陵泉、背部膀胱経 の硬結部兪穴(脾兪、胃兪等)、承山に置鍼し、腎兪、 大腸兪、臀中周辺の硬結部に灸頭鍼を実施した。5、6 診では胃腸症状がストレスにより悪化したため膈兪、 肝兪、脾兪にカマヤ灸を施術した。鍼灸治療は月1回 の頻度で7回行い、評価はVisual Analog Scale(VAS) を用いた。VASは2診から記録したが、胃腸症状は、2 診時の85mmが7診治療後には42mmに改善、腰背部筋 の緊張は2診時の63mmが7診治療後には38mmまで改 善した。ただし症状は完治に至っていないため現在も 継続治療中である。 【考察】機能性ディスペプシアの原因は未だ解明され ていないが、傍脊柱筋群の過緊張に伴う交感神経緊張 による脊髄反射を介した胃粘膜血流低下が関与する可 能性が伊藤により報告され、また近年側弯症との関連 性も示唆されている。本症例では、側弯症由来の腰背 部の筋緊張に対し鍼灸治療が交感神経の緊張を緩和し、 消化器症状が改善したと考えられる。 【結語】機能性ディスペプシアの40代女性の側弯症患 者に対して鍼灸治療を行い、消化器症状と腰背部の筋 緊張に改善が見られた。 キーワード:機能性ディスペプシア、側弯症、鍼灸、 北里式経絡治療、交感神経過緊張 - 133 - 075 076 -Sat-O2-16:12 機能性消化器疾患が疑われる一症例への鍼灸治療 1)東京有明医療大学附属鍼灸センター 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 ○和田理智1)、菅原正秋1,2)、小田木悟1)、 木村友昭1,2) 【目的】右季肋部から背部にかけての痛みが生じ、複 数の医療機関を受診するも原因不明であったため治療 にいたらず、痛みが続いていた患者への鍼灸治療を経 験したので報告する。 【症例】女性・60歳・自営業。[初診日]X年[現病 歴]X-10数年より、右季肋部から背部にかけての痛 みが出現し、医療機関にて血液検査・エコー検査・ CT検査を受けた。医師からは、胆嚢腺筋腫症で胆嚢 壁の肥厚はみられるが痛みの原因ではないと告げられ た。発症から現在まで痛みの変動はない。[現症]身 長154cm 体重54kg BMI 22 血圧115/82mmHg 脈拍74 回/分[自覚症状]日中食後2~3時間で右季肋部から 背部にかけての痛みが出現し、3~12時間続く。食事 内容の影響は感じない。随伴症状はなし。疼痛発生回 数(以下、頻度)5~6回/週、疼痛発生時VAS(以下、 VAS)48mm[他覚所見]右季肋部から背部にかけて の圧痛なし。皮膚・眼球の黄疸なし。[初診時考察] 痛みの原因は不明ながら、疼痛発生状況から内臓痛お よび関連痛であり、機能性消化器疾患が由来と推察し た。 【治療経過】体性内臓反射および経穴の特異的作用を 利用し、頻度・VASの減少をはかった。初診~2診: 背部兪穴への置鍼・施灸、疼痛部位への施灸を行うが、 著変なし。3~6診:矢野らの先行研究を参考に丘墟穴 への置鍼・雀琢を行い、頻度は減少したが、VASに大 きな差異は得られなかった。7~8診:丘墟穴への鍼通 電に変更。頻度・VASともに減少した。9~12診:症 状が再び増悪したため、湊らの先行研究を参考に脊椎 直側への鍼通電を追加した。頻度・VASともに減少が 得られ、治療回数を重ねるごとに軽減した。 【考察・結語】機能性消化器疾患由来と疑われる疼痛 に対し、頻度・VASを指標に治療法を変更しつつ経過 を追った。丘墟穴および脊椎直側への鍼通電を行い、 頻度・VASともに減少が得られた。脊椎直側への鍼通 電は分節性の侵害抑制性調節として鎮痛に働きかけた 可能性があると考える。 キーワード:機能性消化器疾患、鍼灸治療、体性内臓 反射、脊椎分節性 -Sat-O2-16:24 過敏性腸症候群の慢性的な下痢症状に対する鍼灸治療 の1症例 1)東京有明医療大学附属鍼灸センター 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 ○高橋万紀夫1)、松浦悠人1,2)、坂井友実1,2) 【目的】過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome: IBS) の慢性的な下痢症状に鍼灸治療を行い、 Gastrointestinal Symptom Rating Scale (GSRS) を評 価指標として経過観察し、良好な経過が得られた1症 例を報告する。 【症例】75歳、女性、主婦[主訴]下痢[現病歴]若 い頃から何か気になることがあると下痢しがちな体質。 初診時X-10年から下痢症状が増悪。X-8カ月の旅行直 前に、旅行中の下痢が不安だったため近医クリニック を受診しIBSと診断され、ロペラミド塩酸塩カプセル 1mgを処方された。以後、市販のビオフェルミンを服 用して対処。[初診時所見]食欲不振、軟便気味。外 出の用事があると下痢を発症。足先の冷え・左季肋部 圧痛・腹部(臍の右2cm)の冷え及び圧痛(+)。[家 族歴]長男(40歳)に知的障害があり日常会話が難し く、母親(本症例の患者)の付き添う時間が長い状況。 [鍼灸治療]症状の改善を目的として中、水分、天 枢、合谷、足三里、三陰交、太衝を選穴。鍼治療は40 ミリ、16号のディスポ鍼を用い、10診目までは毎週、 11診目以降は2週間おきに実施。 【経過】初診~6診目までは置鍼のみで経過不変のた め7診目(X+49日)から腹部のみ施灸(台座間接灸: 山正社製長生灸ソフト)に変更。その後、症状の軽減 がみられ、初診、12診目(X+105日)、17診目(X+182 日)のGSRSの変化は、GSRS全体スコア3.00→2.33→ 2.27、酸逆流1.5→2.0→1.5、腹痛1.0→2.3→1.0、消化 不良2.5→2.0→2.3、便秘3.7→2.3→3.3、下痢6.0→3.0 →3.0と推移。日常生活では下痢がほぼ解消し、軟便 は2週間に1日程度のペースに減少、食欲不振も改善。 下痢症状の軽減により、外出時の不安が落ち着いた。 【考察・結語】置鍼のみで難渋したIBSの下痢症状が、 腹部への施灸介入後から下痢、軟便の頻度が軽減した。 長期に渡る慢性的なIBSであっても、最適な刺激方法 を選択することで鍼灸治療による改善が得られること を示唆する症例であった。 キーワード:鍼灸、IBS、下痢、GSRS、症例報告 - 134 - 077 078 -Sat-O2-16:36 潰瘍性大腸炎患者に対する鍼灸治療の1症例 1)ここちめいど 2)フルミチ鍼灸院 3)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 4)はりきゅう処ここちめいど ○杉山英照1,2)、松浦悠人3)、米倉まな1,4) 【目的】潰瘍性大腸炎(UC) 患者に対し、 Gastrointestinal Symptom Rating Scale(以下: GSRS) を指標に鍼灸治療を行い、良好な経過が得られたため 報告する 【症例】50才、男性、会社経営者[主訴]下痢、血便、 腹痛 【現病歴】X-38年、突然の下痢と粘血便を発症。近 医受診、全大腸型潰瘍性大腸炎の診断。活動期や再発 時プレドニンの服用で寛解。その後は何度も再発と寛 解を繰り返した。X-5年、禁煙後再燃、プレドニンと リアルダを服用。X-3年、プレドニンを中止しヒュミ ラを開始。X-8ヶ月、ロキソニンと抗生物質を服用し、 UC症状増悪。X-3ヶ月他の鍼灸院にて鍼灸治療を開 始し一時寛解も、鍼灸師から「薬の服用が良くない」 という助言を受け、ヒュミラを中止したところ症状増 悪。その後も鍼灸治療を継続したが症状は不変だった ため当院に転院。 【初診時所見】[自覚症状]下痢:10~12回/日、血便: 毎日腹痛:ほぼ毎日[ブリストルスケール]6(泥状 便)~7(水様便)[GSRS]全体スコア3.9、酸逆流 3.5、腹痛2.6、消化不良3.5、下痢7、便秘3 【治療】腹部や便の所見緩和、腸粘膜の炎症抑制を期 待し整動鍼の理論で施術。使用経穴は陰陵泉、地機、 足三里、上巨虚、条口、肩甲間部硬結部へ単刺、置鍼、 腹部に箱灸を行った。 【経過】2診目以降ブリストルスケールは5に移行。飲 食も楽しめ、気分も向上。9診目(1ヶ月後)、16診目 (2ヶ月後)、21診目(3ヶ月後)のGSRSの変化は全体 スコア1.06→1.06→1.06点、酸逆流1→1→1点、腹痛1 →1→1点、消化不良1→1→1点、下痢1.33→1.33→1.33 点、便秘1→1→1点と推移した。9診目にはCRPが0.45 →0.29 mg/dlへ減少。 【考察および結語】鍼灸治療による内臓機能の改善、 腸粘膜の炎症抑制により、下痢、血便、腹痛などUC 症状の軽減がみられたと考えられる。38年持続した慢 性的なUCに対して鍼灸治療で著効が得られた1例であっ た。 キーワード:鍼灸、潰瘍性大腸炎、全大腸型、炎症性 腸疾患、Gastrointestinal Symptom Rating Scale -Sat-O2-16:48 オピオイド誘発便秘(OIC)に対する灸療法:ケース シリーズ 1)香川大学医学部公衆衛生学 2)香川大学医学部附属病院緩和ケア科 ○神田かなえ1)、村上あきつ2)、Nlandu Roger Ngatu1)、 平尾智広1) 【目的】オピオイド誘発性便秘症(OIC)は、オピオ イド鎮痛薬を使用する患者に頻繁に見られ、下剤の使 用がしばしば必要となる問題である。本研究では、 OICを経験したがん患者9例に対して、支持療法とし て灸療法を適用した結果を報告する。 【方法】対象は、2023年4月から2024年12月までに当 院の緩和ケア科を受診した進行がん患者9名で、主訴 は便秘および腹部膨満感であった。患者はオピオイド 治療開始後に便秘症状が現れ、下剤を使用しても便秘 や下痢が再発したため、灸療法を導入した。治療は3 週間にわたって週2回(計6回)のセッションを実施し、 腹部(天枢、中、関元、腹結)、手(合谷、神門)、 足(足三里、三陰交、太衝)の経穴にセラミック電気 温灸器を使用して温熱刺激を加えた。主要評価項目は 便秘評価スケール(CAS)であり、灸治療前後の変化 を分析した。副次的評価項目としては、下剤の使用量、 ブリストル便形態スケール(BSFS)、エドモントン症 状評価システム改訂版(ESAS-r-J)を用いた。治療後 4週間の追跡調査も実施した。 【結果】9名中8名が治療前から6回の灸治療後にCAS スコアの改善を示した(平均変化量-3.2、標準偏差2.8、 p=0.02)。4週間後の追跡時には、平均変化量が-2.9 (2.5)であり、一定の継続効果が確認された。すべて の患者で便通頻度の増加が見られ、下剤使用量は減少 した。一部の患者では正常な便(BSFS 3-4)が得ら れたが、便通回数が増加する一方で、下痢便や軟便、 少量便が観察された。痛みのスコア(ESAS-r-J)は治 療後に平均-1.2(2.8)の改善を示し、全体的な調子は 平均-1.1(1.9)の改善が認められた。他の身体的症状 はほとんど変化せず(平均<1.0)、精神的症状は平均 1.4(0.8)の悪化が見られた。 【結論】OICに対する補助的な灸療法は、CASスコア の低下をもたらし、便秘症状を緩和し、下剤使用を減 少させる効果が示唆された。しかし、便の量と硬さに 関しては課題が残る。 キーワード:オピオイド誘発性便秘症、灸、ケースシ リーズ、がん性疼痛、緩和ケア - 135 - 079 080 -Sun-P1-10:12 不整脈・胸苦・心肥大が灸と漢方で改善した一症例 1)愛媛県立中央病院漢方内科鍼灸治療室 2)森ノ宮医療大学鍼灸情報センター 3)松山記念病院 ○阿部里枝子1)、植嶋萌恵1)、平林里織1)、 中川素子1)、山見宝1,2)、山岡傳一郎1,3) 【目的】炙甘草湯と膏肓・心兪への灸で不整脈、胸苦、 及び心肥大が改善した一例を報告する。 【症例】76歳女性。小学生の頃より難病や精神疾患の ある姉弟を60年間世話していた。[主訴]不整脈、肩 背部痛、歩行開始時の胸苦、歩行・作業可能時間の短 さ[病歴]20代より不整脈があり、X-5年に心房細動 を発症。アブレーション後症状は治まったが、X-1年 不整脈が悪化した。X年再度アブレーションし落ち着 くもまたもや不整脈が悪化し、当院来院。鍼灸初診21 日前より62日間アゾセミド30mg・アムロジピン5mg・ エンレスト100mg・フェブキソスタット10mg・エリ キュース5gを服用。 【治療】[灸点]左膏肓・曲池(又は手三里)・足三 里。3診以降心兪も追加した。[施灸]1~2診時は直接 灸を半米粒大3壮、3診以降は5壮施灸した。自宅での 同一穴への施灸を指導し、台座灸で週1回行う。[治療 間隔]3診までは2週、以降は4週間隔(168日間)。[漢 方]炙甘草湯(煎じ)を1日3回で処方した。鍼灸初診 7日前に開始、6診時に終了(119日間)。 【経過】鍼灸初診から2診の間血圧計で不整脈マーク が出なくなる。灸は少し熱いが心地良いとのこと。3 診後に循環器科を受診した際に心肥大の縮小が分かる。 忙しい日に1日通して仕事が出来た。5診後は動悸が減 り、立ち仕事も楽になる。6診後に歩行可能時間が延 長した。7診後は時折不整脈マークが出るも自覚はな く、歩行開始時の苦しさがなくなる。血液検査の数値 は、BNPは初診前194.8pg/mlが7診後50.8に、NT-proB NPは初診前772pg/mlが3診後1065、6診後606と変化し た。 【考察・結語】炙甘草湯の処方と、当院で行っている 澤田流及び深谷流で心臓疾患に用いられている膏肓・ 心兪の灸を注意しながら併用することで、消耗状態の 長い患者の心の虚に治療効果を得た。 キーワード:膏肓、心兪、炙甘草湯、不整脈 -Sun-P1-10:24 訪問鍼灸における瞬時心拍数による評価 大阪公立大学都市健康・スポーツ研究センター ○山下和彦 【目的】鍼灸による保険施術は慢性運動器症状が主な 対象である。しかし、運動器の回復を目的とする訪問 鍼灸の対象は自律神経機能の低下から生じる諸症状が 併発している場合が少なくない。そこで、本症例は1 年間通した訪問鍼灸の自律神経機能に関する定期的観 察から、多職種との連携をおこなってきた1症例報告 である。 【症例】症例は81歳、男性、介護度5、ROM制限著明 であり、自動運動不可、寝返り不可である。褥瘡は頭 部、腰部、大腿骨大転子部、踵骨部に年間を通してい ずれかが発症していた。また、褥瘡改善のための胃ろ うによる栄養価を高めたことから喀痰排出困難がある。 【方法】鍼灸は西條らが実験的に明らかにした自律神 経機能を亢進させる手法を採用した。心電図は胸部第 二誘導によりおこない、施術中は瞬時心拍数の推移を 観察した。また、周波数解析にて自律神経機能を確認 した。 【結果】鍼灸による関節可動域の改善が衣類着脱を容 易にしたことを多職種から報告を受けた。また、瞬時 心拍数の増加が褥瘡、喀痰排出困難、膀胱炎の前駆症 状として多職種に報告した。 【考察】高齢者、言語による意思疎通不可の対象者の 場合は、家庭内では定期的な検温、酸素飽和度もない ため気付くことが困難な場合もある。安静時心拍数、 鍼灸による瞬時心拍数の定期的観察は自律神経機能の 増悪から前駆症状として多職種に報告をするにより、 症状増悪を未然に防ぐことを示唆する結果を得た。瞬 時心拍数の定期的観察は体調把握、諸症状の増減を示 唆する情報が得られると考えられる。 【結論】今後ますます高齢化が進み、在宅医療が増加 することが見込まれている中、鍼灸師が多職種による 地域包括ケアに参加するための情報提供には心電図に よる瞬時心拍数の情報が有意義であると思われる。 キーワード:長期臥床、訪問鍼灸、自律神経機能、瞬 時心拍数 - 136 - 081 082 -Sun-P1-10:36 ALSの患者さんのケアを通して経験した多職種連携と 鍼灸師の役割 1)ゆう鍼灸院 2)NPO法人ゆめの木 3)九州医療科学大学社会福祉学部 スポーツ健康福祉学科 ○中野侑子1,2)、中野祐也3) 【目的】近年では、自宅で最期まで過ごしたいという ニーズの増加や医療費削減の観点から、特に在宅医療 が推進されている。鍼灸師も在宅医療チームの一員を 担えると言われているが、今回、在宅療養中の筋萎縮 性側索硬化症(以下ALS)の患者さんを通して、在宅 医療における多職種連携や鍼灸師の役割について経験 したことを報告する。 【症例】69歳、男性、ALS。主訴:脚力の低下、排便 困難、頻尿、腰痛。 【現病歴】X-1年、足に力が入らないような感覚を自 覚。徐々に歩きにくさが出現し、ALSと診断される。 在宅での生活を希望されたため、訪問診療、訪問看護、 通所リハビリが開始となる。身体の動きが悪くなって きたため、妻より依頼がありX年鍼灸治療を開始した。 【所見】体温:36.5℃、血圧:128/76mmHg、脈拍: 77回/分、SpO2:99%、呼吸:14回/分。下肢筋力低下、 背屈MMT3、下腿~足部冷感あり。残便感や腹部膨満 感あり、頻尿。東洋医学的所見:倦怠感、浅眠、下腿 ~足部浮腫、下腹部発汗・冷えあり。 【治療・経過】弁証治療を主として鍼灸治療を実施し た。ALSは進行しつつも、排便時のスッキリ感や睡眠 充足感の増加、下腿~足部の冷感や浮腫の軽減などが 認められた。本人からは「気持ちがいい~鍼灸が待ち 遠しい」、妻からは「鍼灸治療は一対一でこちらの話 を聞いてくれるから、精神的安定につながった」とコ メントがあった。Jonsenの4分割表を用いてケアの方 向性を確認しながら、多職種カンファレンスにて情報 共有を行った。 【考察・結語】在宅医療において、鍼灸師も多職種と 連携を取りながら介入することが必要であると考えら れる。鍼灸師は患者と一対一で向き合う時間が長いた め、患者や家族の気持ち・本音を聞く機会が多い。在 宅医療において患者や家族の想い・ニーズはケアに直 結するため、他職種に患者の想いや情報を共有するこ とは、鍼灸師の重要な役割の一つであり、ケアの幅を 広げる可能性があると考えられた。 キーワード:在宅医療、多職種連携、鍼灸師の役割、 患者・家族の想い、Jonsenの4分割表 -Sun-P1-10:48 医師と鍼灸師の連携が生む在宅医療の新しい可能性 1)在宅支援クリニック彩 2)鍼灸院Lapis Three 3)BODY REMAKER ○秋山貴志1,2)、松村佳樹2)、岸百華2)、 種市敢太3) 【目的】本症例は、在宅医療の現場において医師と鍼 灸師が連携し、長期間改善が見られなかった下肢の慢 性的なしびれが鍼灸施術により改善した一例である。 在宅医療における多職種連携の重要性を示し、鍼灸が 在宅患者の治療選択肢を広げる可能性を考察する。 【症例】83歳、女性。 【現病歴】患者は長年、脊柱管狭窄症と診断されてい たが、詳細不明であり、投薬治療やリハビリを受ける も改善せず、足根管症候群で手術したが効果を実感で きなかった。徐々に通院困難となり訪問診療を開始し た。 【所見】身体診察で右足の内側にしびれと灼熱感があ り、歩行時に症状が増悪。触診では筋緊張の増加と血 流障害が確認され、冷えも伴っていた。鍼灸師の診察 で血流不全が原因と考えられた。 【治療・結果】週1回の訪問診療で鍼灸施術を8週間実 施。太谿、三陰交、足三里を選穴し灸治療を併用。治 療2週間後にしびれ軽減、4週間後には疼痛が改善し、 8週間後には歩行時のしびれが大幅軽減、日常生活も 改善した。 【考察】慢性的なしびれは内服薬治療が主流だが十分 な効果が得られない例が多い。本症例では鍼灸による 血流改善が大きな効果をもたらし、医師と鍼灸師の双 方向からのアプローチが症状軽減に寄与した。適切な 評価と治療計画に基づく多職種連携は在宅医療の有効 な手段である。 【結語】医師と鍼灸師の連携により新たな治療選択肢 を提供でき、患者の生活の質向上が期待される。 キーワード:多職種連携、医師、鍼灸師、しびれ - 137 - 083 084 -Sun-P1-11:00 医学的に説明困難な症状(MUS)患者への鍼灸治療の1 症例 1)千鍼灸整骨院 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 3)獨協医科大学病院総合診療科 ○江河亮太1)、松浦悠人2)、勝倉真一3)、 千金楽涼水3)、志水太郎3) 【緒言】多岐にわたる症状を有するも診断が確定せず medically unexplained symptoms (MUS) が疑われ、 現代医学的治療で難渋していた症例に対し、大学病院 総合診療科と地域の鍼灸院の連携により良好な経過を 得られた1例を報告する。 【症例】33歳、男性、無職[主訴]四肢冷感、ふらつ き、低血圧[現病歴]X-5か月前、四肢末梢の冷感と 蒼白がみられ内科クリニックを受診、その後A大学病 院総合診療科を紹介受診するも明らかな医学的原因の 指摘なし。低血圧の関与を疑い昇圧剤服用もうつ症状 出現のため服用を中止した。担当医から鍼灸治療を提 案され、当院へ紹介受診となった。[初診時所見]身 長: 159cm、体重: 40kg、血圧: 80/55mmHg。自覚症 状: 四肢末梢の冷感、ふらつき・浮動感、全身の痛み (頸肩部、背部、膝関節)、入眠困難・中途覚醒、便秘、 手掌多汗、総合的な自覚症状のNumerical Rating Scale (NRS):9[鍼灸治療]交感神経活動亢進による身体 反応と推定し、頭部・体幹部・四肢末梢の身体所見に 応じた経穴、筋を目標とした鍼灸治療を行った。経過 に応じて運動療法も追加した。 【経過】2診目: 前回治療の好感触を示した。収縮期 血圧は100mmHg。3診目: NRS 6、ふらつきの軽減を 自覚。6診目: NRS 5、収縮期血圧は89mmHg、冷感、 入眠困難の改善を自覚。8診目: 収縮期血圧79mmHg もNRS 4と体調は安定。13診目: NRS 3、同日にA大 学病院受診、症状安定のため総合診療科への通院は終 診となった。 【考察・結論】地域の中核的な大学病院総合診療科か ら開業鍼灸院への紹介により難渋していた症状の軽減 がみられた。総合診療科での精査により重篤な疾患が 否定された状態で施術を行えることは鍼灸師にとって 有益であり、MUS治療の理想的な医療連携のモデル ケースとなることを示唆する症例である。 キーワード:Medically unexplained symptoms、不定 愁訴、総合診療、鍼灸、医療連携 -Sun-P1-11:12 圧迫骨折を疑った11症例の検討 鍼灸長岡治療院 ○長岡哲輝 【背景】腰痛を訴える患者において、見逃してはいけ ない疾患のひとつとして、圧迫骨折が挙げられる。プ ライマリ・ケアでの圧迫骨折の頻度は4.2%とされて おり、鍼灸臨床でも遭遇する可能性が高い。しかし、 街の鍼灸院での圧迫骨折の発生頻度を調べた報告は存 在しない。今回、腰痛を訴えて当院を受診した患者の 中から、圧迫骨折を疑い医療連携を行った11症例を検 討し、プライマリ・ケアにおける医療連携の意義につ いて考察する。 【方法】2019~2024年の期間のうち、圧迫骨折を疑っ た11例のカルテを後方的に遡り、病歴、身体所見など の特徴を調べた。当院から紹介状を作成し、連携先の 脳神経外科へMRI検査依頼を行った患者を対象とした。 紹介状に対する回答は、医師から送信されたFAXの内 容にて確認をした。 【結果】11例のうちMRIにて圧迫骨折と診断されたの は8例だった。そのうち、3例に脊椎叩打痛を認め、7 例に体動時痛を認めた。病歴に転倒を認めたのは2例 だった。また、圧迫骨折と診断されなかった患者のな かにも叩打痛や体動時痛を認めた例があった。11例は すべて女性であり、年齢の中央値は72歳(範囲55~88 歳)であった。 【考察】本検討では、圧迫骨折の身体所見として知ら れる叩打痛および体動時痛の有用性が確認された。こ れらの所見は感度87.5%、特異度90%とされ、今回の 結果も臨床判断における重要性を支持するものであっ た。ただし、非骨折例にも叩打痛や体動時痛が見られ ることから、他疾患との鑑別を慎重に評価する必要が ある。さらに、転倒歴の有無が診断に与える影響は限 定的であり、高齢者では軽微な外力でも骨折する可能 性を考慮する必要がある。本検討により、鍼灸院での 身体所見の評価と紹介状作成を通じた医療連携は、圧 迫骨折の早期診断・治療を可能にし、プライマリ・ケ アにおいて病院と鍼灸院が連携する意義を明示した。 キーワード:圧迫骨折、身体所見、医療連携、プライ マリ・ケア - 138 - 085 086 -Sun-P1-11:24 開業鍼灸師(院)における医療連携の実態についての 調査 1)一般社団法人福島県鍼灸師会 2)一般社団法人JISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関) 3)有限会社三瓶鍼療院 4)公益社団法人日本鍼灸師会 5)公益社団法人日本鍼灸師会地域ケア推進委員会 6)公益社団法人東京都鍼灸師会 7)マザーズナーシングケア鍼灸室 ○三瓶真一1,2,3)、小林潤一郎5,6)、中村聡4,7) 【目的】開業鍼灸師の医療連携の実態について調査す ることができたので報告する。 【方法】2023年9月1日から14日の14日間、日本鍼灸師 会地域ケア委員会より会員を対象に医療連携の実態に 関するGoogleフォームへのアンケートを行った。 【結果】全国の28の鍼灸師会会員から244の回答があっ た。回答者は93.3%209名が開業鍼灸師で、そのほか は勤務鍼灸師であった。『過去3年間に鍼灸院通院して いる患者で専門医による精査・加療の必要を感じたこ とがあるか?』の設問に『ある』と答えた回答が91.4 %あり、実際に受診させたのはそのうち88.5%であっ た。専門医を受診させる際に『必ず紹介状を発行する +だいたい発行する』の合計が33.4%で、『発行しない (専門医受診を口頭で指示など)』が47.8%であった。 診療情報提供書(または紹介状)を発行して紹介を行っ ている鍼灸師が少ないことが分かった。紹介先の医療 機関の規模では開業医院が最も多く約90%で。ついで 34.3%が総合病院へ紹介を行っている。大学病院への 紹介は10.5%であった。また医療機関から鍼灸師への 紹介は過去3年間で約半数の49.2%が『あった』と回 答があり、その際医師からの診療情報提供書や電話な ど口頭での連絡が『毎回ある』が約72%であった。 【考察・結語】アンケートの結果から、鍼灸師より医 師の方が多職種への医療連携について責任を持ってい る印象があった。鍼灸師からの紹介は大学病院や総合 病院よりも開業医クラスが最も多く、そこにはすでに 鍼灸師と紹介先の医師との関係性ができていることが 考えられた。近年は、鍼灸師からの紹介でも選定療養 費を徴収しない大学病院もあり、年々医療連携の敷居 が低くなっていることが感じられる。鍼灸師も臆せず 診療情報提供書を作成活用して医療機関と連携し、地 域医療の一翼を担う自覚を持つ必要があると感じた。 キーワード:開業鍼灸師、医療連携、診療情報提供書、 紹介状、地域医療 -Sun-P1-11:36 入院患者に対する鍼治療の実態調査とその分析 1)嶺井第一病院リハビリテーション科 2)鍼灸院おおひら ○屋部加奈子1,2) 【目的】嶺井第一病院(以下、当院)では、回復期リ ハビリテーション病棟に入院中の患者を中心に鍼治療 を行っている。これは全国にも数少ない医療機関のひ とつである。今回2018年6月の施術開始から6年間の患 者傾向を調査し、検討したので報告する。 【方法】対象は当院にて2018年6月から2024年7月末ま での期間に主治医より鍼治療の依頼があった入院患者 とした。調査項目は性別、年齢、依頼診療科、在院日 数、入院時の病名、鍼の施術内容とし、当院電子カル テから情報を抽出した。 【結果】患者総数は135名、男性56名(41.5%)、女性 79名(58.5%)、年齢は64.8±13.9歳(男性61.0±13.0 歳、女性67.4±14.0歳)で最年少24歳、最高齢94歳。 年代分布は、多い順に60歳代39名(28.9%)、50・70 歳代ともに26名(19.3%)、80歳代21名(15.6%)、40 歳代17名(12.6%)であった。依頼診療科は脳神経外 科102名(75.6%)、整形外科23名(17.0%)、内科10 名(7.4%)であった。在院日数は、95.1±43.7日。最 短で6日、最長で200日の在院日数であった。病名は、 脳神経外科では虚血性疾患31名、出血性疾患47名で、 整形外科では骨折21名、整形外科疾患術後5名であっ た。鍼の施術内容は疼痛に関する依頼が81名と最多で、 内訳としては麻痺側肩関節痛27名、腰痛15名、膝痛・ 頚部痛ともに10名の順で多かった。次に片麻痺の機能 改善31名、痺れ15名、整形外科疾患術後の疼痛緩和・ 機能改善5名であった。 【考察・結語】今回の調査により脳血管障害の好発年 齢である60代を中心に施術を行っており、脳神経外科 の患者が鍼治療患者の約8割を占めていた。施術内容 は脳血管障害後遺症に起因するもので、リハビリを妨 げる要因を軽減するために依頼されていることが示唆 された。 キーワード:患者動態、多職種連携、回復期リハビリ テーション - 139 - 087 088 -Sun-P1-11:48 病院スタッフへの鍼治療によるWell-beingへの貢献 熊本赤十字病院 ○三谷直哉 【目的】職場環境における従業員のWell-beingは、生 産性の向上や人材確保、企業価値の向上に寄与する重 大な課題であり、各企業において様々な取り組みが行 われている。特に医療機関では、コロナ禍を経て離職 率が増加し、人材確保が困難な状況が続いている。こ うした背景から、医療スタッフのWell-beingがより重 要視されるようになってきている。当院では、産業医 の勧告を受け職場復帰困難なスタッフに対して鍼治療 を行い、Well-beingの向上を目指している。本報告で はその取り組みを報告する。 【方法】当院で鍼治療を導入した2019年8月1日~2025 年12月31日の間に、身体的・精神的な不調のために休 職または職場復帰プログラム中のスタッフを対象とし た。産業医の勧告を受けたスタッフに対し、中医学的 な弁証に基づく配穴を基本として鍼治療を実施した。 【結果】14名のスタッフに対して鍼治療の介入依頼が あり、11名が職場復帰可能であった。治療対象となっ た症状や疾患は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、 慢性頭痛、パニック障害、不安障害、妊娠悪阻、運動 器疼痛であった。 【考察】産業医との連携により、鍼治療を組織の職場 復帰支援策として活用することが可能であった。また、 職場内で鍼治療を受けられる環境を整えることで、復 帰後の急な不調にも迅速に対応でき、スタッフの安心 感を高める結果につながった。特にPTSD、パニック 障害、不安障害を抱えるスタッフにおいては、発作時 に即座に鍼治療を受けられる環境は、働く上での安心 感を提供し、Well-beingの実現にも寄与したと考えら れる。この取り組みは、施設に対するスタッフのエン ゲージメント向上にも貢献する可能性が示唆された。 【結語】病院スタッフへの鍼治療は、Well-beingの向 上を支援するだけでなく、スタッフの職場へのエンゲー ジメントを高める効果が期待できる。 キーワード:産業医、職場復帰支援、エンゲージメン ト -Sun-P1-13:00 成熟期女性の冷えに対する経穴温熱刺激レッグウォー マーの効果 関西医療大学保健医療学部 はり灸・スポーツトレーナー学科 ○坂口俊二 【目的】冷えを自覚する成熟期女性を対象に、経穴へ の温熱繊維パイル編み付きレッグウォーマー(LW) の装着による冷えの程度や併存する症状に対する効果 を前後比較研究で検証する。 【方法】対象は冷えを自覚する18~39歳までの成熟期 女性とした。冷えに起因する基礎疾患のある者は除外 した。三陰交(SP6)と失眠(Ex-LE)に温熱線維パ イルが当たるように両足にLW(岡本株式会社)を1 ヵ月間(12月~1月の間)、就寝時に装着してもらい、 その効果をVisual Analogue Scale(VAS)による冷え の程度と併存15症状の0~5の順序得点、愁訴(15症状) の頻度と程度をそれぞれ4件法で回答してもらい、得 点を付与し掛け合わせた症状得点で判定した。 【結果】平均年齢22.5歳の35名で解析を行った。冷え を感じる部位は28か所で、一人あたり4.3(1.8)(1~ 8か所)で、最多は、「足趾(背・底)」33名、次いで、 「手指(背・掌)」27名であった。結果は平均(標準) 偏差で示した。VAS値(mm)は装着前1週間の47.1 (15.6) は、1 カ月の装着終了後1 週間の平均37.6 (14.3)に有意に減少した。併存15症状の順序得点は 装着前1週間の11.2(5.7)は、1カ月の装着終了後1週 間の平均8.0(5.8)に有意に減少した。愁訴の症状得 点は、装着前の92.7(29.1)は、1カ月の装着終了後 に70.7(27.0)に有意に減少した。装着に伴う有害事 象はなかった。 【考察】効果機序について関連研究の効果より、局所 加温により、皮膚血管が拡張し、加温部より末梢の血 流が増加すること、温度刺激が皮膚の温点から視床下 部の体温調節中枢に伝達され、副交感神経優位および 交感神経抑制がもたらされることで全身の皮膚血管が 拡張し血流が増加すること、などを想定している。 【結語】冷えを訴える成熟期女性の冷えに対し、失眠 穴と三陰交穴への温熱繊維パイル編み付きレッグウォー マーの就寝前の装着(1カ月)は、安全で冷えの程度 および併存症状・関連愁訴の改善に有効であることが 示唆された。 キーワード:成熟期女性、冷え、経穴温熱刺激、レッ グウォーマー - 140 - 089 090 -Sun-P1-13:12 安全で効果的な台座灸施灸に向けて 関西医療大学大学院保健医療学研究科 ○西野龍一、坂口俊二 【目的】本研究では、取り除くタイミングによる施灸 効果の違いを検討するための基礎研究として、従来の 温灸における課題解決の一助となりうる炭化艾台座灸 を使用し、恒温恒湿室で温度測定を行い、通常環境下 と比較検討した。 【方法】各環境下で長生灸ノンスモーク((株)山正) を30壮ずつ使用した。厚さ5mmの木製板上に、温度 センサーを台座灸底面中心孔部と台座部に設置し、経 時的な温度変化をデータロガーに記録した。測定間隔 は2秒とし、1壮ずつ施灸した。測定は恒温恒湿室(室 温26℃、湿度50%)、通常環境下(室温27℃、湿度60 %)で行い、各環境間での中心孔部と台座部における 最高温度(℃)、最高温度到達時間(秒)、45℃到達時 間(秒)、45℃以上持続時間(秒)について比較した。 【結果】測定結果の平均値(標準偏差)をA: 中心孔 部、B: 台座部の順に示す。恒温恒湿室での最高温度 はA: 48.9(2.5)、B: 43.9(1.3)であった。最高温度 到達時間はA: 134(13)、B: 143(15)であった。45 ℃到達時間はA: 99(12)、B: 134(10)であり、45℃ 以上持続時間はA: 69(25)、B: 51(33)であった。 通常環境下での最高温度はA: 54.1 (2.6)、B: 43.7 (1.4)であった。最高温度到達時間はA: 135(13)、B: 149(16)であった。45℃到達時間はA: 86(15)、B: 135(8)であり、45℃以上持続時間はA: 99(22)、B: 45(20)であった。各環境間では最高温度到達時間を 除いて有意差(p<0.05)を認めた。 【考察と結語】炭化艾の台座灸は、個々のばらつきは 少なく安定しているが、中心孔部の加温速度が早いた め、台座部の温度上昇は顕著ではなかった。また、通 常環境下よりも恒温恒湿室でのデータのばらつきが小 さいことから、測定環境を厳密に管理することで、よ り正確なデータが得られる可能性が高いことが示唆さ れた。 キーワード:台座灸、炭化艾、温度特性 -Sun-P1-13:24 モグサおよびモグサ燃焼時における煙の香気成分量の 比較2 1)千葉大学医学部附属病院東洋医学センター 柏の葉鍼灸院 2)つくば国際鍼灸研究所 3)洞峰パーク鍼灸院 ○松本毅1,2)、形井秀一2,3) 【目的】モグサ自体や燃焼時の香りは、ヨモギに含ま れる香気成分によると考えられている。モグサに含ま れる成分の内、第67回全日本鍼灸学会学術大会で報告 したシネオールを含め10種類の香気成分について、日 本産と中国産モグサの精製度合の違いによる香気成分 の含有量の比較とそのモグサの燃焼時に放出される燃 焼生成物の中の香気成分(精油成分)含有量について 分析したので報告する。 【方法】日本産A社製モグサ(高精製、中精製、低精 製3種)(以下、日本産)と中国産B社製モグサ(日本 産に準じた精製度3種)(以下、中国産)の計6種類の モグサをそれぞれ40mg使用した。モグサは、水蒸気 蒸留法により香気成分Cineol、Benzeneacetaldehydeな どの10物質を抽出し、ガスクロマトグラフ質量分析計 を用いて定量した。また、燃焼生成物は、艾しゅの上 部から吸引法で測定した。 【結果】すべてのモグサの香気成分量は、中国産、日 本産とも、精製度が高くなるに従い減少した。中国産 の香気成分量は、日本産より多い傾向にあった。また、 燃焼時の成分は、日本産では、中精製が、Cineol、 Benzeneacetaldehydeのみ、高精製ではBenzeneacetaldehyde のみが検出された。中国産では、中高精製とも5種 類の物質が検出された。 【考察と結語】日本のモグサは製造時に加熱乾燥を行 う等で香気成分が減少するため、艾しゅの燃焼時に完 全に燃焼してしまい揮発成分として残留しづらいが、 中国産は、製造時に加熱乾燥を行わないため、香気成 分がモグサに多く含まれ、燃焼時の煙の中に多く残留 したと考えられた。一方、Benzeneacetaldehydeは、精 製度が上がるほど増えていることから、絨毛に多く含 まれている可能性が想定される。この物質は、かんき つ果皮、花精油など多くの天然精油に含まれていて、 ヒヤシンス様の強い花香を有する。そのため、高精製 モグサの燃焼時の香りは、Benzeneacetaldehydeの可能 性が高いと考えられる。 キーワード:日本産モグサ、中国産モグサ、香気成分、 燃焼時 - 141 - 091 092 -Sun-P1-13:36 人工皮膚を使用した直接灸・間接灸施灸時温度測定の 有用性の検討 1)千葉大学柏の葉鍼灸院 2)千葉大学医学部附属病院 3)洞峰パーク鍼灸院 4)つくば国際鍼灸研究所 ○後藤唯1,2)、松本毅1,2,4)、形井秀一3,4) 【目的】安全な灸をおこなうためには、施灸時の燃焼 温度管理が必要である。そのため、これまで、モグサ の燃焼温度や人体に対する施灸部の温度に関する研究 が行われてきた。しかし、灸は温熱刺激であるため、 生体や人体での研究には限界がある。そこで、代替の 方法として、人工皮膚を使用した研究を考えたい。人 工皮膚を使用した温度測定については、ISO18666: 2021に記載がある。今回は、訓練用モデル電気メス用 シートゲル(以下人工皮膚)を使用し直接灸・間接灸 施灸時温度測定の有用性の検討を行った。 【方法】対象は、直接灸(モグサ1mg・2mg・5mg) と間接灸とした。実験は、温度25±1℃、湿度50±5% の恒温恒湿を保った部屋で行った。灸を人工皮膚上で 燃焼させ、深さ1mm、5mm、9mmに設置したK型熱電 対を用いて灸底面中央部の温度変化を3回計測し、平 均値を出し、燃焼温度曲線(以下温度曲線)を作成し た。測定は、最高温度等とした。 【結果】温度曲線は、直接灸は、深さ1mmでの計測 では、漸増漸減の温度曲線を示し、計測深度が深くな るにつれ、なだらかな温度曲線を示した。間接灸は、 深さ1mm、5mmともに直接灸ほど鋭い角度ではない ものの漸増漸減の温度曲線を示し、深さ9mmでは、 なだらかな曲線を示した。最高温度は、直接灸は、深 さ1mmで41℃~58℃、5mmと9mmで33℃を計測し、 間接灸は、深さ1mm、5mm、9mmで44℃、35℃、34 ℃を計測した。直接灸、間接灸ともに、計測深度が深 くなるにつれ、最高温度到達時間は、遅くなった。 【考察】人工皮膚を使用した施灸時温度測定の結果は、 施灸方法の違い、モグサ量や燃焼時間の長短によって 最高温度、最高温度到達時間等や温度曲線に違いはみ られた。しかし、生体や人体に対する施灸時温度測定 と同様の結果が得られるかは、今後も人工皮膚の構造 や材質などの検討が必要と考える。 【結語】人工皮膚を使用した直接灸・間接灸施灸時温 度測定の有用性の検討を行った。 キーワード:人工皮膚、有用性、燃焼温度曲線、直接 灸、間接灸 -Sun-P1-13:48 マウス頭部鍼刺激による小脳タウリントランスポーター 発現の検証 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科 ○松岡慶弥、長岡伸征 【目的】生体内に豊富に存在するTaurinは抗炎症作用 や細胞の恒常性維持などの様々な有益な作用を発揮す ることで知られ、また、Taurineの細胞内への取り込 みは、輸送体であるTaurineトランスポーター(TauT) が担っている。我々はこれまでに正常マウスへの頭部 鍼刺激が、小脳におけるTauT遺伝子を増加させるこ とを報告してきた。本研究では、正常マウスの頭部へ の鍼刺激が小脳のTauTタンパク質発現に与える影響 を免疫組織化学染色で検証することを目的とした。 【方法】8週齢雄性ICRマウスを鍼刺激2週間群と4週 間群(各群n=4)に群分けした。使用鍼は、直径0.25 mm、長さ15mmのステンレス製(Dタイプ;セイリン 株式会社、静岡、日本)を用いた。百会穴と印堂穴へ の鍼刺激は刺鍼深度を各々5mmとし、マウスを台に 固定した状態で1日20分間、2週間および4週間同時置 鍼した。コントロール群は固定のみとした。介入期間 終了後、バルビタールナトリウム塩溶液(120mg/kg) を腹腔内注射して安楽死させ、小脳を回収した。回収 したこれらの小脳におけるTauTタンパク質の発現を 免疫組織化学染色で検証した。本研究は、鈴鹿医療科 学大学動物実験倫理審査委員会の承認を得ている(許 可番号:第304号)。 【結果・考察】印堂穴と百会穴への同時鍼刺激により、 小脳のプルキンエ細胞におけるTauTタンパク質の発 現量は、コントロール群と比較して2週間および4週間 の鍼刺激群で増加傾向を示した。また、これらの経穴 への2週間、4週間の鍼刺激期間に依存した小脳のプル キンエ細胞におけるTauTタンパク質の増加がみられ なかったことから、小脳におけるTauT発現増加には2 週間の鍼刺激で十分であることが考えられた。 【結語】印堂穴と百会穴への鍼刺激により小脳の TauTタンパク質の発現が増加すること、またその刺 激期間は2週間でも十分であることが考えられた。 キーワード:印堂穴、百会穴、鍼刺激、小脳、 Taurineトランスポーター - 142 - 093 094 -Sun-P1-14:00 健康成人の作業記憶に対する鍼通電刺激の影響 1)明治国際医療大学鍼灸学講座 2)朝日医療専門学校広島校鍼灸学科 ○濱野温子1,2)、平岩慎也1)、上田直樹2)、 福田文彦1) 【目的】発達障害やストレス、生活習慣により低下す る作業記憶は、学校教育や職場環境において重要な問 題である。作業記憶に対しては、マインドフルネスや ヨガなどの取り組みなどの報告はあるが、鍼灸治療を 検討した報告は少ないのが現状である。本研究では、 学生を対象に前腕及び頭部への鍼通電刺激が作業記憶 に与える影響について検討した。本研究は明治国際医 療大学ヒト研究倫理審査委員会の承認(承認番号: 2024-015)を得て行った。 【方法】対象者は、健康成人ボランティア22名(男性 13名、女性9名、平均年齢31.36歳)とした。研究は、 無刺激群、前腕通電群(合谷-手三里、2Hz、10分)、 頭部通電群(頭維-頭臨泣、100Hz、10分)を行うクロ スオーバーデザインとした。作業記憶の評価は二重NBack 課題(記憶力が上がる脳トレゲームDual N Back(株式会社合格アプリ))の正答率と総合スコア の前後の差とした。 【成績】研究対象者22名のうち3名が体調不良等で継 続困難になり除外とした。二重N-Back課題の正答率 は、3群間では有意な差は認められなかったが、総合 スコアによる比較では差がある傾向を認めた(p= 0.052:Kruskal Wallis test)。特に前腕群は無刺激群と 比較してスコアが増加する傾向を認めた(p=0.076:B onferroni test)。また年齢による層別解析では、20歳 代の総合スコアが無刺激群と比較して増加する傾向を 認めた(p=0.120:Bonferroni test)。 【結論】この機序には、前腕部へ鍼通電刺激により脳 血流が増加した結果と考える。以上のことから前腕へ の鍼通電刺激は作業記憶に影響を与えることが示唆さ れ、学校教育への負担を軽減することが示唆された。 キーワード:作業記憶、鍼通電刺激、二重N-back 課 題 -Sun-P1-14:12 鍼鎮痛効果を予測する因子について 1)明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科 2)明治国際医療大学大学院 ○大場美穂1)、大井康宏2)、齊藤真吾1,2)、 伊藤和憲1) 【目的】鍼灸治療は、内因性鎮痛機構を賦活させるこ とで全身性の鎮痛を引き起こすことが知られている。 そのため、内因性鎮痛機構の状態を事前に知ることが 重要であると考えられている。この内因性鎮痛機構の 状態を反映するものとしてConditioned pain modulation(以下CPM)がある。しかしながら、CPM の測定は、圧刺激、熱刺激、冷刺激など様々な刺激に よるテスト刺激と条件刺激を加えることで引き起こさ れるものの、刺激強度の定量化については一定の見解 が得られていない。また、対象によっては測定のため の刺激が耐えられないものもいる。そのため、条件刺 激の強度の違いがCPMに与える影響について検討し た。 【方法】対象は研究の趣旨を説明し同意の得られた学 学生6名(23.0±2.0歳)とした。CPMはテスト刺激と して非利き手の上腕に中等度の熱刺激を与え、条件刺 激として利き手に冷水刺激を同時10秒間与え、痛覚強 度をVASで評価した。条件刺激は、先行研究でも用い ている10℃の冷水刺激(高強度)と痛みや不快感を感 じにくい15℃の冷水刺激(低強度)の2種類で行った。 なお、CPM効果は-{(条件刺激中のVAS)/(テスト 刺激のみのVAS)-1}×100(%)と定義した。 【結果】高強度刺激によるCPMでは、低強度による CPMより効果が認められた(p=0.001, 対応のあるT検 定)。条件刺激が高強度によるCPMと低強度による CPMの間には強い相関関係が認められた(r=0.94, p=0.006, ピアソンの相関係数)。 【考察・結語】内因性鎮痛機構を反映するCPMを測 定するには先行研究では高強度刺激が用いられている が、低強度刺激でも同様にCPMを測定することがで きた。以上のことから、低強度のほうが研究協力者の 負担なく測定することができ、慢性疼痛患者でも負担 が少なく測定できる可能性が示唆された。今後は、よ り低強度の刺激や違う種類の刺激方法で検討を行うこ とで、臨床応用に役立てたい。 キーワード:内因性鎮痛機構、CPM、鎮痛 - 143 - 095 096 -Sun-P1-14:24 痛みを伴う肩こりの特性 1)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 2)東京有明医療大学大学院保健医療学研究科 鍼灸学分野 3)University of Illinois Chicago ○高梨知揚1,2)、矢嶌裕義1,2)、高山美歩1,2)、 Judith M. Schlaeger1,3)、Crystal L. Patil3)、 高倉伸有1,2) 【目的】鍼灸臨床において、痛みを伴う肩こりが散見 されるが、これまで痛みの有無の観点から肩こりの特 性を検討した報告はない。そこで本研究では、一般人 を対象として肩こりに関するWebアンケート調査を行 い、痛みを伴う場合と伴わない場合の肩こりの特性の 違いについて検討した。 【方法】2022年7月に、肩こりを有する15歳から74歳 までの都市部在住の日本人1000名(男性473名、女性 527名)を対象とした。調査内容は、直近1週間の肩こ り強度のVisual Analogue Scale(VAS)、こり症状に 痛みを伴うか否か、19項目の肩こりの性状の有無と程 度、症状を自覚する部位、肩こりによる就学や仕事・ 日常生活・気分や精神状態への影響の有無、39項目の 随伴症状の有無とした。総サンプルを、痛みを伴う有 痛群と伴わない無痛群に分け、両群の肩こりの特性に ついて比較検討した。統計解析にはχ2検定、Mann-W hitneyのU検定を用い、有意水準を0.05とした。 【結果】肩こり有痛群は352名(35.2%)であった。 直近1週間の肩こり強度のVAS(平均値±標準偏差) は、有痛群(64.9±15.9mm) の方が無痛群(56.5± 16.1mm)よりも有意に高かった。肩こりの各種性状 の有無については、19項目中11項目で、有痛群の割合 が有意に高かった。こりを自覚する部位については、 頸胸移行部後側、肩甲間部、肩関節部、鎖骨下部で症 状を自覚する割合が、また、肩こりによる就学や仕事・ 日常生活・気分や精神状態への影響がある割合が、無 痛群よりも有痛群で有意に高かった。各種随伴症状の 有無の割合については両群間に有意差はなかった。 【考察・結語】肩こりに痛みを伴う方が、肩こりをよ り強く、広範囲に感じており、日常生活に影響を及ぼ すことが明らかになった。これは、痛みの有無は、肩 こりの臨床的な重症度の目安の一つとなることを示唆 する。 キーワード:肩こり、こり、痛み、アンケート調査 -Sun-P1-14:36 女性の破局的思考と不安の程度が鍼通電の鎮痛効果に 与える影響 1)明治国際医療大学鍼灸学研究科 2)明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科 ○大井康宏1)、大場美穂2)、斎藤真吾2)、 伊藤和憲2) 【目的】一般的に不安や思考・認知などの因子は内因 性鎮痛機構に影響を及ぼし、疼痛調節に影響すること が知られている。特に、女性は男性よりも心理・社会 的因子の影響が強く、疼痛感受性が高いことが知られ ている。しかし、内因性鎮痛機構の影響については、 男女で差があるか明確ではない。そこで、本研究では、 健康成人男女を対象に、破局的思考と不安のどちらが 鍼通電の鎮痛効果に及ぼすか検討した。 【方法】研究の趣旨を説明し、同意の得られた健康男 性7名・女性成人22名の合計29名を対象に、破局的思 考をPain Catastrophizing Scale (PCS)、不安をState- Trait Anxiety Inventory(STAI)を用いて評価を行っ た。なお、PCSの得点に基づいて高得点群(H-PCS群) と低得点群(L-PCS群)に群分けした。また、同様に STAIの状態不安および特性不安の得点に基づき、そ れぞれ高得点群(H-STAIS群/H-STAIT群)と低得点群 (L-STAIS群/L-STAIT群)に群分けした。介入は、両 側の足三里-陽陵線、利き手の合谷-手三里に4Hzで30 分間の鍼通電を行い、介入前、介入直後、30分後、60 分後の4回、非利き手の前腕部に絶縁鍼を刺入し、 Pulse Algometerを用いて痛覚閾値を測定した。 【結果】介入前の痛覚閾値は、男性に比べて女性の痛 覚閾値の方が低く(p=0.028)、PCSが高いほど痛覚閾 値が一番低くなった(p=0.03)。一方、鍼鎮痛効果に 関しては、PCSの高低で介入後に痛覚閾値に差が認め られたが(p=0.027)、STAIの高低(p=0.186, p=0.222) や男女では鎮痛効果に差は認められなかった(p= 0.521)。 【考察】今回、介入前の痛覚閾値は先行研究と同様、 男性よりも女性で低く、その中でもPCSが高いもので 痛覚閾値が低かった。一方、鍼鎮痛効果に関しては、 破局的思考の高低が痛覚閾値に影響を与えたが、不安 の高低では影響されずさらに、男女で差がなかった。 以上のことから、痛覚感受性と内因性鎮痛機構ではそ の機序が異なる可能性が示唆された。 キーワード:破局的思考、不安、鍼鎮痛、鍼通電 - 144 - 097 098 -Sun-P1-14:48 肌分析機を利用した「たるみ」に対する美容鍼の1例 1)BODYREMAKER 鍼灸治療院 2)仙台赤門短期大学 ○種市敢太1)、宮本成生2) 【はじめに】松浦ら(2022)の調査では、国内の美容 鍼灸に関する研究論文で利用されている評価項目は49 種類ある一方で、客観的に定量化して計測は少ないと 報告されている。また、曽根原ら(2022)は美容鍼灸 に対する一般女性の認識として、最も多かった悩みは 「たるみ」であった。そこで光源の固定・定位置撮影・ 比較分析が可能であるネオヴォワールMini(株式会 社シーラボ社,以下肌分析機)を利用し、介入の評 価を行なった一例を報告する。症例報告にあたり対象 者より同意書への署名にて同意を得た。 【症例】美顔目的で来院した58歳女性、既往歴及び現 病歴は特になし。特にほうれい線(鼻唇溝)に悩みが あり美容鍼を実施。 【評価項目】肌分析機にて正面から顔の位置を固定し て撮影した。Yousifら(1994)が行なったほうれい線 の評価方法を参考とし、始点を鼻翼の横とし鼻唇溝の 頂点を結ぶ線で顔面正中に対しての角度を算出し施術 前後で比較した。 【介入】鼻唇溝を形成する"Nasolabial fat"に対して、 軟鍼(0.16×40 mm,セイリン社)を用いて、ST3・SI 18・GB3・GB5と鼻唇溝に沿った6箇所に置鍼を10分 行なった。 【結果】術前の鼻唇溝の角度は61.3 °に対して、施 術後は63.8 °となり、-2.5 °の変化であった。 【考察】Schenck ら(2018)の研究では、Nasolabial fat に軟部組織充填剤を注入した際に、溝が深くなる ため下方に変位し、外観が悪化すると示唆された。本 症例でも美容目的で鼻唇溝の軟部組織へ刺鍼を行うこ とが、先行研究で示される機序に類似した反応が生じ た可能性がある。 【結語】肌分析機を利用することにより、客観的かつ 定量的な変化が評価できた。その結果たるみに対して 美容鍼を行なった際に、軟部組織の変化によって治療 目的とは異なる状態になる可能性が示唆された。 キーワード:美容鍼灸、軟部組織、画像解析、ほうれ い線 -Sun-P1-15:00 顔面部への刺鍼による心理的ストレスへの効果 鍼灸院ラピススリー ○岸百華 【はじめに】顔面部への刺鍼(美容鍼)により、心理 的ストレス、睡眠の質、メンタル面といった非美容効 果が得られた3症例について報告する。 【症例】症例は発表に際して同意の得られた50歳代の 女性3名であり、全員が軽度のストレス症状を有して いた。3症例いずれも特筆すべき既往歴、現病歴、所 見などはなかった。 【刺鍼方法】顔面部へは毫鍼(直径0.18mm、長さ30 mm、ステンレス製)を使用し攅竹、太陽、頬車、 觀、聴宮に、体幹部へは毫鍼(直径0.20mm、長さ50 mm、ステンレス製)を使用し中府、肩井、完骨に、 施術を行った。刺激は低周波通電とし、患者が心地よ く感じる強度とした(100Hz、20分間/回)。各症例に 対して3回施術を行った。評価方法:簡易心理テスト (HADS)とピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用い た。 【治療・経過】HADSにおいて、症例1は初回施術時9 点から3点に、症例2では7点から6点、症例3では4点か ら2点に減少した。また、PSQIにおいて、症例1は7点 から5点に、症例2では6点から3点に、症例3では5点か ら4点に減少した。 【考察】顔面部への施術は美容目的の変化だけなく、 三叉神経の興奮による心理的ストレスといった非美容 的効果が生じたものと示唆される。今後さらなる症例 数の増加や長期的な施術により、明らかにできるもの と期待される。 【結語】美容鍼には心理的ストレスの軽減や睡眠の質 向上といった非美容効果も期待され、本症例は美容鍼 の新たな治療効果を示唆するものである。 キーワード:美容鍼、心理的ストレス - 145 - 099 100 -Sun-P1-15:12 美容学校での東洋医学講義が学生に与えた学びに関す る質的研究 1)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 2)帝京平成大学東洋医学研究所 3)国士舘大学ハイテクリサーチセンター ○中村優1,2,3) 【目的】近年、東洋医学に対する関心は医学の分野の みならず、多くの分野へ広がっている。本研究は美容 学校で行った東洋医学の授業に対し、自由筆記にて聴 取した感想レポートを解析することで、学生の学びに 対する質的調査を行い、東洋医学的知識の教授が今後、 美容分野および鍼灸分野双方でどのような役割を担っ ていくかを明らかにするものである。 【方法】同意を得られた美容専門学校総合美容科2年 生の学生24名を対象にX年5~7月の期間で全8回(1講 義60分、座学7回、実技体験1回)行われた東洋医学の 講義終了後、自由筆記によるアンケートを記入しても らい、テキストマイニングによる解析を行った。なお、 本講義を3回以上欠席した4名を除外対象とした。 【結果】有効回答20名の文章データを解析の対象とし た。得られた総抽出語数は917語であった。単語頻度 解析では「鍼」「授業」が共に17回で最頻出となり、 「楽しい」「思う」が8語と続いた。なお、「楽しい」の 回答内容はいずれも「授業」とそれに紐づく「鍼」に 関連するものであった。 【考察】美容学校にて行った東洋医学の講義後の感想 レポートの解析により、「鍼」「授業」のワードが最頻 出であったことから、鍼灸以外の分野である美容分野 の学生は東洋医学そのものよりも「鍼」に興味、関心 があるものと考察される。本授業構成は7回が東洋医 学に関連する座学であり、鍼を用いた授業は最終講義 の1回のみであったが、興味の多くは「鍼」に向いて いたものと考える。また、3番目の頻出単語に「楽し い」が含まれていることから、多くの美容学生が本講 義を通して鍼や東洋医学にポジティブな印象を抱いた ことが明らかになった。 【結語】本研究により美容分野の学生が「鍼」に対し 興味や関心を抱く傾向が示唆された。この結果は今後 の両分野の積極的なコラボレーションに寄与するもの と考える。 キーワード:美容学校、東洋医学、鍼、テキストマイ ニング -Sun-P1-15:24 耳介刺激による顔面部の自覚的・定量的な形状変化と 心身への影響 1)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部 鍼灸健康学科 2)新潟医療福祉大学大学院保健学専攻 ○高野道代1,2)、金子聡一郎1)、粕谷大智1,2) 【目的】美容鍼灸の効果は施術者・受療者の双方が主 にリフトアップをあげている。しかし、これらの効果 は受療者の自覚的な所見が中心で、定量的な検証が不 足しているのが現状である。今回、定量的な形状評価 が可能な3D画像撮影解析装置(3Dスキャナ)を用い、 耳介刺激に対する顔面部の形状変化を定量的に測定し、 自覚的形状変化との関連性と心身への影響について検 討を行った。 【方法】対象は新潟医療福祉大学の学生、教職員の健 康な女性(31.9±11.8歳)15名。研究デザインはラン ダム化クロスオーバー比較試験を実施。刺激・観察期 間の各期間に週に1回(計4週)の耳介刺激及び無刺激 の評価を実施。耳介刺激は耳介特定部(神門、眼)に 粒鍼を貼付した。評価指標は体積の変化量の確認とし て3Dスキャナの計測、自覚的たるみの変化はVASを 用い、刺激・観察期間の前後の評価、ストレス尺度、 体質分類、有害事象等を評価した。統計解析ソフト IBM SPSS Statistics 27 を用いた。 【結果】施術前後の下顔面部(鼻翼外方、頬骨外端、 片側下顎ライン中点を結んだ領域)の体積の変化量は、 粒鍼刺激群と無刺激群と比較して有意な変化 (p=0.011)が認められた。自覚的たるみの変化は粒鍼 刺激と無刺激の各群間において有意(p=0.009)に刺 激群で改善が認められた。下顔面部の施術側の体積の 変化量と自覚的たるみの変化は相関が認められなかっ たが非施術側では負の相関が認められた。心身への影 響については下顔面部の非施術側の体積の変化量及び 自覚的たるみと体質分類の改善数の間に相関が認めら れた。 【考察・結語】無刺激群と粒鍼刺激群では3Dスキャ ナによる定量的な変化と自覚的たるみの変化に有意差 を認めた。また下顔面部の体積の変化量・自覚的なた るみの変化量は心身への影響との関連性がある可能性 が考えられた。これは耳介刺激による体性―自律神経 反射等の反応が、顔面の形状変化及び心身へも影響す る可能性が示唆された。 キーワード:美容、耳介刺激、顔面部の形状変化、定 量的変化(3D画像撮影装置)、自覚的変 化 - 146 - 101 102 -Sun-P2-10:12 鍼灸学系大学教育モデル・コア・カリキュラムの学修 目標の検証 明治国際医療大学 ○河井正隆 【目的】鍼灸学系大学協議会『鍼灸学系大学教育モデ ル・コア・カリキュラム』(以下、コアカリ)の作成 にあたり、コアカリで示す学修目標を実際の授業に適 用し、その妥当性や有用性を明らかにすることを目的 とする。 【方法】X大学の令和5年度後期に開講の3科目を選定 し、受講生アンケートと授業者インタビューを用いて 検証を行った。選定した科目は以下の通りである。1. 授業A:「月経異常」【臨床医学各論4(配当学年2年・ 受講生38名)】、2.授業B:「問診」【東洋医学概論2(1 年・42名)】、3.授業C:「神経痛」【臨床医学各論3(2 年・40名)】。受講生にはコアカリの学修目標に対す る印象をアンケート(Google Forms)で問うた。授業 者には学修目標とコアカリの整合性について意見を聴 取した(約30分の半構造化インタビュー)。本研究は X大学ヒト研究倫理審査委員会の承認を得て、令和5 年10月~12月に実施した。なお、今回使用した学修目 標はドラフト版に基づくが、初版でも同一内容である。 【結果】授業Aの結果を次に示す。1. 学修目標は「月 経異常を訴える患者の身体診察ができる」「月経異常 を訴える患者の医療面接ができる」など10項目である。 2. 受講生アンケート(回収率57.9%):Q1 学修目標 の意味は分かりますか?:概ね肯定的な回答(約72% ~80%の範囲)。Q2 学修目標は将来の鍼灸臨床に重 要だと感じますか?:肯定的回答(平均で約90%以上)。 3. 授業者インタビュー:実際の授業に照らし合わせ、 コアカリの学修目標の妥当性が確認された。 【考察】受講生の多くが学修目標を理解し、臨床的意 義を認識していた。また、授業者インタビューの結果 からも、コアカリの学修目標の妥当性が概ね確認され た。これらの結果から、受講生の基本的な知識やスキ ルの習得を図る道標として、今回取り上げたコアカリ の学修目標は重要であると考えられる。 【結語】今回のコアカリの学修目標には妥当性と有用 性を備えていた。 キーワード:鍼灸学系大学、モデル・コア・カリキュ ラム、受講生アンケート、教員インタビュー -Sun-P2-10:24 ICT教育時代の「鍼灸教育」学校図書室その在り方の 模索と考察 東京医療福祉専門学校 ○谷直樹 【目的】2019年文部科学省のGIGAスクール構想及び コロナ禍による授業のオンライン化促進と学生の情報 端末普及により、本校では図書室の利用者数が低下し た。利用者数の増加を目標として方略を模索。実施し た結果を評価し、鍼灸教育校における図書室の在り方 を考察する。 【方法】前述の2019年を境界とし、2016-2023年度ま で本校図書室の開室日数、来室人数(日平均)、図書 サービス利用数を比較検討し、期間中に実施した催事 イベントの意義を検討した。 【結果】開室日数の最多は2020年度の236日、最少は 2016年度の214日で、コロナ禍を挟んだ統計期間中の 開室日数に10%を超える変動は無い。来室者数は2016 年度5223人(24.01人/日)。コロナ禍の減少で2020年 度4580人(19.41人/日)の統計期間中最少人数を経て、 2023年度5444人(23.8人/日)に回復した。図書サー ビスではレファレンスサービスの年度利用数が2019年 度より前の年平均70.0件から2019年度以降の年平均 167.4件に増加した。 【考察】本校図書室は、2018年度まで視聴覚教材や就 職情報の収集を強化していたが、ICT教育推進後に来 場者が減少。図書室情報の配信や催事イベントを実施 した結果、来場者が回復した。活動内容を振り返り、 その活動の発想はWilliam F.Birdsallの『電子図書館の 神話』にある「場所としての図書館」に基づくもので あった。学生の活動を支援し、積極的に場所と情報を 多目的に提供する事で図書室の利用は増加した。その 結果、司書へのレファレンス数は増加した。活動を遂 行出来た要因は、十分な図書室資産、多目的利用の素 地、実技授業による登校の必然性が挙げられる。 【結語】図書室が「情報集積場所」を超え学生の活動 を支援する場として機能することが「鍼灸教育」にお ける図書室の在り方と考える。 キーワード:鍼灸教育、電子図書館、場所としての図 書館、GIGAスクール構想、ICT教育 - 147 - 103 104 -Sun-P2-10:36 視覚障害を有する鍼灸マッサージ師と理学療法士のリ カレント教育 1)筑波技術大学保健科学部附属 東西医学統合医療センター 2)筑波技術大学保健科学部保健学科鍼灸学専攻 ○櫻庭陽1)、望月憲之1)、陣内哲志1)、 成島朋美1)、鮎澤聡1,2) 【目的】本学では、文部科学省の委託を受けて令和3 年度より視覚障害を有する鍼灸あん摩マッサージ指圧 (以下、あはき)師、令和5年度からは理学療法士を追 加してリカレント教育事業を実施してきた。令和6年 度は、本学の自走による「視覚障害を有する鍼灸あん 摩マッサージ指圧師、理学療法士のための専門スキル 向上プログラム」を実施したので報告する。 【方法】事業期間は、令和6年11月から翌年2月末まで として、60時間以上ならびに必修科目を履修した受講 者に履修証明を発行することとした。授業は、64名の 講師が担当し(うち学外講師37名)、前年度より13増 の79授業(130.5時間)、内訳は講義が72、実習が8で 企画した。授業は、オンラインによるオンデマンドお よびオンタイムで開講し、オンタイム講義は録画して 後日、オンデマンド配信した。講義内容は、あはきと 理学療法、医療等の専門スキルのほか、情報処理やコ ミュニケーション、セルフアドボカシー、経営等の職業 スキルとした。実習は、本学の東西医学統合医療セン ターで行い、昨年度は福岡、京都、札幌の3か所にサ テライト会場を設置したが、今回は東京の1か所とし た。募集は、過去の協力者や受講者等にメールで依頼 して、広くアナウンスした。 【結果】受講者は過去3年(19、27、73名)から119名 に増え、平均年齢は47.3±12.6歳、全盲が39名であっ た。資格は、はり師102名、きゅう師104名、あん摩マッ サージ指圧師112名、理学療法士14名であった。資格 取得年数は、5年未満が31名、5年以上10年未満が25名、 10年以上15年未満が8名、15年以上20年未満が15名、2 0年以上25年未満が10名、25年以上30年未満が13名、3 0年以上が17名と幅があった。雇用は、正規51名、非 正規27名、自営21名など様々だった。 【考察】受講者は年々増加し、年齢や資格取得年数、 雇用状況の結果から、様々な背景を持つ多くの視覚障 害者が学びの機会を求めていると感じた。 キーワード:リカレント教育、視覚障害、鍼灸あん摩 マッサージ指圧 -Sun-P2-10:48 国家試験の経絡経穴概論における穴・要穴の出題傾 向について 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科 ○高木健、長岡伸征、松岡慶弥、浦田繁 【目的】はり師・きゅう師国家試験における『経絡経 穴概論』の出題数は20問と多く、合否に大きく影響す る科目である。国家試験を合格するためには全ての 穴名および部位、要穴の習得が求められる。その中で も、出題頻度が高い穴と要穴の習得は早期の段階か ら必須である。今回我々は、過去の『経絡経穴概論』 の国家試験問題を用いて出題頻度が高い穴と要穴に ついて調査した。これらの穴と要穴を把握し、学生 に対し優先的かつ効率的な学習をさせ、国家試験の得 点率を向上させることを目的とした。 【方法】過去10回の『経絡経穴概論』の国家試験問題 を対象とし、問題文・選択肢から穴名を抽出し、次 に各要穴に該当する穴を抽出し、各々カウントした。 これらを国家試験過去10回分で除すことで国家試験1 回あたりの穴における平均出題率を算出した。 【結果】(1)全穴393穴(経穴361穴、奇穴32穴)の 中で、出題率が60%と最も高かったのは足三里穴であっ た。次いで50%の陰谷穴、40%の至陰穴・少沢穴・支 正穴・商陽穴・臂臑穴・列欠穴であった。(2)各要穴 の中で、出題率が最も高かったのは、上位から95%の 五兪穴の、79%の五要穴の、17%の八脈交会穴、16% の下合穴、12%の八会穴、9%の四総穴であった。 【考察】過去10回の経絡経穴概論の国家試験問題にお いて、出題率が40%以上と高かった上位8穴の中で臂 臑穴を除く、7穴(足三里穴、陰谷穴、至陰穴、少沢 穴・支正穴、商陽穴、列欠穴)が要穴に該当していた。 次に要穴の中で最も出題率が高かったのは、五兪穴で あった。出題率が高い穴の多くは要穴に該当してい た。国家試験対策では早期の段階から要穴を優先的に 学習させる事例が多く、その取り組みが国家試験合格 のための効率的な学習方法であることが示唆された。 【結語】過去10回の経絡経穴概論の国家試験問題にお いて、全穴の中で出題率が高かったのは足三里穴、 陰谷穴など、要穴の中では五兪穴であった。 キーワード:はり師・きゅう師国家試験、経絡経穴概 論、要穴 - 148 - 105 106 -Sun-P2-11:00 産学連携活動とその成果物を利用した学習効果測定 整骨鍼灸漢方薬膳福 ○堀口恭弘 【目的】東洋医学の理解には多くの専門用語が必要で あり、初学者には難解な点が多い。筆者は「陰キャ・ 陽キャ」等の流行語を陰陽五行論の説明に取り入れ、 若者への親和性や理解の強化を実感する。そこで札幌 市立大学デザイン学部に視覚教材の制作(以後、成果 物)を依頼し、令和4年8月より「東洋医学の体系的概 念図を制作する」をテーマに活動を開始した。成果物 は令和5年3月に完成。この成果物を授業に活用して初 学者の理解度や満足度に及ぼす効果を測定した。 【方法】医薬品登録販売者養成課程の専門学生、令和 5年度生42名(女子39名、男子4名、年齢18.4±1.5)、 令和6年度生40名(女子29名、男子11名、年齢18.2± 0.8)を対象とした。選択科目「生薬・漢方学」の初 回授業にて、令和5年度生Aクラスと令和6年度生に成 果物を活用した授業を行い、令和5年度生Bクラスに は従来の方法で授業を行った。授業後に5件法による 12項目の多項目選択式質問と自由記述回答のアンケー トを実施。令和5年度生A:Bクラス、令和5年度生B クラス:令和6年度生をマンホイットニーのU検定に て統計処理を行い、自由記述回答にはテキストマイニ ングを行った。 【結果】多項目選択式質問では、令和5年度生Aクラ スとBクラス間に統計的有意差はなく、令和5年度生B クラスと令和6年度生では項目10に有意差が確認され た。自由記述回答のテキストマイニングでは、介入群 から「おもしろい」「たのしい」といった形容表現が 多数抽出され、「図解」「イラスト」「まんが」などの 教材要素も評価された。 【考察・結語】自由記述回答では介入群においてポジ ティブなワードが浮かび上がり、記憶定着や理解度、 満足度に寄与した可能性が考えられた。今後は成果物 を適切に組み合わせつつ、授業内容の深掘りや双方向 的アプローチを導入するなど、多角的な教授方法の設 定が必要であると考える。 なお、本研究発表に関して開示すべきCOIはない。 キーワード:東洋医学、アンケート調査、学習効果、 初学者、満足度 -Sun-P2-11:12 合谷穴部への通電刺激は運動神経を直接興奮させる 北海道鍼灸専門学校 ○二本松明、川浪勝弘、塩崎郁哉、志田貴広、 工藤匡、笠井正晴 【目的】一部の経穴部位は運動神経を効率良く刺激で きる筋運動点が存在する。本研究では、合谷穴部の筋 への通電刺激により運動神経を直接電気刺激したこと で生じる誘発筋電図F波のような波形が計測できたた め報告する。 【対象及び方法】対象は神経障害の認められない健康 成人7名とした。実験は同一被験者に対し、1.手関節 部で尺骨神経を電気刺激してM波、F波を計測する方 法、2.合谷穴部の筋層まで鍼を刺入し通電刺激を行 いM波、F波を計測する方法、3.合谷穴部の皮膚まで 鍼を刺入し通電刺激を行いM波、F波を計測する方法 を比較した。筋層まで鍼を刺入する実験では、長さ50 mm、直径0.20mmのステンレス鍼を合谷穴に10mm刺 入した。皮膚まで鍼を刺入する実験では皮下4mmま で鍼を刺入した。誘発筋電図F波はM波の出現する最 大上刺激を持続時間0.2msec、頻度2Hzで32回加えた。 導出電極は表面電極を用い、関電極を第一背側骨間筋 上に、不関電極を第2指基節骨上に貼付しF波を導出 した。得られた波形についての潜時を計測した。 【結果】手関節部で尺骨神経を刺激するとM波、F波 が出現した(M波潜時平均:4.16ms、F波潜時平均: 29.6ms)。また合谷穴部に鍼を刺入し、通電刺激を行 うと第一背側骨間筋M波のような波形と、F波のよう な波形が出現した(M波潜時平均:2.99ms、F波潜時 平均:31.6ms)。手関節部への刺激により誘発した波 形の潜時と比較するとM波の潜時は速く、F波の潜時 は遅かった。同部位への皮膚への通電ではM波、F波 のような波形は誘発されなかった。 【考察】合谷穴部に鍼を刺入し電気刺激を加えるとF 波と思われる波形の出現を確認した。これは鍼刺激に より第一背側骨間筋に分布する尺骨神経を直接興奮さ せた結果と考えられ、同部位への通電刺激は同一神経 幹内に含まれる各種神経線維を興奮させる可能性があ る。 キーワード:誘発筋電図F波、合谷穴 - 149 - 107 108 -Sun-P2-11:24 鍼通電刺激が慢性足関節不安定性の姿勢安定化時間に 及ぼす影響 1)東京有明医療大学大学院保健医療学研究科 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 3)東京有明医療大学保健医療学部柔道整復学科 ○寄本寛人1)、藤本英樹1,2)、石井輝1)、 田中滋城1,2)、高橋康輝3) 【背景及び目的】機能的足関節不安定性(以下、FAI) は,姿勢安定化時間(以下、TTS)の遅延が報告され ている。本研究はシングルケースデザインを用いて、 鍼通電刺激がFAIのTTSに及ぼす影響を検討すること を目的とした。 【方法】対象は、FAIを有する男性1名(23歳、身長 165.0cm、体重54.8kg)とした。研究はシングルケー スデザインとした。鍼通電条件(7回)とコントロー ル条件(7回)を設定し、それぞれの条件は1週間以上 の間隔をあけランダムに合計14回実施した。割り付け はブロック化ランダム交代デザインとし乱数表を用い て振り分けた。評価は、鍼通電刺激もしくは安静臥位 前後のTTS、片脚ドロップジャンプ着地(以下、SDL) 後5秒間の総軌跡長、SDL時の足関節不安定感の Visual Analog Scale(以下、VAS)とした。運動課題 は、SDLとし、フォースプレートへ片脚でジャンプ着 地をし、20秒間姿勢を保持した。鍼通電条件では、短 腓骨筋に鍼通電刺激(刺激頻度1Hz、刺激時間10分)、 コントロール条件では安静臥位(15分)とし、鍼通電 刺激もしくは安静臥位の前後に2回の評価を行なった。 統計解析はシングルケースデザインで推奨されるラン ダマイゼーション検定(以下、R検定)、各条件の前 後評価にはウィルコクソン順位和検定を用い、有意水 準は5%とした。 【結果】鍼通電刺激後では、TTS: 1.53±0.40sec、総 軌跡長: 88.24±10.39cm、VAS: 29.29±17.25mmであっ た。安静臥位後ではTTS: 1.72±0.72sec、総軌跡長: 86.35 ±6.61cm、VAS: 42.14±19.07mmであった。R検 定の結果、すべての項目で両条件に有意な差はなかっ た。鍼通電条件における前後のSDL時の足関節不安定 感のVASでは、鍼通電刺激後で有意に減少した(p< 0.05)。 【考察および結語】本研究ではFAIのTTSに鍼通電刺 激は影響を及ぼさなかった。しかし、SDL時の足関節 不安定感のVASでは鍼通電刺激前後で有意に減少 (p<0.05)したことから、鍼通電刺激は自覚的な足関 節の不安定感に効果を示す可能性が示唆された。 キーワード:鍼通電刺激、慢性足関節不安定性、姿勢 安定化時間、シングルケースデザイン -Sun-P2-11:36 『こむら返り』下腿三頭筋の筋緊張に対する太衝穴へ のアプローチ 関西医療大学大学院保健医療学研究科 保健医療学専攻 ○前坂宣明、増田研一 【目的】下腿三頭筋の筋痙攣(所謂こむら返り)は、 競技のパフォーマンスや成績に大きく影響する。その 予防や発症時の処置として近年、第1-2中足骨間から の深腓骨神経ブロックの有効性が報告され、「太衝 (LR3)」の部位に相当する。しかし、スポーツ競技中 にブロック注射や鍼治療を行うことは難しく、他の介 入方法での検討が望ましいと考える。よって本研究で は、スポーツ現場でも簡易的に行えるよう、太衝に圧 迫刺激を行い、筋硬度計を用いて下腿三頭筋の筋緊張 を測定し、刺激前後の変化を検討した。 【方法】下肢に障害のない健康成人男性6名を対象と した。両足カーフレイズ運動(3秒/1回)をオールア ウトまで行った後、筋硬度計を用いて両側下腿三頭筋 の筋硬度を測定した(以下、運動直後とする)。太衝 に圧迫刺激を行う足を「圧迫側」、反対側の圧迫刺激 を行わない足を「非圧迫側」としてランダムに設定し た。座位にて、圧迫側には圧力計を用いて、痛みが伴 わないとされる1440g/cm2の圧力で、皮膚面に対して 垂直となるよう2分間圧迫し、非圧迫側は2分間の安静 とした。その後、圧迫側と非圧迫側の筋硬度を再度測 定し、刺激前後での筋硬度値を、対応のあるt検定を 用いて比較検討した。 【結果】測定により得られた筋硬度値を平均値(標 準偏差)で示す。圧迫側での運動直後は41.1(3.7)T (トーン) であったが、2分間の圧迫刺激後は36.6 (4.1)Tとなり、有意差を認めた(p<0.05)。しかし、 非圧迫側では運動直後40.1(4.4)T、安静2分後38.5 (2.9)Tとなり、有意差を認めなかった。 【考察・結語】太衝穴への圧迫刺激は、同側下腿三頭 筋の筋緊張を緩和でき、スポーツ現場での簡易的なこ むら返りの予防・処置として寄与できる可能性が示唆 された。本結果は、太衝への鍼灸が肝血不足により筋 を滋養できずに起こる転筋を防ぐことにも繋がると考 える。 キーワード:スポーツ、こむら返り、太衝穴 - 150 - 109 110 -Sun-P2-11:48 鍼刺激による前十字靭帯強度への影響 1)関西医療大学保健医療学部 2)関西医療大学スポーツ医科学研究センター ○山口由美子1,2)、逢野蒼大1)、徳留涼太1)、 畠田彩希1)、馬場遥大1)、伊藤俊治1) 【目的】我々はこれまでにマウスの三陰交への鍼刺激 によって、雌で血中エストロゲン濃度が増加すること を見出してきた。ヒトでは膝前十字靭帯(ACL)損 傷の発生と血中エストロゲン濃度が関連している可能 性が指摘されており、今回我々は三陰交への鍼刺激が ACL強度に及ぼす影響を検討することにした。測定 上の問題から、実験系をラットに変更したので、ラッ トの三陰交への鍼刺激と血中エストロゲン濃度の関係 についても改めて検討を行った。 【方法】Wistar系雄ラット26匹を無作為に鍼刺激群 (A群)16匹、コントロール群(C群)10匹に分け、週 2回の鍼刺激を5週間継続したのち、採血し屠殺後ACL のみ残した大腿骨―脛骨(ACL標本)を調製し、引っ 張り試験機を用い強度の測定をおこなった。統計学的 解析はラットの試験力最大値(N)を2群間で比較し 検定した。合わせて屠殺時に膣スメア検査を行い、性 周期を同調させたものだけ抜き出し2群間で比較し検 討した。 【結果】ACL強度は雄ラットA群(16膝)38.78±1.45 N(平均±SE)、C群(16膝)33.35±1.48NでA群は有 意に低かった(P=0.014)。また膣スメア検査で確認し た性周期を休止期-発情前期、発情期-発情後期の2期 に分けて統計処理を行った。休止期-発情前期の雌ラッ トでは、A群(4膝)28.23±1.70N(平均±SE)、C群 (5膝)40.56±1.99NでA群は有意に低かった(P=0.003)。 【考察・結語】雌ラットの三陰交に鍼刺激を加えると ACL引っ張り強度が有意に低くなった。このことは 我々の先行研究と合わせて血中エストロゲン濃度との 関係が示唆されるため、同時に採取した血液での分析 を進めている。 キーワード:鍼刺激、エストロゲン、膝前十字靭帯 -Sun-P2-13:00 令和6年能登半島地震および豪雨災害における鍼灸支 援報告 はり灸レンジャー ○森川真二、森野弘高 【目的】2024年能登半島地方は、元旦の能登半島地震 に続き、9月21日の豪雨災害にも見舞われた。我々が 地震後に支援に入っていた地域も二重被害を受けた。 鍼灸支援活動を通して得られた鍼灸師の役割について 検討し、今後の災害支援活動へも役立たせたい。 【方法】石川県輪島市内の福祉施設、避難所、仮設団 地で行った令和6年能登半島地震および豪雨災害に対 する鍼灸支援活動を対象とした。2024年3月から11月 までの全6回の活動記録、施術記録から、施術者や受 療者のデータ解析を行った。施術の効果判定には、 Faces Pain Scale(以下FPS)を用いて6段階(0~5) で評価した。 【結果】全6回訪問での活動日数はのべ12日間、施術 者はのべ54名、女性施術者の割合は59.3%であった。 のべ受療者数は282名、女性受療者の割合は69.1%、 年齢比は65歳以上が50.4%、鍼治療を受けたことのな い人が61.3%であった。主訴に対するFPSは平均2.1± 1.1(n=176)の改善がみられた。豪雨被災前後のFPS 平均値(施術前)の比較では、豪雨直前は3.17±0.97 (n=30)、豪雨後は3.22±0.74(n=32)と有意な差は見 られなかった。 【考察】これまでの被災地支援同様、受療者は女性の 割合が多かった。当団体の施術者も女性の割合が多く 円滑な活動が行えた。プライバシーの観点やリスク管 理を考えると、さらなる女性鍼灸師の活動が望まれる。 受療者の年齢層は65歳以上の高齢者が過半数を越え、 高齢者や高齢者特有の症状に対応できる必要がある。 いずれの訪問場所でも、鍼灸を初めて受ける人や怖が る人もおられたが、てい鍼やローラー鍼を知って貰う ことで、鍼灸を取り入れる機会にもなった。施術によ り主訴が改善したことから、現地の鍼灸院に通うきっ かけにもなったと考える。豪雨災害前後で自覚症状の 程度の差は認められなかったが「地震より水害の方が 怖かった」という声は多数あった。未曽有の二重被災 の影響については今後も見守り続けたい。 キーワード:女性鍼灸師、災害支援、災害鍼灸、能登 半島地震、二重被災 - 151 - 111 112 -Sun-P2-13:12 医療機関内における訪問鍼灸についての活動報告 特定医療法人谷田会谷田病院 ○福田太貴 【目的】高齢化率の高い地域では、自力での通院が難 しいため、訪問鍼灸への依頼が多く寄せられる。特定 医療法人谷田会谷田病院が位置している熊本県甲佐町 は、約1万人ほどの住民が暮らしている。2020年での 65歳以上の割合は39.4%と、すでに4割近くを占めて いる。今後、高齢化率は2050年までに43.8%に達し、 おおよそ10人に4人が高齢者になると見込まれている。 当院では2022年4月から通院困難な患者を対象に訪問 での鍼灸治療を行っているため、その概要と活動内容 について報告する。常日頃から医師をはじめとする多 職種との連携を行いながら、患者のQOL、ADL向上 に努めている。 【方法】電子カルテ(セイリン社製)とエクセルにて 作成した患者リストを後ろ向きに調査した。2022年4 月から2024年12月までの約2年9ヶ月間において、訪問、 外来での鍼灸治療を受けた患者数を調べ、在宅患者の 鍼灸治療に対する需要がどこにあるのか検討した。 【結果】約2年9か月で鍼灸への依頼は277名(男性89 名、女性188名)であった。多職種からの相談内容や 治療を希望した理由は、腰痛、肩こり、肩関節周囲炎、 膝痛、神経痛といった症状の緩和が主である。また、 不眠や便秘、夜間頻尿などの高齢者に多く自覚される 不定愁訴に対する施術希望も併せてあった。それに加 えて、ターミナル期における在宅看取り患者への介入 依頼もあった。筋筋膜性疼痛などの疼痛軽減目的や、 上下肢の浮腫の改善、倦怠感や便秘の改善を希望する 内容が多く存在した。 【考察・結語】在宅領域における訪問鍼灸の需要はと ても高く感じている。介護サービスと併せながら QOL、ADLの維持、改善に取り組めるほか、医療機 関を母体としていることから日常的に多職種と連携を 取りながら、介入を行うことができ、患者の安心感に つながっているため、さらなる利用促進に努めていく。 キーワード:訪問鍼灸、多職種連携、在宅領域 -Sun-P2-13:24 新潟医療福祉大学附属鍼灸センターにおける新規患者 の動向 新潟医療福祉大学リハビリテーション学部 鍼灸健康学科 ○金子聡一郎、村越祐介、木村啓作、福田晋平、 高野道代、久保亜抄子、津田篤太郎、江川雅人、 粕谷大智 【はじめに】令和5年4月に新潟医療福祉大学に鍼灸健 康学科が新設され、同時に、学内の医療および地域医 療への貢献、加えて本学学生の実習施設としての役割 を目的とした附属鍼灸センターが開設された。当セン ターでは、同年4月12日から28日のプレオープンを経 て同年5月10日より施術を開始し、現在約2年が経過し ている。新潟市の中心地から外れた地域に開設された 大学附属の鍼灸センターにおける新規患者について調 査を行い、その分析結果について報告する。 【方法】令和5年5月10日~令和6年12月31日の間にお ける新規患者数、年齢、性別、居住地および主訴につ いてカルテより抽出し分析を行った。 【結果】新規患者数355名(女性197名、男性157名、 不明1名)、年齢25.5歳(中央値、範囲16-101歳)、年 代は20代が42.5%を占めており、約50%は学内からの 受診であった。患者の居住地は、県内が94%であった。 月ごとの新規患者数は、17.5(中央値、範囲7-37名) で、9月に少なくなる傾向にあった。患者一人につき 1.9±0.8症状(平均±標準偏差)を訴えており、症状 の分類としては多いものから、身体の痛み、身体のこ り、美容の悩みなどであった。 【考察および結語】本学附属鍼灸センターの新規患者 の動向について調査を行った。新規患者の多くは20代 の本学学生であり、これはスポーツ活動が活発な大学 に附属する鍼灸センターの特徴が反映していることが 考えられた。一方、約40%の新規患者は学外から受診 しており、地域に密着したセミナー等の活動等が受診 に結びついていることが考えられた。今後も、大学に 附属する鍼灸センターの役割を果たしつつ、地域医療 に貢献できる治療院を目指していく。 キーワード:附属鍼灸センター、新規患者、患者分析 - 152 - 113 114 -Sun-P2-13:36 東京有明医療大学附属鍼灸センターにおける臨床教育 1)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 2)東京有明医療大学大学院保健医療学研究科 鍼灸学分野 3)東京有明医療大学附属鍼灸センター ○水出靖1,2,3)、木村友昭1,2,3)、菅原正秋1,2,3)、 小田木悟3)、喜多村崇3)、平松燿3)、 高梨知揚1,2,3)、高山美歩1,2,3)、谷口授1,2,3)、 谷口博志1,2,3)、藤本英樹1,2,3)、松浦悠人1,2,3)、 矢嶌裕義1,2,3)、安野富美子1,2,3)、坂井友実1,2,3) 【目的】当センターは大学附属の施術所として地域貢 献、教育、研究の3つの役割を果たすことを目的とす る。教育については卒前・卒後の臨床教育、鍼灸治療 体験や情報発信等による啓蒙を行っている。鍼灸師の 資質向上に卒後教育の重要性が指摘されおり、当セン ターの開設翌年より鍼灸師有資格者を対象とする臨床 研修を開始し13年が経過したので報告する。 【方法】研修生の動向は出願書類情報等を集約したデー タベースより抽出して分析した。 【結果】開始した2012年度から2024年度までの新規研 修生は合計111名、うち95名(86%)が鍼灸師養成施 設の新卒者、鍼灸以外に看護師、柔道整復師、理学療 法士、放射線技師、鍼灸師養成施設教員等の資格保有 者があった。1年毎に更新を可としており、在籍期間 は1~7年、年度毎の在籍人数は9~25(平均19)名だっ た。修了後の進路は施術所、病医院、大学院への進学 等が多かった。内容は、教員や先任研修生の診療の見 学から始まり、診療補助、教員の指示による診療、自 立した診療へと段階的に進めるベッドサイドでの研修 を主体に、安全管理、カルテ記載、文献検索方法等の 基本的事項や教員の専門分野に関するレクチャー、診 療グループや有志の勉強会等を行っており、2018年度 からは2年目以降の研修生が症例報告を行う成果報告 会を開催している。関連学会での研修生の報告も増加 してきた。 【考察・結語】当センターの年間来療患者数は開設し た2011年1,758名から2024年8,887名に増加した。これ には研修制度によるところが大きい。臨床研修は研修 生の臨床能力の向上に留まらず、来療患者の受け皿が 増えることでより多様な患者への対応が可能となるこ とによって、地域貢献、教育、研究等の当センターの 機能全体の充実に繋がるものと考えられる。今後も更 に臨床能力の高い鍼灸師を育成する臨床教育を検討・ 実施していく必要がある。 キーワード:鍼灸、臨床教育、卒後教育、研修生、臨 床能力 -Sun-P2-13:48 大学病院勤務鍼灸師の活動報告 1)東海大学医学部付属病院東洋医学科 2)名古屋平成看護医療専門学校 3)鍼灸NAS ○山中一星1)、辻大恵2)、高士将典3) 【目的】鍼灸治療を行っている大学病院は多くない。 そのため患者、医師、鍼灸師などに認知されていない ことが多い。東海大学は医療に鍼灸治療を導入して30 年以上経過しているが同様である。今回は東海大学医 学部付属病院勤務鍼灸師の現状を知ってもらうことを 目的に活動報告をする。 【方法】現在は1名の鍼灸師が在籍している。平均週5 日勤務で東洋医学科鍼灸外来治療と緩和ケアで病棟治 療を行っている。医学部2.3年生への鍼灸教育(講義 と実技)を実施してアンケートを用いた評価をしてい る。鍼灸外来の初診患者と緩和ケアチームで行った患 者は2021年から2024年までの情報を報告する。 【結果】鍼灸外来の患者数は165名(男性53名・女性 112名)であり、平均年齢が60.5±14.4歳であった。 主訴は疼痛が73名、それ以外が92名だった。医師の紹 介で鍼灸治療を受診したのは96名、鍼灸治療のみは69 名であった。鍼灸治療の受診歴は94名が経験者で71名 が初めてだった。初めて受けた人は、治療を受けるな らば病院で受けたいと考える人が大多数であった。緩 和ケアの患者数は62名(男性28名・女性34名)であり、 平均年齢が64.0±9.8歳であった。治療症状として疼 痛が半数以上であり、ついでしびれや嘔気での受診が 多かった。 【考察】他院の報告で鍼灸外来受診主訴の58%が疼痛 であるとの報告があるが、当院では44%であり、割合 が少ない結果となった。しかし緩和ケアを受ける患者 の主訴は疼痛が約70%であり、これは他院の報告と同 様の結果となった。鍼灸外来受診動機として、家族や 知人の紹介が59%で医師のすすめが8.8%とする報告 があるが、当院では医師の紹介が58%であった。これ は大学病院の受診には紹介状が必要であり、気軽に受 診できない環境であることが要因であると考える。 【結語】東海大学医学部付属病院には鍼灸師が在籍し ており、外来と病棟で鍼灸治療、学生教育を行ってい る。 キーワード:活動報告、大学病院、緩和、鍼灸教育、 勤務鍼灸師 - 153 - 115 116 -Sun-P2-14:00 WHO国際統計分類に基づいた鍼灸臨床データ収集の 基盤整備第四報 1)鈴鹿医療科学大学保健衛生学部 鍼灸サイエンス学科 2)鈴鹿医療科学大学医用工学部 医療健康データサイエンス学科 3)鈴鹿医療科学大学附属鍼灸治療センター ○鈴木聡1)、山下幸司2)、山本晃久1)、 陣田恵子3)、松岡慶弥1)、光野諒亮1)、 浦田繁1) 【目的】2022年国際疾病分類第11版(ICD-11)に伝 統医学が発効され、保健・医療行為分類(ICHI)も 近く採択が予測されている。今後はこれらが各国に適 応され、我々は鍼灸分野も積極的にかかわる必要があ ると考えている。今回は鍼灸受療患者のICHIコーディ ング状況を報告する。 【方法】対象は、2023年12月1日~2024年11月30日に おける鈴鹿医療科学大学附属鍼灸治療センターの受療 患者データとした。受付・会計システムから患者の延 べ人数、性別、ICHIを単純集計した。なお、ICHIに ついては、鍼灸師1名が診療中に患者1名に対して刺す 鍼、刺さない鍼、灸、吸角、電気、その他をコーディ ングし、受付・会計システムに入力している。 【結果】患者数は延べ3599名、男1133名、女2466名で あった。ICHIは多い組合せ順に、刺す鍼・電気1032 名、刺す鍼・灸・電気913名、刺す鍼421名、刺す鍼・ 灸404名、刺す鍼・電気・その他345名にコーディング されていた。 【考察・結語】今回は、刺す鍼・電気が最多と判明し た。ICHIでは鍼灸に関係するものとして刺す鍼、刺 さない鍼、灸、吸角、指圧の採択が見込まれている。 今回の結果から、鍼灸治療では鍼通電や電気温灸など の電気医療機器の使用が増えていることから、このよ うな鍼や灸に電気が加わる場合にはどのようにコーディ ングするのか検討が必要である。今後さらにWHOFIC に基づいたデータを収集し基盤整備と利活用を検 討していく。 キーワード:WHO国際統計分類(WHO-FIC)、国際 疾病分類第11版(ICD-11)、保健・医療 行為分類(ICHI)、鈴鹿医療科学大学附 属鍼灸治療センター、受付・会計システ ム -Sun-P2-14:12 気象の変化と不定愁訴について 1)東洋医学研究所®グループ 2)渡辺鍼療院 ○中村覚1)、角村幸治1)、秋田壽紀1)、 渡辺かおり2) 【目的】我々はこれまで、気象の影響を受けやすい気 象感受者において、健康チェック表の不定愁訴指数が 高いことを報告した。今回は、気象感受者の男女差に ついて解析を行った。 【方法】2017年1月4日~2021年12月29日までの約5年 間に東洋医学研究所及び東洋医学研究所グループに来 院した新患患者に健康チェック表を行い、不定愁訴指 数5点以下、51点以上を除いた者3272名を対象とした。 「天候の変化で体の調子が悪い」にチェックがあった もの1076名を気象感受者、なかったもの2196名を非気 象感受者として分類した。気象感受者のうち、男性 353名(47.4歳±16.7) を感受者男性群、女性723名 (48.0歳±16.6)を感受者女性群とし、気象感受者率、 不定愁訴指数、各項目のチェック率の解析を行った。 【結果】気象感受者率は女性38.0%、男性25.9%とな り、女性の方が高く、全体の3割程度であった。不定 愁訴指数の平均は、感受者女性群24.5点±10.9、感受 者男性群22.3点±11.1となり、感受者女性群の方が高 かった(p<0.01)。各項目のチェック率では、15項目 において有意差を認め、そのうち11項目は感受者女性 群の方が高く(p<0.05)、「心を一つのことに集中で きない」「同じ仕事を長時間続けるとイライラしてく る」「性欲の衰えを感じる」「自分の人生がつまらなく 感じる」の4項目において感受者男性群の方が高かっ た(p<0.05)。 【考察】天候の変化で調子が悪くなる状態を気象病と 呼ばれ、頭痛をはじめ、めまい、肩こり、耳鳴り、倦 怠感などの不定愁訴を訴えることが多い。感受者男性 群に高かった4項目のうち、3項目がうつ状態性項目で あったことは、男性の方が精神的な影響が大きい特徴 があることが示唆された。 【結語】健康チェック表を用いて気象感受者の男女差 を検討したところ、気象感受者率、不定愁訴指数は女 性が高く、15項目に有意差が認められた。 キーワード:気象病、健康チェック表、不定愁訴、気 象感受者 - 154 - 117 118 -Sun-P2-14:24 鍼灸院における新患の動態調査 かどむら鍼灸院 ○角村幸治 【目的】(社)全日本鍼灸学会研究委員会不定愁訴班 黒野保三班長作成の健康チェック表は鍼灸院に来院し た患者の不定愁訴を客観的に検討する目的で使用され ている。新患の健康チェック表の分析では、安藤らが 報告しており29年が経過している。時代の変化を考え ると安藤らの報告と同じか否かを再調査する必要があ ると思われる。そこで今回、健康チェック表の初診時 における結果を報告する。 【方法】2013年5月3日~2024年10月18日の約11年半に かどむら鍼灸院に来院した新患1950名。調査分類とし て男女別、年齢別、主訴、不定愁訴指数、重症度別分 類、層別分類、項目別分類を検討した。このうち、19 歳以下299名を除外とし、1651名で解析した。 【結果】性別分類では男性が677名、女性が974名であ り、年齢別分類では、30・40代を頂点とした山形パター ンを示していた。主訴では、肩こり(406人)、腰痛 (296人)、耳鳴り・難聴(150人)、めまい(72人)、頭 痛(64人)、五十肩(64人)の順で多かった。新患165 1名のうち、重症度判定基準により5点以下あるいは51 点以上の除外が253名(15.3%)であった。残りの139 8名の不定愁訴指数平均点数は18.7点、重症度別分類 では軽症651名(46.6%)、中等症552名(39.5%)、重 症195名(13.9%)であり、層別分類ではほぼ4等分さ れていた。項目別分類では訴えの頻度が高い項目と低 い項目が認められた。不定愁訴指数平均点数・重症度 別・層別において安藤らの報告とほぼ同じ結果が認め られ、項目別は項目によって違いが認められた。 【考察】今回の結果は、安藤らが29年前に行った報告 とほぼ同じ結果であった。このことから、健康チェッ ク表は再現性があり、現在でも使用することのできる アンケートであることが示唆された。 【結語】健康チェック表は効果判定基準を用いて、不 定愁訴の効果を経時的にみられるアンケートであり、 今後、この母集団を用いてさらに鍼灸の効果を調査し ていきたい。 キーワード:不定愁訴、健康チェック表、初診、主訴、 アンケート -Sun-P2-14:36 鍼灸師のセクシュアル・マイノリティに関する認識の 実態 1)ここちめいど 2)女性専門治療院はり灸さくら堂 3)はりきゅう処ここちめいど 4)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部 鍼灸健康学科 ○外松慶土1,2)、茨田直美1)、米倉まな1,3)、 金子聡一郎1,4) 【目的】トランスジェンダーの8割が医療利用時にセ クシュアリティに関連した困難を経験し、4人に1人が 自殺念慮を抱いたと報告されている(ReBit, 2023)。 医療環境における深刻な課題を踏まえ、鍼灸師のセク シュアル・マイノリティに関する認識を調査し、業界 内での学習や意識向上の基礎資料を得ることを目的と した。 【方法】100名以下の鍼灸師向けコミュニティに所属 する203名を対象にGoogleフォームを用いたアンケー ト調査を実施した。調査内容は、知識、関心、意識、 教育・研修経験などであり、データ収集期間は2024年 12月28日~2025年1月6日とした。 【結果】56名の回答を得た(回収率27.6%)。回答者 の年齢は40代(41.1%)が最多で、鍼灸師歴は11~20 年(48.2%)が最も多かった。勤務形態では開業者 (69.6%)が大半を占めた。18名(32.1%)が施術所 内でセクシュアル・マイノリティと関わったことがあ り、48名(85.7%)が患者にカミングアウトされて受 けとめられると思うと回答。半数以上(51.8%)が関 心があると回答し、8割以上(83.9%)が知識の必要 性を感じている。一方、学校や勤務先で教育・研修を 受けたことがない者は9割(学校96.4%、勤務先98.2 %)を超え、39名(69.6%)が教育や研修は必要、35 名(62.5%)が研修を受けたいと回答した。 【考察および結語】本調査対象の一部は、セクシュア ル・マイノリティについて知る機会が多く、すでに教 育の機会を得ていたことが、受容的・肯定的な意識と いう結果につながったことが示唆される。今後、教育・ 研修の機会を拡充し、当事者が安心して受療できる環 境を整備していくためには、全国規模での調査を行う 必要がある。 キーワード:セクシュアル・マイノリティ、トランス ジェンダー、意識調査、多様性 - 155 - 119 120 -Sun-P2-14:48 五大医学誌に採択された鍼臨床研究の現状と意義 筑波大学理療科教員養成施設 ○沖中美世乃、和田恒彦、濱田淳、徳竹忠司、 工藤滋、高利江、柘野絵里子、須賀菜穂子、 青木映実、岡本杏奈、北村康恵、嶋一行、 鈴木麻実、當麻知砂子 【目的】五大医学誌(New England Journal of Medicine、The Lancet、JAMA、The BMJ、Annals of Internal Medicine)は、医学界において最も権威ある 学術雑誌とされ、高いインパクトファクターと厳格な 査読プロセスを特徴とする。これらの雑誌に掲載され る研究成果は、国際的に医学界全体へ大きな影響を及 ぼす。本研究では、鍼臨床研究の五大医学誌への掲載 状況を明らかにし、鍼臨床研究の現状と課題を検討す る。 【方法】PubMedのClinical Trialを臨床研究として集 計した。2024年9月30日までに五大医学誌に掲載され た論文から統制語「acupuncture」または「acupuncture therapy」の付与された論文を抽出、本文を確認し、発 表年代、対象疾患・症状、研究実施国等を分類・集計 した。 【結果】五大医学誌では19,877件(年間約400件)の Clinical Trialが掲載されており、そのうち鍼治療に関 するClinical Trialは57件(年間0~5件)であった。最 も古い発表年は1973年、最多発表年は2004年と2005年 の各5件であった。letter等を除外した45件の対象疾患・ 症状は、筋骨格症状が16件で最多であり、次いで消化 器症状(5件)、頭痛(5件)、呼吸器症状(4件)、妊娠 関連(3件)、依存症(3件)、神経症状(2件)、泌尿生 殖器症状(2件)、皮膚症状(2件)、内分泌関連(2件)、 その他(1件)であった。研究実施国では中国(11件)、 アメリカ(10件)、イギリス(9件)が上位を占めた。 【考察・結語】PubMed では年間約3 万件以上の Clinical Trialが登録されており、鍼治療に関する研究 は2000年以降増加したものの、年間約300件で推移し ている。五大医学誌に鍼治療の臨床研究が採択された 事例は希少であったが、厳格な審査基準を満たし評価 されていること、多様な疾患・症状が対象とされ幅広 い適応が研究されていることが示唆された。このこと は、鍼灸師が科学的根拠の重要性を改めて認識し、高 品質な研究の推進を目指す契機となると考えられる。 キーワード:五大医学誌、鍼、臨床研究 -Sun-P2-15:00 全日本鍼灸学会宮城大会に参加した本学学生の意識調 査 新潟医療福祉大学リハビリテーション学部 鍼灸健康学科 ○江川雅人、村越祐介、高野道代、福田晋平、 木村啓作、金子聡一郎、久保亜抄子、粕谷大智 【緒言と目的】学生の学会参加は学識向上から業界全 体のレベルアップにもつながると考えられる。本学で は鍼灸健康学科2年生を宮城大会(2024年5月24-26日) に参加させ意識調査を行った。 【対象と方法】回答を得た21名(M/F:10/11, 19.1±0.3 歳)の結果を分析対象とした。調査内容は、参加を 希望した理由、興味ある演題、参加後の鍼灸学(国家 試験)へのモチベーション、将来の鍼灸師像への影響、 興味を引いた演題内容、学会参加は良かったか、学会 入会や発表の希望として選択や自由記載により回答を 得た。 【結果】参加の理由は「学会を見てみたかった」「知っ ている先生が発表する」、興味ある演題は上級演題 「若手アスレチックトレーナー・鍼灸師の現状と問題 点」、実技セミナー「アトピー性皮膚炎に対する鍼灸」、 ランチョンセミナー「肌再生鍼としてのダーマロー ラー」、一般演題「スポーツ領域」「腰痛」であった。 参加後には全員が「学びへのモチベーション向上」 「鍼灸師像の参考になった」「よい企画だった」と回答 し、本学教員が発表や座長を務めた演題に興味を持っ た。自由記載では「将来の選択肢が知れた」「やる気 が出てきた」「他の専門学校生や企業の方と話せた」。 一方、学会参加を「ぜひ続けたい」は13名(61.9%)、 「是非本学会員になりたい」は1名(4.8%)、「是非学 会発表を行いたい」は4名(19.0%)にとどまった。 【考察とまとめ】学生の学会参加には経済的な補助と、 所属学校の教員の発表や運営参加が効果的と考えられ た。興味も幅広く、チーム医療・多職種連携の鍼灸を 求める学生が多いことは本学の「優れたQOLサポー ターを育成する」理念と合致していた。就学モチベー ションの向上は教員にも感じられ、学会参加の意義は 高いが、学会所属や参加・発表を意識づけるためには 教育者(学校)と学会双方からの更なるアプローチが 必要と考えられる。 キーワード:学生、鍼灸学会、意識調査 - 156 - 121 122 -Sun-P2-15:12 インターネットコンテンツに見る鍼灸の認識 1)慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 ○平松燿1,2)、山下恭平1)、高梨知揚2)、 矢嶌裕義2)、杉浦一徳1) 【背景】鍼灸の受療率向上について、先行研究では様々 なメディアの活用が重要とされている。ただし、イン ターネットユーザーは、関心がなければ特定の情報に アクセスすらしないことも指摘されている。本研究で は、主にエンターテイメントコンテンツに関心をもつ ユーザーが集まるニコニコ動画に焦点を当て、動画に 対するユーザーコメントを分析することで、鍼灸に関 連した情報がどのように扱われているかを明らかにす ることを目的とした。 【方法】国立情報学研究所情報学研究データリポジ トリにて、株式会社ドワンゴが提供するニコニコ動画 コメント等データを対象に、動画に対して投稿された コメントから特定のワードを抽出し分析を行った。 「鍼」「灸」「鍼灸」の3ワードを抽出し、投稿コメン ト内容および動画の内容分析を行った。 【結果】2007年3月6日-2018年11月8日までに投稿され、 2021年9月30時点で削除・非公開されていない動画 19,712,836本、コメント4,126,253,731件が対象となっ た。各動画数とコメント数は、「鍼」は986本、2,143 件、「灸」は4,994本、8,956件、「鍼灸」は855本、1,283 件であった。「鍼」に関して、鍼治療に関する内容等 が、「灸」に関して、“お灸を据える”と慣用句として の活用等が、「鍼灸」に関して、業界全体を包括した 各種コメント等が散見された。 【考察】「鍼」「灸」「鍼灸」いずれのワード使用数も 極少数であった。「灸」に至っては、その数は「鍼」 や「鍼灸」より多かったものの、「灸を据える」とい うコメントに象徴されるように、もはや鍼灸医療の文 脈を内包する形では用いられていなかった。ニコニコ 動画のような動画共有サービスにおいて、ユーザーに よる鍼灸に関するコメントがシリアス・ユーモラスを 問わず幅広く飛び交うことで、鍼灸への関心、ひいて は結果的に受療への関心が高まることが期待される。 キーワード:ニコニコ動画、エンターテイメント、メ ディア、インターネット、受療率 -Sun-P2-15:24 COVID-19が鍼灸院の口コミ件数に与えた影響 仙台赤門短期大学鍼灸手技療法学科 ○宮本成生 【背景】COVID-19(以下「コロナ」とする)パンデ ミックを経て、感染拡大の防止のため社会は大きく変 化し、オンライン化が急速に進展した。また近年では、 消費者による商品のレビュー(以下「口コミ」とする) を参考に購買行動を行う人が増加しており、鍼灸業界 にも影響を与える可能性がある。本研究では、コロナ 期間を経て鍼灸院の口コミ件数の変化に男女で差があっ たのか否かを明らかにすることを目的とした。 【方法】日本政府が緊急事態宣言を発令した期間は 2020年4月から2021年9月の18ヶ月間であり、この期 間をPandemic期間とした。そこで、2020年4月以前の 18ヶ月間をPre期間、2021年10月以降の18ヶ月間をPost 期間とした。鍼灸院の口コミサイト(しんきゅうコ ンパス)から指定の期間のデータを収集した。このデー タには、投稿日や性別、年代、口コミ内容などが含ま れているが、投稿日と性別の情報のみを取得し、1ヶ 月あたりの口コミ件数を性別ごとに算出した。期間お よび性別による差があるのか否かを二限配置分散分析 を用いて解析し、事後検定としてTukey検定を行った。 【結果と考察】性別と期間の両方で口コミ件数の有意 な差が認められた(p<0.001)。男性の1ヶ月あたりの 平均口コミ件数は各期間(Pre, Pandemic, Post)で、 88.3, 130.3, 132.6件と増加した。女性では各期間で 472.0, 669.7, 831.5件と大幅に増加した。また、性別 による差も顕著であり、男性よりも女性の口コミ件数 が全期間を通じて有意に多かった。性別と期間の交互 作用が有意であり、期間ごとの口コミ件数の変化が性 別によって異なることが示唆された。 【結語】本研究は、鍼灸院の口コミ件数が性別や期間 によって大きく異なることを示した。この結果は、鍼 灸院がオンライン化や性別に応じたマーケティング戦 略を構築する必要性を示唆している。 キーワード:COVID-19、コロナ、性差、口コミ - 157 - 123 124 -Sun-P2-15:36 あんまマッサージ指圧・はり・きゅう業の実態に関す る調査 1)順天堂大学医学部衛生学・公衆衛生学講座 2)順天堂大学大学院医学研究科公衆衛生学講座 3)中和医療専門学校 ○友岡清秀1)、謝敷裕美2)、清水洋二3) 【目的】本研究では、あんまマッサージ指圧・はり・ きゅう(あはき)業の実態を明らかにすることを目的 に、全国のあはき業施術所を対象にWeb調査を実施し た。また、視覚障害の有無別による検討を行った。 【方法】本研究では、厚生労働省から提供を受けた令 和5年5月時点の全国のあはき業施術所のデータを基に、 個人施術所(7,500件)、法人施術所(1,000件)、出張 専門業者(1,500件)の合計10,000件を抽出し、Web調 査を実施した(調査期間:令和5年9月~令和6年3月)。 営業状況、性別、年齢、持免許の種類、視覚障害の有 無、開業年、年収、1ヶ月の患者数、コロナ禍前後の 患者数の変化、療養費による施術の状況等について調 査した。これらの項目について、全体ならびに視覚障 害の有無別に集計し、カテゴリー値はカイ二乗検定を 用いて検討した 【結果】1,284名(回答率:17.0%)から回答を得た。 このうち、営業中と回答し、視覚障害の有無に回答し た者は1,003名であった。視覚障害を有する者は9.8% であった。現在の年収について、視覚障害のない者で は「200~400万円未満」と回答した者が32.7%で最も 高かったが、視覚障害がある者では「200万円未満」 が46.4%と最も高かった(P<0.01)。同様に、コロナ 禍前後での患者数の変化について「かなり減った」と 回答した者の割合は、25.6%と45.4%であった(P< 0.01)。また、療養費による施術を行っている者は、 60.0%と34.7%であった(P<0.01)。 【考察・結語】本調査により、あはき業では視覚障害 の有無により年収や売り上げに有意な差が認められ、 特に、コロナ禍以降に広がる傾向がある可能性が示さ れた。視覚障害を有するあはき業への更なる支援の拡 充が必要であると考えられた。本研究は厚労科研「あ ん摩マッサージ指圧施術所の就業実態を把握するため の研究」(研究代表:谷川武教授(順天堂大学))とし て実施した。 キーワード:あはき業の実態、視覚障害者、コロナ禍 -Sun-P2-15:48 中核病院の鍼灸外来を受診した痛み患者の実態調査 1)市立砺波総合病院卒後臨床研修生 2)市立砺波総合病院緩和ケア科 ○土方彩衣1)、相羽八菜1)、武田真輝2) 【目的】Somatic Symptom Scale-8(SSS-8)は身体症 状による負担感を評価するツールである。これまで痛 み患者のSSS-8が高値の場合、健康関連QOLが低いこ とが報告されている。今回、痛みを主訴に鍼灸外来を 受診した患者の実態を把握する目的で調査を行った。 【方法】対象は痛みを主訴に当院東洋医学科に鍼灸治 療を希望され来院された外来患者(期間:X-10年か らX年の10年間)。調査は初診時の診療録から後方視 的に実施した。調査項目は性別、年齢、職業、痛みの 部位、痛みの持続期間、紹介の有無、専門医の診断の 有無、主訴の治療歴、痛みのNumerical Rating Scale (1週間の平均NRS)、SSS-8のスコア(0~3:悩まされ ていない、4~7:低い、8~11:中程度、12~15:高 い、16以上:非常に高い)とした。 【結果】対象患者は415例(男性158例、女性257例)、 年齢中央値(四分位範囲)は66(50.5-74)歳、仕事 をしていた患者は240例(57.8%)であった。痛みの 部位で最も多かったのが腰背部痛119例(28.7%)、次 いで頚肩部痛117例(28.2%)、下肢痛96例(23.1%) であった。少数だが口腔内の痛みや陰部痛なども認め た。痛みの持続期間中央値(四分位範囲)は12(2-48) ヶ月であった。紹介受診は156例(37.6%)、受診した 155例(37.3%)が専門医の診断を受けていた。当科 受診までに痛みの治療を受けていたのは330 例 (79.5%)であった。痛みNRSおよびSSS-8は5例で記 録がなく、対象を410例とした。痛みのNRSは5.7±2 (mean±S.D)、SSS-8は11.5±4.7(mean±S.D)であっ た。SSS-8の内訳は0~3:20例、4~7:49例、8~11: 145例、12~15:131例、16以上:65例であった。 【考察】痛みを主訴に鍼灸外来を受診された患者の SSS-8平均値は中程度を示しており、健康関連QOLが 低い可能性が示唆された。 キーワード:SSS-8、NRS、鍼灸治療、実態調査、痛 み - 158 - 125 126 -Sun-O1-9:00 プロバスケット選手に対する矯正歯科診療と鍼灸治療 の統合 1)みはる矯正・歯科医院 2)昭和大学歯科病院顎関節症治療科 3)東京医療保健大学医療保健学部 4)医療法人社団明徳会福岡歯科 鍼灸マッサージ治療院RIM 5)かなざわ鍼灸院 6)ティートリー鍼灸院 ○関根陽平1,2,3)、荻野杏理4)、竹田太郎5)、 瀧澤雄一郎6) 【目的】今回は矯正歯科治療、並びに鍼灸治療を用い る事で、プロバスケット選手の上顎右側口蓋側転位を 改善し、多く抱えていた不定愁訴をも改善できた症例 を報告する。 【治療と経過】症例24.5才男性主訴顎が痛い、 頭が痛い。初診X年上顎右側第二小臼歯口蓋側転位 並びに下顎前歯部叢生を伴ったアングルクラスII級と 診断。顎関節症、首肩こり、偏頭痛を有しており、舌 癖、咬合は右側アングルクラスII、左側アングルクラ スII、姿勢は猫背であった。不定愁訴に対しては、矯 正治療術後の疼痛には、合谷穴・曲池穴を用いた。鍼 治療は顎関節の咀嚼筋要因に対しては下関穴、その周 囲の硬結部を刺鍼した。その後、顎の痛み、クリック 首、肩こりが改善ないしは軽減した。歯列と咬合に関 しては、上下顎可綴式矯正装置からスタートした。上 顎右側第二小臼歯部のスペースを確保できたのちに、 部分矯正としてマルチブラケット装置装着後にワイヤー にてレベリングを開始した。動的治療2か月後が、経 過した時点で上下顎ともに歯の整直が終了したため、 下顎可綴式矯正装置と顎間ゴムを併用し、咬合関係の 確立後、装置を撤去し動的治療を終了した。動的治療 期間は2年であった。保定装置は上下顎ともにアライ ナー型の装置を使用した。 【考察とまとめ】プロアスリートとして多大なストレ ス下の中に晒され、多くの不定愁訴を抱えた患者との 信頼関係を構築していく過程の中で、日常の噛み癖や 生活習慣を見つめることから始め、鍼灸治療による全 身へのアプローチ、矯正歯科治療とステップを進める 事が出来た。試合、練習、遠征など来院困難な状況に なりながらも、最後の咬合位の確立まで終えることが できたのは、歯科、鍼灸治療がそれぞれの領域を統合 し、全身症状の緩和の旗印のもとに全うした結果と考 える。保定終了後の咬合関係は良好であるが、現在は 海外で競技を行なっているが、今後も定期観察してい く予定である。 キーワード:矯正歯科診療、顎関節症、咬合、歯科診 療 -Sun-O1-9:12 下顎智歯抜歯後に生じた知覚神経障害に対する鍼灸治 療の1症例 1)かなざわ鍼灸院 2)ティートリー成城鍼灸院 3)医療法人社団明徳会 福岡歯科附属鍼灸マッサージ治療院RIM 4)みはる矯正・歯科医院 5)昭和大学歯科病院顎関節症治療科 6)東京医療保健大学医療保健学部 ○竹田太郎1)、瀧澤雄一郎2)、荻野杏理3)、 関根陽平4,5,6) 【はじめに】歯科治療行為により知覚神経障害を発症 する可能性は少なくなく、後遺症を生じたケースでは 医事紛争に発展することもある。今回、下顎の智歯抜 歯後に生じた知覚神経障害に対し、鍼灸治療により良 好な経過が得られた1症例について報告する。 【症例】59歳、女性。主訴:左下顎の違和感。現病歴: X年7月、左下顎の智歯を抜歯。数日が経過しても患 部の知覚鈍麻と異常感覚(しびれ感)が消失せず、担 当医からはオトガイ神経麻痺の可能性を示唆された。 担当医の紹介により疼痛管理を目的にみはる矯正・歯 科医院を紹介され、来院された。 【鍼灸治療】下関と大迎、頬車と承漿に20Hzで15分 間の鍼通電療法を施した。合わせて、迎香、水溝、地 倉に置鍼術を施した。いずれもステンレス鍼40mm18 号(セイリン社)を使用した。2診時からは聴宮と頬 車に台座灸1壮も施した。 【経過】4診時に「患部を気にする回数が減ってきて いる」とのコメントが得られ、特に「毎朝の起床直後 に患部の違和感を覚えていたが、その感覚が軽減して きている」とのことだった。7診時には「趣味である コンサートに行き、症状を気にすることなく存分に楽 しめた」とのコメントも得られた。「じわじわと快復 している実感」があり、初診時を10としたPain Scale は5、患者の満足度も高い状況にあったため、患者と の合意の元、13診をもって略治となった。 【考察・結語】患者は抜歯担当医より「時間経過に よる自然治癒を待つしかない」と伝えられており、ビ タミン剤のみの処方である状況に憤りを感じていた。 そのような状況下で、患部に対し施術を行う鍼灸治療 は好意的に感じている様子であり、完治は難しいと覚 悟していながらも略治まで効果が得られたことに満足 している様子であった。現代医療の様々な領域におけ る治療内容や治療経過あるいは説明不足などに不満を 抱いている患者に対し、鍼灸治療には患者を救済しう る可能性を有すると実感できた。 キーワード:智歯、抜歯、神経障害、鍼灸、鍼通電 - 159 - 127 128 -Sun-O1-9:24 歯科・口腔外科手術後の三叉神経ニューロパチーに対 する鍼灸治療 1)医療法人社団明徳会福岡歯科 鍼灸マッサージ治療院RIM 2)ティートリー成城鍼灸院 3)かなざわ鍼灸院 4)みはる矯正・歯科医院 5)昭和大学歯科病院顎関節症治療科 6)東京医療保健大学医療保健学部 ○荻野杏理1)、瀧澤雄一郎2)、竹田太郎3)、 関根陽平4,5,6)、福岡博史1) 【背景・目的】歯科治療や口腔外科手術後に、三叉神 経の下歯槽神経を損傷し、その後オトガイ神経支配領 域に神経障害性疼痛や知覚異常が残存する患者も少な くない。今回、歯科大学病院麻酔科からの紹介で、西 洋医学的治療後にも症状が残存する難治性の三叉神経 ニューロパチーに対して鍼灸治療を行い、その効果を 検討した。 【症例・現病歴】症例1は、42歳女性。歯科大学病院 にて下顎矢状分割術後に左側下歯槽神経麻痺を発症、 左側オトガイ神経支配領域に知覚異常発現。歯科大学 病院麻酔科にて、投薬と星状神経節ブロック(以下 SGB)を60回施行後にも疼痛や知覚異常が残存し、発 症6カ月後に鍼灸治療を開始した。症例2は、61歳女性。 歯科大学病院にて下顎右側智歯の抜歯後に右側下歯槽 神経麻痺を発症、右側オトガイ神経支配領域に知覚異 常発現。同大学病院麻酔科にて、投薬とSGBを25回実 施後も症状が残存し、発症から1年半後に鍼灸治療を 開始した。 【評価】患者自身の言語応答と、神経損傷による痛み や痺れ感の評価にはVAS法を用いた。 【治療・経過】鍼灸治療は週1回、顔面患部阿是穴や 頚肩部を中心に60分の全身鍼灸治療行った。症例1で は初診時のVASで70mmから2カ月で25mmに改善し、 症例2では初診時のVASで90mmが3カ月後にオトガイ 上部は18mm、オトガイ下部は0mmまで改善した。 【考察】現在、口腔外科手術後による神経損傷に対す る確実に有効な治療法はない。今回、西洋医学的治療 後にも症状が残存する難治性の三叉神経ニューロパチー に対して鍼灸治療を行い、痛みや知覚異常が改善した ことから、鍼灸が有効な補完治療となることが示唆さ れる。また、麻痺に対する不安から鬱状態になりやす く、難渋する症例では、精神的ケアが重要と報告され ている。今回顔面部の局所治療だけでなく、抑うつ状 態や精神的ストレスに対して自律神経調整を目的とし た全身的なアプローチを行ったことが、症状改善の一 助になったと考えられる。 キーワード:三叉神経ニューロパチー、下歯槽神経麻 痺、オトガイ神経、神経障害性疼痛、鍼 灸 -Sun-O1-9:36 三叉神経知覚異常患者のために自覚症状アンケートを 作成した経験 1)紗楽鍼灸院 2)大阪大学歯学部附属病院歯科麻酔科 ○高橋沙世1,2)、山本伸一朗2)、小田若菜2) 【緒言】親知らずの抜歯、口腔インプラント、顎骨切 術などにより三叉神経知覚異常が起きることがある。 発症後、星状神経節ブロック・投薬・鍼灸などの治療 を行い、評価には触覚・痛覚・二点弁別閾のような知 覚検査が用いられる。治療が奏功し、知覚検査が正常 値になるとその後は自覚症状を指標に治療が行われる。 自覚症状による評価は主観的であり、客観的に評価す ることは非常に困難である。今回その自覚症状を客観 的に評価し分析するために「口腔顎顔面自覚症状アン ケート」を作成し、口腔インプラント手術後に右側オ トガイ部の知覚異常を発症した患者に用いたので紹介 する。 【方法】アンケートには三叉神経知覚異常を呈する患 者によくみられる症状や、不快感・不満感・QOLに 関係すると推測される8項目を選出した。質問8項目に 対して症状なし0点、症状がほとんどない1点、症状が 少しある2点、症状がある3点、症状が非常にある4点 の合計32点満点で評価した。尚、点数は患者に分から ないようにした。 【結果】初診時の精密触覚機能検査で患側の右オトガ イ部0.38g、健側の左オトガイ部0.006g、二点弁別閾 値が右側20mm、左側13mmであり、右側オトガイ部 の知覚鈍麻がみられた。鍼治療5回後には、精密触覚 機能検査で右側0.008g、左側0.014g、二点弁別閾値が 右側11mm、左側10mmとなり左右差がほとんどなく なった。その後は「口腔顎顔面自覚症状アンケート」 を取ったところ、鍼治療8回後に32点満点中12点に、 鍼治療11回後に8点となり略治となった。 【考察・結語】三叉神経知覚異常を発症し、知覚検査 で正常値に改善後も残存した自覚症状に対して治療継 続を希望することがある。その時にアンケートを行い、 自覚症状を数値化することで治療効果の客観的な評価 ができるのではないかと考えた。今回は1症例の報告 であったがこれから症例を増やし、アンケートの内容 を精査してより使いやすくしていきたいと考える。 キーワード:三叉神経知覚異常、口腔インプラント、 アンケート、鍼治療 - 160 - 129 130 -Sun-O1-9:48 微小血管減圧術後の持続性疼痛に鍼治療が有効であっ た一症例 名古屋トリガーポイント鍼灸院 ○倉橋千夏子、前田寛樹、高橋健太、後藤繁宗 【はじめに】典型的三叉神経痛に対する外科的治療で は微小血管減圧術(microvascular decompression: 以下 MVD)が行われるが、47%の症例で痛みが再燃また は残存する難治性が課題とされている。しかしながら、 MVD後に残存した痛みに対して効果的な治療法は確 率されていない。今回、MVD後も持続性疼痛が残存 した典型的三叉神経痛患者に対して活動性トリガーポ イント(以下: ATrP)鍼治療が有効であった症例を経 験したので報告する。 【症例】45歳男性事務職。X-3年に歯痛を自覚し歯科 医院で抜髄を施行されたが症状は寛解せず、X年Y月 に脳神経外科で三叉神経痛と診断されMVDを受けた。 術後、上顎右側の犬歯、側切歯部、頭部の電撃様疼痛 は消失したものの、同部位に持続するビリビリとした 痛みが残存したためX年Y+1月に当院を受診した。 【所見】Flexion Rotation Test(以下: FRT)陽性、大 後頭神経ティネル徴候陽性。触診では咬筋と側頭筋、 外側翼突筋部、後頭下筋群に索状硬結を認め、上顎右 側の犬歯、側切歯部、頭部への再現痛を確認したため ATrPの関与が疑われた。 【治療・経過】上記の筋に対して10分間の置鍼を週1 回、計5回実施した。治療後、FRTの改善、大後頭神 経ティネル徴候陰性、触診時の再現痛が消失、持続性 疼痛が改善し、Numerical Rating Scale(以下: NRS) は初診時5から1に改善した。 【考察】MVD後も残存する疼痛にはATrPの関与が疑 われ、本症例では筋・筋膜性歯痛が典型的三叉神経痛 に併発していたと考えられる。筋・筋膜性歯痛の主な 原因筋として咬筋や側頭筋が報告されており、ATrP 鍼治療により症状が改善することが示唆された。 【結語】ATrP鍼治療を行い、再現痛の消失、大後頭 神経ティネル徴候陰性、FRT及び、持続性疼痛が改善 した。ATrP鍼治療は、MVD後に持続する疼痛を有す る典型的三叉神経痛患者に対して有効な治療法となる 可能性がある。 キーワード:トリガーポイント、三叉神経痛、非歯原 性歯痛 -Sun-O1-10:00 持続性特発性顔面痛と診断された患者に対する鍼治療 (第2報) 1)大阪大学歯学部附属病院歯科麻酔科 2)大手前短期大学歯科衛生学科 ○酒井浩司1)、島本千奈美1)、中井麻衣1)、 山田雅治1)、河野彰代1,2)、工藤千穂1) 【目的】2020年に国際口腔顔面痛分類に特発性口腔顔 面痛の章が設けられた。特発性口腔顔面痛の原因とし ては、2017年に提唱された第3の痛み痛覚変調性疼痛 が関与する。前回、持続性特発性顔面痛と診断された 患者に鍼治療で改善が認めた症例について発表した。 今回、鍼治療を継続し寛解に向かった経過について報 告する。 【症例】65歳男性。右側上顎部歯肉、眼窩下神経領域 の痛みと痺れ、違和感。[既往歴]高血圧、強迫性障 害。[現病歴]X年Y月、近歯科医より当科を紹介受診。 右側歯肉、右側鼻翼基部から眼窩下部や口蓋部に時折 締め付けられるような痛み、痺れなどの違和感があり 持続性特発性顔面痛と診断され、ブロック注射と漢方 薬、低出力レーザー照射による治療を開始した。痛み はやや軽減したが痺れ、違和感には変化がなく、鍼治 療を開始。10回目には、症状の軽減が見られたが症状 増悪への不安があり患者の希望により治療を継続。 [鍼治療]頭部の百会、顔面部の太陽、四白、迎香、 下関、遠隔部の陰谷、太谿、復溜を選穴し15分間置鍼。 ディスポーザブル鍼(長さ40mm、太さ0.12、0.20mm) を用い、鍼通電療法、低出力レーザー治療を併用した。 【経過】初診時のVAS値は、痛み70mm、痺れ70mm。 11回~14回目のVAS値は、痛み34→28→16、痺れ33→ 27→16と徐々に低下し14回目以降も低値が維持された。 また、違和感の範囲が狭まり会話時や食事中も楽にな り、気にならなくなったなどの自覚症状の改善が見ら れた。 【考察・結語】本症例では、局所部位に加えて全身の 血流改善を目的とした遠隔部への鍼治療を行った。鍼 治療で症状が軽減した後も、治療を継続することで、 さらに改善し、低値を維持したことから、3か月を超 えて、毎日1日2時間以上持続する原因不明の顔面痛と される持続性特発性顔面痛に効果があったことが示唆 される。鍼治療は歯科領域における治療の可能性を広 げ、寄与するものと考えられる。引き続き検討したい。 キーワード:ペインクリニック、口腔顔面領域、痛み、 痺れ、持続性特発性顔面痛 - 161 - 131 132 -Sun-O1-10:12 鍼医学的体性感覚刺激や耳鳴反応点を用いた耳鳴治療 の基礎研究 1)明治国際医療大学鍼灸学部 2)明治国際医療大学国際交流推進センター ○鶴浩幸1,2) 【目的】演者は頚部や手部などの指頭による圧刺激や 毫鍼刺激、円皮鍼刺激が耳鳴を軽減、消失させる場合 のあることを報告してきた。本研究では足部の経穴 (原穴)に圧刺激やてい鍼刺激、円皮鍼タイプの非侵 襲的鍼用器具による刺激などを行い耳鳴の大きさへの 影響を検討した。 【方法】対象はインフォームドコンセントの得られた 健康成人ボランティア7名(平均年齢24歳)、耳栓と イヤーマフ装着後に環境音が33dB以下の静かな部屋 に入り安定した明確な耳鳴を感じる者とした。入室後 に以下の介入による耳鳴変化が検討された。1. 足部6 ヶ所の経穴に指頭での圧刺激を1箇所ずつ約45秒間行 い、2. 介入1により耳鳴が変化した部位(耳鳴反応点) に対し1箇所ずつてい鍼刺激を60秒間行った。3. 介入 1により耳鳴が変化した全部位に対して、一度に非侵 襲的鍼用器具(セイリン社製パイオネックス・ゼロ) を60秒間貼付した。大きさの評価はvisual analogue scale(VAS)や標準耳鳴検査法1993における耳鳴の自 覚的表現の問診票に基づいて作成した評価表を用いた。 耳鳴変化時の各刺激前後の値の比較にはWilcoxon符号 付順位検定を用いた。本研究は明治国際医療大学ヒト 研究審査委員会の承認を得て行われた。 【結果】介入1では全例で、介入2では7例中5例、介入 3では7例中4例に大きさの軽減がみられた。圧刺激や てい鍼刺激により耳鳴の大きさが変化した場合には有 意に減少した(p<0.01)。非侵襲的鍼用器具でも大き さが軽減したが有意ではなかった(p=0.07)。 【考察】足部の経穴(原穴)の圧刺激やてい鍼、非侵 襲的鍼用器具などの触圧刺激により耳鳴が軽減する場 合のあることがわかった。指頭での圧刺激の応用によ り有効な鍼刺激部位を簡便に検出できることが示唆さ れた。 謝辞:本研究はJSPS科研費JP19K11729の助成を受け た。 キーワード:耳鳴、鍼、耳鳴反応点、てい鍼、経穴 -Sun-O1-10:24 突発性難聴に鍼治療と鼓室内ステロイド療法が有効で あった1症例 埼玉医科大学病院東洋医学科 ○井畑真太朗、堀部豪、山口智、村橋昌樹、 小内愛 【背景】突発性難聴の予後は、発症時の重症度によっ て異なる。最も重症であるGrade4症例になると30dB 以上の改善が求められるのは約50%に止まる。また標 準治療を早期に行っても聴力の改善が認められない症 例も多い。今回突発性難聴発症後、救済治療として鼓 室内ステロイド治療に鍼治療を併用した結果、30dB 以上の改善が認められた症例を経験したので報告する。 【症例】72歳、男性、主訴:右難聴、現病歴:X-42 日眩暈が出現、右難聴を自覚。X-37日近医耳鼻科を 受診、右突発性難聴と診断。X-35日よりA大学病院に て入院にてステロイド療法を開始、X-27日に退院。 その後近医耳鼻科にてアデホスコーワ、メコバラミン にて経過観察。しかし改善が乏しいため、X-4日より 鼓室内ステロイド療法を開始、X日同耳鼻科より鍼治 療の依頼があり受診。初診時所見:脳・上肢の神経学 的所見右難聴以外は正常、ウェーバー左>右、リ ンネ正常、右耳介周囲の圧迫による耳鳴りの変化は なし。鍼治療方針:難聴改善を目的に、鍼治療部位は 左右翳風、耳門、聴宮、聴会使用鍼はセイリン社製40 mm16号ディスポーザブル鍼を用いて、置鍼10分週1 回治療した。 【経過】発症時の純音聴力は平均103.8dB、鼓室内ス テロイド開始前は平均73.3dBだった。その後鍼治療を 併用し、開始30日後には平均70.0dB、開始45日後には 平均55dBと聴力の改善が認められた。 【考察・結語】Grade4の突発性難聴を対象に発症21日 以降に鼓室内注射を実施した症例において10dB以上 の回復が認められるのは20%未満とされている。本症 例は発症42日以降に鼓室内ステロイド治療と鍼治療を 併用し、18dBの回復が認められたことから重度突発 性難聴の救済治療として、鍼治療は有用性が高い可能 性が示された。 キーワード:突発性難聴、鍼治療、鼓室内ステロイド 療法 - 162 - 133 134 -Sun-O1-10:36 薬剤不応の原因不明耳痛に弁証論治による鍼治療が奏 功した1例 1)福島県立医科大学会津医療センター鍼灸研修 2)福島県立医科大学会津医療センター附属研究所 漢方医学研究室 ○山田雄介1)、加用拓己2)、工藤慎大1)、 宮田紫緒里1)、津田恭輔2)、鈴木雅雄2) 【目的】耳痛は耳鼻咽喉領域でよくみられる症状であ るが診断に至らず、治療に苦慮する症例も見られる。 耳痛で複数の診療科を受診したが、原因の特定には至 らず疼痛管理が不十分であった患者に対して、弁証論 治に基づく鍼治療を行ったところ、耳痛の改善が得ら れた症例を報告する。 【症例】70代女性。[主訴]耳痛。[現病歴]X年9月 中旬頃に左耳痛が出現したため、近医救急外来と耳鼻 科、歯科を受診したが器質的な異常は認めなかった。 鎮痛薬を処方されたが、疼痛は持続したため、X年10 月1日に当センター耳鼻咽喉科を受診した。CT検査を 含む精査が行われたが異常は指摘されなかった。その 後も症状の軽減が乏しかったため、X年10月4日に当 科を受診した。[現症]耳痛は耳奥に自覚する“ジン ジン・チクチク”とした疼痛であり、夕方から夜間に かけて増悪を認めた。最大時の疼痛はNumerical Rating Scale(NRS)にて10を示し、疼痛による活気 の低下や食欲不振を認めた。随伴症状には頭頂部痛、 咽頭痛、歯痛を認めた。東洋医学所見では舌質淡紅・ 裂紋・舌苔白、脈沈、以前からの耳鳴りの増悪、頬部 紅潮、口乾、五心煩熱、顔のほてりを認めたことから 肝陽上亢証と弁証し、百会穴、神庭穴、耳門穴、翳風 穴、復溜穴、照海穴、太衝穴、行間穴を基本穴とした 鍼治療および鍼通電療法を週1回の頻度で実施した。 評価は耳痛の強度をNRSで評価した。 【経過】鍼治療開始前の耳痛はNRSで10を示していた が、鍼治療開始翌日より耳痛は軽減し、活気と食欲の 改善を認めた。2診目に耳鳴りや五心煩熱などの所見 の改善が得られ、3診目に疼痛は消失(NRS0)した。 【考察・結語】本症例は複数の診療科での加療後も持 続する原因不明の耳痛を認めていたが、肝陽上亢証の 弁証に基づく鍼治療を実施したところ耳痛が軽減し、 随伴症状や東洋医学的所見にも改善を認めた。弁証論 治による鍼治療が本症例の耳痛に有効であったと考え られた。 キーワード:耳痛、原因不明、薬剤不応、鍼治療、弁 証論治 -Sun-O1-10:48 耳介への温熱刺激が症状を改善した耳鳴・側頭部不快 感の一症例 1)筑波技術大学保健科学部 附属東西医学統合医療センター 2)筑波技術大学保健科学部保健学科 鍼灸学専攻 ○青木香織1)、成島朋美1)、鮎澤聡1,2) 【目的】耳鳴・側頭部不快感に対し耳介・耳周囲への 電気温灸器による施術が著効した症例を経験したので 報告する。 【症例】67歳、女性。主訴は#1右耳鳴と#2右側頭部 不快感。 【現病歴】X-2年Y-8月、飛行機の着陸時に右耳の閉 塞感と痛みを自覚。痛みの消失後に耳鳴が始まった。 既往の突発性難聴(以下SD)発症と症状が類似して いたため、耳鼻科を受診。聴力等に異常なく、加療は なかった。その後、右耳の不快感が増大し入眠困難と なった。X年Y-1月、頭部疾患の可能性を考え、脳神 経外科を受診するも、頭蓋内に異常を認めず。医師か ら勧められX年Y月より鍼灸治療開始。 【既往歴】X-22年SD (右)、X-3年COVID-19 、SD (左) 【所見】#1右側頭部不快感NRS(以下NRS)10。耳閉 感と耳鳴で、耳をもぎ取りたい。#2右耳鳴。常時、 ブーンという低音とキーンという高音がある。 【治療・経過】初診は右耳門(TE21)、聴宮(SI19)、 聴会(GB2)、両側後渓(SI3)、百会(GV20)へ5分 置鍼(セイリン社製40mm16号鍼)。施術後、NRS7に 改善するも耳鳴に変化はなかった。2診目は鍼への恐 怖心を強く訴え、右耳門、聴宮、聴会のみ施術。治療 効果が乏しく、3診から右耳介・右耳門、聴宮、聴会、 耳周囲の胆経・三焦経の経絡、天容(SI17)へセラミッ ク電気温灸器(セイリン社製、43度)を追加したとこ ろ施術後NRS5、耳鳴が施術中に弱まり、治療後より 入眠困難の症状が改善した。4診目では施術前NRS5、 施術後NRS2と改善が得られ、高音の耳鳴が消失した。 【考察】耳介・耳周囲への温熱刺激が著効を示した機 序は明らかではないが、経皮的迷走神経刺激で報告さ れている交感神経亢進の抑制など自律神経機能の正常 化と関連した機序を考える。 【結語】耳鳴と側頭部不快感に対し、耳介・耳周囲へ の電気温灸器を用いた治療が著効した症例を報告した。 キーワード:耳鳴、電気温灸器、耳介、温熱刺激 - 163 - 135 136 -Sun-O1-11:00 持続性知覚性姿勢誘発めまいに対する鍼灸治療の1症 例 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 ○桐本暢子、松浦悠人、安野富美子、坂井友実 【目的】持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)は、 めまいによる日常生活の障害度が高い。今回、PPPD 患者への鍼灸治療にセルフケアを併用したことで生活 の質が改善した症例を報告する。 【症例】36歳女性主訴:めまい感 【現病歴】X-2年前、めまい感を自覚。X-6か月前、 良性発作性頭位めまい症の診断。3カ月前、一時改善 したがフワフワ感再燃し、PPPDと診断され、症状は 増悪傾向。処方された抗うつ薬に抵抗があり補中益気 湯と半夏白朮天麻湯服用も症状は持続。前庭リハビリ テーションは恐怖心があり中止。鍼灸治療も2か所で 受けたが症状不変。一人では1mも歩けず不安を抱え 父と来院。 【所見】身長:168.5cm、体重:72kg、血圧:130/85 mmHg、船上の様に縦横に揺れ自宅階段も一人では昇 降不可。numerical rating scale (NRS):10、めまい 障害度(DHI):92点/重症、PPPD診断問診票スコア (NPQ):54点/カットオフ値27点、ひもろぎ式自己記 入式不安尺度(HSAS):29点/重い、同うつ尺度 (HSDS):29点/中等度。 【治療・経過】ステンレス単回使用鍼(0.14×40mm) 太衝・足三里・内関・手三里・合谷・四トクに切皮程 度で刺鍼。鍼、台座灸も行い、この際ローラー鍼と これらの経穴に台座灸を用いセルフ灸を指導、足湯も 提案。その後、愁訴に合わせて治療穴とセルフ灸を追 加。治療は隔週でセルフケアを毎日実施。3診に自宅 階段昇降が可能になり、歩行距離も漸伸。6診でHSAS :29→14点、HSDS:29→7点となり、13診でDHI:92 →58点、NPQ:54→33点、NRS:10→4点。この間外 食や美容院に行く等活動範囲を広め、一人で新幹線に 乗り来院、就職資格も取得した。 【考察・結語】めまい症状は残存しているが、めまい への不安が軽減されたことで活動範囲が広がり、生活 の質が改善した。PPPDの鍼灸治療に、セルフケアが 有効である可能性が示唆された。 キーワード:持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)、 鍼灸、セルフケア、慢性めまい -Sun-O1-11:12 透析患者の難治性舌痛症に対して鍼灸治療が奏功した 1例 北里大学研究所病院漢方鍼灸治療センター ○塚本シュ、伊東秀憲、井田剛人、伊藤雄一、 伊藤剛、星野卓之 【目的】舌痛症ははっきりした原因無く続く機能性疾 患であり、国際疼痛分類で「口腔灼熱症候群(BMS)」 に分類される。透析患者の舌痛症は通常の5~20倍と 発生頻度が高く、患者の生活の質を低下させる。今回、 透析患者の舌痛症に対して鍼灸治療を行い、著明な症 状の改善が認められたので報告する。 【症例】68歳、女性。X-5年から舌痛(特に舌尖部) を自覚し、口腔外科、耳鼻科、麻酔科等を受診し、鎮 痛剤で軽減せず、X年6月、当鍼灸外来を受診した。 既往歴は、50歳より多発性嚢胞腎のため透析治療を行っ ている。その他、口苦、入眠困難、足・腰の冷え等を 自覚している。身長:150.0cm 体重:52.8kg BMI: 23.5 血圧122/70mmHg。脈状:虚・弱・細;脈差: シャントのため評価不可。 【治療・経過】鍼灸治療は週1回行い、舌痛の評価は Visual Analog Scale(VAS)を用いた。臨床症状によ り腎虚証と診断し、北里式経絡治療本治穴(陰谷・復 溜等)と共通基本穴(中・天枢・関元・背部兪穴等) に加えて、標治穴として廉泉・外金津玉液・承漿・侠 承漿、志室に灸頭鍼を行った。初診時舌痛VASは60 mmで、5診時16mmとなり、痛みに波があること、灸 頭鍼を行うと症状の改善が顕著であること等を実感し ていた。18診で0mmとなるが、夜間痛が時々出現す るため、3週に1回の治療に切り替え治療継続中である。 【考察】舌痛症は舌動脈の血流障害、並びに心理要因 の影響が報告されている。透析患者は末梢循環障害が 発生しやすく、また、透析に伴う心身のストレスから 舌痛症を発症しやすい病態にあると考えられる。今回、 北里式経絡治療本治法による精神的緊張の緩和、志室 への灸頭鍼による全身の血行促進、更に廉泉等への局 所刺鍼による舌動脈の血流改善が症状の軽減に寄与し た可能性が考えられた。 【結語】透析患者の舌痛症に対して、北里式経絡治療 本治穴に加えて、腰部への灸頭鍼や廉泉等への局所刺 鍼が症状の改善に有用であった。 キーワード:舌痛症、口腔灼熱症候群、北里式経絡治 療、透析、灸頭鍼 - 164 - 137 138 -Sun-O1-11:24 放射線療法後の咽頭乾燥感に漢方医学的治療が奏功し た1症例 埼玉医科大学病院東洋医学科 ○堀部豪、小内愛、井畑真太朗、村橋昌樹、 山口智、鈴木朋子 【背景】頭頸部腫瘍に対する放射線療法後の口腔乾燥 症の有病率は73.6~85.3%と高く、患者の生活の質に 多大な影響を与える。これまで、漢方薬や鍼治療は口 腔乾燥症状の治療法として活用されてきたが、その有 効性に関するエビデンスは不足している。今回、桔梗 湯と八味丸、鍼治療の併用により、放射線療法中より 出現した咽頭乾燥感が早期に軽減した症例を経験した ので報告する。 【症例】63歳男性。主訴は咽頭乾燥感。X-1年12月に 咽頭痛出現。近医受診するも症状改善せず再受診した ところ中咽頭前壁に腫瘤を認め、X年2月にA病院で中 咽頭がんと診断(cT4N2M0, Stage IVA)。翌月から化 学療法、5月から放射線療法(Volumetric Modulated Arc Therapy、2Gy×35回)を開始。放射線療法中に 咽頭乾燥感が出現した。漢方薬治療を希望し同年9月 に当科を紹介受診し漢方薬治療が開始、翌週に鍼治療 が開始された。服薬状況:アセトアミノフェン、酸化 マグネシウム。東洋医学的所見:脈候:浮沈中でやや 緊、舌候:暗赤、歯痕(+)、白苔、腹候:心下痞、 腹皮攣急、臍上悸、臍下不仁。足部冷え。漢方薬は桔 梗湯、八味丸を処方、鍼治療は40mm16号単回使用鍼 を用い下関、頬車、合谷、三陰交、太渓に週1回施術 した。咽頭乾燥感は鍼治療開始時よりVisual analogue scale(VAS)で評価した。 【経過】初回鍼治療時のVASは23mmであったが、経 過中「足の冷え・夜間尿が改善してきている」、「喉の 感じも確実に良くなっている」との弁が聞かれ、5回 目の鍼治療前は8mmに減少した。 【考察・結語】桔梗湯、八味丸と鍼治療の併用は放射 線療法後の咽頭乾燥感を早期に軽減させる可能性が示 唆され、今後更なる症例の集積と検討が望まれる。 キーワード:鍼治療、桔梗湯、八味丸、放射線療法後 口腔乾燥症 -Sun-O1-11:36 頭部外傷既往がある在宅高齢患者の嚥下障害に対する 鍼治療症例 1)ティートリー成城鍼灸院 2)かなざわ鍼灸院 3)医療法人社団明徳会 福岡歯科附属鍼灸マッサージ治療院RIM 4)みはる矯正・歯科医院 5)昭和大学歯科病院顎関節症治療科 6)東京医療保健大学医療保健学部 7)一般社団法人JISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関) ○瀧澤雄一郎1,7)、竹田太郎2)、荻野杏理3)、 関根陽平4,5,6) 【目的】肺炎患者の約7割が75歳以上の高齢者であり、 7割以上が誤嚥性肺炎である。また、嚥下障害の原因 疾患は脳卒中が約6割を占めている。今回、頭部外傷 により外傷性くも膜下出血、びまん性軸索損傷と診断 され、高次脳機能障害を伴う高齢患者に対し、嚥下障 害の改善を目的に鍼治療を施行し、良好な経過が得ら れたので報告する。 【症例】72歳男性。主訴:食事介助時の咽せ。現病歴: X年7月、飲酒後帰宅途中、階段で転落し、意識不明 で救急搬送。頭部打撲、上腕骨骨折で入院。数日後意 識回復するも臥床時間長く、胃瘻造設、全介助。主治 医より、退院後は療養型医療施設を勧められるが、家 族の強い希望により、3ヶ月後在宅で療養開始。訪問 医療、歯科、看護、リハビリを利用開始し、家族の依 頼で鍼治療を開始。 【鍼治療】意思疎通困難なため、不快刺激に注意し、 足三里、太谿に単刺(セイリン社製ステンレス鍼40 mm18号)後、円皮鍼(セイリン社製パイオネック ス)を貼付。また、嚥下障害患者の治療経験から頚肩 顎周囲へ単刺術を必要に応じ施行し、頻度は週2回~3 回とした。 【経過】入院中、経口摂取リハビリ中から咽せあり、 喀痰吸引必要であったが、退院後12診時咽せの回数減 少、刺激に慣れてきたため、頚肩顎周囲の単刺も加え た。徐々に咽せ、4回/日程度あった喀痰吸引の回数減 少。それに伴い、食事量増加、体重が6kg増加した。 150診時には喀痰吸引はほぼなく、治療頻度を週1回に 減らし、X+3年現在も体調管理のため治療は継続中。 【考察・結語】退院時に療養型医療施設での療養を勧 められ、身体機能の回復が困難と思われた誤嚥性肺炎 リスクのある高齢患者に対し、嚥下機能回復を目標に 鍼治療を継続し、誤嚥による咽せの回数減少、身体機 能回復し、座位で食事、家族や医療、介護スタッフと 会話もある程度可能となった。多職種連携による結果 ではあるが、鍼治療が嚥下機能の回復に寄与出来た可 能性が示唆された。 キーワード:嚥下障害、誤嚥性肺炎、鍼灸、在宅高齢 患者 - 165 - 139 140 -Sun-O1-11:48 COVID-19感染後の嗅覚及び味覚障害に対する症例 1)ながた接骨院 2)錦はり 3)軒岐会 ○別府浩士1,2)、佐藤想一朗2,3) 【目的】COVID-19に感染し味覚及び嗅覚障害を患っ た人が数名来院した。東洋医学の観点から鍼灸治療に より効果が得られた事は、COVID-19後遺症に悩む人 の一助となると考えられる。 【症例】X年-1ヶ月にCOVID-19に感染し解熱したが 味覚及び嗅覚障害が残った。 【現病歴】X年-1ヶ月に発熱し解熱したが同時に味覚 及び嗅覚障害が残っている。 【治療】X年、太渓穴、陥谷穴、神門穴、迎香穴に刺 鍼し、舌へ鍼を撫でるように散鍼(PHAROS SARASA メディカルニードル1寸-3番)。X+2週に足臨泣穴を追 加しX+4週以降は元の配穴のみにした。 【結果】X年施術後から夕食の匂いが少し分かるよう になり、酢の物の味が少し感じられた。X+3週で味覚 は大きく改善し違和感があまりなくなった。塩味は分 かり易く甘みは分かり難い。X+6週では小さな香りも わかるようになり、味覚はほぼ完治。X+10週では木 の香りや魚、制汗スプレーの匂いが分かるようになり、 分からないという意識がなくなった。最終的に感じな い状態を10として味覚は0、嗅覚は1まで回復した。 【考察・結語】COVID-19に感染し味覚及び嗅覚障害 を発症した事は東洋医学の観点から心・肺・胃の熱病 症と考えられる。心と腎には「心腎交通の関係」があ るため太渓穴と神門穴を組み合わせる事で心腎交通を はかることが出来ると考えられ、腎は水を主り、肺と 腎には「腎は上って肺に連なる」関係が有るため太渓 穴を用いる事で肺の熱を抑える事が可能であると考え られる。胃は陽明であり「陽明は心を絡い属する」の で舌と関係し胃の兪穴である陥谷穴を用いることで胃 の状態を改善出来ると考えられる。舌は心の苗である 為舌に直接散鍼を行うことで心胃への刺激となると考 えられる。以上の東洋医学的な生理学を用い熱証を抑 える事でCOVID-19後遺症である味覚及び嗅覚障害の 改善ができると考えられた。 キーワード:COVID-19、嗅覚障害、味覚障害、太渓 穴、軒岐会 -Sun-O1-13:00 完全脱神経をきたしたRamsay Hunt症候群に鍼治療を 行った1症例 1)鍼灸サロンZouzou 2)東京大学医学部附属病院リハビリテーション部 ○会沢いずみ1)、林健太朗2) 【目的】完全脱神経をきたし顔面神経減荷術を施行し た左末梢性顔面神経麻痺(麻痺)を呈するRamsay Hu nt症候群(Hunt症候群)患者に鍼治療を行い、良好な 経過を認めたので報告する。 【症例】54歳、男性。主訴は麻痺側の閉眼不全、こわ ばり感。X年-70日左麻痺発症、近医救急科でMRI・ CT異常なし、柳原法14点、入院加療(ステロイド・ 抗ウイルス薬)。入院中に発疹出現。X年-49日(発症 後21日)T病院耳鼻科受診、Hunt症候群と診断、柳原 法2点。X年-46日(発症後24日) Electroneurography値 0%、NET値Scale out。X年-42日(発症後28日)T病院 で顔面神経減荷手術施行。X年-29日(発症後41日)T 病院顔面神経外来受診、柳原法2点。X年-17日(発症 後53日)T病院リハビリテーション科受診、表情筋マッ サージの指導。X年Y月Z日(発症後70日)より後遺 症の予防・軽減を目的に、発症後約8ヶ月まで1から2 週に1回、その後は月1回、全20回鍼治療を実施した。 治療は10分間温熱療法、表情筋に30ミリ・12号で15分 間置鍼、表情筋揉捏法と筋伸張マッサージを施行した。 セルフケアは表情筋マッサージ・開瞼運動・バイオフィー ドバック療法を指導した。評価は柳原法、Sunnybrook 法複合点(SB)、Facial Clinimetric Evaluation Scale (FS)を発症約2・3・4・7・9・12・13か月の治療前、 顔面部不快感はVisual Analog Scale(VAS)を治療前 後に実施した。 【結果】鍼治療初診(発症後約2ヵ月)から最終治療 (発症後約13ヵ月)で柳原法(点)は2→38、SB(点) は0→79、FS(点)は36→57に改善した。VASは発症 後7ヵ月以外、治療直後に軽減した。 【考察・結語】本症例は鍼治療直後に顔面部不快感が 軽減した。このことは、患者のセルフケアの継続的な 実施に寄与できた可能性がある。その結果、先行研究 と同様、QOLとの間に乖離は認められたものの、柳 原法の表情筋筋力は治癒基準に回復した。 キーワード:末梢性顔面神経麻痺、完全脱神経、Hunt 症候群、鍼治療、セルフケア - 166 - 141 142 -Sun-O1-13:12 電気温灸器による温熱刺激が効果的であったHunt症候 群の一症例 筑波技術大学保健科学部附属 東西医学統合医療センター ○硯川裕子、成島朋美、白岩伸子 【目的】顔面神経麻痺に対する鍼治療の報告は多数あ るが、禁灸部位である顔面部への灸療法による報告は みられない。今回、顔面部に圧痛を訴えるHunt症候群 に対してセイリン社製セラミック電気温灸器を用いた 鍼灸治療を行い、改善がみられた症例を報告する。 【症例】70歳女性主訴:右顔面神経麻痺 【現病歴】X年Y日、右耳痛が発現。Y+2日、右眉と 口角が下がり、救急外来を受診。Hunt症候群と診断、 ステロイド全身投与・経口投与を受ける。柳原法13点。 その後、星状神経節ブロックとリハビリ開始。Y+33 日、担当医より鍼灸治療を紹介され治療開始。 【初診時所見】Electroneurography値眼輪筋8.1% 鼻 唇溝7.9%、柳原法16点 【治療・経過】表情筋及び顔面神経の循環改善を目的 に、麻痺側顔面部に15mm10号鍼、翳風穴に40mm16 号鍼を用いて15分の置鍼および表情筋への伸張マッサー ジを行い、毎施術前に柳原法で評価した。7診目(Y+ 82日)より伸張マッサージ時に圧痛を訴えていた部位 に電気温灸器による温熱刺激を追加したところ以降の 柳原法の点数に大きな改善がみられた。初診16点、7 診目22点、電気温灸器追加後、8診目(Y+89日)28点、 9診目(Y+96日)36点、10診目(Y+103日)には38点 に回復した。 【考察】本症例はHunt症候群、ENoG値10%未満、高 齢といった要因から半年以内の回復の可能性は低いと 考えられたが、電気温灸器を追加後の7診目以降、回 復のスピードを上げ柳原法38点まで回復した。禁灸部 である顔面に対し、電気温灸器を用いることで圧痛部 に安全に温熱刺激を加えることができたことが効果的 であったと考えられ、電気温灸器は顔面神経麻痺に対 する有効な治療の選択肢となる可能性が考えられた。 【結語】高齢Hunt症候群に対し顔面部へ電気温灸器を 用い、柳原法38点までの回復が認められた。 キーワード:末梢性顔面神経麻痺、Hunt症候群、鍼治 療、電気温灸器 -Sun-O1-13:24 顎骨の外科的矯正治療によって生じた顔面神経麻痺に 対する鍼治療 1)大阪大学歯学部附属病院歯科麻酔科 2)芦屋百会鍼灸治療院 ○山本伸一朗1,2)、高橋沙世1)、小田若菜1) 【目的】上下顎骨切り術後の抜釘・オトガイ形成並び に輪郭形成術後に生じた左側顔面神経麻痺と両側オト ガイ部知覚異常に対して山元式新頭針療法(YNSA) で改善を認めたので報告する。 【症例】38歳女性。主訴は左側顔面の麻痺と両側顎か ら頬部の知覚異常。 【現病歴】X-28週に当院口腔外科にて上下顎骨切り 術後の抜釘及びオトガイ形成術を受けた。X-26週に 顔面神経麻痺と上顎及びオトガイ部に知覚異常が認め られた。X-24週から星状神経節ブロックを受けた。 痛みのVAS値(100点満点)は68点から0点、痺れの VAS値は97点から3点まで改善した。顔面神経麻痺は 柳原法(40点満点)で23点から38点まで改善したが、 口角の引きつりや会話時の流涎、不快を伴う異常感覚 など症状が残ったために鍼治療を開始した。 【所見】安静時に口角周囲と下唇が左右非対称であり、 頬を膨らませた時や、うがい時に口輪筋等表情筋の麻 痺がみられた。口唇周辺の2点弁別閾の上昇や温度覚 の鈍麻といった知覚異常が認められた。 【治療・経過】患部の血流改善、顔面神経の回復、表 情筋の筋萎縮防止を目的にYNSAと東洋医学的鍼治療 を行った。YNSAではA点、E点、脳幹点、顔面神経 点、三叉神経点を取り、太溪、太衝、合谷、曲池、翳 風、下関、太陽、顴に加えて口輪筋、頬骨筋、口角 下制筋にも刺鍼した。鍼治療9回終了時には知覚異常 が改善した。うがい時に唇から水が漏れなくなり、笑っ た時や安静時の左右非対称性がほぼ無くなり、日常生 活での不自由さが改善したため、鍼治療を終了した。 【考察・結語】咀嚼筋の筋緊張緩和により口腔顔面部 の血流が改善し、YNSA治療によって顔面神経や三叉 神経の回復が促進され、口輪筋、頬骨筋、口角下制筋 の動きが改善したと考えられる。その結果、日常生活 の不自由さや表情筋の非対称性が改善し患者満足度が 高まり、鍼治療終了に至ったと考えられる。 キーワード:上下顎骨切り術、顔面神経麻痺、オトガ イ神経知覚異常、YNSA、鍼治療 - 167 - 143 144 -Sun-O1-13:36 発症後3ヶ月以内の完全顔面神経麻痺に対する鍼灸治 療の効果 1)まり鍼灸院 2)森ノ宮医療大学保健医療学部鍼灸学科 ○薛斯菁1)、中村真理1,2) 【目的】完全顔面神経麻痺(以下完全麻痺)は、柳原 40点法と経時的回復過程(以下過程)では麻痺は20点 前後回復、後遺症が残るとされている。今回は発症3 か月以内の完全麻痺2症例が鍼灸治療により、過程以 上に改善がみられたので報告する。FaCE Scaleと後遺 症も同時に調査した。 【方法】評価は柳原法にて麻痺の程度を施術者以外の 第三者が評価した。NRS(Numerical Rating Scale)0 から10段階にて後遺症(ワニの涙・痙攣・拘縮)を患 者本人に評価してもらった。FaCE Scale(75点満点) を用いて患者本人にADLを評価してもらった。治療 はユニコディスポ鍼30ミリ18号単回使用毫鍼を用い、 随証治療による全身治療と局所治療として顔面部は頷 厭(GB14)・頬車(ST6)などの経穴に置鍼し重複し た3穴に電子灸を1壮施灸した。 【症例1】80歳女性気陰両虚太渓(KI3)三陰交 (SP6)X年-36日に病院を受診。ウイルス検査異常な し柳原法が8点で左完全麻痺と診断された。その後X 年に当院受診となった。臨床経過として初診時所見と 鍼灸35回目を比較した。FaCE Scaleは40が65点、柳原 法は12が32点、NRSはワニの涙5点、痙攣5点が全て0 点に改善した。 【症例2】65歳女性肝腎陰虚太衝(LR3) 太渓 (KI3)Y年-17日に病院を受診し、ベル麻痺で右完全 麻痺と診断された。その後Y年に当院受診となった。 臨床経過として初診時所見と鍼灸54回目を比較した、 FaCE Scaleは32が63点、柳原法は10が38点、NRSはワ ニの涙10が3点、痙攣0が0点、拘縮9が1点軽度に改善 した。主治医にほぼ正常と言われた。 【考察】今回は2症例とも柳原法は顕著に改善した。 後遺症も無から軽度であった。発症後鍼灸を開始した ことが寄与していると考える。柳原法、NRSは過程で 予測される以上の結果だった。2症例ともに麻痺QOL 特異的尺度を見るFaCE Scaleが向上し日常生活の苦痛 が軽減したと考える。 【結語】完全麻痺であっても、発症3か月以内の鍼灸 治療が有効である可能性が示唆された。 キーワード:顔面神経麻痺 -Sun-O1-13:48 末梢性完全顔面神経麻痺に対する鍼灸治療の効果 1)まり鍼灸院 2)森ノ宮医療大学保健医療学部鍼灸学科 ○畠山楓華1)、中村真理1,2) 【目的】中村らが発症1年以内の末梢性完全顔面神経 麻痺(以下完全麻痺)に対する鍼灸治療の効果で対象 者の50%が完治したと報告している。今回、発症後3 ヶ月以内に来院した12名の鍼灸治療について経時的回 復過程と比較検討した。 【方法】対象は、2016年9月~2024年12月に病院で完 全麻痺と診断され初診時麻痺発症後3ヶ月以内に鍼灸 治療を開始、鍼灸治療を1年以上継続して受けた12名 とした。評価方法、柳原法は初回と最終(調査最終を 示す)合計の中央値比較と38点以上の人数・割合を調 査した。FaCE Scaleは初回と最終の合計と6分野別に 比較した。治療満足度(10点法)は最終に調査し7点 以上を満足とした。後遺症はワニの涙・拘縮・痙攣・ 連動運動をNRS(Numerical Rating Scale)用い6ヵ月 以降で最も後遺症がみられた調査日と最終を比較した。 鍼灸治療は、ユニコディスポ鍼30ミリ18号単回使用毫 鍼を用い随証治療による全身治療と局所治療として顔 面部の麻痺側に8本、非麻痺側に2本置鍼麻痺側と重複 した3穴に電子灸を1壮施灸した。 【結果】柳原法の合計は有意に改善した。中央値は初 回12点から最終39点に改善した。7/12名(58.3%)が 38点以上で後遺症も無しから軽度であり、日本顔面神 経学会コンセンサスステートメントより完治とした。 FaCE Scaleは合計と顔面運動・目の感覚・涙液分泌・ 食事摂取の分野で有意に改善した。満足度は満足が 100%であった。 【考察】今回、7/12名(58.3%)が完治であった。対 象者全員が経時的回復過程を上回り、また中村らが報 告した完治の割合を上回る結果となった。鍼灸治療に 対する満足度も高く、麻痺症状に対する不安感などの 軽減に繋がったと考える。 【結語】完全麻痺は治癒が難しく後遺症は高率で生じ るとされているが今回7/12名が完治し、未完治の5名 も柳原法で有意に改善がみられた。発症後の鍼灸来院 時期が1年以内より3ヶ月以内と早い方が麻痺の改善や 後遺症の軽減に影響することが示唆された。 キーワード:顔面神経麻痺 - 168 - 145 146 -Sun-O1-14:00 コロナ後遺症による頭痛治療中に薬物乱用頭痛を発症 した1症例 1)東北大学大学院医学系研究科 地域総合診療医育成寄附講座 2)東北大学大学院医学系研究科 漢方・統合医療学共同研究講座 3)東北大学病院総合地域医療教育支援部・漢方内科 ○石井祐三1)、高山真2,3) 【目的】コロナ後遺症による頭痛に対しての漢方・鍼 灸の併用療法中に、薬物乱用頭痛を発症した症例を経 験したので報告する。 【症例】15歳女性、主訴:頭痛現病歴:X年COVID- 19に罹患し発熱、咳、鼻水が出現した。自宅療養で一 旦は軽減したが、数日後に頭痛が出現し、学校へ行け ないほどの痛みとなった。近医脳外科で鎮痛薬や補中 益気湯を処方されるも改善せず。精査加療目的のため 当院総合診療科・漢方内科に紹介となり、鍼灸施術の 併療となった。 【所見】身長153cm、体重41kg、body mass index 17.8、体温36.5℃、血圧104/61mmHg、脈拍103/分。頭 痛は前頭部痛と、頭頂部から右側頭部の接触痛。 Visual analogue scale(VAS)は酷いと80~100mmで 日によって変動。疲労や興奮、日差しで増悪。横にな る、頭部冷却で軽減する。咳、鼻水、倦怠感、食欲不 振、手足の冷え、脈候:中間、弦、舌候:淡紅、薄白 苔、腹候:腹力中等度、心下痞硬、左胸脇苦満、腹直 筋緊張。気血津液弁証:気虚、気滞 【治療】漢方薬は柴胡桂枝湯を処方。鍼灸治療は三叉 神経血管説に基づきC2領域である後頭部への刺鍼。 症状に合わせ適宜処方も行った。 【経過】X+1年は学校に通えるようになり、VASは平 均で41mmになった。しかし、X+2年より強い頭痛が 頻発。漢方医より頭痛専門医へ紹介となり、市販風邪 薬による薬物乱用頭痛と診断された。我慢できない時 に使用していた市販薬の使用回数が増えていた。中止 により症状は軽減。頭痛が増悪してもマッサージで軽 減するようになり、漢方薬・鍼灸治療を終了。現在は 経過観察目的で3ヶ月に1度、漢方内科を受診。 【考察・結語】コロナ後遺症による頭痛に対し漢方・ 鍼灸治療の併用治療により症状が軽減したが、患者が 更なる軽減を望み、市販薬の不適切な使用により薬物 乱用頭痛を発症した1症例であった。薬剤の種類だけ でなく、患者が適切に使用できているか確認を行うこ とも重要であると考えた。 キーワード:頭痛、コロナ後遺症、薬物乱用頭痛、市 販薬 -Sun-O1-14:12 脊髄損傷患者に好発する慢性頭痛に鍼灸が効果的だっ た1例 鍼灸院Lapis Three ○松村佳樹 【目的】本報告は、脊髄損傷後の慢性頭痛に対する鍼 治療および鍼通電療法の効果を検討した1例である。 【症例】50歳男性。10代に交通事故により頚髄C5を 損傷 【現病歴・所見】脊髄損傷による自律神経過反射によ る血圧上昇により、日常生活で度々強い慢性頭痛があっ た。初診2~3日前に尿道カテーテルの詰まりにより血 圧が200mmHgまで上昇し、強い頭痛が出現。アセト アミノフェンやロキソニンを数日間服用するも十分な 鎮痛が得られなかった。 【治療・経過】足三里、太衝、合谷、攅竹、太陽、四 白、頭維を使用し、攅竹―太陽、四白―頭維に鍼通電 (100Hz、20分)を実施。初回施術後、VASスコアは 100→30に改善するも数日後に80~90に戻った。1週間 後に2回目の施術を行うとVASスコアは0となり、頭痛 は消失した。 【考察】脊髄損傷(SCI)患者の頭痛は、自律神経過 反射(AD)の影響が考えられる二次性の頭痛である。 ADはT6以上の損傷で生じやすく、膀胱の過伸展や皮 膚刺激が誘因となる。今回の症例では、尿道カテーテ ルの閉塞が交感神経を過剰に刺激し、高血圧と頭痛を 引き起こした可能性が高い。さらに、膀胱の異常な膨 張による求心性刺激が三叉神経頚髄路を介して前頭部・ 側頭部の関連痛を誘発した可能性も考えられる。鍼治 療による効果として、1.自律神経調整2.疼痛抑制 3.血管調整が挙げられる。今回、鍼治療後に頭痛が 消失したことから、これらの作用が関与したと推察さ れる。 【結語】本症例を通じ、脊髄損傷後の慢性頭痛に対す る鍼治療と鍼通電療法の有効性が示唆された。特に、 即効性と持続的な効果が痛みの軽減に寄与したと考え られる。今後さらなる症例を重ね、治療法の確立を目 指したい。 キーワード:脊髄損傷、慢性頭痛、鍼通電、鍼灸 - 169 - 147 148 -Sun-O1-14:24 身体症状にアプローチした結果症状が改善傾向を示し た1症例 1)ここちめいど 2)はりきゅう院さくら 3)はりきゅう処ここちめいど 4)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部 鍼灸健康学科 ○田中隆一1,2)、米倉まな1,3)、金子聡一郎1,4) 【はじめに】勤労者における頭痛は長期化することに より社会経済的な損失が高いことが問題である。本症 例は頭痛に悩み休職していた患者に対し、精神状態に 対してから身体症状へアプローチを変更したことによ り改善が得られたので報告する。 【症例】36歳、男性、主訴:頭痛、首の痛み。 【現病歴】X-2年:頭痛、めまい、吐き気、食欲不振 などの症状が現れ会社を1週間休職した。4カ月前:頭 痛が酷くなり、夕方の息苦しさ、食後に息苦しくなっ て倒れそうになり、この頃から休職した。1週間前に 風邪を引き、寛解した後、頭を動かした際にめまい症 状が現れた。頭痛も継続していたため症状の改善を期 待し当院へ受診となった。現症:身長179cm、61kg。 【治療】1・2診目:頭痛が強くなると身体症状が表れ 不安が襲ってくることから、精神的な影響により痛み の誘発・増悪が起きていると考え施術を行った。3診 目以降:患者の訴えが強かった後頭部、後頸部痛に注 視し施術を行った。 【評価】痛みの程度はNRS、日常生活への支障度を HIT-6を用いて評価した。 【経過】1・2診目:施術後、NRS9→7。痛みや身体症 状の変化は僅かしか得られなかった。3診目:施術直 後、痛みはNRS8→4と減少。服薬回数が毎日から隔日 に減少。4診目:2週間服薬せずに済み、頭痛、首のこ り、息苦しさ、めまいなどの症状も出現しなかった。 HIT-6初診時68点、4診61点であった。 【考察・結語】本症例は、精神的な影響が強いと思わ れる状態の患者に対して、「精神状態への治療アプロー チ」よりも「身体所見への解剖学的アプローチ」の方 が効果的であった可能性が考えられた。精神的影響が 強そうな患者に対しても、身体所見をしっかり聴取す ることの重要性を感じた症例だった。 キーワード:頭痛、身体所見 -Sun-O1-14:36 片頭痛の間欠期のQOLに対する鍼治療効果 1)日本鍼灸理療専門学校 2)(一財)東洋医学研究所 3)埼玉医科大学東洋医学科 ○菊池友知1,2)、鈴木格1,2)、吉田麻衣子1,2)、 山口智3) 【背景】頭痛発作時のみならず、発作間欠期にも片頭 痛患者のQOLは低下しており、社会的、経済的損失 も大きい。これらのことから、片頭痛の発作間欠期の QOLに対する治療が注目されている。 【目的】片頭痛の診断を受け予防薬物療法を希望しな かった患者への鍼灸治療が及ぼす、発作間欠期のQOL に対する影響について、片頭痛発作間欠期負担スケー ル(MIBS-4)を用いて評価した。 【方法】研究デザインは後ろ向き観察研究。期間は 2024年4月-2024年12月。組入基準は、年齢は18歳から 65歳、反復性片頭痛の診断、予防薬物を勧められるも 希望しない。除外基準は治療が4週未満、慢性片頭痛、 慢性緊張型頭痛、薬物使用過多の頭痛、MIBS-4の記 載がない。治療方法は頸部、肩上部、顔面部や頭部の 反応部位に置鍼または鍼通電療法、失眠穴に灸などを 個々に合わせて週一回行った。 【評価】MIBS-4、HIT6 【結果】男性2名女性8名、中央値31.5歳(最小21、最 大36)。MIBS-4は鍼治療前中央値9点(最小8、最大12) 鍼治療後中央値4点(最小3、最大8)HIT6は鍼治療前 中央値62点(最小54、最大68)鍼治療後中央値52点 (最小48、最大56)であった。 【考察及び結合】頭痛の診療ガイドライン2021では頭 痛発作が月に2回以上で予防薬物が推奨される。しか し、月の発作頻度が少ない症例で、毎日、予防薬物を 服用することに対する患者の嗜好、安全だと分かって いても妊娠希望などで、薬物療法を望まない患者も存 在する。今回、鍼治療を4週間継続した結果、MIBS-4、 HIT6ともに軽減した。以上により、薬物療法を希望 しない片頭痛患者の発作間欠期のQOL向上の手段と して、鍼治療は選択肢の一つになる可能性がある。 キーワード:片頭痛、片頭痛発作間欠期、鍼、診療ガ イドライン、灸 - 170 - 149 150 -Sun-O1-14:48 アトピー性皮膚炎のかゆみに対する鍼灸治療 1)鍼灸サロンじゅん 2)名古屋平成看護医療専門学校はり・きゅう学科 ○太田和志1)、辻大恵2) 【目的】アトピー性皮膚炎(以下AD)治療において、 新たな選択肢となってきている分子標的薬治療を取り 入れる患者が増えつつある。しかし、改善効果が見ら れず従来のステロイド外用薬治療に戻す場合もある。 今回、分子標的薬治療が無効であったAD患者に対し て行った鍼灸治療により、症状の改善が見られた1症 例を報告する。 【症例】17歳女性。主訴:ADによるかゆみ。[現病歴] 生後まもなく乾燥肌傾向が現れ、3歳頃にADと診断を 受けた。その後、ステロイド外用薬と保湿剤による標 準治療を開始。16歳頃、分子標的薬治療(ネモリズマ ブ60mg)の併用を開始。16週継続するも改善効果は 見られず、副作用と思われる頭痛と腹痛が続いたため 分子標的薬治療を中止。標準治療のみに戻す。その後、 標準治療を継続しながら鍼灸治療を開始した。[評価] AD症状の評価にはPOEMとVAS、QOLを含めた総合 的な評価にはSkindex-16を用いた。[治療]皮疹は少 ないが掻破痕は四肢に多く見られた。また、全身の乾 燥傾向も見られることから、江川らの報告に基づき、 弁証を気血両虚証とした。主な治療穴は、気血双補の 治則に従って合谷、三陰交、腎兪等を用いた。また、 肩こりや四肢の冷え症状も見られたため適宜治療を行っ た。治療の頻度は週1回程度とし、計24回の治療を行っ た。[結果]POEMの合計点は18(重症)→4(軽症)、 VASは85→24、Skindex-16は80→22となった。皮疹、 掻破痕はともにほぼ消失した。 【考察・結語】ネモリズマブは、IL-31に対して受容 体への結合を阻害することでかゆみのシグナル伝達を 阻害する。第67回大阪大会で、AD患者に対する鍼灸 治療の症例集積の中でIL-31が低下した症例を複数報 告した。本症例においても、かゆみが軽減したことか らIL-31の低下も考えられるが、ネモリズマブによる 治療が無効であったことから、IL-31が関与しないか ゆみの軽減にも鍼灸治療が有効である可能性が示唆さ れた。 キーワード:アトピー性皮膚炎、分子標的薬治療、か ゆみ、POEM:Patient Oriented Eczema Measure、QOL -Sun-O1-15:00 円形脱毛症患者に対し全身への鍼灸治療が奏功した一 症例 1)ここちめいど 2)はり灸サロン月花 3)はりきゅう処ここちめいど 4)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部 鍼灸健康学科 ○屋由美1,2)、米倉まな1,3)、金子聡一郎1,4) 【目的】皮膚科治療で改善がみられなかった円形脱毛 症が全身への鍼灸治療により改善につながった可能性 を感じたため報告する。 【症例】32歳男性、右側頭部円形脱毛症 【現病歴】X年X-2月初旬、妻に指摘され脱毛を確認。 X-2月下旬皮膚科受診し「単発性通常型円形脱毛症」 の診断、アンテベート軟膏、フロジン外用液を処方と なる。加療後も脱毛部は増悪したが皮膚科を再診しな かった。同年X月当院患者である母からの紹介で来院。 【症状・所見】患者右側頭部に8cm程の脱毛を確認、 頭皮はむくみ、毛穴の存在は目視で確認出来るが発毛 は無い状態。一部毛穴が確認できない部分もあった。 患者の腹部反応点は肝臓・大腸に強い反応点を示して いた。腹部反応点以外は内耳の反応点が広範囲にみら れた。ストレスを受けるとお腹を壊す。 【治療】30mm16号ステンレス鍼を腹部の反応点(大 腸・肝臓・胃等)に使用、頭部脱毛部位には15mm12 号ステンレス鍼を使用。患者の腹部の反応点(肝臓・ 大腸・胃)への鍼灸刺激、側頭部脱毛部分への鍼刺激 に加え、灸、ローラー鍼を使用し全身の治療を行った。 患者の仕事が忙しい為、可能な限り2週間に一回の治 療を提案し治療を継続した。 【経過】2診目:毛穴を確認した部分より発毛を確認。 3診目:軟便が改善、腹部反応点(大腸)の示す面積 が減少。4診目:発毛量も増加が確認された。5診目: 脱毛部のむくみが消失、9診目:脱毛部の境界が不明 瞭になり円形脱毛症の治療は終了となった。 【考察および結語】皮膚科標準治療で改善がみられな かった円形脱毛症患者に対し、脱毛局所だけなく腹部 反応点を考慮した全身治療を行うことにより発毛を確 認出来た。患者が軟便の改善を自覚した3診目から大 腸反応点の変化が出ており、同時に脱毛部の改善がみ られた。腹部の反応の変化と自己免疫応答が関わって いると考えられている円形脱毛症の改善に関わってい る可能性が考えられた症例であった。 キーワード:円形脱毛症、反応点治療 - 171 - 151 152 -Sun-O1-15:12 薬物療法で難渋した多形慢性痒疹に対する鍼治療の一 症例 東京大学医学部附属病院リハビリテーション部 ○母袋信太郎、林健太朗、永野響子、小糸康治 【目的】多形慢性痒疹は、中高年者に好発し、腹部や 腰部に痒疹性丘疹が散在または集簇する病型で、悪性 腫瘍や薬剤、金属アレルギー、感染巣などの関与がい われているが、原因が特定できない場合が多い。多形 慢性痒疹の診断を受けた全身のそう痒感を訴える患者 に対し、高頻度の低周波鍼通電療法(鍼通電)を中心 に鍼治療をおこなったところ、そう痒感の軽減がみら れた一症例を報告する。 【症例】60代女性。〔主訴〕全身のそう痒感(特に腹 部、太腿部前面)〔既往歴〕X-13年悪性リンパ腫、X- 10年SAPHO症候群〔現病歴〕X-3年、鼠径部にそう痒 感を伴う皮疹および紅斑が出現し、次第に全身に拡大。 既往の悪性リンパ腫再発や蕁麻疹も疑われるが否定さ れる。既存の治療法で外用ステロイド薬や抗ヒスタミ ン薬で経過観察したものの、紅斑は拡大。副作用によ り中止された薬剤も多い中、鍼灸治療を希望して来院。 〔所見〕鼠径部・大腿部・背部・両上腕部に皮疹、腹 部には紅斑・色素沈着を伴う丘疹の混在を認めた。 〔評価〕そう痒感にはVisual analogue Scale(VAS) を治療開始時・治療開始約2・4・6・8ヶ月の治療前後、 病状にはThe Patient-Oriented Eczema Measure (POEM)、生活の質(QOL)にはSkindexを使用し、 治療開始時・治療開始約2・4・6・8ヶ月時点で評価を 実施した。 【治療・経過】シャワー等の温熱刺激を加えると、そ う痒感が誘発されるため、局所への刺鍼は避けて、閾 値の上昇を目的に足三里穴-三陰交穴・合谷穴-曲池穴 への鍼通電(100Hz、20分間)と太衝・血海への置鍼 を週1~2週に1回の頻度で行った。VAS(mm):73→ 26、44→34、43→31、38→32、36→22。POEM(点): 6、9、9、9、8。Skindex(点):34、35、34、32、25。 【考察・結語】多形慢性痒疹に対し高頻度の鍼通電を 行ったところ、そう痒感軽減とQOLの改善がみられ た。鍼通電により内因性オピオイドを介したそう痒感 の抑制が機序として推察された。 キーワード:多形慢性痒疹、そう痒感、低周波鍼通電 療法 -Sun-O1-15:24 経過観察中の緑内障視野狭窄が眼窩内刺鍼で改善した 1症例 1)鍼灸アキュミット 2)北里大学北里研究所漢方鍼灸治療センター ○大谷倫恵1)、伊藤剛2) 【目的】正常眼圧緑内障の患者の視野狭窄が、経絡治 療および眼窩内刺鍼で改善した症例を経験したので報 告する。 【症例】患者は7Χ歳男性。主訴は両眼上部および左 右外側の視野欠損、および左外側の視野狭窄。 【現病歴】Χ-10年ごろ、自覚症状がなかったが眼科 にて検査を受けたところ、左右上部および外側の視野 欠損を伴う正常眼圧緑内障と診断された。Χ年、当院 受診2か月ほど前から左外側の視野がさらに狭窄し左 後方から来る人の動きが分からず不安なことから、緑 内障の進行防止を期待して当院の鍼灸治療を希望され た。 【治療】鍼灸治療は、脈診に基づき経絡治療の本治法 を行い、標治法では魚陽、太陽、背部兪穴、天柱、脳 空などへ刺鍼を行った。なお初回は眼窩内刺鍼を行わ ず、2診目から眼窩内刺鍼を行った。治療時間は、身 体部分は仰臥位と伏臥位で行いともに15分置鍼した。 眼窩内刺鍼は速刺速抜で行なった。鍼は身体部分にス テンレス製ディスポーザブルの40mm(φ0.18mm)鍼、 眼窩内刺鍼には40mm(φ0.12mm)鍼を用いた。 【経過】初診時、本治と標治の治療後、視野は明るく なり眼もかなり軽くなったため、左外側に出現してい た縞模様は残るものの患者の恐怖感は少し低下した。 1週間後の2診目には、残存していた左外側の縞模様に 対し、両目の経外奇穴である正光穴に眼窩内刺鍼を行っ た。その結果、それまで見えていた左外側の縞模様が 消失した。 【考察】本症例は、進行した状態で疾患が見つかり、 経過観察中にも患者自身が進行を自覚し、さらに生活 上のQOLも低下させる要因となっていた。正光穴は 攅竹と魚腰の中間下方に位置し、様々な眼疾患に用い られる中医学の新しい経外奇穴であるが、この正光穴 への眼窩内刺鍼により、眼窩上動脈血流改善、眼窩上 神経への刺激となり視野の改善につながったものと推 測された。 【結語】正常眼圧緑内障の進行する視野狭窄症例にお いて、経絡治療と正光穴の眼窩内刺鍼は有効であった。 キーワード:緑内障、視野狭窄、経絡治療、眼窩内刺 鍼、正光穴 - 172 - 153 154 -Sun-O1-15:36 正常眼圧緑内障(NTG)による視神経障害に対する鍼 灸治療 1)東京大学医学部付属病院リハビリテーション部 2)はり灸御処一休 ○前原將人1,2)、母袋信太郎1)、林健太郎1)、 永野響子1)、小糸泰治1) 【目的】緑内障は視機能障害を伴う慢性進行性疾患で QOLを低下させる。診療ガイドラインには患者の視 覚の質(QOV:Quality of vision)とそれに伴う生活 の質(QOL:quality of life)の維持が治療目的と記載 されている。今回、診断後28年で症状進行を訴える患 者に鍼灸治療を行った1症例を報告する。 【症例】74歳男性、診断はNTGで両側上半盲様の視 野欠損がある。28年前に視野上部に欠損が発見され、 点眼治療による眼圧コントロールを継続していた。X- 14月、症状悪化により主治医に相談、セカンドオピニ オンも受けたが著効する治療は無く、X月より当院で の鍼灸治療を開始した。 【方法】鍼灸施術を週1回の頻度で、先行報告を参考 に、房水循環促進による眼圧下降と眼球後部の血流量 増加、視神経の障害進行抑制を目的に、風池、攅竹、 太陽、腎兪、肝兪、太衝、三陰交、足三里、四白、 球後、晴明、魚腰、光明、肩井等へ15分置鍼、合谷 (-)曲池(+)に2Hz15分低周波鍼通電を行い、最後 に眼神経領域へ指圧を行った。 【経過】視覚に関連した健康関連QOLを測定する尺 度の評価を初診、19診目にNEI-VFQ(点)で行い、両 目・片目注視での見えにくさは初診、9診、19診目に VAS(mm)で評価した。NEI-VFQ総合得点は55→66、 下位尺度の見え方による役割機能は50→75、見え方に よる心の健康は45→70と改善傾向であった。両眼での 見えにくさのVASは、48→27→14、片眼注視時の見え にくさのVASは右72→29→19、左45→23→8で推移し、 9診目までに改善傾向を示し以降プラトーであった。 【考察・結語】眼圧コントロールは良好だが視機能障 害進行がある患者に対し、点眼治療との併用で定期的 に鍼灸治療を行ったところ、NEI-VFQ評価値の改善と VAS値改善がみられ、その状態が維持された。眼神経 領域への刺激は三叉神経脊髄路を、四肢末端への刺激 は脊髄視床路をそれぞれ介して中枢へ作用した可能性 が考えられた。 キーワード:正常眼圧緑内障、視神経障害、NEI-VFQ、 QOL、自律神経 -Sun-O1-15:48 太陽穴の円皮鍼セルフケアが中高年の眼精疲労に及ぼ す影響 関西医療学園専門学校 ○中井一彦 【目的】目を酷使してきた中高年は、眼精疲労やドラ イアイがよくみられる。それ以外にも肩こり、頭痛と いった全身症状もみられる。今回は、誰もが簡易的に できる円皮鍼を使い、中高年の眼精疲労にどのような 影響を及ぼすのか検討した。 【方法】対象は、眼精疲労がある40歳以上の本校学生 28名(男性8名、女性20名、年齢47.6±7.2歳)。期間 は14日間、1~7日目を無介入期、8~14日目を介入期 とした。介入は就寝前に左右の太陽穴へ円皮鍼を自分 自身で貼付、起床後剥離、これを1週間継続した。貼 付指導は有資格者が行った。基礎データは、年齢、性 別、眼病歴、視力の補正状況。評価は、ドライアイ QOL質問票(DEQS)および自覚症しらべを群別(ね むけ感、不安定感、不快感、だるさ感、ぼやけ感)で 比較した。検定は、ウィルコクソンの順位検定を用い た。 【成績】DEQSは、無介入49.3±14.2、介入36.6±15.5 と介入が有意に軽減(p<0.01)。特に眼鏡補正者は顕 著に軽減した。自覚症しらべは、ねむけ感が無介入 12.3±4.3、介入9.9±4.0、不安定感が無介入8.8±3.8、 介入7.0±2.3、不快感が無介入8.7±3.7、介入7.0±2.1、 だるさ感が無介入10.7±3.7、介入9.3±3.7、ぼやけ感 が無介入11.4±4.2、介入9.4±3.5と全群で介入が有意 に軽減した(p<0.01)。 【考察】眼鏡補正者は他の者より側頭筋が過緊張し、 トリガーポイントを形成しやすい。太陽穴は側頭筋の 起始付近に当たるため、眼鏡使用者はより有効だった と考えられる。また自覚症しらべの軽減は、就寝中の 太陽穴の刺激が自律神経に働きかけ、全身症状の改善 にも貢献したと考えられる。 【結語】太陽穴への円皮鍼セルフケアは、眼精疲労を 軽減させた。また、ねむけ、だるさ等の不定愁訴を軽 減させた。 キーワード:中高年、眼精疲労、太陽穴、円皮鍼、セ ルフケア - 173 - 155 156 -Sun-O1-16:00 鍼刺激が呼吸数に及ぼす影響とHRV解析との関係 1)帝京平成大学大学院健康科学研究科 2)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 3)高崎健康福祉大学保健医療学部看護学科 4)スポーツ健康医療専門学校鍼灸科 ○廣井寿美1,3)、篠崎波輝1)、長嶺澄佳1)、 篠原大侑1,4)、玉井秀明1,2)、今井賢治1,2) 【目的】鍼刺入時の痛みや緊張に伴い、呼吸の乱れが 生じることがある。心拍変動(heart rate variability: HRV)解析には呼吸の影響が混入するため、メトロ ノームなどによる呼吸統制が推奨されている。しかし、 呼吸統制は意図的にHRV上のHigh frequency: HF成分 の統制となるため、その必要性を疑問と考えた。そこ で、自然呼吸下でのHRVに対する鍼刺激の作用およ び鍼刺激による呼吸変化の差異を確認することとした。 【方法】18~30歳の健常男性14名を対象にした。対照 群と鍼刺激群のcrossover designで行った。合谷穴 (LI4)にステンレス鍼20号・40mmを15mm刺入し、 雀琢術(1Hz)を90秒間行った。前後の安静を含め、 自然呼吸のパターンと心電図を同時に継続的に記録し た。経時的変化は多重比較法(Tukey法)、群間比較 はMann-Whitney検定を行った。 【結果】安静時の心拍数の平均値は、両群に差はなかっ た(p=0.28)。鍼刺激群にのみ心拍数減少(p<0.001)、 HF%の上昇(p=0.03)、low frequency / high frequency: LF/HFの減少(p=0.028)が見られた。また、鍼刺激 中の呼吸数は、増加(n=7)、減少(n=3)、変化なし (n=4)と対象者によりパターンが異なった。これら の、刺激中の心拍数、HF、LF/HFを比較した結果、 全て有意差は見られなかった。 【考察】呼吸統制をしない状態で鍼刺激は心拍数減少 とともにHF 上昇とLF/HF減少を引き起こした。この ことは、相対的な副交感神経系の亢進(交感神経系の 抑制)が反映されていることが示された。鍼刺激によっ て呼吸数を変化させることはあるが、HRV上の結果 には反映されないことが確認できた。 【結語】自然呼吸下でも、鍼刺激による心拍数減少の 再現性がみられる。鍼刺激による呼吸パターンの変化 はHRV上の結果には反映されない。 キーワード:心拍変動解析、呼吸、鍼刺激、クロスオー バーデザイン -Sun-O1-16:12 慢性便秘症に対する鍼通電刺激の影響 1)東京有明医療大学附属鍼灸センター 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 ○小田木悟1)、谷口博志1,2)、谷口授1,2)、 坂井友実1,2) 【目的】これまでの研究結果より、足三里穴への鍼灸 刺激は結腸運動を促進するとされている。一方で、実 臨床において足三里穴への刺激のみでは便秘の改善に 至らないことを経験する。我々は(公社)全日本鍼灸 学会学術大会(東京)において、腸骨筋への鍼通電刺 激(EA)は慢性便秘症患者の結腸運動を増加させる ことを報告した。今回、単一被験者において腸骨筋と 足三里穴へのそれぞれの刺激が、結腸運動へ及ぼす影 響を検討した。 【方法】10年以上便秘を自覚し、本研究の測定や発表 に同意が得られた女性1名(45歳)を対象とした。対 象者には記録開始3時間前に食事をとらせ、1時間前か らは絶飲食とさせた。腸音は振動計測センサーマイク を上前腸骨棘と臍との中点に、左右それぞれ貼付し記 録した。参加者の排便状況は日本語版便秘評価尺度 (CAS)、経過は排便日誌を用いて評価した。腸音の測 定は安静30分、EAの介入15分、介入後60分の合計105 分とした。1回目の刺鍼部位は腸骨筋へのEAとし、2 回目は足三里穴へのEAとした。なお、それぞれの測 定は1ヶ月の間隔をあけ、性周期の影響を考慮し黄体 期での測定とした。 【結果】CASは1回目10点、2回目9点で同程度の便秘 であった。腸骨筋へのEA後に近位結腸運動の減少と 遠位結腸運動の増加がみられたが、足三里穴へのEA 後は両結腸運動の減少を認めた。また、両刺激とも刺 激直後の排便には至らなかったが、腹部の張り感や痛 みの改善がみられた。 【考察および結語】足三里穴と比較して腸骨筋への EAは遠位結腸運動の増加を認めたことから、結腸運 動の改善には腸骨筋への刺激が有用である可能性があ る。しかし、今回の症例では腸骨筋へのEAで遠位結 腸の運動が増加したにも関わらず排便に至らなかった ことから、複数回の刺激や他部位への施術なども考慮 に入れる必要があるものと推察された。なお、便秘に 伴う腹部の痛みや不快感に対しては両刺激ともに期待 できそうである。 キーワード:慢性便秘、腸骨筋、足三里穴、鍼通電刺 激 - 174 - 157 158 -Sun-O1-16:24 鍼灸学研究を視野に入れた空腹時と摂食時の胃機能の 評価 1)帝京平成大学健康科学研究科 2)スポーツ健康医療専門学校鍼灸科 3)大空会花園整形外科内科 4)帝京平成大学東洋医学研究所 5)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 6)東京有明医療大学鍼灸学科 ○長嶺澄佳1)、篠原大侑2)、廣井寿美1)、 篠崎波輝3)、皆川陽一1,4,5)、谷口博志6)、 今井賢治1,4,5) 【目的】これまで、胃運動の評価には胃内圧測定や画 像診断が用いられてきたが、胃音を計測して客観的に 評価した報告は見受けられない。そこで、空腹時の胃 強収縮による腹鳴に着目し、胃音を胃運動の指標とし て用いる可能性を検討するため、胃音と胃電図を同時 に記録し、胃音が胃の電気活動や運動とどのように関 連しているかを解析した。本研究では、鍼灸学研究を 視野に入れ、食事負荷前後で胃音と胃電図を同時測定 し、胃機能および運動能の全体像を検討した。 【方法】18歳以上30歳未満の健常男性10名を対象とし た。高感度マイクを心窩部に固定し、電極を胸腹部に 装着して胃音と胃電図を記録した。被験者はリクライ ニング姿位で安静20分の後、食事負荷前30分、食事負 荷(経口栄養食、250ml、250kcal)2分、食事負荷後30 分の記録を行った。記録された胃音と胃電図の波形を 目視で関連性を確認し、胃音ではスパイク数をカウン トした。胃電図では周波数特性をrunning power spectrumで評価した。 【結果】胃音と胃電図の波形は、食事負荷前後におい て9名で一致を認め、1名は食事負荷後のみで一致を確 認した。また、胃音から典型的な胃運動パターンが捉 えられ、摂食負荷後には胃音のスパイク数が有意に増 加した。胃電図においても摂食後に振幅およびpower が増大し、さらに摂食負荷直後には迷走神経反射に伴 う一過性の周期低下(postprandial dip)を9名で認め た。 【考察・結語】胃音と胃電図の振幅増大の出現が一致 し、特に食事負荷時にはその関連性が全例で確認され た。これにより、胃音が胃運動を直接評価する指標と して有用であることが示され、胃音と胃電図を併用す ることで胃運動機能と自律神経機能(迷走神経機能) を非侵襲的かつ包括的に評価できる可能性が示唆され た。今後、臨床や研究現場での応用を通じ、鍼灸刺激 での胃運動機能や自律神経機能のさらなる評価の展開 もできる事となり、継続して研究を遂行して行く。 キーワード:胃音、胃電図、胃運動 -Sun-O1-16:36 1型糖尿病の夜間睡眠時血糖コントロールに対する鍼 治療の検討 東洋医学研究所®グループ二葉鍼灸院 ○山田篤 【目的】1型糖尿病はインスリン分泌不全のため血糖 値の管理が難しく、夜間睡眠時でも同様である。我々 はこれまで糖尿病に対して鍼治療が効果的なことを示 唆してきた。今回は1例ではあるが、1型糖尿病の夜間 睡眠時の血糖コントロールに対して鍼治療の影響を検 討した。 【方法】対象は30歳代女性。1歳時に1型糖尿病を発症 した。現在はHbA1c7%台で安定している。インスリ ン療法は超速効型を食直前(朝12 昼8 夕14単位)と 持効型を就寝前(18単位)にしている。黒野式全身調 整基本穴による生体の統合的制御機構の活性化を目的 とした生体制御療法を筋膜上圧刺激(鍼治療)にて週 1~2回施術した。就寝時を0時とし、夜間睡眠時血糖 値の記録はFreeStyleリブレ(Abbott社)を用い、記録 された血糖値を1時間毎にまとめ、鍼治療施術日の夜 間睡眠時(a群)と他の日の夜間睡眠時(b群)で比較 した(107日間中a群:22日b群:85日)。統計は unpaired t-test、データのばらつきの大きさを変動係数 で求めた。 【結果】就寝時から3時間のa群とb群で差が認められ た(a群vs b群、平均値±標準偏差(mg/dl); 0~1時間 160.4±43.6 vs 184.7±70.8、1~2時間158.4±44.6 vs 182.3±70.4、2~3時間155,7±51.3 vs 175.0±65.5 そ れぞれp<0.05)。変動係数は、最初の2時間のa群はb 群と比較してばらつきが小さかったが、時間が経過す るにつれてばらつきが大きくなった。 【考察・結語】鍼治療施術日の夜間睡眠時の心臓副交 感神経は、特に睡眠時から3時間のノンレム睡眠時に 亢進することが報告されている。このことから、鍼治 療による副交感神経の亢進が1型糖尿病の夜間睡眠時 血糖コントロールに対して影響を与えていることが示 唆された。 キーワード:1型糖尿病、夜間睡眠時血糖コントロー ル、黒野式全身調整基本穴、副交感神経 - 175 - 159 160 -Sun-O1-16:48 多芯円皮鍼による局所皮膚血流反応 1)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 2)帝京平成大学東洋医学研究所 3)スポーツ健康医療専門学校 4)帝京平成大学ヒューマンケア学部柔道整復学科 ○脇英彰1,2)、大澤真1,2)、篠原大侑3)、 飯村佳織1,2)、秋元佳子4)、今井賢治1,2)、 宮崎彰吾1,2) 【目的】循環障害の病態が存在する肩こりや腱障害、 シンスプリント、皮膚老化(しわ)等に対する鍼療法 の主な治効機序は、軸索反射による血流の改善と考え られている。本演題では、開発中の多芯円皮鍼で刺激 した際の局所血流量の変化及び安全性に関して報告す る。 【方法】健常ボランティア16名を、多芯円皮鍼(鍼長 0.55ミリ、鍼底部直径0.3ミリ、鍼本数37本、ピッチ 1.0ミリ、生体安全性樹脂製)を前腕掌側中央部に30 秒間留置し、その1週間後にシャム円皮鍼(同製の平 坦な円盤)で同様に刺激する群と、順序を反対に刺激 した群に1:1の割合で無作為に割り付け、単盲検下で 試験を実施した。主要アウトカム評価項目は刺激局所 の組織血流量の変化率(刺激前コントロール→刺激5 分後)とし、レーザー血流計(ALF21、ADVANCE社) を用いて測定した。副次アウトカム評価項目は心拍数 とし、心電図RR間隔より算出した。安全性について は、刺激後1週間以内に生じた有害事象を聴取した。 統計学的手法には線形混合モデルを用い、有意水準は 5%とした。 【結果】刺激局所の組織血流量の変化率(平均)は、 シャム円皮鍼4%(1.05→0.97mL/min/100g)に対して 多芯円皮鍼1304%(0.82→9.64mL/min/100g)で有意な 差が認められ(p<0.001)、時期効果(p=0.474)、持 越し効果(p=0.441) は認められなかった。心拍数 (平均)はシャム円皮鍼(77→76回/分)、多芯円皮鍼 (80→79回/分)ともに変化せず、群間にも有意な差は 認められなかった。なお、両群ともに有害事象は発現 せず、多芯円皮鍼の69%、シャム円皮鍼の63%が正し く認識された。 【考察及び結語】多芯円皮鍼で30秒間刺激すると、心 拍数の増加を伴わずに局所血流量は徐々に増加し、刺 激5分後には刺激前コントロール値の1304%に達した。 多芯円皮鍼による刺激は、軸索反射や一酸化窒素の関 与による局所血流の改善を主な機序として、循環障害 の病態が存在する症状の改善に期待できると考える。 キーワード:鍼灸医学、局所血流、神経系生理学的現 象、マイクロニードル(微小鍼)、浅刺 -Sun-O2-9:00 橈骨骨折後の手関節尺側の疼痛に鍼治療が有効であっ た1症例 筑波大学理療科教員養成施設 ○當麻知砂子、工藤滋、和田恒彦、濱田淳、 沖中美世乃 【目的】治療の経過から病態把握に基づき施術部位を 変更したところ良好な経過を得られた症例を経験した ため報告する。 【症例】55歳女性[主訴]右肩から手関節にかけた痛 みと痺れ[現病歴]X年2月、転倒し右橈骨遠位端を 骨折。ギプス装着中、右手関節尺側の疼痛が痺れを伴 う鈍痛となり残存。また右肩から上腕前腕にかけた強 張りと重だるい痛みが出現し、軽減することなく継続。 骨折から1年7ヶ月後、症状の改善を求め本施設に来療。 [所見](全て右側)頸肩部の強い筋緊張。モーリーテ ストで上肢内側から小指にかけた痺れが増強。手関節 の尺屈動作により疼痛が発生。手関節橈屈を伴う前腕 回外自動運動で手関節尺側の痛みと痺れが増悪。[評 価項目]右手関節尺側の痛みをVASにて測定(1)安 静時・前腕回外時(2)治療前・治療後。 【治療・経過】治療11回/83日間。初診~6診目、右肩 から手関節にかけた痛みと痺れに対し斜角筋に置鍼20 分、頸肩部の筋緊張に対し肩甲挙筋・僧帽筋に鍼通電 1Hz15分を実施。頸肩部の症状と肩から前腕にかけた 重だるい痛みは軽減したが、手関節の痛みと痺れは不 変であった。7診目の触診において、尺骨茎状突起直 下尺側に2mm×4mm程度の硬結を認め押圧で手関節 の疼痛が増強することを確認。「橈骨遠位端骨折には TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷など手関節尺側部 に合併症状が起こりやすく50歳以上に発症頻度が高い」 との報告に基づき、局所への治療に変更。尺側手根屈 筋と尺骨茎状突起直下尺側の硬結に鍼通電1Hz15分を 実施。手関節の安静時痛は11診時点でほぼ消失した。 VASの変化[6診治療前→11診治療前]安静時:62→1、 前腕回外時:75→25[7診治療前→治療後]安静時:3 0→5、前腕回外時:56→15[11診治療前→治療後]安 静時:1→0.8、前腕回外時:25→13。 【考察・結語】複数の病態を有する症例に対し、病態 把握を通じて治療計画を変更したことが主訴の改善に 有効であった。 キーワード:橈骨遠位端骨折、TFCC損傷、手関節痛、 鍼通電療法、病態把握 - 176 - 161 162 -Sun-O2-9:12 左肩関節周囲炎後の結帯動作獲得に鍼灸治療が有効で あった一症例 1)レディース鍼灸院HIROYULARI 2)なりもとレディースホスピタル 3)健康スタジオキラリ/kirari鍼灸マッサージ院 ○重安香梨1,2)、高橋靜佳1,2)、安田進太郎2)、 高橋護3) 【目的】ブラジャーを付けることが困難な症例を担当 した。ブラジャーを付ける際は後ろに手を伸ばす動作 が必要なため結帯動作に着目した。鍼灸治療とセルフ ストレッチングを組み合わせて良好な効果が得られた ので報告する。 【症例および現病歴】60代女性。自宅で転倒し左肩を 負傷。病院でCT、エコーに異常はなく、左肩関節周 囲炎と診断された。受傷4カ月後に当院へ来院し鍼灸 治療を開始した。主訴としてブラジャーを付けたいと の事だった。 【所見】姿勢は左肩甲帯の屈曲、挙上、左肩甲骨の軽 度上方回旋を呈していた。結帯動作は肩関節伸展・内 旋にて仙骨部まで後方へ手を伸ばすことはできるが、 早期から左僧帽筋上部線維の筋緊張亢進が強く肩甲帯 の挙上が認められる。仙骨部より上方へ手を伸ばそう とするが肩甲帯の挙上がさらに増大して動作が終了と なる。結帯動作は母指頭から第7頸椎棘突起間が31cm であった。左肩関節可動域は外転65°、屈曲90°、伸 展30°、外旋10°、内旋80°であった。 【治療】動作時の早期の左僧帽筋上部線維の筋緊張改 善を目的に置鍼と灸施術を行った。左肩甲帯屈曲の改 善目的に左小胸筋のダイレクトストレッチグと、自宅 でのセルフストレッチングを指導した。 【経過】週に1回のペースで治療を実施し、治療8回目 終了時に結帯動作は母指頭から第7頸椎棘突起間が14 cmとなり、下着(ブラジャー)の着脱動作ができる ようになった。 【考察】結帯動作に必要な左肩関節の可動範囲はある 程度確保できていたが、開始肢位の姿勢不良があり結 帯動作に制限が生じていた。そのため、開始肢位を改 善することで結帯動作を獲得することができた。また、 動作時に起こる左僧帽筋上部線維の筋緊張亢進も結帯 動作の制限となっていたため動作時の筋緊張を抑制す る必要があった。 【結語】結帯動作の獲得に対し肩甲帯のアライメント 不良と、動作時筋緊張に着目して治療した結果、結帯 動作の獲得に至った。 キーワード:結帯動作、肩関節周囲炎、動作時筋緊張、 肩甲帯アライメント、鍼灸治療 -Sun-O2-9:24 変形性肩関節症による運動制限に対する治療効果 1)筑波技術大学大学院技術科学研究科 保健科学専攻鍼灸学コース 2)筑波技術大学保健科学部 保健学科鍼灸学専攻准教授 ○松村一輝1)、近藤宏2) 【目的】変形性肩関節症による右肩の動かしづらさを 主訴とする患者に対し、鍼治療およびリハビリテーショ ンの併用により症状およびADLが改善した症例につ いて報告する。 【症例】79歳女性。主訴は右肩の動かしづらさ。 【現病歴】慢性的な右肩の動かしづらさがあり、定期 的に鍼灸院やマッサージ院に通院していた。症状の増 悪寛解を繰り返し、痛みが出現した際は整形外科医院 にて消炎鎮痛のための注射を受けていた。X年右肩 の動かしづらさが増悪してきたため、本学附属東西医 学統合医療センターを受診し、変形性肩関節症と診断 され、治療を開始した。 【初診時所見】肩関節可動域制限(右/左):屈曲 160°/180°、外転110°/170°、外旋20°/50°、結髪 動作制限+、結帯動作制限+、ADL制限+(更衣動作)、 筋過緊張:右僧帽筋、右菱形筋、右棘下筋。 【治療】[鍼治療]筋緊張緩和を目的に長さ50mm、 太さ0.18mmのステンレス鍼を使用し、右僧帽筋上部 線維、右棘下筋に鍼通電療法(1Hz、15分間)、右菱 形筋に置鍼術を行い、疼痛緩和を目的に右肩(LI15)、 右肩(TE14)に置鍼術(15分間)を行った。[リハ ビリテーション]筋力強化訓練及び柔軟性向上のため のストレッチングを行った。鍼治療を21回、リハビリ テーションを20回行った。 【評価】肩関節の運動制限の効果判定には、DASH及 び肩関節可動域を用いた。 【経過】DASHの機能障害/症状スコアは初診時9.8か ら第19診目6.0、仕事スコアは初診時18.8から第19診 目6.23に減少した。第19診目の右肩関節可動域は外転 150°、外旋40°に改善した。 【考察・結語】本症例は、非薬物療法としての鍼治療 とリハビリテーションの有効性を示しており、患者の ADLや仕事への支障を減少させる可能性が示唆され た。今後は、長期的な効果やQOLの改善に向けた治 療の検討が必要である。 キーワード:変形性肩関節症、鍼治療、リハビリテー ション、関節可動域制限、The Disability of the Arm, Shoulder, and Hand(DASH) - 177 - 163 164 -Sun-O2-9:36 特発性側弯症に伴う症状に対する鍼治療の試み 1)東京医療福祉専門学校教員養成科臨床専攻課程 2)東京医療福祉専門学校教員養成科教員養成課程 3)東京医療学院大学保健医療学部 ○矢部敬史1)、小杉風音1)、仙田昌子1,2)、 間下智浩1,2)、大内晃一1,2,3) 【目的】限局的ではあるが、特発性側弯症の対症療法 として効果が認められたので報告する。 【症例】29歳女性。主訴は特発性側弯症を起因とする 腰背部痛。 【現病歴】14歳に思春期特発性側弯症と診断され、5 年間装具治療を実施した。本人の意思により観血的手 術はせず経過観察とした。X-3年前より背中の痛みが 強くなり、X-18ヶ月前に病院を受診、X-5ヶ月前に痛 みの為、長時間の静止時立位姿勢が困難になり鍼治療 を検討した。 【所見】胸腰部の関節可動域(ROM)前屈45°後屈 10°左側屈15°右側屈20°右回旋35°左回旋35°。 Cobb角は胸椎カーブ57°腰椎カーブ58°。腰背部痛 のVAS58mm、疼痛生活障害評価尺度(Pain Disability Assessment Scale: PDAS)14。神経学的所見(-)、脊 柱起立筋(両側の関元兪)の筋硬度左1.37N、右1.48N 及び皮膚温度左34.5℃,右35.0℃。 【治療・経過】鍼治療は脊椎凸側の傍脊柱筋群の圧痛 点(両側4-7箇所の夾脊穴)に実施。鍼治療を週2回の 頻度で4回実施した結果、各回治療直後においてVAS はやや減少傾向をROMは後屈のみ改善傾向を示した。 経過観察の為2週間の鍼治療を施さない期間を設け VAS、ROMを計測した結果、治療効果の継続は認め られず、再度治療を4回実施した結果、治療直後は毎 回VAS、ROMともに改善傾向を示し、最終的にVAS 51mm、後屈のROM25°となった。問診より、患者の 主観的な治療効果の継続日数は初回治療時には1日で あったが、治療8回終了時には4日へと延長し、PDAS は13であった。筋硬度、皮膚温度は治療後の著名な変 化は認められなかった。 【考察】治療直後にVASとROMに改善傾向が認めら れたことより、構築性側弯症の中の特発性側弯症に対 する疼痛緩和の対症療法として鍼治療の有用性が示唆 された。更に、治療回数を重ねるごとに治療の持続効 果が延びることが期待される。 【結語】特発性側弯症において、鍼治療は対症療法と してQOL向上に期待できる可能性が推察された。 キーワード:思春期特発性側弯症、構築性側弯症、鍼 治療、ROM、QOL -Sun-O2-9:48 股関節痛に対する鍼治療の1症例 東洋医学研究所グループにしだ鍼灸院 ○西田修 【目的】左股関節痛を訴えている患者に対して、黒野 式全身調整基本穴(生体制御療法)を行い、NRSと関 節可動域(ROM)を用いて評価したところ良好な結 果が得られたので報告する。 【症例】49歳女性。自営業。主訴:左股関節~左大腿 部内側に痛み。現病歴:X年Y月Z日ゴルフ場にてゴ ルフをした。その後、左股関節に痛みはなかったが、 X年Y月Z+1日起床時痛みが増大した。歩行時、階段 の昇降時に痛みが見られた。既往歴:30歳に腰椎椎間 板ヘルニアの手術。知覚所見:パトリックテスト陽性。 左股関節ROM屈曲90度、伸展10度、外転30度、内転 15度、外旋20度、内旋20度であった。外転と外旋時に 痛みが増大した。治療:筋膜上圧刺激にて、黒野式全 身調整基本穴(全日本鍼灸学会雑誌34号3、4号参照) による生体の総合的制御機構の活性化を目的とした生 体制御療法(鍼治療)と衝門―箕門への低周波鍼通電 療法5分間行った。治療期間はX年Y月Z+3日~Y+1月 Z+28日までの28日間(来院数5回)。 【結果】NRSは5診目までに漸減し(9→7→5→3→1)、 5診目以降は症状の消失を認めた。また、ROMがすべ て改善した。(左股関節屈曲90度(初診時)→115度 (4回目)、伸展10度→15度、外転30度→40度、内転15 度→20度、外旋20度→40度、内旋20度→40度)。内旋、 外旋時に痛みの消失が見られ、ゴルフができるように なった。 【考察】左股関節のROM、痛みとNRSが改善し歩行 時、階段の昇降時に痛みが消失しQOLの改善がみら れた。このことは、鍼治療によって生体の制御機構が 活性化したことや、局所の血流改善と疼痛緩和により 左股関節の外転筋の拮抗筋(大内転筋、長内転筋、短 内転筋等)の筋緊張が緩和され、さらに左股関節周辺 の靭帯や左股関節軟骨への負荷が減少したのではない かと考えられる。 【結語】今回、左股関節痛の患者に対して鍼治療を行 いNRSとROMを使用し検討することによって鍼治療 の有効性を定量的に検討することができた。 キーワード:股関節痛、黒野式全身調整基本穴、NRS、 関節可動域(ROM) - 178 - 165 166 -Sun-O2-10:00 筋腱移行部付近のトリガーポイントに軽微な鍼刺激で 奏効した症例 スカプラ鍼灸整骨院グループ 東大和市駅前はり灸整骨院 ○松多利彦 【目的】鍼が苦手(NRS7/10)な野球肩の患者に、原 因筋の筋腱移行部付近のトリガーポイントに軽微な鍼 刺激を行って効果がみられた1症例を報告する。 【症例】14歳男子野球部。初診日X年Y月Z日 【現病歴】Z-7日から投球時に少し痛みが出るように なり、Z-2日キャッチボールで痛みが出たので受診。 【評価】肩関節可動域とシャドウピッチング時のVAS (今まで感じた最大の痛みを100mmとする)を用いて 評価した。 【所見】右肩2ndポジション内旋35度3rdポジション内 旋30度での痛みと関節可動域制限を認めた。投球時の 加速期で痛むVAS59mm。 【治療方法】押圧すると関連痛がでる硬結部をトリガー ポイントとし、棘上筋の外側部(肩峰下)、棘下筋外 側(肩甲棘外縁下)、大胸筋の上外側(烏口突起の外 側)、三角筋前部繊維上部のトリガーポイントの計4穴 にSARASAメディカルニードル(39mm 16号、18号) を4mm刺入し、雀啄術を約3mmの振幅で8回後、捻鍼 術4回を行い抜鍼。再度、肩の可動域を評価し、制限 の強い原因筋のトリガーポイントに4mm刺入し置鍼 または運動鍼を施した。 【治療・経過】治療は週に2~1回の計5回行った。1回 目の治療後、2ndポジション内旋45度3rdポジション内 旋50度シャドウピッチングVAS22mm。術後の鍼の苦 手意識はNRS2/10。5回目(Z+17日)右肩2ndポジショ ン内旋65度3rdポジション内旋70度。シャドウピッチ ングVAS0mm鍼の苦手意識はNRS0/10となった。 【考察】少ない取穴と軽微な鍼刺激で、患者が想像す る以上の改善が初回に実感できたことでラポールが築 け、本治療法に対する鍼の苦手意識がより軽減したと 考えられる。また、取穴したトリガーポイントは筋腱 移行部付近で、腱紡錘を活性化させIb抑制がおこり筋 肉が弛緩し関節可動域の増大や、血流を促進し疼痛軽 減に繋がったと考えられた。 【結語】鍼が苦手な患者に本治療法は施術可能であり、 野球肩の症状改善に本治療法の有用性が示唆された。 キーワード:筋腱移行部付近のトリガーポイント、軽 微な鍼刺激、野球肩(投球障害肩)、鍼 が苦手な患者、腱紡錘 -Sun-O2-10:12 野球選手の肘頭疲労骨折に対する鍼治療の一症例 1)東京有明医療大学大学院保健医療学研究科 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 ○石井輝1)、寄本寛人1)、藤本英樹1,2) 【背景および目的】肘頭疲労骨折の手術後の関節可動 域制限と周囲の筋緊張に対して鍼治療を行い、早期競 技復帰を果たした一症例を報告する。 【症例】患者:22歳、男性、身長175cm、体重72kg、 専門競技:野球(野球歴14年、活動回数1回/週、活動 時間4-5時間/日)。主訴:肘関節の可動域制限と筋緊 張。現病歴:X-3ヶ月肘関節の疼痛を訴え整形外科を 受診し、右肘頭疲労骨折および右肘骨棘と診断された。 手術適応となり、X-7日に鏡視下骨棘切除術を行った。 術後、自動・他動での屈曲、伸展の肘関節ROM訓練 を行なっていた。今回、肘関節のROM改善と筋緊張 緩和ならびに早期競技復帰に向けた鍼治療を目的に当 センターを来療された。所見:肘頭周囲の腫脹・熱感 (+)、上腕内側下2/3内出血(+)、伸展制限(+)、自動 肘関節伸展時痛(-)、内側上顆部・肘MCL圧痛(+)、 ROM:屈曲130°、伸展-10°、上腕三頭筋MMT4、 肘関節内・外反ストレステスト(-)、肘関節最大の伸 展時の不安感のVAS52mm、力の入りにくさのVAS40 mm。 【治療】肘関節のROM改善と上肢の屈筋群の筋緊張 緩和を目的に、主に上腕二頭筋(腱および腱付着部を 含む)、腕橈骨筋、円回内筋などの屈筋群の圧痛・硬 結部位に対して鍼通電療法(単回使用毫鍼、寸3-3番、 セイリン社製)を10分間実施し、必要に応じて運動鍼 や単刺を行なった。 【経過】鍼治療は合計4回実施した。第2診目から圧痛・ 硬結のあった上腕二頭筋、上腕三頭筋、腕橈骨筋、円 回内筋に対して鍼治療を開始し、第3診目の回外ROM が100°に改善されたと同時に肘関節の最大伸展時の 不安感VAS22mm、力の入りにくさVAS21mmに減少 した。4回の治療が修了し、初診時肘関節屈曲角度 135°から145°までROMが改善され、前腕回外ROM も70°から110°まで改善がみられた。術後1ヶ月後に は軽い投球練習を含むトレーニングを実施することが できた。 【考察および結語】肘関節のROM改善と筋緊張緩和 を目的に上肢屈筋群に鍼治療を行い、症状の改善がみ られ、早期競技復帰に寄与することが示唆された。 キーワード:スポーツ障害、スポーツ、鍼治療、野球 選手、肘頭疲労骨折 - 179 - 167 168 -Sun-O2-10:24 肉ばなれの痛みは鍼治療直後に軽減するか 1)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 2)東京有明医療大学大学院保健医療学研究科 ○藤本英樹1,2)、石井輝2)、寄本寛人2) 【背景及び目的】肉ばなれはスポーツ選手に多い外傷 の1つである。これまで鍼治療は肉ばなれに対して治 療の手段の1つとして用いられている。本研究では肉 ばなれによって生じた痛みに対して鍼治療直後の軽減 効果について検討することを目的とした。 【方法】対象は肉ばなれを受傷したアメリカンフット ボール選手9例(男性: 26.9±4.0歳)とした。受傷部 位は、ハムストリングス7例、下腿三頭筋2例であった。 鍼治療は、単回使用毫鍼(鍼体長50mm、直径0.2mm、 セイリン社製)を用い、肉ばなれの経過を踏まえ、リ ハビリテーションの時期(急性期、回復期I、回復期II、 予防期)に応じて、低周波鍼通電療法(鍼電極低周波 治療器、picorina)、置鍼、単刺、運動鍼を選択した。 評価には、鍼治療前後に痛みのVisual Analogue Scale (以下、VAS)を用いた。統計解析は、SPSS ver23を 用い鍼治療前後のVASの比較には対応のあるt検定を 行い、有意水準は5%とした。 【結果】9例の肉ばなれに対して合計15回(ハムスト リングス11回、下腿三頭筋4回)の鍼治療を行った。 鍼治療の時期は急性期:2回、回復期I:2回、回復期II: 7回、予防期:4回であり、Time loss injury:13回、 Non time loss injury:2回であった。鍼治療の種類は、 低周波鍼通電療法:5回、単刺:5回、運動鍼:5回で あった。競技復帰までの日数は、51.3±27.8日であっ た。鍼治療前のVASは44.3±16.3mm、鍼治療後のVAS は26.9±10.7mmで有意に減少していた(p<0.05)。回 復期IIにおける7回の鍼治療前のVASは33.7±14.4mm で鍼治療後のVASは21.0±10.4mmで有意に減少して いた(p<0.05)。 【考察及び結語】肉ばなれの9例に対して鍼治療の直 後効果を検討した結果、VASは有意に減少(p<0.05) しており、痛みが軽減することが示唆された。リハビ リテーションの時期では回復期IIでTime loss injuryに 対して鍼治療を行うことが多かった。今後、継続的な 効果として競技離脱期間の短縮や予防に有用であるか を検討していく必要がある。 キーワード:スポーツ、肉ばなれ、鍼治療、スポーツ 外傷、アメリカンフットボール -Sun-O2-10:36 女子陸上選手に対する腰痛に鍼施術とマッサージを併 用した1症例 1)京都府立盲学校高等部理療科 2)筑波技術大学大学院技術科学研究科 保健科学専攻 ○大渕真理子1,2)、近藤宏2) 【目的】鍼施術とオイルマッサージが女子陸上中長距 離選手の腰痛や全身疲労の改善に寄与した症例につい て報告する。 【症例】21歳女性、大学陸上部所属[主訴]腰痛、全 身疲労[現病歴]X年9月走行練習後に腰痛が出現。 セルフケアでは腰痛や全身疲労が改善しないため、本 校附属臨床センターで腰痛と全身疲労改善のための施 術を開始。[初診時所見]L4/L5及びL5/S1の両側脊柱 直側部に鈍痛。筋力トレーニングと走行練習後に痛み が増悪し、全身の疲労が残存する。日常生活では就職 活動や卒業論文作成が続き睡眠障害あり。SLR80°-/8 0°-、腰椎前弯増強、体幹動作時痛:前屈+指床間距 離50cm、後屈+、回旋右+/左-、筋緊張:腰部脊柱起立 筋、腰方形筋、大殿筋、中殿筋、ハムストリングス、 大腿四頭筋(全て左右)、圧痛:L4/L5・L5/S1左右棘 突起直側部 【治療】施術はあん摩マツサージ指圧師・はり師・き ゆう師免許を保有する教員が行った。筋緊張緩和及び 疼痛改善を目的に腰椎椎間関節部、腰臀部の筋群に鍼 通電療法(1Hz/15分間)及び適宜単刺術を実施(50 mm・20号鍼)。下肢へのエッセンシャルオイルを使 用したオイルマッサージ(20分間)を実施。[評価] 主項目:腰部疼痛強度(Visual Analogue Scale)、副 項目:練習状況、睡眠状況、指床間距離。 【経過】施術は9月から12月(1回/2週)計8回施行し た。腰部疼痛強度は初診時70mm、第6診50mm、指床 間距離0cmとなり練習後の痛みは減少傾向。第7診走 行練習終了後に突然腰痛が悪化し、1週間程練習中止。 腰部疼痛強度100mm。第8診では60mmとなった。ま た、第2診以降は入眠時間が短縮し入眠障害の改善が みられた。 【考察・結語】鍼施術とオイルマッサージは女子陸上 中長距離選手の腰痛や全身疲労を改善させ、コンディ ショニングに役立つことが示唆された。 キーワード:鍼、オイルマッサージ、陸上競技、女性、 腰痛 - 180 - 169 170 -Sun-O2-10:48 マスターズ陸上選手に対する鍼施術の1症例 1)帝京平成大学健康科学研究科鍼灸学専攻 2)帝京平成大学鍼灸臨床センター 3)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 ○梶葉しのぶ1,2)、恒松美香子1,2,3)、池宗佐知子1,2,3)、 久島達也1,2,3) 【目的】今回、マスターズの陸上選手の膝痛および関 連愁訴に対して、膝周囲筋への低周波鍼通電刺激を行っ た結果、愁訴や身体機能が改善した症例を報告する。 【症例】39歳男性。陸上短距離(100~400m)の選手 で、練習頻度はトラック練習週2回、ウエイトトレー ニング週1回、有酸素トレーニング週1回、レース頻度 はシーズン中(4~11月)に8回程度である。X年12月 くらいから、トレーニングを行った翌日、階段を上る 時やバイクをこぐためペダルを踏む際に、左膝膝蓋骨 上方に毎回痛みや関節自体に違和感を覚えるようになっ てきた。それまでも同様の症状が時々生じていたが、 毎回生じるようになったのは上記年月頃である。また、 スタート時のセット姿勢およびコーナリング時の不安 定感も気になっている。X+1年、鍼施術を行う。施術 前の左膝の安静時の痛みの程度は100mm のvisual analogue scale (以下、VAS)で10mm、スタート姿 勢時の自覚的不安定感79mmであった。膝関節可動域 は左右とも0~130°、左膝周囲に熱感や腫脹は認めら れず、マックマレーテストおよび圧アプレーテストは 陰性であった。また、不安定感の評価のために重心動 揺計で30秒間、開眼状態での左片脚立ち時の重心の状 況も評価し、総軌跡長は686.7mmであった。本症例に 対して、内側広筋への2Hz、10分の低周波鍼通電をス テンレス鍼の60mm・20号鍼を使用して行った。刺入 部位は左内側広筋上の圧痛・硬結部とした。 【結果】施術後、左膝の痛みの程度はVASで7mm、 スタート姿勢時の自覚的不安定23mmに改善した。ま た、左片脚立ち時の総軌跡長は548.1mmと減少した。 【考察】内側広筋に鍼通電を行ったことにより、筋の 過緊張や循環の改善が生じ、膝関節の痛みが改善した ことが推測される。また、内側広筋の筋出力も改善し、 重心が安定化したことも考えられる。 【結語】内側広筋への単独の鍼施術であっても、膝痛 の改善および重心の安定が改善することが示唆された。 キーワード:膝痛、低周波鍼通電、内側広筋、重心動 揺、マスターズ -Sun-O2-11:00 新潟医療福祉大学における鍼灸アスリートサポート (第1報) 1)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部 鍼灸健康学科 2)アスリートサポート研究センター ○木村啓作1,2)、村越祐介1,2)、粕谷大智1) 【目的】本研究は、鍼灸アスリートサポートを利用し た選手の外傷・障害特性を明らかにすることを目的と した。 【方法】対象は20XX年4月から12月までの期間に本学 鍼灸治療ケアサポートを利用した選手85名(男女比 62%:38%)とした。調査方法は問診時に明確な痛み を訴えた選手を対象に、各部位の初診時に調査を実施 した。なお、スポーツ外傷・障害の分類は「スポーツ 外傷・障害および疾病調査に関する提言書」に準じて 分類した。 【結果】鍼灸治療ケアサポートを利用した85名の選手 のうち、鍼灸治療を実施したスポーツ外傷・障害の部 位は計149件であった。なお、所属する部活動は男子 陸上部が19名(22.4%)、男子硬式野球部が19名(22.4 %)、女子陸上部が17名(20.0%)の順で多かった。鍼 灸治療を実施したスポーツ外傷・障害は「競技離脱を 伴う外傷・障害」が53件(35.6%)、「競技離脱を伴わ ない外傷・障害」が96件(64.4%)であった。また発 症のタイミングでは「通常練習中」での発生が118件 (79.2%)と最も多く、発症メカニズムでは「非接触」 での発生が123件(82.6%)で最も多かった。これら のスポーツ外傷・障害の多くは「新規」での発生が92 件(61.7%)と最も多かった。スポーツ外傷・障害の 部位では、「腰-仙椎・臀部」が34件(22.8%)と最も 多く、次いで「大腿」が22件(14.8%)、「肩」が19件 (12.8%)の順であった。スポーツ外傷・障害の種類 では、「その他のスポーツ外傷・障害」が61 件 (40.9%)と最も多く、次いで「腱障害」が40件(26.8 %)、「肉離れ/筋断裂」が18件(12.1%)の順であった。 【考察・結語】来院選手の外傷・障害特性に着目した 結果、離脱を伴わない傷害が多いことから、選手自身 がコンディショニングの1つに鍼灸治療を選択してい ると考えた。 キーワード:スポーツ、鍼灸、外傷・障害、調査研究、 スポーツ傷害 - 181 - 171 172 -Sun-O2-11:12 新潟医療福祉大学における鍼灸アスリートサポート (第2報) 1)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部 鍼灸健康学科 2)アスリートサポート研究センター ○村越祐介1,2)、木村啓作1,2)、粕谷大智1) 【目的】本研究の目的は、大学スポーツ選手に対する 鍼灸治療の有効性と安全性について前向きに調査する ことである。 【方法】対象は本大学鍼灸治療ケアサポートを2回以 上利用した選手63名(男子37名、女子26名)とした。 調査は再診時にGoogleアンケートフォームを用いて実 施した。調査項目は(1)部活動、(2)前回の治療効 果について、(3)どのような治療効果が得られたのか、 (4)練習状況は改善されたか、(5)鍼灸治療を受けた 後に発生した有害事象と有害事象の発生によりプレー や動きに支障をきたしたかについての質問を設けた。 【結果】有効回答数は252件であった。所属する部活 動は男子硬式野球部が65件と最も多かった。治療効果 では、「かなり効果を実感できた」が117件、「効果を 実感できた」が103件、「少し効果を実感できた」が30 件、「あまり効果を実感できなかった」が2件であった。 治療効果の内容は「痛みが軽減された」が189件と最 も多かった。練習状況は、「全てのことができるよう になった」が93件、「かなりできるようになった」が 61件、「できるようになった」が34件、「少しできるよ うになった」が23件、「特に改善には至らなかった」 が8件、「元から全力でできていた」が33件であった。 有害事象については、「特に問題なかった」が239件で あった一方で「内出血が残った」や「鍼刺激感覚が残っ た」などの有害事象の発生が14件報告された。14件の うち「プレーや動きに支障をきたすことはなかった」 が9件、「少し支障をきたした」が4件、「支障をきたし た」が1件であった。 【考察・結語】大学スポーツ選手に対する鍼灸治療の 有効性では、多くの選手が痛みの軽減などの治療効果 を実感していた。安全性では、軽微な有害事象の発生 がみられたがプレーや動きに支障をきたす割合は低く、 スポーツ選手に対する鍼灸治療の安全性は高いと考え る。 キーワード:スポーツ、鍼灸、有効性と安全性、調査 研究 -Sun-O2-11:24 2024パリオリンピック大会アスレティックトレーナー 帯同報告 法政大学スポーツ健康学部 ○泉重樹 【目的】2024年7~8月にかけて行われたパリオリンピッ ク大会(以下パリ五輪)において筆者は男子ボクシン グ競技のアスレティックトレーナー(以下AT)とし て帯同する機会を得た。パリ五輪期間及びその予選で あった2回の世界最終予選での鍼治療結果も含めて報 告することを目的とした。 【方法】対象はパリ五輪男子ボクシング日本代表2名 (身長173±8.5cm、体重64±9.9kg)であった。またパ リ五輪最終予選では出場件を獲得できていない51kg級、 63.5kg級、80kg級の3名がそれぞれ2024年2月と5月の 世界最終予選に出場した。その際のサポート内容もあ わせて報告した。本研究はヘルシンキ宣言を遵守し、 対象者の同意を得た上で実施した。 【結果・考察】パリ五輪におけるボクシング選手団は 7月19日に現地入りした。AT、男子コーチ1名、トレー ニングパートナー2名が村外スタッフであった。サポー トの全般を村外サポート拠点(ジャパンサポートハウ ス)で実施していた。選手は大会期間中ケアとして交 代浴1時間からマッサージ(30~45分)の流れで実施 していた。日本食のサポートもあり、減量期のコンディ ショニングに非常に貢献していた。施術は通常通り選 手本人に確認し、各々の気になる部位や筋緊張のある 部位を中心に、全身に近い形で行っていた。パリ五輪 では結果的にA選手が2試合、B選手が1試合となった こともあり、コンディショニングにおいては特筆すべ きことはなく、試合後に交代浴とマッサージのケアを 希望する通常の流れで対応することができた。2月の 世界最終予選では慢性の足関節捻挫、腰痛のそれぞれ の選手に鍼治療を行う機会があったが、パリ五輪では 選手に鍼治療を行うことはなった。 【結語】選手へのサポートはATの重要な業務である ものの、派遣スタッフの少ない海外等の現場では様々 な役割を担うことも多く、各方面とのコミュニケーショ ンが重要になることを改めて経験することができた。 キーワード:スポーツ鍼灸、ボクシング、アスレティッ クトレーナー、コンディショニング - 182 - 173 174 -Sun-O2-11:36 大学生eスポーツ競技者の身体愁訴に関する調査 1)履正社国際医療スポーツ専門学校 2)大阪府鍼灸マッサージ師会 3)錦はり 4)大阪電気通信大学 5)森ノ宮医療大学 ○古田高征1,2,5)、佐藤想一朗2,3,5)、森田浩司4)、 武田ひとみ4)、松熊秀明5)、鍋田智之5) 【背景と目的】「eスポーツ」は、国内でも周知が広が りつつあるが、長時間の同一姿勢やモニター画面の凝 視、キーボードやマウスなどの同じ様な動作の操作は、 様々な症状を引き起こすことが推測され、長時間の練 習などは生活リズムに影響が危惧される。しかし、e スポーツに関する身体愁訴などの報告は非常に少ない。 そこでeスポーツの競技や練習を行っている大学生に おいて、身体愁訴などを調査し、鍼灸マッサージ治療 がeスポーツ領域へ貢献できる可能性を検討した。 【方法】調査は、大阪府内のD大学にてeスポーツ競 技を行っている学生を対象に行った。調査内容は、競 技歴、身体愁訴の有無とその程度、鍼灸マッサージ治 療へのイメージと期待、鍼灸マッサージ治療の経験の 有無などとして質問を作成し、Googleフォームを用い 回答させた。 【結果および考察】アンケートの回答は30名から得た。 平均の年齢は18.9±0.9歳、競技年数は3.4±2.1年で。 多くの者が競技を始めて3~4年の経験があった。身体 愁訴について、「ある」は9名(30%)、「時々ある」は 12名(40%)「ない」は9名(30%)であり、想定した 31症状の有無では、「ある」は14.5項目、「時々ある」 では12.3項目、「ない」でも4.8項目であり、何らかの 症状を持ちながら活動していることが伺えた。愁訴で 多い項目は、目が疲れている、首や肩がこっている、 腰が痛い、背中がこっている、目が乾くであり、長時 間の同一姿勢やモニター画面の凝視の影響と思われた。 また、「眠れない」「目覚めても起き上がれない」と生 活リズムの問題を抱えていると思われる者もみられた。 鍼灸治療のイメージについて、「痛そう・熱そう」な どが多かったが、「痛みを減らす」などポジティブな 回答があり、社会に鍼灸の治療効果の情報が多く提供 される様になったためと推測された。一方で「何をさ れるのかわからない」の回答もあり、鍼灸の施術内容 についても発信する必要性を感じた。 キーワード:eスポーツ、身体愁訴、生活習慣 -Sun-O2-11:48 睡眠と心理的状態が認知反応時間に与える影響 1)森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科 2)大阪府鍼灸マッサージ師会 3)履正社国際医療スポーツ専門学校 ○鍋田智之1)、松熊秀明1)、佐藤想一朗2)、 古田高征2,3) 【目的】我々はeスポーツ養成校の学生を対象とした 調査で選手は肉体的問題だけでなく睡眠や心理面に問 題を抱えており、鍼灸マッサージ治療に対する一定の ニーズもあることを2024年に報告した。また、睡眠の 改善に灸セルフケアが有用であることも報告してきた。 本研究は鍼灸マッサージ治療の介入研究を行う前段階 として、eスポーツで重視される認知反応時間に睡眠・ 心理が与える影響について検討した。 【方法】eスポーツ選手と同様の睡眠習慣を有し、睡 眠に不満を感じている大学生16名を対象とし、月から 金曜日の就寝前に認知反応速度とエプワース眠気尺度 (以下JESS)の記録を指示し、翌朝の起床時に認知反 応速度とOSA睡眠調査票(以下OSA)の記録を指示し た。期間の最後に1週間の睡眠についてピッツバーグ 睡眠質問票(以下PSQI)、気分プロフィール調査(以 下POMS2)の記録を指示した。認知反応速度はスマー トフォンを利用して信号機と同じ3色が10回ランダム に点滅し、対象の色をタッチする時間を計測する「反 応速度計測システム」(isys-sd.com)を利用した。本 研究は森ノ宮医療大学学術研究委員会の承認を得て実 施した(2023・130)。 【結果】PSQIとPOMS2のTMD得点は強い正の相関 (r=0.73)を示した。TMD得点はOSAの入眠と睡眠維 持(r=-0.56)疲労(r=-0.47)と相関を示した。JESS はOSAの疲労(r=-0.52)と夢み(r=0.45)と相関を示 した。認知反応速度はOSAの夢み(朝r=-0.39、夜r= -0.48)が関連性を示した。 【考察・結語】心理的問題は入眠と睡眠維持の悪化を 引き起こし、実睡眠時間の短縮は疲労を蓄積すること で昼間の眠気が強くなると考えられた。深睡眠の程度 を反映するOSAの夢みが認知反応速度と相関を示した ことから、深睡眠の改善を目的とした介入が必要と考 えられた。今後は本研究での指標を用いた睡眠または 心理面の改善を目的とした介入の効果を検証する。 キーワード:認知反応時間、睡眠、心理、eスポーツ - 183 - 175 176 -Sun-O2-13:00 慢性腰痛者に対するトリガーポイントへの刺激方法の 検討 関西医療大学保健医療学部 はり灸・スポーツトレーナー学科 ○北川洋志、増田研一、木村研一 【目的】本研究では慢性腰痛者を対象に、トリガーポ イントへの刺激方法の違いが末梢性感作に及ぼす影響 について比較・検討した。 【方法】対象は腰部に手術の既往がなく、下肢症状を 有さずに3か月以上腰痛を自覚している腰痛者で、第4・ 5腰椎棘突起の高さで後正中線から外方約2~2.5cmの 部位を圧迫した時に腰痛症状の再現を認めた30例(平 均年齢22.5±2.2歳)とした。すべての対象者には、 測定を実施する1週間以上前にエコーガイド下で鍼刺 激を行い、症状再現が生じる組織を調査した。刺激方 法は無刺激、置鍼、鍼通電(EA)の3種とし、各群10 名ずつになるように無作為に対象者を振り分けた。鍼 刺激はステンレス鍼(60ミリ・24号鍼)を用いて、圧 迫により症状再現が生じた体表面上から2本行った。 置鍼群では症状再現組織まで刺入した後、10分間鍼を 留置した。EA群では症状再現組織まで刺入した後、 Ohm Pulser LFP-4000A(医療器社製)にて2Hzで10分 間鍼通電を行った。無刺激群では鍼刺激は行わず安静 伏臥位を10分間とらせた。評価として末梢性感作の指 標とされる圧痛閾値(PPT)、圧痛強度(PPR)を第4 腰椎棘突起の高さの鍼刺激部位において刺激前後で測 定した。PPT 、PPR の測定はデジタル圧痛計 NEUTONE TAM-Z2 BT10(TRY-ALL社製)を使用し、 プローブはφ10半球タイプとした。 【結果】置鍼群とEA群では、刺激前値に比べてPPT の有意な上昇(置鍼群:p<0.001、EA群:p=0.03)、 PPRの有意な低下(置鍼群:p=0.01、EA群:p=0.002) を認めた。また各群の刺激前後の変化量を比較したと ころ、PPTでは無刺激群と置鍼群の間(p<0.001)に、 PPRでは無刺激群と置鍼群の間(p=0.03)、無刺激群 とEA群の間(p=0.01)にそれぞれ有意差を認めた。 【考察・結語】慢性腰痛者の症状再現が生じるトリガー ポイントへの鍼刺激では置鍼やEAを行うことで末梢 性感作の軽減が望めるが、置鍼とEAの間には差がな いことが示唆された。 キーワード:トリガーポイント、慢性腰痛、PPT、PP R、末梢性感作 -Sun-O2-13:12 ASPニードルによる戦場鍼が著効した難治性腰痛の一 症例 1)松浦鍼灸院 2)養徳鍼灸院 3)四国医療専門学校 4)国立障害者リハビリセンター 自立支援局福岡視力障害センター 5)函館五稜郭病院 6)かなざわ鍼灸院 ○松浦哲也1)、武田充史2)、襖田和敏3)、 米田裕和4)、西本武史5)、竹田太郎6) 【症例】鎮痛剤による管理が不良であった40代後半女 性の原因不祥の腰痛に対して両側耳介部戦場鍼ポイン トへのASPニードルを用いた耳鍼療法を行ったところ、 疼痛および運動制限が顕著に改善したのでここに報告 する。 【現病歴】患者は2年以上前より脊椎L4からS1の両側 傍脊柱部に出現する強い伸展時疼痛のため日常生活に 支障をきたしていた。またヨガの運動時にパフォーマ ンスが妨げられ悩んでいた。複数の医療機関にて診察 を受けるが原因は明らかとならず、また鎮痛剤による 治療では十分な効果が得られなかった。 【現症】安静時痛はなく腰部伸展時のみ疼痛が誘発さ れ、他に明確な身体的所見はない。疼痛の程度を Defense and Veterans Pain Rating Scale(DVPRS)を 用いて評価したところ7/10であった。 【治療・経過】椎間関節性腰痛を疑い、局所的な鍼治 療を4回実施したが、施術直後には痛みがDVPRS2ま で軽減するものの、帰宅時には施術前の状態に戻り、 持続的な効果が得られなかった。そこで、7日間の留 置を目的にASPニードルを両側耳介部の帯状回、視床、 オメガ2、ポイント0、神門(戦場鍼ポイント)に刺入 したところ、施術直後に痛みがDVPRS2まで減少した。 さらに、患者と共に体操を行い、正のイメージが定着 するよう工夫した。抜針3日後に軽度の疼痛再発を認 めたが、同様の施術をした結果、最終的に痛みは DVPRS2~3で安定し、動作の問題も改善した。 【考察・結語】本症例は局所病態が明確でないこと、 また局所刺激ではなく耳介部刺激が効果的であったこ とから、変調性疼痛であった可能性を疑う。戦場鍼で はうつ病に対する経皮的迷走神経刺激による神経可塑 性の関連が示唆されている。本症例でも強い持続刺激 が可能なASPニードルが可塑性を定着させ、直後に動 作をさせて「痛みなく動ける」というイメージ形成を 試みたことが効果の後押しをしたと考えられる。 キーワード:ASPニードル、戦場鍼、難治性腰痛、神 経の可塑性、持続刺激 - 184 - 177 178 -Sun-O2-13:24 トリガーポイント鍼治療により急性腰痛が改善した一 症例 名古屋トリガーポイント鍼灸院 ○後藤繁宗、前田寛樹、高橋健太、倉橋千夏子 【目的】筋筋膜性疼痛症候群患者では、活動性トリガー ポイント(以下:ATrP)が増加しており、ATrPに対 する鍼治療は疼痛の強度や機能改善に効果的である。 しかしながら、急性腰痛により生じたATrPへの鍼治 療の効果を示した報告はほとんどない。今回急性腰痛 に対してATrP鍼治療を行い、良好な結果が得られた 症例を経験したため報告する。 【症例】48歳男性会社員(営業)。元々慢性腰痛を自 覚していたが、X年4月に趣味の船釣り中に竿を引き 上げた際に急性腰痛を発症。翌日、近医の整形外科を 受診しX線撮影にて明らかな異常は見られなかったた め、本鍼灸院へ来院された。 【所見】立位・坐位ともに屈曲時と右側屈時に左腰臀 部へNumerical Rating Scale(以下:NRS)8の疼痛を 認めた。また、左腸肋筋・左中臀筋に索状硬結と局所 的な強い痛み、再現痛を認めたため、ATrPが疑われ、 筋筋膜性腰痛と想定した。 【治療・経過】腸肋筋、中臀筋のATrPに対して、雀 啄刺激を単刺にて行った。その結果、鍼刺激前と比較 して圧痛の軽減が見られ、動作時痛はNRS2に改善し た。 【考察】今回の治療結果から筋筋膜性の急性腰痛症に 対してATrP鍼治療を行うことで症状の改善があるこ とが示唆された。基礎研究では、疼痛局所に鍼刺激を 行うことでアデノシンA1 受容体を介した鎮痛 (Goldman, 2010)、ATrPへのドライニードリングによ り痛みに関する生化学物質を調節する機序(Hsieh, 2012)が報告されており、これらが鍼治療により誘発 されたことで筋筋膜性の急性腰痛症の改善があったと 考えられる。 【結語】ATrP鍼治療を行うことで、動作時痛・圧痛 を改善することができた。ATrP鍼治療は筋筋膜性の 急性腰痛に対して有効であることが考えられる。 キーワード:トリガーポイント、エコー、急性腰痛、 筋筋膜性腰痛、腸肋筋 -Sun-O2-13:36 腰痛患者の自宅施灸手段の違いによる主観的改善度の 比較 1)愛媛県立中央病院漢方内科鍼灸治療室 2)松山記念病院 3)森ノ宮医療大学鍼灸情報センター ○平林里織1)、植嶋萌恵1)、阿部里枝子1)、 中川素子1)、山見宝1,3)、山岡傳一郎1,2) 【目的】当院では院内での治療に加え患者による自宅 施灸を推奨しているが、患者を取り巻く環境によって 自宅で行われる灸の手段は異なる。本調査では腰痛を 主訴とする患者を対象に、6回来院ごとに行うアンケー トを用いて、施灸手段の違いで主観的改善度に差があ るかを明らかにすることを目的とした。 【方法】H30年1月1日以降に腰痛を主訴に来院した患 者57名中、自宅施灸を行っていた52名を対象に、灸の 種類(直接灸または間接灸)、実施頻度、施灸者(自 己施灸(SQ=Self灸)または他者施灸(FQ=Family灸)) に関して、アンケートで主訴の主観的改善度を評価し た。アンケートはA~Eの5段階評価で、A・Bを改善 有、C~Eを改善無とした。結果を診療録より取得し、 統計データが欠損している例を除いて、χ2乗検定を 行った。なお、本調査は倫理審査委員会の承認を受け て実施している。 【結果】各比較群においてBMI、年齢、男女比で有意 差は無かった。灸の種類の比較では51例中、直接灸を 行った24名中17名、間接灸を行った27名中11名が改善 有と回答した(p=0.031)。直接灸群が改善を感じた患 者が有意に多かった。実施頻度の比較では週3回以上 実施した30名と週3回未満の16名の間で改善度に有意 差は無かった。SQ実施またはSQ・FQともに実施した 41名とFQのみ実施した11名の比較でも改善度の有意 差は無かった。 【考察・結語】当院での治療と自宅施灸を併せて行う 腰痛患者において、自宅施灸を直接灸で実施する患者 の方が間接灸で実施する患者と比較して主観的改善度 の評価が高いことが分かった。今回腰痛の背景等は検 討せずに統計を行ったが、対象となった多くは慢性期 の腰痛であり、経過の長い腰痛に関して直接灸による 自宅施灸の継続がより効果的であることが示唆された。 今後は腰痛の性状や穴位所見の違いによる直接灸と間 接灸の効果の違いも調査していきたい。 キーワード:自宅施灸、直接灸、間接灸、慢性腰痛 - 185 - 179 180 -Sun-O2-13:48 腰痛の鍼治療例における運動療法併用の効果について の検討 1)筑波技術大学保健科学部保健学科 2)筑波技術大学大学院技術科学研究科 3)筑波技術大学保健科学部附属 東西医学統合医療センター ○松田えりか1)、Bolot kyzy Shirin2)、近藤宏1)、 陣内哲志3)、岩田勇稀3) 【目的】本学附属東西医学統合医療センター(以下医 療センター)では鍼灸部門とリハビリテーション部門 が併設され、各部門の単独療法に加え、併用治療も提 供している。鍼治療では運動療法の併用による効果上 昇の事例が知られているが、種々の報告が集積されて いる状況には至っていない。そこで、今般は医療セン ターの腰痛治療例について、鍼単独治療と併用治療の 効果にどのような差異があるかについて検討した。 【方法】対象は2019年8月~2024年6月に医療センター 鍼灸部門およびリハビリテーション部門を受診した腰 痛を主訴とする初診患者99人。検討項目は、年齢、性 別、下肢症状の有無、罹病期間に加え、腰部疼痛強度 Visual An-alogue Scale(以下VAS)、腰痛患者のQOL を測定するRoland-Morris Disa-bility Questionnaire(以 下RDQ)、破局的思考を測定するPain Catastro-phizing Scale(以下PCS)とした。鍼単独治療群、鍼と運動療 法の併用治療群の2群において、これらの状況とスコ アの分布を比較した後、傾向スコアに基づいてマッチ ングを行い、抽出された2群において、1カ月間の治療 によるVAS、RDQ、PCSの変化率を比較した。 【結果】マッチングされた対象者数は各群16例で、傾 向スコア算出時のROC曲線下面積は0.748であった。 対応のないt検定により2群を比較した結果、RDQ、動 作時VASにおいて、併用治療群が鍼単独治療群よりも 有意に高い値を示した(各々p=0.033、p=0.048)。 【考察・結語】鍼と運動療法の併用治療は、疼痛の改 善、QOLの改善において、鍼単独治療と比較し有益 である可能性が示唆された。今後は例数の増加を図る ことに加え、調整する交絡因子についての検討を含め た研究を継続する予定である。 キーワード:腰痛、鍼治療、リハビリテーション、併 用治療、運動療法 -Sun-O2-14:00 妊娠に伴い腰痛が悪化した症例に対する鍼灸治療 1)せりえ鍼灸室 2)洞峰パーク鍼灸院 3)つくば国際鍼灸研究所 ○辻内敬子1,3)、小井土善彦1,3)、形井秀一2,3) 【目的】妊娠初期に腰痛が悪化したと訴えた女性に対 し鍼灸治療を行い、疼痛緩和とQOLの向上などの支 援につながった症例を報告する。 【症例】29歳女性。会社員。妊娠15週の初産婦。X年 に、産婦人科より紹介され来院。主訴は腰臀部痛、愁 訴に疲労感、下腹部張り感、その他に、胃部不快感、 足の冷え等がみられた。腰部痛は、妊娠7週頃から出 現し、14週頃から臀部痛も出現して、歩行時、長時間 の座位時、動作開始時、立位時に悪化傾向にあり、在 宅勤務となった。既往歴は、中学生の時に腰痛、22歳 にバセドウ病発症、子宮筋腫があった。身長154cm、 体重41Kg(妊娠前39Kg)、血圧100/70mmHg、脈拍70 拍/分。脈診は数弦。腹診は、胸脇苦満、体表所見は 左側腰部圧痛、下腹部の張り、下肢のむくみ、足先は 冷えと湿潤がみられた。理学検査は、左側のゲンズレ ンテストで主訴部に痛みが出現した。 【治療・経過】治療効果は、疼痛尺度(Visual Analog Scale(以下VAS))と、腰痛特異的QOL尺度(Roland- Morris Disability Questionnaire(以下RDQ))で評価し た。施術頻度は、1週間に1回程度。治療は、ステンレ ス鍼(40mm×0.12mm)を用いて、下肢の経穴の緊張 部と陷凹部に数穴、5~10mmの深さで刺入し、15分 間置鍼し、灸も適宜用いた。初診時(妊娠15週)~7診 時(妊娠27週)までに、VASは62mm-66mm-50mm-31 mm-43mm-29mmに、RDQは11点-10点-5点-4点-7点-7 点に変化した。妊娠18週から職場復帰し、妊娠28週に 帰省のため治療を終了した。 【考察・結語】妊娠に伴う生理的な変化は、心身に様々 な影響を与え、その中でも、腰痛などのマイナートラ ブルはQOLを低下させる。腰痛発症率は、妊娠初期 に60%程度、妊娠後期は80~90%と報告されている。 今回、妊娠初期から出現した腰痛が徐々に悪化した女 性に対し、鍼灸治療を行ったところ、妊娠経過ととも に悪化するとされる腰痛が緩和され、職場勤務が叶い、 妊娠期のQOLも維持することができた。 キーワード:妊婦、腰痛、VAS、QOL、RDQ - 186 - 181 182 -Sun-O2-14:12 混合型腰部脊柱管狭窄症に鍼灸治療が有効であった一 症例 1)北里研究所病院漢方鍼灸治療センター鍼灸科 2)コサカ心休マッサージ院 ○富澤麻美1,2)、近藤亜紗1)、伊藤雄一1)、 井門奈々子1)、井田剛人1)、伊東秀憲1)、 伊藤剛1)、星野卓之1) 【目的】混合型腰部脊柱管狭窄症が原因と考えられる 坐骨神経痛と間欠性跛行に対して、北里式経絡経筋治 療と殿中・承扶への鍼通電で良好な結果が得られたの で報告する。 【症例】80歳女性。主訴:両下腿外側痛、間欠性跛行。 既往歴:高血圧・高脂血症(66歳)、直腸癌術後(79 歳)。 【現病歴】X-1年3月、直腸癌術後から両下肢全体に 痛みを自覚し、整形外科では腰部脊柱管狭窄症による 坐骨神経痛と診断。神経障害性疼痛治療薬や非ステロ イド性消炎鎮痛剤が処方された。痛みの範囲が両下腿 外側痛のみとなったが、5分程度の間欠性跛行がある ため、X年7月当センターを受診。 【所見】身長:156cm、体重:53kg、血圧:133/70 mmHg。ケンプ・SLR・Kボンネット・パトリックな どの理学的検査は全て陰性。六部上位脈診は主に肝虚 証。 【治療・経過】北里方式経絡治療に基づき脈診による 本治法とともに標治法として、7診目までは足三里・ 豊隆・解渓・陽陵泉・丘墟、8診目では腰部の夾脊穴 や上八風(行間、陥谷、旁谷、地五会)に置鍼し、足 三里と陽陵泉に低周波鍼通電を行ない疼痛頻度は減少 した。さらに11診目に殿中と承扶に低周波鍼通電を行 うと、両下腿外側痛のVisual Analogue Scale(VAS) は、初診時71mmが50mmまで減少し、疼痛頻度の減 少とともに間欠跛行も30分まで改善した。その後23診 目のVASは30mmまで改善、鎮痛薬も減量可能となっ たが、鍼灸治療は継続した。 【考察】症例は馬尾症状に乏しいが、両側性であり混 合型腰部脊柱管狭窄症が疑われた。北里方式経絡治療 に加え、腰部夾脊穴と上八風などの足陽明経筋、足三 里・陽陵泉と殿中・承扶への鍼通電は、坐骨神経分岐 上の痛覚閾値上昇や脊髄の血流増加作用に総合的効果 があったと考えられた。 【結語】混合型腰部脊柱管狭窄症に起因する坐骨神経 痛と間欠性跛行に対し、北里式経絡経筋治療と殿中と 承扶に対する鍼通電刺激の有効性が示唆された。 キーワード:腰部脊柱管狭窄症、間欠性跛行、北里方 式経絡治療、低周波鍼通電 -Sun-O2-14:24 痛覚変調性疼痛の関与が疑われた腰部脊柱管狭窄症の 鍼治療の1例 1)東京有明医療大学附属鍼灸センター 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 ○藤澤由美子1)、菅原正秋1,2)、松浦悠人1,2)、 小田木悟1)、藤元邦夫1)、木村友昭1,2)、 坂井友実1,2) 【目的】慢性の経過をたどり鍼灸治療が著効せず、心 理社会的要因の評価で痛覚変調性疼痛の関与が疑われ た患者に対し、鍼灸治療に加えて「説明」を行なった ことで症状に変化がみられた症例を経験したので報告 する。 【症例】71歳女性[主訴]右腰下肢痛[現病歴]X-2 年腰下肢痛を発症。2ヶ月後に受けた大学病院のMRI 検査で軽度の腰部脊柱管狭窄症と診断、その3ヶ月後 に開始したブロック注射・投薬に著効なし。X年鍼灸 治療を開始。[初診時所見]右腰殿部~右下肢外側・ 右母趾に、常に痺れと痛みがあり、時折強烈な痛みが 出現する。体幹動作での増強(前屈・後屈・右側屈・ 右回旋)、ケンプ右+、SLR右+、L5領域触覚鈍麻を認 める。 【治療・経過】神経障害性疼痛を考慮して末梢神経の 通電治療を継続、1年2ヶ月経過した44診で治療者が交 代。症状の範囲が減少し、理学所見は体幹動作の増強 (後屈・右回旋)のみとなったが痛みの程度は初診と 同じとの訴え。症状と所見との乖離や直後効果が全く ないため心理社会的要因の関与を疑い質問紙にて評価 したところ、Pain Catastrophizing Scal: 39点(重度の 破局的思考)、ひもろぎ式うつ尺度: 23点(軽度)、ひ もろぎ式不安尺度: 23点(重度)、アテネ不眠尺度: 12 点(中等度)、短縮版マクギル疼痛質問票2: 総合計 146点・感情的表現32点であった。以上の結果から痛 覚変調性疼痛の可能性を考慮して中枢性感作の正常化 を目的に末梢穴・頭部・頸部の治療を47診から追加。 49診に信頼構築のため病態・治療方針等を説明したこ とを契機として睡眠と表情・発言に変化がみられた。 痛みの程度(NRS)に変化はないが、アテネ不眠尺度 と短縮版マクギル疼痛質問票2のスコアが減少した。 【考察・結語】難治性慢性疼痛患者は鍼灸治療が著効 しないケースも多く、病態や治療方針の説明は患者・ 治療者双方に意義があると考える。適切な説明や提案 ができたことで治療効果に好影響を与えたと考えられ る。 キーワード:鍼灸治療、腰部脊柱管狭窄症、難治性慢 性疼痛、痛覚変調性疼痛、心理社会的要 因 - 187 - 183 184 -Sun-O2-14:36 歩行困難に対して鍼治療とリハビリテーションを併用 した一症例 1)筑波技術大学保健科学部附属 東西医学統合医療センター 2)筑波技術大学保健科学部保健学科鍼灸学専攻 ○米丸蓮音1)、近藤宏2) 【目的】入院による不活動を契機に歩行困難が生じた 患者に対して、鍼治療とリハビリテーションを行うこ とにより、歩行距離が改善したので報告する。 【症例】83歳、女性[主訴]歩行困難、腰痛、右殿下 肢痛。診断名:腰椎変性すべり症[現病歴]X年Y月 顕微鏡的血管炎の治療のためにT病院に入院した。退 院後、腰下肢痛や筋力低下により歩行困難となる。鎮 痛剤の内服や接骨院で電気治療等を実施するも改善が ないため、X年Y+5月当センターを受診し鍼治療を開 始。[所見]疼痛部位は腰殿部・右大腿前面、体幹動 作:痛みの為不可。深部腱反射:PTRは正常、ATRは 減弱、触覚検査:右L4, L5, S1が鈍麻、MMT:腹直 筋2、右腸腰筋、右前脛骨筋、右大殿筋が3、右大腿四 頭筋および左大殿筋が4。その他の体幹および下肢は5。 SLR-/-、Kボンネット-/-、FNS-/-、身長165cm、66kg。 【治療・評価】[鍼治療]疼痛緩和および神経血流上 昇を目的に右大腿神経鍼通電療法(1Hz 15分間、50 mm20号)、L4及びL5神経根部(60mm20号)、右梨状 筋部(90mm24号)に置鍼(15分)を行った。リハビ リテーションは、廃用予防と筋力強化を目的に筋力訓 練を実施。[評価]歩行距離、疼痛強度(NRS)、腰痛 特異的QOL尺度(RDQ)、MMTとした。 【経過】初診時の連続歩行距離は2m、腰部および大 腿前面のNRSが8、殿部のNRSが7、RDQは16点。4診 目(5週)では距離が32m、腰部のNRSが0、大腿前面 および殿部のNRSが6、RDQが9点だった。またMMT は前脛骨筋を除いて1から2段階上昇した。 【考察・結語】鍼治療とリハビリテーションを併用す ることで、疼痛緩和や筋力強化の効果が得られて、歩 行距離が改善したと考えた。歩行困難に対する鍼治療 とリハビリテーションの併用は、歩行困難の改善に役 立つ可能性がある。 キーワード:鍼治療、リハビリテーション、歩行困難、 不活動、筋萎縮 -Sun-O2-14:48 S1神経根症において、超音波ガイド下鍼パルスとPRF 併用の1症例 1)合同会社青山かがやき鍼灸整骨院 2)小山整形外科内科クリニック ○西村健作1)、笹原潤2) 【目的】腰椎椎間板ヘルニアはL4/5(L5神経根)・L5/ S1(S1神経根)にて好発する。臨床において、下肢 のしびれや痛みに対して、神経根への治療介入は難渋 することが多い。今回、医師と連携し、超音波ガイド 下S1神経根鍼パルス療法とパルス高周波療法(PRF) 併用にて症状が改善した1症例を報告する。 【症例】72歳、女性。主訴は、起立時や歩行時の右殿 部~下腿後面痛である。X年9月に発症し、疼痛増悪 のため3週後に当院来院した。医師と連携しMRI検査 およびブロック注射にて障害高位を特定した。 【所見】NRSは8、Kemp testが陽性で、長母趾伸筋お よび腓骨筋にMMT4の筋力低下があり、間欠性跛行 (100m)があった。 【治療・経過】合計2回のS1神経根PRFと、週1-2回の 頻度で超音波ガイド下にて、S1神経根近傍へ鍼通電 を(1Hz、0.5~1.0mA、15分間)実施した。治療開始 19回(76日後)Kemptestは陰性、長母趾伸筋および腓 骨筋はMMT5へ改善した。治療21回(92日後)に間欠 性跛行は消失し、NRS1と軽減した。 【考察】S1神経根症は臨床上多く経験し、S1後仙骨 孔は上穴に該当し、S1神経根症に適応される刺鍼 部位である。他の後仙骨孔に対して、S1後仙骨孔は 解剖学的な特徴がある。また、鍼先はS1神経根近傍 に刺入する必要があり、ブラインドで刺入するのは困 難である。今回、超音波ガイド下にS1後仙骨孔内のS1 神経根近傍へ正確に鍼刺入ができ、鍼通電が実施でき た。周波数の違いはあるが、鍼通電とPRFは鍼先から 電流を通電する点において相似性がある。また、医師 と医療連携を行い、障害神経根への共通の通電療法が、 症状緩和をもたらした。今後は、症例数を増やし、さ らなる検討が必要である。 【結語】医師との医療連携にて障害神経根の特定は、 治療部位を決定できる。また、共通デバイス・方法で ある超音波ガイド下神経根鍼パルス療法は、腰部神経 根症への治療に期待ができる。 キーワード:超音波ガイド下神経根鍼パルス、腰椎椎 間板ヘルニア、S1神経根症 - 188 - 185 186 -Sun-O2-15:00 斜膝窩靱帯へのエコー下鍼治療 1)一鍼灸院 2)株式会社ゼニタ銭田治療院千種駅前 ○瀧本一1)、銭田良博2) 【目的】変形性膝関節症(膝OA)における膝関節の 伸展制限の改善は重要な課題である。今回、膝OAに 対して斜膝窩靭帯へのエコー下鍼治療が有効であった 症例を報告する。 【症例及び現病歴】75歳女性。主訴は右股関節の歩行 時痛と膝関節内側の痛み。来院6ヶ月前に股関節痛を 自覚し、その後膝の痛みも出現。整形外科で変形性股 関節症および膝OAと診断され、2ヶ月間のリハビリを 経て当院に来院。初診時、歩行時の下肢内旋が顕著で、 股関節および膝関節の可動域制限があった。4ヶ月間、 当院で週1回の施術を行い、歩行時痛や可動域制限の 改善が見られたが、膝関節可動域制限が残存したため、 靭帯組織への施術を検討した。 【治療前評価】膝関節屈曲110度、伸展6度、屈曲時に 膝関節前面と内側に疼痛があった。伸展時のエンドフィー ルは硬く、停止感があった。エコー評価では、斜膝窩 靭帯内側の肥厚と高輝度の画像所見が認められた。靭 帯や半月板への徒手検査は陰性であった。 【治療・経過】エコー下で斜膝窩靭帯への刺鍼を実施。 ステンレス製50mm 0.30mm鍼を使用し、膝窩内側、 脛骨内側顆と膝窩動脈の間から深度約25mmの斜膝窩 靭帯高輝度部位に刺入し、10回程度雀啄を行った。靭 帯内に鍼を留置したまま膝伸展屈曲操作(運動鍼)を 加え、抜鍼後の計測で伸展角度は4度まで改善。その 後、モビライゼーションを追加し、伸展角度は2度と なった。術後は、伸展時のエンドフィールが柔らかく なり、歩行時の安定感が得られた。 【考察】斜膝窩靭帯は膝関節後面を支持し、半膜様筋 腱や関節包、腓腹筋外側頭の腱と融合し、膝関節の過 伸展と脛骨外旋を制限する。エコー下鍼治療により靭 帯の伸張性が改善され、その後のモビライゼーション による効果が得られ、膝関節伸展制限が改善されたと 考えられる。 【結語】膝OA患者の膝関節伸展制限に対し、斜膝窩 靭帯へのエコー下鍼治療が有効であった。 キーワード:膝関節伸展制限、斜膝窩靭帯、超音波画 像診断装置、エコー下鍼治療 -Sun-O2-15:12 夜間頻尿にセルフ温灸が有効であった一症例 九州医療科学大学社会福祉学部 スポーツ健康福祉学科 ○冨田賢一、渡邊一平、中野祐也 【目的】夜間頻尿を訴える患者に自宅でのセルフ施灸 を指導し、排尿記録の情報から温灸の効果を評価した。 【症例】47歳男性。[主訴]夜間頻尿と尿意切迫感。 [現病歴]40歳頃から、尿意切迫感を自覚するように なった。2年前より夜間に排尿で中途覚醒するように なり、今年に入ってからは、就寝後1回は排尿で覚醒 するようになった。日中は尿意切迫感があり、失禁し そうになるほどの強い尿意を感じることもあった。尿 意のわりに排尿量は多くないように感じた。また、蛇 口から水が流れる音を聞くと急な尿意を自覚するよう になった。[既往歴]特記事項なし。[所見]残尿なし。 排尿痛なし。夜間排尿回数:5~7回/週、夜間最大排 尿量:250ml、昼間最大排尿量:180ml。IPSS:4点、 IPSS-QOL:4点、OABSS:5点。本調査は九州医療科 学大学倫理委員会の承認を得て行った(承認番号23- 008)。 【治療・経過】[施灸方法]せんねん灸オフレギュラー 竹生島(セネファ社)を使用した。就寝前に中極穴へ 3壮の施灸を2週間毎日行った。[経過(施灸前→施灸2 週目→経過観察)]夜間排尿回数:5回→1回→1回。夜 間最大排尿量:250ml→310ml→350ml。昼間最大排尿 量:180ml→200ml→310ml。IPSS:4点→0点→0点。 IPSS-QOL:4点→1点→2点。OABSS:5点→0点→1点。 【考察】2週間の中極穴へのセルフ施灸によって、夜 間排尿回数の減少と最大排尿量の増大を認めた。排尿 記録では排尿時の尿意も記録したが、施灸1週目より 尿意切迫感の軽減が確認され、施灸期間を終えた後の 経過観察期間において排尿量の増加が確認された。尿 意切迫感の軽減が排尿量の増大につながり、夜間排尿 回数の軽減に影響を及ぼした可能性が考えられた。 【結語】患者自身が中極穴へ温灸を行った本症例では、 尿意切迫感の軽減がみられ排尿量の増大が確認された。 これらの反応が、夜間排尿回数を減少させた要因と考 えられた。 キーワード:夜間頻尿、中極、温灸、セルフ施灸、排 尿記録 - 189 - 187 188 -Sun-O2-15:24 頻尿と浮腫改善が家族負担軽減に繋がった一症例 1)ここちめいど 2)はりきゅう処ここちめいど 3)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部 鍼灸健康学科 ○飯田通容1)、米倉まな1,2)、金子聡一郎1,3) 【目的】超高齢者の頻尿は、たとえ本人は困っていな いとしても、介護者の負担増も招く。今回、101歳患 者に対する介入で下腿浮腫と夜間トイレ回数の改善が 見られたので報告する。 【症例】101歳女性。主訴:下腿浮腫、頻尿、繰り返 す尿路感染症。 【現病歴】下腿のむくみで靴がきつくなりサイズを3 回替えた。頻回トイレに行き、夜間でも13回から40回。 泌尿器科では対処薬のみ加える方針で、ベオーバ、モ ビコールが処方されるが、効果は乏しく、自宅で介護 を担う娘から相談を受け訪問施術開始となった。 【所見】血圧100/63脈拍73、尿素窒素28.7、クレアチ ニン0.91、eGFR42.4、尿一般定性蛋白・潜血1+、尿沈 査白血球100以上、尿量は不明(介助は拒否のため)、 四診:舌質淡紅、歯痕なし、短め。脈右関尺弱め、足 背動脈は触知不可。下腹部にふくらみ・硬さ。冷感・ 圧痛はなし。浮腫に圧痕は残らず。随伴症状:便秘、 痔、既往歴:認知症、腰椎圧迫骨折、高血圧。社会歴: 要介護2 、歩行器を使用し独歩、排泄自立。 【治療】超高齢のため刺激量に注意しながら浮腫、尿 路感染症、睡眠の改善を目的にてい鍼、豪鍼、電子温 灸、マッサージ、他動運動を組み合わせ施術。 【経過】初診、治療後浮腫軽減、足背動脈の拍動を触 知。4診目、施術前にも浮腫軽減。12診目、ぶかぶか で元の靴に戻したとの報告。21診目、夜間トイレが7 回となった。本症例の発表について患者家族から同意 を得ている。 【考察・結語】100歳超の高齢者が増えており、歩行 や排泄の自立を保てている事は尊厳にも関わり大切で ある。しかし、昼夜問わず度々トイレに立つ事は不眠 や転倒のリスクも増す。本症例では、処方薬等で改善 されなかった下腿のむくみや夜間のトイレ回数に改善 が見られた。正確な尿量や原因、どの介入が効果を与 えたのかの解明は今後の課題であるが、介護を担う家 族の心配や負担を軽減できる可能性が示唆された。 キーワード:夜間頻尿、自宅介護、下腿浮腫、超高齢 者、排泄自立 -Sun-O2-15:36 頻尿と不眠を訴えた患者に対する鍼の一症例 1)常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科 2)とこは鍼灸接骨院 ○関真亮1,2)、福世泰史1,2) 【目的】頻尿は日常臨床でも遭遇しやすい症状である といえる。過去、排尿症状に対する鍼治療の効果も報 告されているが、頻尿を引き起こす疾患は数多くある ため、症例集積をすることは有意義である。そこで今 回、夜間頻尿と不眠を主訴として来院した患者に対し、 鍼治療を実施したところ効果が見られたので報告する。 【症例】80代男性。主訴:夜間頻尿と不眠。既往歴: 前立腺がん。服薬:セルニルトン。現病歴:以前から ストレスや海外旅行などで不眠になることがあった。 現病歴:約1ヶ月前から1~2時間おきに中途覚醒があ り、そのたびに排尿をしている。夜間排尿5回。排尿 が原因なのか中途覚醒が原因なのか自分でもわからな い。昼間頻尿なしと感じている。排尿記録による現症: 起床時から約2時間おきに50~100mLの排尿。病態把 握:本人は訴えていないものの昼間頻尿もあることか ら膀胱の蓄尿機能低下を疑ったが、医学的な病態把握 は困難であった。東洋医学的には腎気虚を主たる病証 とし、それに従う心気虚とした。鍼治療:労宮穴、中 極穴、太渓穴への圓鍼による触刺激。腎兪穴、膀胱兪 穴への調気鍼による擦過刺激を基本として施術した。 施術は1週間に1回、1回約30分とした。評価は夜間頻 尿の回数でおこなった。 【結果】初回の介入後、夜間頻尿は5回から2回に減少 した。また不眠は起床時にぐっすり感を得ることがで きた。2回目の介入後夜間頻尿は1回に減少したが、そ の後3回目以降は2~5回の間で増減を繰り返した。な お、夜間1回の尿量は150~300mLであった。 【考察】本症例では夜間頻尿が主訴であったものの、 実際には昼間頻尿も起こっていたことから膀胱の機能 を改善するような鍼のアプローチが有効であったと考 える。初回から2回目が著効したものの、3回目以降の 効果が低下したことは今後の課題であると考えられる。 【結語】頻尿に伴う不眠に対し、鍼治療は有効である 可能性が示唆された。 キーワード:頻尿、鍼治療 - 190 - 189 190 -Sun-O2-15:48 難治性の陰部神経領域の痛みに対する鍼治療の一症例 東京大学医学部附属病院リハビリテーション部 ○小糸康治、林健太朗、母袋信太郎、永野響子 【目的】難治性の陰部神経領域の痛み・しびれに対し 陰部神経刺鍼点への鍼施術が奏功せず、内閉鎖筋への 施術を追加したところ疼痛や破局的思考の評価に改善 が認められた症例を経験したので報告する。 【症例】年齢50歳代の女性。主訴は直腸肛門痛を中心 とした両側陰部神経領域の痛み・しびれ。 【現病歴】X-6年頃から仕事中に座位で殿部のしびれ を自覚、以後、座位で肛門周囲から会陰部にかけての 痛み・しびれと歩きにくさを自覚。複数の医療機関を 受診したが診断は付かず、MRIにて仙骨嚢胞を指摘さ れたが症状との関連は少ないと診断されていた。薬物 療法や鍼灸治療なども受療したが症状は改善せず、X- 4年に仙骨嚢胞縫縮術を施行。術後に一旦症状は軽減 したものの再発し術前より悪化。X年、当院の鍼灸治 療を受診。 【初診時所見】上下肢神経学的所見に著明な異常なし。 股関節の可動域制限なし。初診時の疼痛VAS(69mm)、 質問紙はSF-MPQ(24/45)、PCS(31/52)であった。 【治療方法】他院での薬物治療を継続したまま週1回 の頻度で鍼治療開始。疼痛閾値上昇を目的に足三里- 合谷への2Hz15分間の低周波鍼通電と太衝、三陰交、 手三里への置鍼、局所治療として両側陰部神経刺鍼点 に1Hz15分間の低周波鍼通電を主に行った。8回の施 術後も疼痛VASに累積的な改善が認められず(69→71)、 両側内閉鎖筋への1Hz15分間の低周波鍼通電を追加し た。 【経過】初診時、2か月後、6か月後、10か月後におけ る評価は疼痛VAS (69→31→19→19mm)、SF-MPQ (24→17→7→10)、PCS(31→26→17→13)で、治療 方法の変更後より各評価のスコアが減少した。 【考察・結語】陰部神経と隣接している内閉鎖筋への 施術を加えたことで症状軽減に至ったことから本症例 の病態の一つに内閉鎖筋による障害が疑われた。また 慢性疼痛の評価に重要な破局的思考の軽減も認められ ており、鍼治療が難治性の神経痛治療の選択肢の一つ となる可能性が示唆された。 キーワード:鍼治療、陰部神経、直腸肛門痛、慢性疼 痛、破局的思考 -Sun-O2-16:00 下肢に続いて頸部に症状が出現したジストニア患者へ の鍼治療 1)スピカ鍼灸・マッサージ院 2)関西医療大学付属鍼灸治療所研修員 3)医療法人寿山会喜馬病院 4)関西医療大学大学院保険医療学研究科 ○高橋護1,2)、井尻朋人3)、谷万喜子4)、 鈴木俊明4) 【目的・現病歴】下肢ジストニアと診断され服薬治療 を開始した半年後に頭部伸展の不随意運動が生じ、ボ ツリヌス治療を開始した症例に、頸部と下肢は別の問 題であると判断して鍼治療を行い改善したので報告す る。 【所見】安静座位にて頸部屈曲、上部胸椎屈曲位で頭 部伸展の不随意運動が生じた。頸部屈曲、上部胸椎屈 曲位を自動で正中位にできず、他動で補助すると不随 意運動は減少したが残存した。下肢は、歩行の左立脚 初期に股関節外転位で接地し、股関節内転運動が乏し く、左遊脚時には股関節約80度の屈曲と内転運動が生 じた。立脚期に股関節内転運動を誘導すると遊脚期の 股関節屈曲・内転運動が軽減したが残存した。頸部屈 曲、上部胸椎屈曲位は最長筋筋緊張低下、頭部伸展は 板状筋の不随意な収縮が要因であった。左立脚初期の 外転接地は左内腹斜筋の筋活動低下により立脚初期の 剪断力を避けるために行っていた。股関節屈曲・内転 運動の増大は長内転筋と大内転筋の筋緊張亢進が要因 であった。 【治療】最長筋の筋緊張促通目的で集毛鍼刺激と崑崙 に置鍼した。両側頭板状筋、左長内転筋、左大内転筋 の筋緊張抑制目的でダイレクトストレッチングを行っ た後、両側頭板状筋に対し両側外関、左長内転筋と左 大内転筋に対し左太衝、左内腹斜筋に対して左衝陽に 置鍼した。下肢症状改善目的で両側下肢区に置鍼した。 鍼は40ミリ・20号で刺入深度はミリとした。促通目的 には約30分、抑制目的には約10分置鍼した。治療は週 1回行った。 【経過】治療3ヵ月で頸部屈曲、上部胸椎屈曲位は中 間位に改善し、頭部伸展の不随意運動が消失した。遊 脚時の股関節屈曲運動は約30°に改善した。 【考察・結語】頸部屈曲、上部胸椎屈曲位が頭部伸展 の不随意運動に関与すると考えられた。股関節外転位 で遊脚期を迎えることで股関節内転筋が優位に活動し たと考えた。頸部と下肢にジストニアを生じたが、そ れぞれの問題を評価して治療し、改善に至った。 キーワード:鍼治療、ジストニア、集毛鍼、不随意運 動 - 191 - 191 192 -Sun-O2-16:12 頸椎症性筋萎縮症が疑われた病態に対する鍼治療の1 症例 1)東京有明医療大学附属鍼灸センター 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 ○西本有希1)、小田木悟1)、松浦悠人1,2)、 安野富美子1,2)、坂井友実1,2) 【緒言】C7障害で手術適応の頸椎症性筋萎縮症が疑 われた病態に対し、鍼治療を行い良好な経過を示した 症例を報告する。 【症例】61歳、女性主訴:右指の動かしにくさ 【現病歴】X-5年前、右指の動かしにくさを自覚。A 医院にてC5~Th1椎間の狭小化、C6/7の骨棘を指摘、 服薬により2週間で改善。X-6ヶ月前、より増強した 症状が出現し、B大学病院でのX線、MRIにてC6/7の 椎間腔の狭小化、骨棘形成、C6/7・C7/Th1でルシュカ 関節の骨棘形成を指摘され頸椎症の診断、服薬を開始 も症状不変。症状の改善がなければ手術適応だが、手 術には抵抗があり当センターを受診。 【所見】[自覚症状]右母指・薬指・右手関節に力が入 りにくくADL上炊事・化粧等に支障あり[他覚所見] スパーリングテスト:(-/-) 触覚・痛覚:(正常) BTR・ RTR・TTR:(+/+) ホフマン反射:(-)長・短母指伸筋, 長・短母指外転筋MMT:(2)母指球・前腕中央部の筋 萎縮:(+)10秒テスト:(R24回/L32回) 【治療】改善を目的に、3診目までは病変部が疑われ た頸部の頭板状筋・肩甲挙筋・僧帽筋・椎間関節圧痛部 の置鍼を行った。しかし明確な改善がみられなかった ため、4診目以降は同部位へ1Hzの鍼通電を行うとと もに長母指伸筋-長母指外転筋へ100Hz間欠通電を行っ た。使用鍼は40mm、16号鍼・18号鍼・20号鍼(セイリ ン社製)。 【経過】鍼治療は1/wの頻度で開始し、動き・筋力は徐々 に軽快した。約3ヶ月後、長母指伸筋・長母指外転筋の MMTは2から4に、10秒テストは24回から45回に改善 した。また、力が入りにくく支障を感じていた炊事や 化粧時のADLも改善した。 【考察】本症例は回復が不良な遠位型で、治療成績の 予後基準である6ヶ月を過ぎた手術適応例であったが、 鍼治療開始後にMMTやADLが改善した。頸肩部・前腕 部への鍼治療により、病変部の血流改善や罹患筋の修 復促進が行われ、動きや筋力が改善したと考える。 【結語】難治とされる頸椎症性筋萎縮症の症状に、鍼 治療が有効である可能性が示唆された。 キーワード:頸椎症性筋萎縮症、動かしにくさ、鍼通 電、間欠通電 -Sun-O2-16:24 筋性斜頸の術後から続く左半身の自律神経症状への鍼 治療の一例 1)ここちめいど 2)針灸かいしん堂 3)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 4)はりきゅう処ここちめいど ○加藤久仁明1,2)、松浦悠人3)、米倉まな1,4) 【目的】左側の筋性斜頸に対する胸鎖乳突筋切除手術 を受けて以降に徐々に出現した左半身の自律神経症状 に対して鍼治療を行い症状の改善が見られたので報告 する。 【症例】53歳、女性、自営業。主訴:左季肋部と左腹 部の不快感・冷感。[現病歴]X-34年、先天性筋性斜 頸のため左側の胸鎖乳突筋を切除する手術を受けた。 X-32年、左脇腹が冷え、同時に頭が熱を持つ感覚を 覚え、氷嚢で頭を冷やすと胃腸が楽になるため対処方 法として継続してきた。X-8年、症状が悪化したため 胃腸科で胃カメラ検査を行ったが異常は発見されなかっ た。X年1月、自律神経症状改善のため当院に来院し た。[症状・所見]左側の胸鎖乳突筋のレリーフが消 失し、皮膚が薄く硬い。鎖骨頭部付近に術痕がある。 左下肢の冷え。[東洋医学的所見]脈診:弦、舌診: 薄紅舌、白苔(中)、亀裂、歯痕、腹診:腹皮拘急、 胸脇苦満(左側)、臍上悸。[治療]百会、膈兪、肝兪、 脾兪、帯脈、風池、完骨、京門、章門、日月、腹哀、 足三里、そのほか反応点や阿是穴を使用し、置鍼や単 刺等を行った。治療は週1回とした。 【経過】4診目で胃腸が楽になる感覚が得られ、6か月 後(21診目)には左腹部の不快感が緩和した。12か月 後(48診目)に左季肋部の不快感・冷感も緩和された。 また50診目にて、身体症状の尺度であるPatient Health Questionnaire-15(PHQ-15)の評価は7(低度)であっ た。 【考察および結語】頸部の手術後の機能障害として反 回神経や迷走神経、横隔神経に異常が出ると報告され ており、本症例も同様の病態だった可能性がある。術 後から持続していた自律神経症状に対し、患者と相談 し頸部や全身の反応点を観察して施術を続けたことで 症状の軽減につながったと考える。 キーワード:自律神経症状、先天性筋性斜頸術後、胸 鎖乳突筋 - 192 - 193 194 -Sun-O2-16:36 パーキンソン病の嚥下障害に対する円皮鍼等のセルフ ケアの効果 1)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部 鍼灸健康学科 2)Rio鍼灸院 ○福田晋平1)、稲垣沙緒里2) 【目的】パーキンソン病(以下PD)の嚥下障害に対 して円皮鍼と嚥下訓練を組み合わせたセルフケアプロ グラムの効果について検討した。 【方法】対象はPDと診断され、抗PD薬を服薬し、 Hoehn-Yahr重症度分類1度から3度の患者11名であった。 評価は舌圧、オーラルディアドコキネシス(以下OD)、 RSST(3回の嚥下に要する時間)、咬合力、口腔水分 量、EAT-10(簡易嚥下評価票)、サブスタンスPであっ た。介入は円皮鍼(廉泉、外金津、外玉液、天容、足 三里、太渓)と嚥下体操とし、4週間実施した。なお、 貼付した円皮鍼に対して2回/日(1穴あたり6秒間)の 押圧刺激を実施した。評価は、介入の前後と介入後4 週間の経過観察後に実施した。 【結果】Friedman検定でODとEAT-10に有意な差がみ られた。事後検定としてBonferroni検定を行い各時点 で比較を行った所、ODは介入前と比較し、介入後、 経過観察後で有意に増加した。また、EAT-10も介入 前(6.5±6.8)と比較し、介入後(3.1±3.6)、経過観 察後(4.1±6.8)で有意に点数が低下した。介入前後 のみで評価した咬合力はセルフケア後に有意な増加が みられた。RSSTは有意差はないが、セルフケア前23.8 ±14.8→セルフケア後15.7±9.2→経過観察後16.5±9.4 [秒]と嚥下時間が短縮した。 【考察・結語】本研究で用いた介入は単一刺激ではな く、個別の効果を明らかにすることはできない。ただ し、使用した経穴の中には顎二腹筋や顎舌骨筋といっ た舌骨上筋群に位置し、これらへの円皮鍼や押圧刺激 が筋の過緊張の抑制や、協調運動障害の改善に寄与し、 発語回数の増加や円滑な嚥下運動を促進させたと考え られた。また、PD症状の改善(歩行障害や筋強剛等) を自覚する患者も多く、PD症状の改善が咬合力を含 む口腔機能を改善させた可能性が考えられた。本研究 の結果から、PDの嚥下機能や、舌口唇運動機能や咬 合力といった口腔機能の低下に対して、本セルフケア プログラムは有効である可能性が示唆された。本研究 はJSPS科研費19K10430の助成を受けたものです。 キーワード:パーキンソン病、嚥下障害、円皮鍼、セ ルフケア、口腔機能 -Sun-O2-16:48 パーキンソン病の筋固縮に対し経絡経筋治療が有効で あった1症例 北里大学北里研究所病院漢方鍼灸治療センター ○伊藤剛、塚本シュ、富澤麻美、近藤亜沙、 伊藤雄一、井門奈々子、井田剛人、桂井隆明、 伊東秀憲、星野卓之 【症例】60代女性。 【主訴】体の強ばり、声のかすれ。 【現病歴】X-6年、細かい作業ができなくなり、大学 附属病院脳神経内科受診したところパーキンソン病と 診断された。MAO-B阻害薬、レボドバ含有製剤など にて治療が開始され、当初は症状が軽減したが、その 後次第に筋固縮が進行し、足関節、手関節、頚肩など の痛みも出現し歩行が困難になった。症状改善を希望 し、X年6月当センター鍼灸外来を受診。 【所見】身長150cm、体重43.6kg、血圧133/81mmHg、 脈拍85bpm、左右の筋固縮以外に軽度の手指振戦、寡 動、便秘あり。六部定位脈診は肺虚証。 【治療】北里式経絡治療に基づき、本治は肺虚証本治 穴と共通基本穴、標治は背臥位で四神聡、上星、頭維、 足三里、陽陵泉、申脈、解渓、太衝に加え足陽明経筋 上の陥谷・旁谷・地五会、腹臥位で風府、門、肩井、 弊風、天宗、飛揚、崑崙などに15分間ずつ置鍼し、 門と旁谷には10~30秒間の雀啄を加えた。使用鍼は灸 頭鍼以外、ステンレス40mm(径0.23mm)鍼を用いた。 【経過】毎回治療直後に筋固縮の症状は軽減し、2ヶ 月後の2診目のVAS(Visual Analog Scale)は治療前90 mmから治療後57mmとなり、4ヶ月後の4診目には体 の強ばりは、VASで治療前76mmが治療後32mmまで 改善し、動作や歩行が早くなった。同時期に生じた構 語障害に対しては門に対する雀啄により治療後すぐ に改善した。ただしQOLを上げるためその後も治療 を継続している。 【考察】パーキンソン病の筋固縮による体の強ばりは、 患者の行動範囲を狭め、QOLを下げる要因の一つで あるが、現代医学的治療でも完全にコントロールでき ないのが実状である。本症例の様に、筋肉の引きつれ や突っ張りなどを改善する経筋治療を加えた鍼灸治療 を併用することは、パーキンソン患者のQOLを上げ るのに役立つ可能性は高い。 【結論】パーキンソン病の筋固縮に対し北里式経絡経 筋治療は有効であった。 キーワード:パーキンソン病、筋固縮、経絡経筋治療、 足陽明経筋、雀啄 - 193 - 195 196 -Sat-GP-10:00 鍼の実技中に被験者が失神した経験 常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科 ○村澤樹、冨岡祐斗、日野こころ 【背景】鍼治療の有害事象には、痛み、内出血以外に も気分不良や脳貧血・失神などがある。今回、鍼の実 習中に学生被験者の意識が消失し、呼吸停止、脈拍が 触れないという状態に陥り、応急処置を必要とする経 験をしたので報告する。 【症例(学生A)】19歳、男性、身長171cm、体重70.4 kg。当日、体調不良ではなかったが少し身体の怠さ・ 気持ち悪さがあり、朝食を摂っていなかった。また2 年ほど前から血を見ると気持ちが悪くなり倒れてしま うことがあった。 【経過】午前の実技時間に被験者である学生Aが座位 (丸椅子に座りベッド上に腕を乗せる)の状態で、施 術者である学生Bが学生Aの腕橈骨筋に刺鍼した。使 用鍼は40ミリ、20号鍼(セイリン製)、刺鍼深度は0.7- 1.0cm程度であった。通電のため2本目の鍼を打った際、 学生Aから「最近鍼を受けるのが怖い」との話があっ たため通電は中止しようと抜鍼を決めた。鍼を1本抜 いた時点で学生Aがベッドに前のめりに倒れ込んだ。 その後ベッドから滑り落ち、仰向けに床に倒れ、後頭 部を打った。すぐに教員が橈骨動脈で脈拍を確認する が触れず、呼吸も確認できなかった。教員による心肺 蘇生が開始され、その場にいた他の学生がAEDの準 備および119番をした。救急隊との通話中に学生Aの 意識が回復し、救急車到着後に救急隊による状態確認 があり、搬送せず「通常通り過ごして良い」との判断 であった。 【結語】今回、前腕への刺鍼時に被験者が失神し呼吸 停止、脈拍が触れないという状態を経験した。刺鍼に よる有害事象は実技実習中や臨床時にどれだけ注意を 払っても起こり得ることである。そのため刺鍼前には 被験者の状態を確認しなければならないことや緊急時 の応急処置を学ばなければならない。このような経験 をしたことを無駄にしないために、今後も鍼灸の安全 性についてもしっかり学んでいきたい。 キーワード:失神、実技実習、鍼灸の安全性 -Sat-GP-10:10 大学鍼灸学科学生の鍼灸安全性に関する認識調査 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科 ○須貝純也、中村貴翔、山下仁 【目的】鍼灸安全性に関する大学鍼灸学科学生の認識 を知り13年前の調査(荒木輝之. 本学卒論2011)と 比較するため。 【方法】2024年11~12月に森ノ宮医療大学鍼灸学科1 ~4年生に対してGoogleフォームで質問調査を実施し た。内容は有害事象の知識、安全性の認識、安全対策 の学習状況など13項目とした。回答は学年別で分析し 2011年と比較した。統計解析はカイ二乗検定を用い有 意水準5%とした。 【結果】対象学生253名中212名が回答した(回収率 83.8%)。有害事象の定義をよく知っている・少し知っ ていると答えた人数は今回1年6/61(9.8%)、2年10/55 (18.2%)、3年45/53(84.9%)、4年37/43(86.0%)だっ た。13年前はそれぞれ16/53(30.2%)、10/45(22.2%)、 15/47(31.9%)、36/53(67.9%)であり1年で今回が有 意に少なく3・4年で今回が有意に多かった。15コマの 鍼灸安全性の科目が必要と思うと答えたのは今回1年 21(34.4%)、2年27(49.1%)、3年39(73.6%)、4年31 (72.1%)だった。13年前はそれぞれ40(75.5%)、36 (80.0%)、30(63.8%)、41(77.4%)であり1・2年で 今回が有意に少なかった。鍼灸安全対策ガイドライン 2020年版をよく読んだ・少し読んだと答えたのは、1 年13(21.3%)、2年6(10.9%)、3年13(24.5%)、4年10 (23.3%)、鍼灸安全対策マニュアル(2024)はそれぞ れ7(11.5%)、3(5.5%)、10(18.9%)、12(27.9%) だった。 【考察・結語】3年生以上の有害事象の知識が13年前 より著しく向上したのは、当時なかった鍼灸安全学の 授業科目が2014年度から3学年以降に開講されたため である。今回1・2年で科目の必要性の認識が著しく低 いため、科目設置後に低学年で安全性にあまり触れな くなった可能性がないか検証が必要である。また今回 ガイドラインやマニュアルを読んだ4年生が少ないこ とから、自主的読書の勧奨だけでなく主要な項目を授 業に含める必要性が示唆された。 キーワード:鍼灸、大学生、安全性、質問調査、教育 - 194 - 197 198 -Sat-GP-10:20 声掛けの有用性の検証 大阪行岡医療専門学校長柄校鍼灸科 ○南部咲希、門脇幸太郎、森田恭弘 【目的】施術をする上で、患者とのコミュニケーショ ンは重要である。近年、スマートフォンなど情報通信 デバイスの利用は日常的となり、医師によるWEBリ モート診断サービスなども現れている。そこで今回、 施術中に声掛けがあった場合、なかった場合、WEB 通話で行った場合の三環境での施術結果について検討 したので報告する。 【方法】対象:本校学生健康成人33名(男性16名女 性17名年齢28.8±11.1歳)比較:A群:声掛けあり B群:別室リモート話者による声掛けありC群:声 掛けなし施術部位:居=両母指圧迫風市=手掌 圧迫刺激強度は軽度の痛みを感じる程度声掛けは 施術中、絶え間なく疾患などに効果のあるツボである 旨の説明をし、被検者を気遣いながら事前に強めの刺 激を与えることも伝えた施術時間:1分計測:施 術前後でアンケートおよびVAS(ストレス値)、唾液 アミラーゼ値(AMYとする) を計測した期間: 2024/5/8~5/22 負荷:トランプタワーを1分間作成 手順:安静→負荷→計測1→施術→計測2 施術は教員 が行った 【結果】A群はVAS3.2→2.5、AMY13.8→9.6。B群は VAS4.4→3.7、AMY16.0→17.5でアンケートでは、通 信環境の不具合や、戸惑いを感じた人が多かった。C 群はVAS4.6→4.7、AMY15.1→11.8でアンケートでは 痛みが強いことや不安を感じた人が多かった。 【考察】B群では男性でストレス値が上昇したことか ら、自覚はないがWEB通話でのコミュニケーション にストレスを感じていると考える。主観評価のVASが 下がり、意識の介在しないAMYは体の受けたストレ スが正直に表れたため上昇したと考える。 【結語】施術中の声掛けは、VASもAMYも下がり、 ストレス軽減の傾向が示された。WEB通話を介した 音声と映像のコミュニケーションは不安感を与えた。 本研究での押圧は少しの痛みを伴う刺激のため疼痛疾 患の患者への鍼施術時や強めの施灸時での声掛けによ る疼痛ストレス緩和につながると考える。 キーワード:声掛け、リモート話者による声掛け、 WEB通話、ストレス度 -Sat-GP-10:30 卒前はり師の未来への道しるべ 1)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 2)帝京平成大学東洋医学研究所 3)帝京平成大学ヒューマンケア学部柔道整復学科 ○大澤佑斗1)、皆川陽一1,2)、宮崎彰吾1,2)、 池宗佐知子1,2)、中村優1,2)、脇英彰1,2)、 飯村佳織1,2)、鈴木卓也1,2)、秋元佳子3) 【目的】様々な知識や技術を学ぶ中、臨床でどのよう な施術が用いられているのか疑問を抱いていたところ、 卒後はり師の肩こりの施術内容を聴取する研究に参加 することができた。今回は、その結果を基に学生時代 に修得すべき知識や技術の指針を考察することを目的 とした。 【方法】某はり師養成施設において2023年までに内定 実績のある企業などに勤務するはり師の協力を仰ぎ、 郵送法によるアンケート調査を実施した。調査項目は、 はり師国家試験の合格年次、主訴が肩こりの患者に対 して実施したはり施術の内容などとした。なお、施術 内容の質問に関しては、鍼の臨床試験における介入の 報告基準(STRICTA)に基づいて聴取した。 【結果】協力依頼に応じた85名のはり師にアンケート を発送し、2024年2月16日から3月14日までに79名から 回答を得た(回収率92.9%)。回答者の年齢(中央値) は28.0歳(男42人、女37人)であった。国家試験の合 格年次は「平成30年」、「令和2年」が14人と最も多かっ た。肩こりは、最近1年間の施術患者で2番目に多い主 訴で、「はり施術」は、現代西洋医学に基づき、トリ ガーポイントやM-Testを反映することが多かった。ま た、特に有効であった経穴は肩井で、針径0.16~0.18 mmの鍼を使用して15~30mm刺鍼し、筋単収縮や電 気鍼療法における筋収縮、得気を誘発させ、雀啄術や 置鍼術、単刺術等の手技で刺激を加えることが多かっ た。 【考察】卒後はり師が肩こり患者に対して、現代西洋 医学の知見を反映した施術が多かったことから、まず 筋肉や神経などに対する知識および施術方法を習得す ることが重要だと感じた。一方、古典的、中医的理論 に基づく施術が少数派であったことから、学生時代に 得た東洋医学的知識をどのように活かすか、またこの 領域に興味がある学生の就職先あるいは卒後どう学ん でいけばよいか考えさせられる結果であった。 キーワード:肩こり、鍼療法、アンケート、卒前教育、 トリガーポイント - 195 - 199 200 -Sat-GP-10:40 鍼灸学系大学生のEBMの認識に関する質問調査 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科 ○中村貴翔、須貝純也、山下仁 【目的】鍼灸学系大学生のEvidence-Based Medicine (EBM)に関する認識を把握するため質問調査を実施 した。また2009年の同大学での同調査の回答と比較し た。 【方法】森ノ宮医療大学鍼灸学科1~4年生253名を対 象として2024年11~12月にGoogleフォームで回答を得 た。質問はEBMの定義と関連用語の知識、興味や必 要性などとし、15年前の回答(大月隆史,他. 全日本 鍼灸学会雑誌2010; 60: 615)と比較した。なお本学 は2007年に開学したため2009年調査時の最高学年は3 年生である。 【結果】212名から回答を得た(回収率83.8%)。3年 生53名について、(1)EBMの言葉を「よく知ってい る・まあまあ知っている」と答えた人数は31(58.5%)、 (2)EBMの定義は19(35.8%)、一方15年前の3年生41 名はそれぞれ27(65.9%)、15(36.6%)だった。(3) ランダム化比較試験(RCT)と(4)システマティッ クレビューについては今回の3年生はそれぞれ38 (71.7%)、30 (56.6%)、15 年前は29 (70.7%)、3 (7.3%)だった。カイ二乗検定では上記(1)~(4) のうち(4)のみ有意差があった(P<0.001)。(5)鍼 灸でのEBMの必要性(0~100)については今回64.1± 26.2(平均±SD)、15年前は67.1±22.1で有意差はな かった(P=0.57, t検定)。なお今回の4年生の上記(1) ~ (5) はそれぞれ29 (67.4%)、24 (55.8%)、32 (74.4%)、26(60.5%)、72.0±20.1だった。 【考察・結論】EBMの概念や手法は今日すべての保 健医療領域に普及しているが、今回調査対象となった 大学の鍼灸学科学生は認識が十分でなく、15年前と比 べても大差ない項目が多かった。チーム医療・多職種 連携がより重視されるようになった今日、鍼灸師が参 画するためには現代医学の用語や知識だけでなく、 EBMの概念、思考プロセス、実践方法を身に着けて おく必要がある。今回の調査結果は、EBMの理解と 実践スキルに関する鍼灸学系大学の教育について再考 の余地があることを示唆している。 キーワード:鍼灸、EBM、大学生、質問調査、教育 -Sat-GP-10:50 視力回復に対する鍼灸の研究について 1)常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科 2)藤田医科大学病院麻酔科・ペインクリニック外来 ○佐藤里佳1)、有働幸紘2)、日野こころ1) 【目的】大学入学後に所属している美容鍼灸サークル において鍼治療の現場を見学する機会を持てるように なった。その際、治療後に「目がすっきりした」と述 べられる方が少なくなかった。そこで目の症状に対す る鍼灸治療に興味を持ち、視力回復についての鍼治療 の研究について調べた。 【方法】文献検索は医学中央雑誌で行った。キーワー ドを「視力鍼」「近視鍼」として抽出された1990 年以降の文献のうち、症例報告や教育関係の内容など を除外し、学会・研究会が発行したものに絞った結果、 最終的に12本が対象となった。 【結果】対象となった文献は1993年から2015年までの 期間に掲載されていた。眼窩周囲への円鍼の効果を検 討した1件を除いて、視力回復や眼精疲労に対する鍼 の効果を検討していた。対象については8件(66.7%) が健康成人やボランティアであり、平均年齢は白内障 手術後の患者を対象とした1件(平均年齢73歳)を除 いて、すべて30代以下であった。使用されていた経穴 は、合谷、百会、睛明、攅竹、太陽などが中心で、刺 激方法は10-15分の置鍼が最も多く8件(66.7%)であっ た。評価には視力検査や眼の屈折率の測定、眼精疲労 についてのVisual analogue scaleなどが行われていた。 結果として、9件で視力向上が認められており、6件で 眼精疲労の低下を認めていた。 【考察】今回の文献では、年齢が30代以下の対象者に 置鍼を行った前後での効果を見ているものが多かった。 使われた経穴は顔面と四肢の経穴を組み合わせたもの だけでなく1穴だけで効果を見ているものもあった。 結果から、視力の回復だけでなく眼精疲労の低下とい うのが鍼の効果として大きいのではないかと感じた。 今後は、大学祭で出店している東洋医学カフェで視力 関係のお茶を提供してみたり、美容鍼灸サークルの活 動内で視力に関するアンケート調査を行ったりしてみ たいと考えている。 キーワード:文献レビュー、視力回復 - 196 - 201 202 -Sat-GP-11:00 日本マンガにおける鍼灸関連描写についての調査研究 1)森ノ宮医療大学鍼灸学科 2)森ノ宮医療大学鍼灸情報センター ○木村寧乃1)、増山祥子1,2) 【背景と目的】日本マンガにおける鍼灸に関する情報 を検索し、鍼灸がどのように描かれ発信されているか について調査を行ったので報告する。 【方法】検索方法は京都国際マンガミュージアムのデー タベース、マンガ・アニメの総合百科事典とされるデー タベース“マンガペディア”、Google検索エンジン、 入手済のもの、知人への聞き込みだった。作品の選択 基準は、日本の漫画本および電子書籍作品とし、集計 と分析を行った。 【結果】2024年8月2日時点で京都国際マンガミュージ アムのデータベース検索でのヒット数は0件だった。 その他の検索方法で情報収集した合計43作品のうち選 択基準に合った作品は25作品だった。マンガペディア 4作品、Google検索でヒットしたWeblog「もぎすのブ ログ」ではマンガの中の鍼灸をテーマとしており既に 報告済の530冊の情報(13作品)と本研究で新たに追 加対象となった280冊(29作品)、電子書籍89話(1作 品)を本研究対象とした。鍼灸に関する情報の描写が みられたのは219個所だった。そのうち鍼86件(39.2 %)、灸16件(7.3%)、鍼と灸1件(0.4%)、指圧66件 (30.1%)、経絡10件(4.6%)、その他41件(18.7%)、 経穴名使用は48件(21.9%)だった。経穴名は48件中 30件が指圧、17件が鍼、1件が灸で使用されていた。 使用経穴はほぼ正しい位置での描写が41件、描写無し が7件だった。非現実的経穴すなわち“秘孔”という 表現で描かれていたのは3作品32件だった。 【考察と結論】描写されていた経穴の位置と説明はほ ぼ正しかった。鍼灸に関する情報の描写は一部分であっ たため、鍼灸関係者や鍼灸に理解のある者以外には注 目されにくいと考えられた。鍼灸師の職業理解と正し い鍼灸の情報やなるべく現実に即した鍼灸の施術の描 写が増えれば鍼灸の普及活動につなげられる可能性が 示唆された。 キーワード:日本マンガ、漫画、鍼灸 -Sat-GP-11:10 性同一性障害当事者の悩みに鍼灸師はどこまで寄り添 えるのか 1)専門学校沖縄統合医療学院鍼灸学科 2)専門学校沖縄統合医療学院 ○山本ひとみ1)、小田切耕平1)、鈴木信司2) 【目的】心と体の性が一致しない「性同一性障害」。 戸籍の性別変更が可能になりおよそ20年が経過した昨 今、性同一性障害を巡る環境が大きく変わりつつある。 政府は、性的指向やジェンダーアイデンティティの多 様性に関する国民の理解が十分でないとして、2023年、 理解増進に関する法律を施行した他、診断名を精神疾 患ではない「性別不合」に変える準備が進んでいる。 当事者の数は増加傾向にあり、今後鍼灸師が施術する 機会が増えると推測されるが、鍼灸施術の需要や症状、 身体的・精神的な不安などを調査した報告がないのが 現状である。そこで今回、当事者にアンケート調査を 行い、治療や症状、副作用について明らかにし、安心 して施術を受けてもらうために鍼灸師として寄り添え ることがあるか検討した。 【方法】対象は、性同一性障害の当事者団体「GID沖 縄」のスタッフと、GID沖縄が主催するイベント参加 者(2024年6月30日~10月30日)。事前に口頭と書面を 用いて調査目的を説明し、同意の得られた当事者に16 項目からなるアンケートを記入してもらい単純集計し た。なお、調査にあたり本校倫理員会の承認(2024002) を得て実施した。 【結果】回答したのは21人。そのうち14人(67%)が 「鍼灸を受けてみたい」と回答した。当事者が鍼灸施 術に期待するものとして、薬物療法による副作用や手 術後の疼痛・違和感、精神的なストレスの軽減など、 鍼灸施術の適応となるものが多かった。安心して施術 を受けてもらうための配慮に関しては、施術技術や性 同一性障害に対する知識以外にも鍼灸院の外観や表記 の仕方の工夫といった回答が多岐にわたった。 【考察・結語】21名中14名が「鍼灸を受けてみたい」 と回答したことから、鍼灸施術は需要あることが示唆 された。また当事者が訴える症状は、鍼灸施術の適応 になるものが多かったことから、専門的な知識、配慮 は必要だが鍼灸師として寄り添える可能性が示唆され た。 キーワード:性同一性障害、性別違和、ジェンダーア イデンティティ、GID、アンケート - 197 - 203 204 -Sat-GP-11:20 耳鍼としてマイクロコーンを用いた美容鍼灸サークル の新しい挑戦 常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科 ○夏目大輝、増田百花、酒井文菜、伊藤音生、 村澤樹、佐藤里佳、日野こころ、藤田格 【目的】耳介治療(以下耳鍼)は疼痛緩和・痩身効果・ 精神疾患などに用いられている。我々常葉大学美容鍼 サークルは大学祭での美容鍼体験を行ってきたが、今 回は新たに耳鍼の貼付体験を行ったので報告する。 【方法】令和6年11月に開催された大学祭にて耳鍼の 貼付体験を行った。貼付ポイントは飢点、肺点、神門 とし、探索棒(ソマテスター)を用いてポイントを探 索後、ソマレゾンmini(東洋レジン)を貼付した。体 験後、体験者にはGoogle formによるアンケートを実 施した。アンケートの内容は耳鍼体験の満足度(10段 階:1. 良くなかった-10. 大変良かった)、耳鍼の経験 の有無、貼付した学生へのコメント(自由記述)とし た。 【結果】耳鍼体験は美容鍼体験と同じ体験場所、およ び別の場所で出店していた東洋医学カフェ教室の空き スペースにて行った。耳鍼体験者は合計で112名、得 られたアンケートの回答は42件(回収率37.5%)であっ た。耳鍼体験の満足度は10が最も多く(32件、76.2%)、 耳鍼の経験は100%が「初めて」であった。学生への コメントには「初々しい感じで、好感がもてました。」 「皆さん学んだ健康に役立つ内容をこれからもどんど ん外へ発信して、多くの人が癒される場を設けてくだ さい。期待しています。」など応援する内容が多かっ た。有害事象にあたる報告はなかったが、体験者の希 望により教員が改めて貼付を行う事例が1件あった。 【考察及び結語】耳鍼は衣服の脱着やベッドが不要で あるため簡便に行うことができる。さらにソマレゾン miniを用いた耳鍼は粒鍼や円皮鍼と比較して安全性が 高いと考えられた。最近は地域イベントへの参加に声 をかけていただくことも増えたため、狭いスペースや 冬場のイベントでも施術することが可能な耳鍼による 体験会は、サークル活動の幅を広げ、鍼灸を知っても らうためのきっかけのひとつとして有用であると考え られた。 キーワード:耳鍼、マイクロコーン、アンケート -Sat-GP-11:30 学生ボランティアによるマイクロコーンを用いたケア 活動報告 常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科 ○鈴木凜也、村上高康、古川夢奈、中澤寛元、 福世泰史、日野こころ、沢崎健太 【目的】学生ボランティアが競技者に対して経穴部位 にマイクロコーン(ソマニクス、東洋レヂン、静岡) を貼付した満足度を調査すると共に、学生の臨床能力 に対する自己評価を行ったので報告する。 【方法】第16回しまだ大井川マラソンinリバティにて 競技後のランナーを対象とした。マイクロコーンの貼 付部位は足三里・行間・陽輔・復溜とした。ランナー に対して性別、年齢、経験年数、コンディションの重 要性に対する意識、日常的に行う体調管理方法、鍼灸 受療経験の有無、鍼灸の効果に対するイメージ、鍼灸 治療受療希望の有無、ソマニクスの使用感と満足度に ついての調査を行うとともに、ボランティア前後で学 生が臨床能力の自己評価を10段階で評価した。体験の 満足度と自己評価については平均値±標準偏差で示し、 統計解析は対応のあるt検定を行った。 【結果】129名(男性93名・女性36名)の回答があっ た。最も多い年齢は50代以上が55名、マラソン経験年 数は7年以上が47名であった。コンディショニングが 非常に重要と答えた方が85名であり、日常的に行う調 整方法はストレッチが104名であった。鍼灸治療の経 験があるのは60名であった。鍼灸のイメージについて は、疲労回復が61名、痛みの軽減が64名であった。貼 付後にソマニクスの不快感は特に無く、体調に変化が 無いと答えたのは123名であった。体験の満足度は5段 階評価で3.5±0.8(mean±S.D.)であった。学生の自 己評価は2.1±1.7から4.9±1.2(p=0.00012)であった。 【考察】回答者は経験が豊富で体調管理の重要性を認 識していた。今回は競技後の貼付であるため、疲労度 が大きく体調変化がみられなかった。学生は多くの方 に貼付を行い自己評価は高く推移した。このことから 課外活動が学生の自信につながると考えられた。 【結語】学生がケア活動を行う事により、鍼灸の啓蒙 になり且つ学生の自己肯定感の上昇につながる教育効 果がみられた。 キーワード:学生ボランティア、マイクロコーン、ソ マニクス、アンケート - 198 - 205 206 -Sat-GP-11:40 鍼灸の啓発活動の必要性とサークル活動継続の意義に 関する考察 常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科 ○酒井文菜、増田百花、夏目大輝、村澤樹、 日野こころ、藤田格 【目的】常葉大学の美容鍼灸サークルは設立されて6 年になる。これまで大学祭での美容鍼体験イベントを 中心に、自分たちで様々な企画・運営やイベントに参 加することでその活動を広げてきた。今年度は地域イ ベントに参加することを初めて大学側から依頼された。 これをきっかけに鍼灸の啓発活動の必要性とサークル 活動継続の意義について考察した。 【方法】2019年設立以降の活動について、年度ごとの 企画や参加イベントの内容および数の推移についてま とめた。また各イベントの参加者・参加学生から聴取 したアンケートの内容について考察した。 【結果】活動内容については以下の通りであった。 2019年は外部講師による講演会1件。2020年は検定試 験1件。2021年は大学祭初参加、地域イベント1件、検 定試験2件。2022年は学会発表、専門外来設立、大学 祭、地域イベント2件、検定試験2件、講演会1件。 2023、24年は学会発表、専門外来、大学祭、地域イベ ント3件、検定試験2件。地域イベントでは「ツボを使っ たセルフケア指導」や「刺さない鍼を用いたツボ体験」 などを行っている。参加者からは「常葉大学に鍼灸学 科があるのを初めて知った」「鍼灸は聞いたことがあ るがよくわからない」といった声があった。また、イ ベント参加後の学生へのアンケートの「今回の参加は 今後の役に立つと思いますか?」という質問に対して 「人との付き合い方」と「患者さんとの接し方」が最 も多く回答されていた。 【考察・結語】サークル設立以降の活動内容について まとめた。美容鍼灸サークルは学生の勉強目的で開始 したが、最近では美容だけでなく健康増進に関する地 域イベントへの参加が増えたことによって、広く一般 の方への鍼灸の啓発活動につながっていると考えられ た。同時に参加学生にとっても学外で多くの人たちと 話をする機会を持つことは、早い段階から「鍼灸の専 門家」になることの自覚を促す機会になっていると考 えられた。 キーワード:啓発活動、サークル活動 -Sat-GP-11:50 美容鍼灸サークルにおける検定試験導入の試み 常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科 ○増田百花、酒井文菜、夏目大輝、村澤樹、 日野こころ、藤田格 【目的】大学生活の中でサークル活動は有用であるが、 その活動を維持・継続していくことは様々な理由で難 しい。本学科美容鍼灸サークルでは「毎年何か一つ新 しい取り組みにチャレンジし、飽きることのない活動 を作る」ことを目標に活動を続けている。今年度は 「サークル独自の検定試験」を作成したので報告する。 【方法】検定試験の作成は3年生と教員で行った。試 験の内容は大学祭で提供する技術を中心に1)患者誘 導・導入2)美容ローラー3)有資格者の指導の元で の前揉・後揉法4)耳介へのマイクロコーンの貼付 5)美容鍼とした。大学祭2ヶ月前より検定試験を開始 し、大学祭1週間前までに合格した1)-4)の内容を当日 提供できることとした。昨年まで1)-4)を行っていた 上級生に関しても、今年度は改めて合格を必要とした。 5)は4)までを合格した上級生向けの評価とし、サー クル活動内での目標のため大学祭では行なっていない。 【結果】検定に参加した学生は14名(1年2名、2年4名、 3年8名)、うち1名は大学祭には参加できなかった。今 年度大学祭前の合格者は1)14名2)11名3)11名4) 14名5)5名であった。検定試験導入後の主な変化は、 大学祭前の練習会ならびに大学祭終了後の活動への参 加者が増加したことであった。 【考察】今回の検定試験を導入した結果、技術レベル の安定だけでなく、大学祭の前後における活動への参 加者が増加した。これは、目標が明確化することで自 分の技術に関する振り返りが可能になったことや、検 定のために他学年との交流をせざるを得ない状況を作っ たことで、これまでとは異なる活気が出たものと考え られた。 【結語】サークル活動を運営する中での技術習得の検 定試験を導入したことで、個人の目標が明らかになり、 学生が継続的に活動に参加するきっかけになったと考 えられた。 キーワード:美容鍼灸サークル、検定試験 - 199 - 207 208 -Sat-GP-15:00 肌の状態に与える睡眠および心理状態と五臓スコアの 関係 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科 ○赤星琳々、山田悠翔、下村莉子、川嶋里佳、 堀川奈央、鍋田智之 【目的】大学生の肌状態に与える睡眠および心理的状 態を調査し、東洋医学的評価(五臓スコア)との関係 を明らかにすることを目的とした。 【方法】同意が得られた睡眠と肌の状態に不満を感じ ている大学生19名(20.5±0.8歳)を対象とし、月か ら木曜日の就寝前に気分プロフィール調査(以下 POMS2)および五臓スコアの記録を指示した。また、 翌朝起床時にOSA睡眠調査票(以下OSA)、鏡を見て 自覚的肌スコア、スマートフォンのカメラ機能を利用 したAI評価(資生堂肌パシャ)の記録を指示した。 分析は脱落4日分を除いた72日分のデータをMicrosoft Excelを用いて因子間の相関関係を検討した。本研究 は森ノ宮医療大学学術研究委員会の承認を得て実施し た(2023・135)。 【結果】肌の自覚的評価とAI評価、POMS2、OSAに 相関関係は認められなかった。肌のAI評価では「う るおい」の項目のみがOSA、POMS2・五臓スコアと 相関を示した(OSA:起床時の眠気r=0.44、睡眠時間r= 0.38、POMS2:TDM得点r=-0.53「怒り-敵意」r=-0.58、 「抑鬱-落込み」r=-0.48、五臓スコア:「心」r=-0.4、 「脾」r=-0.53、「肺」r=-0.53、「腎」r=-0.49)。POMS2 のTMD得点はOSAの全因子と負の相関を示し、五臓 スコアの肝を除く項目と相関を示した。特に「心」と はr=0.75と強い相関を示した。 【考察・結語】睡眠時間の悪化は起床時の眠気を引き 起こし、肌のうるおいに悪影響を与える可能性が考え られた。睡眠の悪化と心理面の悪化は関係しており、 五臓スコアの「心」と関係が深いと考えられた。自覚 的肌評価は顔面部の肌評価において信頼性が低いと考 えられた。美容鍼灸では睡眠や心理面、東洋医学的ア プローチを行うことが重要であると考えた。 キーワード:睡眠、心理、肌、五臓スコア -Sat-GP-15:10 東洋医学における日中短時間仮眠に対する考察 1)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 2)帝京平成大学東洋医学研究所 3)国士舘大学ハイテクリサーチセンター ○櫻田啓悟1)、中村優1,2,3) 【目的】現在、我が国では世界的に見て最短とされる 総睡眠時間を中心に睡眠に関連する諸問題が社会問題 となっている。そこで近年、不足する夜間睡眠に対す る対処として日中の短時間仮眠に注目が集まっている。 東洋医学における睡眠に対する言及は加畑ら(2006) が黄帝内経素問・霊枢より記載の抽出、解釈を行って いるが、仮眠について言及された研究は行われていな い。本研究では黄帝内経素問・霊枢において仮眠とい う概念が存在したか、また仮眠に言及できるような内 容が存在するかを検討し報告する。 【方法】加畑らにより抽出された黄帝内経素問・霊枢 に記載される眠りに関する記載を基に石田秀実監修 「現代語訳黄帝内経素問・霊枢」より該当記述を全抽 出しなおし、本文献内に仮眠に関連する項目が存在す るか否かの検討を行った。また現代科学における仮眠 の定義や効果に関しては論文データベース医中誌なら びにPubmedを用いて2024年9月より過去5年間の論文 をまとめ考察に用いた。 【結果】睡眠に関連する表現である「臥」「寝」「眠」 「瞑」の記載がみられる素問38ヵ所、霊枢34ヵ所、全 てにおいて仮眠に関連する記載は存在しなかった。ま た、霊枢営衛生会篇第十や大惑論篇第八十などで日中 の眠気や睡眠が病に近しいと解釈できる記載が確認さ れた。なお、医中誌では36件、Pubmedでは109件が関 連論文として該当した。 【考察および結語】黄帝内経素問・霊枢に仮眠に関連 する記載がないこととともに、日中の眠気や睡眠、急 な眠気や横になりたがることに対して病に近しいもの との記載や、治療に失敗した際に起こる症状との記載 があることから、これらが編纂された時代において日 中の睡眠は異常な行動であったものと考えられる。こ のことから黄帝内経において、不足する夜間睡眠に対 する補助的な対処としての仮眠という概念は存在せず、 夜間の睡眠を正常かつ十分にとることが最重要とされ ていたことが示唆された。 キーワード:短時間仮眠、黄帝内経、素問、霊枢、睡 眠 - 200 - 209 210 -Sat-GP-15:20 睡眠の質に対する鍼治療の治効機序と評価方法の検討 1)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 2)帝京平成大学東洋医学研究所 3)立教大学スポーツウエルネス学部 スポーツウエルネス学科 ○萩原明輝1)、五十嵐直美1)、川上萌乃1)、 前出悠杜1)、鈴木卓也1,2)、皆川陽一1,2)、 吉田成仁3)、宮崎彰吾1,2)、脇英彰1,2) 【目的】大学生の34.3%が寝起きにすっきりしない原 因として、睡眠の質や時間帯が指摘されている。我々 のゼミでは、鍼治療が睡眠の質に与える有効性を研究 しており、その治効機序と評価方法を検討した結果を 報告する。 【方法】通院や投薬を受けていないものの、睡眠の質 が悪いと自覚する大学生に協力を仰ぎ、条件(不眠症 重症度質問票(ISI)で8点以上、等)を満たし、文書 にて同意を得た10名を対象とした。対象者を鍼治療群 または無治療対照群に無作為に割り付け、鍼治療群に は、内関、神門、三陰交、安眠、風池、心兪、肝兪、 腎兪に置鍼(15分)、神庭と百会に100Hzの鍼通電(15 分)を1名のはり師が実施した。主要評価項目は睡眠 の質とし、OSA睡眠調査票を用いて評価した。また、 鍼治療の治効機序を評価するため、就寝前の唾液中ホ ルモン(メラトニン、コルチゾール、テストステロン) をメタボローム解析、睡眠ステージを簡易ポリソムノ グラフィ(PSG)、睡眠中の心拍数をウェアラブルデ バイスにて測定した。 【結果】対象者の年齢(平均±標準偏差)は21.10± 0.74歳で、10名全員が「閾値以下(軽症)不眠」であっ た。鍼治療を行う前後1日におけるOSA睡眠調査票の 各項目の変化量(前-後)は、「起床時眠気」が鍼治療 群15.34±7.50、対照群-0.61±6.68、「入眠と睡眠維持」 が鍼治療群9.18±8.27、対照群-2.77±11.12、「疲労回 復」が鍼治療群7.46±8.21、対照群-4.24±9.54であっ た。また、入眠後1.5時間の心拍数は、鍼治療群-2.66 ±4.33、対照群0.17±3.14であった。なお、唾液中ホ ルモンおよび睡眠ステージについては、解析に有効な データを得ることができなかった。 【考察・結語】睡眠の質に対する鍼治療の治効機序と して、自律神経系の関与が示唆された。一方で、PSG による睡眠の質の客観的評価が困難であることや、内 分泌系の関与を検討するための唾液採取の方法などは 再検討する必要があることが判明した。 キーワード:睡眠の質、自律神経系、心拍数、唾液ホ ルモン、ポリソムノグラフィ -Sat-GP-15:30 気象病の発症に関与するリスク要因や東洋医学的因子 の検討 1)関西医療大学保健医療学部 はり灸・スポーツトレーナー学科 2)関西医療大学大学院保健医療学研究科 保健医療学専攻 3)株式会社神樂 4)関西医療大学大学院 ○櫻井永遠1)、尾下功2,3)、戸村多郎1,4) 【目的】気象病は、近年注目される症状で、特に天気 痛が内耳の感受性に関連すると指摘されているが、明 確な結論には至っていない。本研究では、気象病の発 症リスク要因を東洋医学的視点から検討し、気象病に 影響する因子を明らかにすることを目的とした。 【方法】関西医療大学研究倫理審査委員会(24-06) の承認を得て、2024年7月から11月に横断研究を実施。 対象は、某大学の教職員・学生及び某会社の従業員・ 利用者とした。研究内容を理解し、自由意志で参加し た計31名(男性16名、女性15名)を対象としたアンケー ト調査で、内受容感覚研究の一環である。 【結果】参加者の平均年齢は男性50.4±19.9歳、女性 51.5±21.6歳であった。「天気・気温や気圧の変化で 体調が悪くなる」の回答には男女差は認められなかっ た(Mann-Whitney, p=0.086)。質問項目を主成分分析 で分類した結果、第一因子に「脾」「五臓」「虚実」 「腎」「ストレスの有無」「気象変化による体調不良」 「病気ではないかという不安」「仕事や家事での役割」 等が含まれた。気象変化による体調不良を「全然ない」 を無症群(11名)、「まれに」以上を有症群(20名)と し、第一因子のスコアを比較した結果「脾」の項目で 有意差が認められた(p=0.006)。さらに、この体調不 良を従属変数、第一因子であるその他の項目を説明変 数とし重回帰分析を実施した結果、性別と「脾」が独 立した関連因子として残った。この結果は年齢やBMI で調整しても一貫していた。 【考察・結語】東洋医学で「疲れ」と関連する「脾」 は、気象病の発症に重要な役割を果たしている可能性 が示唆された。脾を改善する治療が症状の緩和に繋が るだけでなく、予防的に脾の状態を整えることが気象 病の抑制に有効であると考えられる。本研究は、気象 病の病態において東洋医学的因子である脾の重要性を 支持するものであった。 キーワード:気象病、天気痛、未病スコア、虚実スコ ア、リスク因子 - 201 - 211 212 -Sat-GP-15:40 伸張性運動誘発性の筋痛と最大筋力低下に鍼通電刺激 が与える効果 1)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 2)帝京平成大学東洋医学研究所 3)筑波大学医学医療系 ○小山田善1)、小峰昇一1,2,3)、田鍋優光1)、 吉澤太陽1) 【目的】遅発性筋痛(DOMS)は不慣れな運動により 誘導され、運動意欲の低下や運動能を一時的に低下さ せる。他方、小峰らはDOMS前後の鍼通電刺激(EA) は筋痛や筋損傷を抑制することを報告したが(第70回 全日本鍼灸学会)、DOMS前の予防効果やDOMS後の 治療効果が明らかでない。本研究は、DOMS後のEA による抑制効果を解析することを目的とした。 【方法】運動習慣のない健常男性26名を対象とし、無 作為に2群に分けた(コントロール群: CON群、鍼通 電刺激群: EA群)。最大筋力の70%の負荷で非利き腕 の肘関節屈筋群に伸張性運動を行いDOMSを誘発させ た。運動負荷直後より、CON群は利き腕、EA群は非 利き腕の上腕二頭筋長頭と短頭にそれぞれ2本刺鍼し、 骨格筋長軸方向に1.5Hz、15分間のEAを行った。測定 は運動負荷前から経時的に主観的筋痛と血中筋損傷マー カーを解析した。運動負荷直後及び4日後には最大筋 力の測定を行った。 【結果】運動負荷前に比べ、運動負荷後で両群におい てVASの値は増大したが、2群間における差は認めら れなかった。また筋損傷マーカーに群間差は認められ なかった。最大筋力では、運動負荷後で低値となった が、運動負荷4日後において、CONに比してEA群で有 意に高値となった(8.4±0.8vs10.7±0.7 kgF, p<0.05)。 【考察】DOMSには炎症や酸化ストレスのマスターレ ギュレーターである転写因子Nrf2が関与しており、筋 芽細胞において通電刺激はNrf2を賦活化することから (Komine et al., Sci Rep., 2017)、EAのDOMS抑制効 果はEAによる運動負荷前の骨格筋内抗酸化能増大が 関与した可能性が考えられた。さらに、骨格筋に対す る電気刺激によって神経適応が起き最大筋力の増加に 寄与した可能性も考えられた(Vitry et al., J Appl Physiol., 2019)。 【結語】運動負荷直後の鍼通電刺激の継続は、主観的 筋痛や筋損傷マーカーに影響を与えなかった。一方、 運動負荷により低下した最大筋力の早期回復効果が認 められた。 キーワード:遅発性筋痛、鍼通電刺激、伸張性運動 -Sat-GP-15:50 鍼通電刺激による免疫応答増大効果を呼気ガスより可 視化する 1)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 2)帝京平成大学東洋医学研究所 3)筑波大学医学医療系 ○吉澤太陽1)、小峰昇一1,2,3)、小山田善1)、 草間萌香1)、田鍋光優1) 【目的】リポポリサッカライド(LPS)は炎症を誘導 し、生活習慣病、認知症の後遺症等の疾患を進展させ るためその耐性は重要である。当研究室では、足三里 への鍼通電刺激(EA)は、血中LPS耐性を誘導する ことを報告している(第73回全日本鍼灸学会)。その 効果を呼気ガスより評価することをめざし、介入前後 における呼気ガス内のVOCs(揮発性有機化合物)の 変化の可視化を目指す予備検討を行った。 【方法】対象は健常成人男性1名で、有資格者が左右 の足三里に25mmの深さで刺入し4日間一日15分の通 電刺激を行い、介入前後に呼気ガスを回収した。ベン チトップタイプ飛行時間型質量分析装置Pegasus BT- 4D GC×GC-TOFMSを用いて網羅的に測定を行い、 得られた2Dスポットはデータベースと照合し、各種 VOCsを同定した。測定は3回行った。 【結果】呼気ガス由来VOCsが4700成分検出された。 主成分分析(PCA)では、主成分1で80.5%、主成分2 で寄与率8.8%であり、累積寄与率では89.3%であっ た。階層的クラスター解析(ward法)では、PCAと同 様に早い段階から明確に識別された。Volcano Plot分 析では、介入前においては374種類のVOCsが有意性 をもって増加し、うち269種類のVOCsが同定された。 一方、介入後においては、2576種類のVOCsが有意性 をもって増加し、うち837種類のVOCsが同定された。 【考察】現在まで、鍼刺激による免疫獲得マーカー、 特にLPS耐性増大を評価する非侵襲的マーカーは存在 しない。当研究では、介入前後において呼気ガス由来 VOCsの変化が確認されたが、EAにより血中および呼 気における代謝物の変容が生じた結果であると考えら れた。 【結語】ヒト足三里への鍼通電刺激は、ヒト呼気ガス 由来VOCsを変化させる可能性が示された。この結果 は、鍼通電刺激による免疫応答変容効果を非侵襲的に 予測するマーカー検出を可能にするかもしれない。今 後は、サンプル数を増やし、鍼通電刺激後の炎症応答 と関連のあるVOCsマーカーを探索する。 キーワード:鍼通電刺激、足三里(ST36)、ブレスオ ミクス - 202 - 213 214 -Sat-GP-16:00 足三里への鍼通電刺激に対する血中免疫応答の部位特 異性 1)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 2)帝京平成大学東洋医学研究所 3)筑波大学医療医学系 ○田鍋光優1)、草間萌香1)、小山田善1)、 吉澤太陽1)、小峰昇一1,2,3)、玉井秀明1,2)、 恒松美香子1,2) 【目的】血中へのリポポリサッカライド(LPS)の流 入は炎症応答を誘導し、生活習慣病、認知症などを発 症・進展させる。他方、当研究室では足三里(ST36) への鍼通電刺激(EA)は切皮程度の刺激に比べ、深 部(25mm)へのEAが血中LPS耐性を誘導することを 報告した。しかし、ヒトにおける足三里の部位特異性 は明らかになっていない。そこで本研究では、足三里 が誘導する免疫応答変容効果の刺激部位特異性を明ら かにすることを目的とした。 【方法】健常成人92名を対象とし、Sham群、EA群、 コントロールEA(CEA)群の3群に分けて行った。 Sham群には2~3mm、EA群には25mmの深さで左右の 足三里に、CEA群は足三里より外側に25mmの深さで 有資格者が刺入した。EA、CEA群には4日間毎日15分 の鍼通電を行った。介入前後に採血を行い、介入後の 全血にはLPSを添加し、血漿中の炎症性サイトカイン (TNF-α、IL-6)濃度をELISAにて測定した。 【結果】群間の体組成、食事摂取量に差は認められな かった。介入前後において、3群間のサイトカイン濃 度に差は認められなかった。LPS添加後、各群の炎症 性サイトカイン濃度は増加した。Sham群に比べてEA 群はTNF-α、IL-6の濃度の増加は有意に低下した。 TNF-αは、CEA群ではEA群と比べて有意に高値とな り、Sham群との差は消失した(Sham: 278.5 ± 120.9; EA: 216.7 ± 89.4; CEA: 313.0 ± 124.3 pg/mL, p < 0.05)。 【考察】動物実験において、足三里深部にはPROKR2 タンパクが存在し、EAをその部位に置き刺激するこ とが重要とされている(Liu et al., Nature, 2021)。当 研究において、ヒトで初めて同様の応答が生じること が明らかになり、足三里深部に特異的である可能性が 示唆された。 【結語】足三里は健常人におけるLPS由来の血中炎症 応答を予防する効果を有し、その作用には部位特異性 が認められた。この結果は、LPS由来の炎症により惹 起される疾患の発症予防に有用である可能性がある。 キーワード:鍼通電刺激、足三里、LPS、炎症性サイ トカイン -Sat-GP-16:10 明時代に存在した経穴による女性不妊治療について 1)関西医療大学保健医療学部 はり灸スポーツトレーナー学科 2)関西医療大学大学院保健医療学研究科 3)関西医療大学スポーツ医科学研究センター ○馬場遥大1)、逢野蒼大1)、徳留涼太1)、 畠田彩希1)、山口由美子1,3)、伊藤俊治2)、 王財源1) 【目的】我々は、近年日本で問題になっている晩婚化 による出産の高齢化・不妊症に対し関心を持ち、東洋 医学的観点からこれらの問題を解決できないかと考え た。そのため、まず古典文献を調べて不妊に対してど のような経穴が選穴されているかを調べた。明時代の 鍼灸治療の症例がまとめられた中華鍼灸宝庫(北京科 技術出版社)全16巻から不妊に関する記載を調べ、新 版東洋医学臨床論(はりきゅう編)(公益社団法人東 洋医療法学校協会)などの教科書に記載されている現 代の不妊治療に用いられる経穴との共通点や相違点を 調べた。 【方法】中華鍼灸宝庫全16巻から不妊症に関するキー ワードである「不妊」「月経不順」「難産」を主治とし ている経穴と主治の記述を全て抜き出した。抜き出し た記述については、大阪公立大学杉本図書館にて底本 確認を行った。 【結果】今回抜き出した結果では、任脈にある経穴が 最も多く不妊治療に使用されていたことが分かった。 また難産、不妊のみに使用されていた経穴は中極、巨 闕、合谷、至陰、肩井、子宮が使用されていた。東洋 医学臨床論では、不妊治療の治療穴として多くの経穴 が記載されていたが、中華鍼灸宝庫では不妊治療に加 え月経不順の治療穴として多くの症例に対して三陰交 が使用されていた。 【考察】東洋医学では不妊の原因として、胞絡や女子 胞の滋養不足や阻滞であると考えられている。任脈は 胞中に起こり、胞絡や女子胞を調節する効果があるた め不妊治療として多く使われている。足の三陰経は精 と関係しており、足厥陰肝経では血の疏泄作用や足少 陰腎経の蔵精作用、足太陰脾経には生血・統血作用が あるためこれらの交会穴である三陰交が多くの症例に 用いられていたと考える。 【結語】古典文献を調べた結果、これまでに不妊に対 して用いられていた経穴が判明した。今回判明した経 穴への刺激でどのような生理的変化が起こるのか今後 動物実験などを用いて調べていきたい。 キーワード:不妊、中華鍼灸宝庫、三陰交 - 203 - 215 216 -Sat-GP-16:20 女性開業鍼灸師の下で研修をし続ける女性鍼灸師たち の心情 1)森ノ宮医療大学鍼灸学科 2)森ノ宮医療大学鍼灸情報センター ○小松来瑠1)、増山祥子2) 【背景と目的】研修をし続ける女性鍼灸師らは何に惹 かれ研修をし続けるのか、彼女らの語りからその心情 を見つけ出すことを目的に調査を実施した。 【方法】5名の研修鍼灸師をグループ1(以下、G1) とグループ2(以下、G2)に分け、オンラインによる 半構造化グループインタビューを各1回約60分間実施 した。内容はすべて逐語録に書き起こし、語りのテク ストから見出しを抽出し分析、解釈した。本研究は森 ノ宮医療大学研究支援センター研究倫理部会の承認を 得た(申請#2024-012)。 【結果】1「研修で注目する点」2「研修前後の変化」 3「目標」4「研修・院長の存在」の4つのカテゴリー に分類しテクストから見出しを抽出した。1では、G1 は施術の流れや会話、治療の組み立てのスピード感な ど院長の動きそのものに注目、2では施術のコツなど 実際の臨床での手応えを感じ始めていた。免許取得後 の責任感に変化がみられた。G2は1では他院との比較・ 院長の人柄に注目、2では院長の施術の予測を活用で きるようになった・治療を一通りできるようになった などを実感していた。3では、G1は明確な開業時期を 設定、4では患者との向き合い方や信頼関係の構築、 生計を立てている院長を理想とするなど目標に具体性 があった。G2は、3ではリピーター患者の観察など開 業を継続していくための攻略を目標とするなど、より 具体的な視点がみられた。4は「お金ではなく患者さ んのためと行くたびに思わされる」など患者のための 治療院を意識していた。 【考察と結論】2ではG1の研修前との比較において技 術の変化に対する自覚が主だった。3ではG2の安定し た経営のためのより詳細な視点と課題がみられた。4 では患者の関係性から見える院長の人間性を尊敬し、 理想とする治療院の形態として自らの将来像を重ねて いた。総じて学びたいという志と院長の人柄が構築す る「患者との関係性」に魅力を感じて研修を継続して いるという側面があった。 キーワード:研修鍼灸師、鍼灸、グループインタビュー、 女性鍼灸師 -Sat-GP-16:30 月経痛に対する鍼治療の効果を検証するパイロットス タディ 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 ○瀬戸井玲南、谷口授、谷口博志 【はじめに】月経痛は、日常生活にも多大な影響を与 えるため、毎月の痛みの軽減は女性にとって重要な健 康課題である。先行研究では、三陰交穴に円皮鍼を貼 ることで月経痛の軽減が一定数にみられたことが報告 されている。今回は、ゼミ研究の課題として先行研究 の月経痛の軽減が本当の鍼の効果かどうか、偽鍼を使 用し確かめる計画を立てた。 【方法】研究参加者は、本研究に同意の得られた健常 成人女性2名(参加者a:25歳、参加者b:23歳)とし た。刺激部位は両側の三陰交穴で、使用鍼はセイリン 社製パイオネックスPY鍼(偽鍼/実鍼:0.6mm)を用 いた。治療はA(実鍼)とB(偽鍼)の2群を設定し、 研究期間は3周期で、1周期ごとに治療を入れ替えるク ロスオーバーランダム化比較試験で行った。なお、円 皮鍼の貼付は有資格者が行った。 【結果】[参加者a:プロトコルBAB]途中離脱とな り1、2周期のみの結果を提示する。月経期間等は正常 範囲内であり、月経痛は毎月あった。月経痛は両周期 とも1日目のみであり、VASは1周期目が93mm、2周 期目が65mmで、A(実鍼)の2周期目に減少した。服 薬は両周期で変化はなかった。[参加者b:プロトコル ABA]月経期間等は正常範囲内であり、月経痛は毎 月あった。月経痛は3周期とも観察され、4、5日持続 した。1日目のVASの推移を示すと、1周期目81mm、 2周期目71mm、3周期目65mmであり、痛みに加え服 薬錠数の減少がみられた。しかし、事後1周期目に感 冒による発熱があったと本人から報告があった。 【考察】本研究の結果から以下の様な課題が抽出され た。先行研究のように3周期ほどの期間を設けないと、 VASの軽減や服薬錠数の変化が、鍼によるものか他の 要因によるものかが判別できなかった。両参加者とも に実鍼に気づいたため、ブラインドをかけるための新 たなプロトコルの設定が必要である。今後の研究活動 に活かしたい。 キーワード:月経痛、偽円皮鍼、円皮鍼、クロスオー バーランダム化比較試験、三陰交穴 - 204 - 217 218 -Sat-GP-16:40 月経痛・月経随伴症状に対する鍼灸の研究について 1)常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科 2)藤田医科大学病院麻酔科・ペインクリニック外来 ○佐藤南月1)、伊藤音生1)、有働幸紘2)、 日野こころ1) 【目的】鍼灸治療は月経痛や月経前症候群(以下 PMS)に有効であることが報告されている。今回は それらの文献調査を行い、その結果をもとに今後どの ような研究ができるか検討したので報告する。 【方法】文献検索は医学中央雑誌で行った。キーワー ドを「月経痛鍼」「PMS 鍼」として抽出された 1990年以降の文献のうち、英語、症例報告などを除外 し、学会・研究会が発行したものに絞った結果、最終 的に12本が対象となった。 【結果】対象となった文献は2009年から2020年までの 期間に掲載されていた。このうち2件(16.6%)はア ンケート調査であった。10件(83.3%)で治療・施術 が行われており、対象となった症状は月経痛または月 経困難6件(60.0%)、月経随伴症状2件(20.0%)、PMS 2件(20.0%)であった。治療法は置鍼6件、円皮鍼2 件、灸1件、セルフケア1件であった。使用された経穴 は三陰交が最も多く、円皮鍼での研究は2件ともこの1 穴の効果が検討されていた。評価法については、痛み にVisual Analogue ScaleまたはNumerical Rating Scale (5件)、月経随伴症状の評価にはMenstrual Distress Questionnaire(7件)、性格や精神的なことについての 評価(4件)があった。結果は、部分的な改善も含め ると全ての研究で有効であった。 【考察】今回対象となった文献の多くは月経痛に対す る鍼灸治療が多くを占めており、PMSに注目した研 究は比較的少なかった。評価については、痛みが最も 多かったが、精神的な面についても研究されているこ とがわかった。これらを踏まえ、実際に月経随伴症状 に対する治療やPMSの精神的症状などについて、実 際にデータを取ったり、さらに詳しい文献調査や鍼灸 院でどのような治療がされているのかについても調べ たりしてみたい。また、セルフケアについても有効な 方法を検討し、サークルイベントの際などに提供する ことなどを考えていきたい。 キーワード:文献レビュー、月経痛、月経随伴症状 - 205 - 219 第74回(公社) 全日本鍼灸学会学術大会名古屋大会大会役員 学会会長若山育郎公益社団法人全日本鍼灸学会会長 関西医療大学名誉教授 大会会頭清水洋二公益社団法人全日本鍼灸学会中部支部支部長 中和医療専門学校校長 大会副会頭今井賢治公益社団法人全日本鍼灸学会学術部長 帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 顧問中川徹一般社団法人愛知県鍼灸マッサージ師会会長 長谷川栄一一般社団法人愛知県鍼灸師会会長 相談役楠本高紀中和医療専門学校理事長 木村一郎名古屋医健スポーツ専門学校校長 勝又義直名古屋医専校長 高木保子名古屋平成医療看護専門学校校長 兵頭平名古屋鍼灸専門学校校長 実行委員長杉本佳史名古屋医健スポーツ専門学校副校長/教務部長 プログラム委員長中島紳景名古屋医専 大会監事小林潤一郎公益社団法人全日本鍼灸学会監事 坂本歩公益社団法人全日本鍼灸学会監事 和辻直公益社団法人全日本鍼灸学会監事 実行委員谷口博志公益社団法人全日本鍼灸学会副学術部長 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 高橋順子公益社団法人全日本鍼灸学会中部支部学術委員、 高橋鍼灸院 西村直也セイリン株式会社 松井尚人名古屋平成医療看護専門学校 松浦朱里岐阜県鍼灸師会鍼灸イズン 宮脇太朗鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科 梅田春輝名古屋平成医療看護専門学校 辻大恵名古屋平成医療看護専門学校 岸本優介名古屋医健スポーツ専門学校 遠藤久子名古屋医健スポーツ専門学校 瀧本一一般社団法人三重県鍼灸師会 藤吉徳孝一般社団法人岐阜県鍼灸師会理事 田中良和公益社団法人全日本鍼灸学会中部支部学術委員、 二葉鍼灸療院 武田真輝公益社団法人全日本鍼灸学会中部支部学術委員 市立砺波総合病院緩和ケア科 鈴木聡公益社団法人全日本鍼灸学会中部支部学術委員、 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科 矢田真樹公益社団法人全日本鍼灸学会中部支部学術委員 今村頌平公益社団法人全日本鍼灸学会中部支部学術委員、 今村針灸整骨院 片岡泰弘公益社団法人全日本鍼灸学会中部支部学術委員 寺西昭愛知県立名古屋盲学校 鎌田昌芳愛知県立岡崎盲学校 事務局長二村浩之公益社団法人全日本鍼灸学会中部支部学術委員、 中和医療専門学校 事務局半藤花奈中和医療専門学校 伊藤奨公益社団法人全日本鍼灸学会広報部長、 中和医療専門学校 - 206 - - 207 - 第74回(公社)全日本鍼灸学会学術大会名古屋大会抄録集 (2025年5月1日発行) 編集:第74 回(公社)全日本鍼灸学会学術大会名古屋大会実行委員会 発行者:(公社)全日本鍼灸学会 〒102-0074 東京都千代田区九段南3-4-5 ビラ・アペックス市ヶ谷302号室 TEL 03-6272-3960 FAX 03-03-6272-3961 e-mail:honbu@jsam.jp URL:https://jsam.jp/ 印刷所:(株)ライフクリエーション